フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧

  • 罪悪

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    大傑作『犯罪』に続くシーラッハの短編集。語り手の弁護士である「私」が手掛けた事件を淡々と語っていくという趣向は前作と変わらない。今回は10ページ未満の掌編が多く、前作とほぼ同じページ数で収録作数が11編から15編に増えている。

    前作を凌駕しているかといわれるとちょっと微妙だけど、収録作はどれも水準以上の面白さなので読んでみて損はないと思う。必要以上に描写せず、読者の想像に委ねるところは相変わらず美点だと思うので、ミステリ好きの読者だけではなく純文学好きの読者にもぜひ一読いただきたい。

    次は長編だ。

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    2016年03月12日
  • 罪悪

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    前作の『犯罪』と同じ系統の15編の短編を収録。

    短編と言うよりも掌編小説と言った方が良いような小品もあり、前作に続き、不思議な魅力を感じた。全ての短編が創作なのだろうか。極めて淡々と冷めた視点で様々な市井の人びとの罪を描いた短編ばかりたのだが、救いのある短編もあれば、喪失感だけが残る短編、ミステリーの要素を感じる短編が混じる。

    短編に描かれる数々の人びとのの罪は現実に起こりうるものばかりだ。もしかしたら、短編に描かれる登場人物の名前は単なる記号に過ぎず、主人公は人間ではなく、人間の犯す罪なのかも知れない。これは、最後の作品の『秘密』に著者の名前が出たのを見ると、あながち的はずれではないよう

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    2016年02月20日
  • カールの降誕祭

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    シーラッハの安定した独特な文章に加えタダジュン氏のインパクトある版画絵の表紙や挿絵により、更なる相乗効果で作品一つ一つがとてもリアルに楽しめました。もちろん、決して楽しい内容ではないのですが、人間誰にでも潜んでいる悪や「罪とはなにか」について、とても深く考えさせられます。また、巻末の訳者酒寄進一氏の解説により、よりシーラッハが伝えたい意味も参考になりました。少し早めの自分へクリスマスプレゼントになりました。

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    2016年02月16日
  • カールの降誕祭

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    「パン屋の主人」
    「ザイボルト」
    「カールの降誕祭(クリスマス)」の短編3編収録。
    ザイボルトめいた状況は前の職場であった。直接面識はないが、お元気で過ごされているだろうか。

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    2015年12月24日
  • カールの降誕祭

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    不必要な文飾を極端なまでに削ぎ落とした簡潔な文体で描ききだされるのは、人間の内面に抑圧されてきた狂気とも、悪とも、暴力とでもひとまずは言える。これが、ゲルマン気質なのだろうか。秩序を愛し、中庸を尊び、ひたすら恭順に世間を生きている人びとが、ひとたび、世間の秩序だった世界の中に自分が容れられないと気づくや否や狂気に囚われた戦士のように衝動的な暴力沙汰を起こす。まるで、それまでの自己が偽りで、今剥き出しにされたのが、本来のあるべき自己なのだとでもいうように。淡々と事態を叙する記述がかえって、その世界の酷薄さを物語るようで、居ても立ってもいられないような強烈な読後感をもたらす。主人公の内にあって常に

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    2015年12月21日
  • 午後

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    ネタバレ

    シーラッハ4冊目、「珈琲と煙草」に似たフィクションとノンフィクションの間、エッセイと創作の間を描いたような短編集。創作アイデアだけを抜き書きしたような意図の読めないものもあるが、大体において味わい深く、読み終わった余韻がなんとも心地よい。

    分かりやすい気持ちよさではなく、湿気がつらいはずの梅雨時分に窓を開けて換気した時のような、外側の空気の居心地の良さという感じ。

    どこかの街のビジホにチェックインして夕食に出るまでの時間、ベッドに寝転がって読むのが最高にチルして良いかもなぁ。

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    2026年06月15日
  • 犯罪

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    ミステリーでは無く、人間ドラマだった。
    11の短編、11の犯罪、11のドラマがあった。

