フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧

  • テロ

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    トロッコ問題、超法規的緊急避難

    【P158】ベンジャミン・フランクリンの警告「安全を得るために自由を放棄するものは、結局どちらも得られない」

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    2020年04月24日
  • テロ

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    テロと法規っていう全く相容れない両者を、哲学的観点から読み解く意欲作。その表現方法としてのト書き形式も、ここでは上手くいっている気がする。結末を2パターン書くというのは、逃げというかちょっと反則な気がするけど、テーマがテーマだけに、仕方ない…のか?とはいえ、単純に物語を楽しむという意味でも、結構満足度は高い作品ではありました。

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    2019年12月09日
  • コリーニ事件

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    フェルディナンド・フォン・シーラッハの長編作品を初めて拝読した。

    この小説は彼の「懺悔」だ。祖父が元ナチスの高官であるシーラッハが抱えていたものを、私たちは計り知ることは出来ない。

    その「苦悩」がこれを書かせたのではないか。作中の主人公コリー二と同様彼も、先の大戦を根強く引きずっていた。

    彼の短編作品と比べると、若干の「キレのなさ」を感じさせつつも、コリー二の動機が明るみになるにつれ増してくる、スリルは極上。

    やはりこの著者は、ただ者ではない。

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    2019年08月12日
  • 罪悪

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    短編集でどれももやっとしたり、おお、と思ったりとなんかしら後味を残されるものばかりで一気読み。
    ただ、前作の犯罪を先に読みたかった…!失敗した!
    また犯罪も読もう、そしてこの作家さんの他の作品も読みたいと思った。
    イルミナティ、子供たち、解剖学、司法当局がなんかよかった。鍵はエンタメチックでこれはこれで好き。

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    2019年07月15日
  • コリーニ事件

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    証拠も証人もそろい、わからないのは動機のみ。
    そして被害者は、子どもの頃世話になった人だった。

    たとえば司法解剖に立ち会ったあとのライアン。
    〈シャツの縞の数を数える。外階段での熱気。タバコ入れの冷たさ。震える手。〉
    カメラワークのような目線、心の動き。
    この作者らしい無駄のない焦点を絞ったような文体は今回も。
    詳しくないながらも弁護士の関わり方もドイツと日本ではずいぶん違うようで、そこもまた興味深かった。

    3冊目のシーラッハ。長編(といっても190ページほど)も楽しめました。

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    2019年06月11日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。
    無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。

    小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的だったので、深読みしてしまった…嫌いじゃないし、著者が何となく答えを教えてる、ちっとな文章と中々良かった!

    読んだ事の無いタイプの本。外国作品は、登場人物ごちゃごちゃになるので、あんまり読まないが、この作品は数人だけで読みやすくて良い。

    気になったら読んでみてください!

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    2019年02月24日
  • 罪悪

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    “青い”の反対はなんだろう?
    この前に読んだ『空気の名前』が青いなら、こちらは。。。黒い?

    高め安定。
    ミステリーファンならこれは読まなくては。
    いやミステリーじゃないか、現実に基づいた犯罪短篇集。
    人って。。。

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    2018年11月14日
  • コリーニ事件

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    以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読ませていただいています。

    本書は、先生がFBで推薦されていたドイツのリーガルミステリー。
    作者のシーラッハは著名な刑事弁護士。短い文章をテンポよくつなぎ、結末まで一気に読ませます。

    ベルリンの高級ホテルの一室で、高名な老人が命を奪われます。容疑者として逮捕されたのは、イタリア人の元職人コリーニ。
    国選弁護に指名され

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    2018年11月07日
  • コリーニ事件

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    「犯罪」「罪悪」などの短編集で人気を得た著者の初長編。とはいっても200ページもない。短編と中編の間といってもいいくらい短い。しかし内容は深い。

     (簡単な物語の導入部の紹介)

     自動車組立工だったコリーニの職場での評判は、いたってまじめで、勤務態度は申し分なかった。定年まで勤めあげた彼が殺人を犯すとは、誰も思いもしなかった。
     処刑スタイルで頭に銃弾を撃ち込まれたあげく、絶命後も激しく顔を踏みつけられ原型をとどめないほどの憎悪を向けられた被害者マイヤー。大手機械工業の代表取締役として世間にも顔を知られた実業家であり資産家。
     犯人と被害者の接点はどこにあるのか…

     資産家の惨殺にスキャ

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    2018年04月27日
  • コリーニ事件

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    この本を読んでいる時には、犯人が被害者を殺害した時には、犯人が実際には手を下してはいなくて、それを主人公であるライネンが暴いて弁護するのだろうかと思いましたが、いい意味で予想が裏切られました。トリックではなく、大きな歴史がその前に横たわっているとは予想だにしませんでした。

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    2018年01月30日
  • カールの降誕祭

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    ネタバレ

    目次
    ・パン屋の主人
    ・ザイボルド
    ・カールの降誕祭(クリスマス)

    短編が3作。
    ぜんぶ合わせても100ページにも満たない。

    そして犯罪が3つ。
    そのうち殺人が2件。
    しかし悪意をもった犯罪者はいない。

    悪意をもたずに起こす殺人。
    それは、犯人にとってはやむを得ない行動であるのだが、第三者からすると、行為に手を染めてしまうその一線が、壁の薄さがうすら寒い。

    もう一人の犯罪者は…彼の犯した罪は、本当に社会悪だっただろうか?
    しかし信念を持って起こした行動を、彼がずっと守ってきた法律が犯罪と断じた時、彼の中の何かが壊れてしまった。
    彼の充実した人生は、一体どちらにあったのか?

