フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧

  • 犯罪

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    「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」
    序章の一文が象徴するように、この短編集は、いろいろな出来事が積み重なっていき、後戻りできない犯罪を犯す人々を描いている。
    犯罪を犯す刹那は、今まで踊っていた薄氷が不意に割れて、冷たい氷の下に落ちてしまう瞬間のようだ。誰だってそうなる可能性はある。
    作者も言う。「幸運に恵まれれば、なにも起こらないでしょう。幸運に恵まれさえすれば」。

    あくまで淡々と事実を積み重ねるクールな筆致ながら、行間に溢れ出すようなやるせなさや、切なさや、時には幸福感などの叙情を感じざるを得ない文体、ものすごく好みだった。
    例えば最初の『フェーナー氏』、フェー

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    2023年06月02日
  • 珈琲と煙草

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    シーラッハ「珈琲と煙草」tsogen.co.jp/sp/isbn/978448…
    あー海外作家で今たぶん一番好き。短編とも言い難い断片的な約50の作品集で、たとえば4行だけの作品もあり、全体に犯罪と死と孤独が漂ってる。話はどれも陰鬱で思索的なのに描写が瑞々しくて映像的で、そのギャップがシーラッハだよなー好きだなー

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    2023年04月14日
  • カールの降誕祭

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    罪とは何か。これがシーラッハ文学の中心テーマだ。
    …「罪」という漢字を分解すると「目に非ず」と読める。「現実」を把握するのに「百聞は一見にしかず」というが、こと「罪」に関してはこれが通用しない。なぜなら「罪」に見入る者は心の闇を覗くことになるからだ。
    ー訳者あとがきより

    ブラック・クリスマス、タダジュンさんのおどろおどろしいながらも目が離せない絵に惹かれて読んだ。
    たった三遍が載った100ページにも満たないお話。
    けれど読みやすい比較的短い文章で綴られた罪に満ちた三つの物語は、その主人公たちの末路はどれもじわじわと衝撃的で、けれど、ああ、これは私たちの物語だ。と思わされた。
    主人公たちはカオ

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    2023年03月28日
  • 刑罰

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    ネタバレ

    初のフェルディナン・フォン・シーラッハ。
    短編集。巻末の解説から、実は「犯罪」「罪悪」との三部作で完結作とのこと。失敗しました。

    作品全体にだが、余計な文章が全くない。
    登場人物の感情がほとんど描かれておらず、その辺りは読み手が推察することになる。
    ここまで徹底するのは凄い。

    犯した罪と、その罰のバランスが取れているのか、ということが主題だったと思う。
    おすすめは、参審員、逆さ、小男、友人。

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    2023年01月22日
  • 犯罪

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    ネタバレ

    「物事は込み入ってることが多い。罪もそういうもののひとつだ」。当事者でない人たちがいくら物語を作ろうともそれは真実ではない。。
    それでも、作者は現役の刑事事件弁護士なので(こういうこともあるかも…)のリアルさがあります。冷静だけど冷徹ではなくて、情緒もあるけど大仰ではない文章、好きです。
    お話は特に「ハリネズミ」「緑」「エチオピアの男」が好き。
    怖いのは「正当防衛」「愛情」。「愛情」には佐川一政の名前が出てきてタイムリーでした。世界的にも有名なんだな。
    「棘」も、一人の人が壊れていく過程が描かれててゾッとしました。職務怠慢だ。。
    “弁護人が証人に尋問する場合にもっとも重要なのは、自分が答えを知

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    2022年12月10日
  • 刑罰

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    止むに止まれぬ心情から繰り出された犯罪の瞬間を描いた傑作短編集。
    短い文章で、ことの顛末を描き出す見事な描写に毎回唸るしかない。その犯罪に対して、司法がどのように対峙したのかも描かれる。ドイツの司法制度ではあるが、法の解釈、考え方を学ぶ場にもなっている。
    夢中になって一気に読み切った。今のところ翻訳されているシーラッハ作品は全て読んでいる。どの作品も好きだ。
    次回作も首を長くして待つことにする。

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    2022年11月12日
  • 刑罰

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    フェルディナント・フォン・シーラッハ『刑罰』創元推理文庫。

    読者に媚びを売らず、時に読者を突き放すような乾いた文体で、極めて淡々と描かれる物語は長岡弘樹の一連の短編と似ている。人生の機微と不思議な魅力を感じる捻りの効いた犯罪ミステリー短編12編を収録。

    『参審員』。世の中には時折、皮肉な出来事が起きる。それは必然であり、偶然ではないという人生の機微。冒頭から一人の女性カタリーナの孤独な人生が綴られる。幸せなひと時から、人生に起きる様々な波乱。幾つもの波乱を乗り越え、新たな職を得ても自ら孤独な人生を選ぶカタリーナは参審員に選ばれる。裁判を通じて夫からDVを受けていた証人に自分の人生を重ね合わ

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    2022年10月21日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    中編ほどのページ数で、わずかな登場人物。それでいて、ちょっと何かを触れるとネタバレになりそうなくらいの緊張感を含んだ良質のミステリー。

    これは素晴らしい!しかもこの本が売れたことで、本国ドイツでは現実が動かされ始めているという。

    こんな本、日本では絶対出ないだろうなぁ。書ける作家は要ると思うが、大手出版社は絶対躊躇する(統一教会がらみですらもあの朝日が汚れるんやで)やろし、まして現実が動くなんて根性座った政治家も法律家もちょっと見当たらへんなぁ。

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    2022年08月25日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    法律論を、マッティンガー vs. ライデンの痛快な法廷劇に仕立てつつ、戦時の罪について現在とつながった話として問い続ける。