    弁護士である"私"の語り口で進んでいく。
    生々しい犯罪や、凄惨な事件を、抑揚を抑えた語り口が紡いでいく。
    それがなんとも恐さを倍増させる。

    ページ数も抑えめで、短編集、とても読みやすかった。
    シーラッハ作品、違う物も読んでみたい。

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    2026年04月30日
  • 珈琲と煙草

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    “自分を愛するのはとても難しい。型を保つことは、私たちの最後の寄る辺なのだ。”(p.29)


    “多数決を上回る決定の方法はいつできるのか。そうせざるをえなくなるのはいったいいつだ。倫理は一般市民の意思に抗する術を持たないのか。だとしたら、倫理の中身を決めるのはいったいどこのだれなのだ。”(p.30)




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    2026年04月24日
  • テロ

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    ラジオで?誰かがシーラッハの話をされていて、読んでみた。
    164人の乗客を乗せたルフトハンザ機がハイジャックされ、7万人の観客でいっぱいのサッカースタジアムへの墜落が目論まれる。知らせを受け緊急発進した空軍少佐が命令を無視して旅客機を撃墜。逮捕。裁判にかけられることになる。
    この裁判の様子が描かれる法廷劇+フランスの雑誌『シャルリー・エブド』がM100サンスーシ・メディア賞を受けた際のシーラッハによるスピーチを収載。

    有罪評決の結末と無罪評決の結末、両方が用意されていて読む人に考えさせるようになっている。

    自分が裁判員になっていたら、パイロットだったら、報告を受けて指示を出す国防大臣だった

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    2026年04月13日
  • カールの降誕祭

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    ネタバレ

    短編が3本。
    シーラッハの余計なものを削ぎ落としたシンプルな文体から、男たちの孤独と抑圧された狂気がまざまざと感じ取れた。どの男たちも「善良」であったのに、まさに薄氷の上を歩く人生。次の一歩でそれぞれが氷の下に堕ちていった。
    絵本くらいの厚みしかないのに濃密な一冊。
    3人の哀しき人生を覗き見た。

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    2026年03月13日
  • コリーニ事件

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    『コリーニ事件』

    この小説を読み終えた後、読者は深いため息をつくことになる。
    シーラッハの長編はこの作品が初めてである。わたしもまた、深いため息をついた。

    法と個が交わる難しい状況が描かれている作品だと、前提条件としてわかっていたが、読み進めていくうちに、更には社会や歴史も深く交わっていることがわかっていく。


    「わたしは法を信じている。きみは社会を信じている。最後に軍配があがるか、見てみようじゃないか」

    そして読み終わった後には、真実を解き明かすことそのものが個にとっては正義ではないのかもしれないという気持ちになる。


    「マッティンガーはわずか2時間で、コリーニの父をもう一度殺した

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    2026年02月25日
  • コリーニ事件

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    感情を込めない淡々とした文章に戦争が及ぼす次世代への影響、法律の歴史、戦犯の別の側面などドイツが舞台ではありながら、どの国でも考えるべき問題が取り上げられています。

    ページ数も登場人物も少なめです。心情もあまり語られないし、登場人物たちの行動から推しはかるという描写が多いです。

    著者の祖父が元ナチスのユーゲント指導者だったという背景が作品に多いに影響していると思われます。この著者だからこそ描けた小説なのだと思います。最後の1ページが心に残ります。

    実際にドイツの政治を動かしたとも言われる社会派小説。日本だったらどうでしょうね?自国の戦犯の話って自分も責められているようですごく辛い。ドイ

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    2026年02月20日
  • 罪悪

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    超短編も含んだ短編集でかなり短いのに読み応えを感じた。一話目の後味の悪さが強烈で印象的。他作品にも期待。

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    2026年02月18日
  • 犯罪

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    『犯罪』

    シーラッハはわたしのお気に入りの作家の一人。
    ドイツ文学は少し授業で齧ったりもしたけどこんなにも、のめり込む様な世界を与えてくれたのはフェルディナント・フォン・シーラッハだった。