    短い小説ば

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    2017年08月04日
  • テロ

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    ネタバレ

    憲法裁判所が違憲の判断をしているのに、それでもその法を執行する可能性を示唆していた元大臣。公然とそれを是認する議論をしていた軍部エリートの勉強会。表面上、旅客機を撃墜してはならないと命じながら、撃墜を前提とするかのように、スタジアムの避難を指示をしていなかった上層部(その判断をしたのは誰なのかは極めて曖昧。)
    一見、被告人個人の有罪無罪が焦点のようだが、実はさらっと描かれている背景の「国家」が、とても怖い。
    テロによる間接的影響として国家自身による民主主義や自由の理念の侵害が、実は一番怖いし、それこそがテロリストの狙いだと、訴える巻末のスピーチがついているのは、偶然じゃないぞ。
    そういえば、「

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    2017年07月07日
  • 罪悪

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    「犯罪」に続く短編集第2弾。
    正と悪、罪と罰という風には割り切れない話の数々。
    特に冒頭の何編か、重い影のようなものを置いてゆく。やるせなく、切なく、心に残った。
    簡潔な文章のよさを、今回も感じた。

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    2017年06月20日
  • テロ

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    ■命の尊さは数で比較できるか

    旅客機をハイジャックしたテロリストが、7万人が詰めかけるサッカースタジアムに墜落させようと計画。 命令に反して、数百人が乗る旅客機を撃墜したコッホ空軍少佐を無罪にするべきか有罪にするべきか、という思考実験的な戯曲。

    非常にナイーブな問題だが、自分が陪審員だとしたら断腸の思いで有罪にする。
    理由は「どうして観客を逃がすことを考えなかったのか」という検事の一言に尽きる。
    コッホ含め関係者全員「7万人か10 0人どちらを犠牲にするか?」ばかりを考えて、全員が助かる道を考え尽くしたといえない。

    もし検事の言うとおり、「コックピットに乗客が押し入り、自らの力でテロリス

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    2017年03月01日
  • テロ

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    いわゆる読む戯曲かな。上演もされているそうだけど、舞台で観るのはきつそう。一番落度があるのは、スタジアムの観客を避難させなかった当局だと思うけど、被告人の行為がやむを得なかったと言い切るには躊躇する。上の指令に従うのが軍人では?軍人としては有罪だと思う。少なくても英雄として彼の行為を讃える気にはなれない。

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    2016年12月29日
  • カールの降誕祭

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    3つの短編集です。やたらという簡潔で淡々とした文章ですが、内容は衝撃的です。主人公は、秩序とかルールとか常識とかの中では安定して生きているのですが、その枠組みがなくなった途端に壊れてしまいます。なんとなくドイツ人は日本人と似ている気がします。

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    2016年12月22日
  • テロ

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    実際にこんな事件があったら、そして裁判が行われたらこの通りだろうと思わせるリアルさ。語られる言葉一つ一つがすべて正しくて真に迫っています。ずしんと響いて、何度も読み返してしまいます。法律家シーラッハの真骨頂をみたようです。舞台になって、映像化も計画されているようですね。見てみたいです。
    おまけ?のスピーチも、こんなスピーチができるんだな、と深く感銘を受けました。言論の自由のなんたるかを見せつけられた思いです。

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    2016年10月21日
  • 罪悪

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    心が痛む話が増えた気がする…でも、実際にこういった出来事は今、この瞬間にも世界のどこかで起きていることかもしれなかい。
    小説というには、現実的すぎて怖くなる。
    でも、また読みたくなってしまう不思議。

    早く続きが読みたくて、駅のホームと、信号待ちで、歩きスマホならぬ、歩き読書をしてしまったわ(笑)

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    2016年05月22日
  • 罪悪

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    20160423 今度はどう騙されるのか?意外性の有るストーリー展開が読んでしまう理由。短編だからできることというよりもこうしたいから短編なのだと思う。

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    2016年04月23日
  • 罪悪

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     ミネット・ウォルターズの中編『養鶏場の殺人』が、とても強く印象に残っている。ウォルターズとしては珍しく、実際に起きた事件を小説化したものであり、やはり実際に起こったことのほうがむしろ小説よりも奇という場合もあるのだな、とじわじわと背筋に迫る人間の怖さを感じたりしたものだ。ついでに言えば、当該作品は、2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたものであり、普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたそうである。

     さて、本書『罪悪』は、日本国内でも上位にノミネートされて話題を呼んだ『犯罪』に次ぐ、現役刑事弁護士シーラッハの第二短編集

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    2016年03月21日