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    2022年05月28日
  • 罪悪

    購入済み

    きました

    待ってましたノシーラッハ‼️最後の作品、どーいう意味なんだろう。前作に続いての心に残る感じ。次が楽しみだ

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    2022年04月17日
  • 犯罪

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    精神科をやっているからかもしれないけど、こういうことは本当にありうるし、現実でも息を飲むことがある。それをミステリーに変えて商品化した本としてはすごいとおもう。りンゴねぇ。

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    2021年12月03日
  • テロ

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    戯曲なので、読みやすい。逆に読みにくいと感じる人もいるかもしれません。
    有罪か無罪か。正義なのか、命の選別なのか、とても難しい問いかけに明確な答えはありません。考え続けるしかないのです。
    そもそも、発端はテロ行為です。如何なるテロ行為も許すまじ、神の名の下であっても!という著者の思いに共感しました。

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    2021年01月14日
  • テロ

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    ネタバレ

    テロリストに乗っ取られ、7万人が居るサッカー場に突っ込もうとしていた航空機を撃墜した軍人は有罪か無罪か・・・

    いままさに生じてもおかしくはない出来事ですね。この作品の秀逸なところは、その結末。有罪と無罪の結末、両方が書かれています。読者に考えさせると言う事なんですね。

    あっという間に読み終わりましたが、中身は物凄く濃いです。

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    2020年08月24日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    法廷もの。しかも過去と現代を行きつ戻りつするのにすごく読みやすくておもしろかった。
    映画化されてますね。顛末をわかっていても観てみたくなります。
    「やがて来る者へ」というイタリア映画に第三帝国時代のドイツの蛮行が描かれています。
    併せて観るとコリー二の無念さがより浮かび上がってくると思います。

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    2020年08月24日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    主人公・ライネンは、弁護士になってやっと42日。
    初めて殺人犯の国選弁護人になったが、容疑者、いや、犯人は犯行を認めるものの、動機を明かさない。
    犯行に至るまでのどんな背景が事件にはあったのか、そして、なぜ犯人は動機を明かそうとしないのか。

    何を書いてもネタバレにかすってしまうので、感想を書くのが難しいなあ。
    これから読もうと思う人は、この先を読まないでね。


    いまだにドイツに影を落とし続けているのが、ナチス時代に行った数々の非道。
    犯人であるコリーニがなぜ殺人を犯さなければならなかったのか。
    それもまた、現在に残るナチスの影のせい。
    ナチの生き残りが作った戦後ドイツの法律が、ナチの

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    2019年12月21日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    国選弁護人を引き受けた事件の被害者は親友の祖父だった―。それだけでも十分ドラマ性があるのに、後半の思わぬ展開に、読み終わって呆然としてしまった。語り口も淡々としていてそんなに長い小説でもないのに、じわじわ迫ってくる筆致がすごい。この小説がドイツの政治を動かしてしまったということのもうなずける。
    そして小説で政治が動いてしまうドイツという国もすごい。そのことは日本でもよく問題になるけど、責任の取り方というかそれに対する責任の捉え方が、本当に全然違うんだよなぁ…

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    2019年10月26日
  • 禁忌

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    ネタバレ

    ドイツの刑事弁護士を長年経験している著者の作品。
    新作が発表されるたびに必ず手にする作家の1人。
    今回は、小説の技法としてもこれまでの作品とは違う。あたかも主人公のアルバム写真を何枚も見せられて、解説をしたものを集めたように場面展開が細切れ的な文体。これが、わかりにくいと感じる人もいるかもしれない。
    今回のテーマも法廷で浮き彫りになってくる。第二次世界大戦の影響を受けた重いもの。
    読者へ投げかけるテーマが、正義とは?罪とは?など誰もが無関心ではいられない根本的なところに鋭く突き刺さる。
    新作の発売が待ち遠しい。

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    2019年07月31日
  • 犯罪

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    すごかった…うまく言えないけどすごく引き込まれる短編集。二作目から読んだけれどストーリーにはなんの支障もなかった。今作の方がまだ、事件が読みやすいかも。(個人的には二作目のあのもやっとする感じもとても好きだけれど)
    どれもすごかったけれど、タナタ氏はなんか怖いけどすごく印象に残る。チェロのやるせなさもいい、棘と愛情も。なによりエチオピアはぐっときた。

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    2019年07月18日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    鳥肌が立つ。
    この小説を読み私が体感したものの一つ。
    ドイツの法廷劇であり、筆者の淡々とした語り口が、読者とほどよい距離感が保たれており、ページを進めずにはいられない。そして、扱うテーマがとてつもなく奥深く過去の暗い歴史へといざなわれる。読者は自らこの重みを受け止め、対処せざるを得えない。物語の登場人物と、語り手の距離感がそうさせるのだと思う。
    この重厚なテーマをこのページ数で語ることが、著者のすごいところ。ドイツの戦争との向き合い方について、我が国でも参考にするべきことがあるかもしれない。

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    2019年07月13日
  • テロ

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    台本形式(戯曲)の書き方なので、芝居(舞台)をあまり見慣れていない人にはとっつきにくいかもしれませんが、法廷劇や戯曲が好きな人なら絶対に楽しめる作品だと思います。

    ドイツでハイジャック事件が発生し、乗客164名を乗せた飛行機が満員のサッカースタジアムへ向かう。7万人の観衆を救うため、空軍少佐は命令に(あるいは憲法に)背いて旅客機を撃墜、164人を殺害した罪で起訴された。彼は大量殺人者か、それとも7万人を救った英雄か。

    検察側、弁護側双方の主張はどちらも説得力がありましたし、(おそらく)観衆の評決によって被告人が無罪/有罪となる2パターンのエンディングが用意されているのも魅力的でした。
    自分

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    2019年07月13日