    「犯罪」と書かれた題名からして、そしてミステリーという区分に、きっとどんでん返しのストーリーが待ち構えていると誰もが思うであろう。

    11章の短編で構成されたこの本はとても読みやすく、ドイツ文学初心者の方でもするりと入り込める。
    しかし、どんでん返しものではなく、現実の話のように「まあそうなるだろうな」と進む話が多い。至って単調な話の連続のように感じるが、彼の描くストーリーは調書や報告書など事務的なもの

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    2026年02月18日
  • 午後

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    シーラッハの作品は、なんというかストーリーに余白があって余韻が心地よい。
    決して居心地のよい話ではない事が多いのだが、読んだ後に、自分の心の中でいろいろなことが静かに共鳴する感じがする。

    本作は、言ってみれば短編集なのだろうが、短編とも呼べない、掌編ですらないくらいの数行で終わる作品もあって、尚且つ各編にタイトルがない。ないというか、単純に連番が振られている。訳者によれば、共感覚者であるシーラッハには、それなりの意味があって振ってある数字なのかもしれないが、それがまた読み手には自分でイメージを膨らませる余地になり、一層作品を味わい深くしている。

    作中にはいくつもの実在の小説や映画、歴史的事

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    2026年02月15日
  • 午後

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    ネタバレ

    章ごとに長さがまちまちの短編集で、数ページの話もあれば、1ページにも満たない話もあり、テンポよく読み進められる。なかでも印象に残ったのは東京を舞台にした物語。働き過ぎや過労死、企業イメージを和らげるためのマスコットのぬいぐるみが日本のイメージなんだと感じた。
    また、サミュエル・ベケットの引用が心に響いた。失敗しても、また挑み、今度はもっと上手に失敗できたらいい。
    午後にコーヒーを飲みながら読みたい一冊。

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    2026年01月28日
  • コリーニ事件

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    ネタバレ

    読み終わった後苦い思いが残る。
    静かにその時を待ち続けるだけに費やしたコリーニの人生。ハンスは自分が殺される理由を知っていたのだろうか。死の間際ハンスが跪いていたのは脅されたからではないと思いたい。
    読みながら、私はライネンに、ヨハナに作者が重なった。最後の2人の会話は胸に迫った。

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    2026年01月09日
  • 午後

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    一筋縄ではいかない人間の愛と憎悪、ドイツの弁護士でありの小説家シーラッハが描く至極の短編集 #午後

    ■きっと読みたくなるレビュー
    悪に落ちていく人間を描いた短編集『犯罪』『罪悪』で有名なフェルディナント・フォン・シーラッハ。

    今回は作家であり弁護士の主人公が、パリ、東京、ウィーンなど世界中の訪れた先で様々な人と出会い、彼らから不思議な話を聞くという筋立て。

    また世界各国の文学や出来事についての言及もあり、そもそもこの本に書かれている内容は、フィクションなのかシーラッハ本人のエッセイなのか、よくわからなくなってくる。

    出会った人から聞くお話は比較的短めではあるのですが、どれも異様な世界観

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    2025年12月22日
  • 午後

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     シーラッハ2冊目、最新刊の短編集です。200ページ足らずの本書には26編が収められ、長くて20ページ程度、短いものは1ページ、それもわずか3行という掌篇もあります。そして各話にタイトルがなく、通し番号が付されています。

     読み始めは1話ごとの脈略やテーマがよく判らず少し困惑しましたが、デビュー作同様、弁護士・作家である著者の〈私〉が登場し、かつて仕事等で訪れた世界各地で誰かと出会い、打ち明け話を聞くというエピソードが淡々と語られます。

     過去にあった事実、その人生の断片は、どこまでが創作か境目があやふやで、幻想か現実かが曖昧な印象です。各掌篇の好みの振れ幅が大きいと思いました。トータルで

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    2025年12月22日
  • 珈琲と煙草

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    シーラッハの自伝的エッセイ

    エッセイとはいえ、明るい雰囲気はなく、いつものように、淡々とした文章なのに、情景がリアルに思い浮かぶ

    なぜかものすごく、惹かれてしまう
    大好きな作家

    とにかく、哲学的で文学的で、理論的

    本当に好きだなー

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    2025年11月30日