フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧

  • 犯罪

    「順調なときにだけ約束を守るというのではだめだ。」

    フェーナー氏が立てた誓いは、最期まで守られたのだろうか。法廷で、今でも妻を愛していると、そう誓ったからだと、話す場面が目に浮かびます。ついでに涙も
    それがいつか身を滅ぼすとしても、立てた誓いを破るわけにはいかない。それは裏切りになるから。ほんと...続きを読む
  • 神

    戯曲の作りで、自死の幇助についての討論会という内容。
    戯曲と言えばファウストのようかと思ったら、とても読みやすくすぐに内容に入り込んで行けました。

    死にたいと考える人の気持ち。そしてそれを手助けするのはどうか。手助けした後のこと。自死の方法やその周囲への影響。
    とても考えさせられるものでした。

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  • 刑罰
    『犯罪』『罪悪』に続く短編集。当初は本書を含めた三部作として構想されていたらしい。
    前作および前々作と同様、描写は簡潔で、登場人物の心情はほとんど語られないため、読者の脳内で埋める余白部分が非常に多いのが著者の特徴。
    幸せが一瞬のうちに奈落の底に突き落とされるような急転直下の展開が多いが、読んでいて...続きを読む
  • 珈琲と煙草
    みんな大好きシーラッハさんの社会「観察記録(訳者あとがきより)」です。

    48の章に別れたエッセイと創作が区別無く(視点の違いがヒントかも)並べられていて、それぞれが短文だからかシーラッハ独特の世界の切り取り方、視点、省略が「犯罪」「罪悪」以上に鋭く感じられ、予想以上に楽しめました。

    幾つか「何こ...続きを読む
  • 罪悪
    前作以上に短編のバラエティが豊かになり、シーラッハの才能を存分に味わえる1冊。
    あまり感情を挟まない描写から、被害者や加害者の人生、言葉にできないような複雑な心の動きが、苦しいほど伝わってくる。

    特に名作だと思うのは、冒頭の『ふるさと祭り』『遺伝子』『イルミナティ』。全て重量級の衝撃が胸に残る。
    ...続きを読む
  • 珈琲と煙草
    エッセイなのか小説のアイデアメモなのかショートショートなのか、弁護士であり小説家のシーラッハが書いた文章臭といった体の1冊。

    「法律なんだから守らなければいけない」法治国家で生きる以上それはそうなんだが、法律は本当に正しいのか?そのことは常に疑問に感じていたいと思う。

    戦争当時のドイツも日本も法...続きを読む
  • 犯罪
    「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」
    序章の一文が象徴するように、この短編集は、いろいろな出来事が積み重なっていき、後戻りできない犯罪を犯す人々を描いている。
    犯罪を犯す刹那は、今まで踊っていた薄氷が不意に割れて、冷たい氷の下に落ちてしまう瞬間のようだ。誰だってそうなる可能...続きを読む
  • 珈琲と煙草
    シーラッハ「珈琲と煙草」tsogen.co.jp/sp/isbn/978448…
    あー海外作家で今たぶん一番好き。短編とも言い難い断片的な約50の作品集で、たとえば4行だけの作品もあり、全体に犯罪と死と孤独が漂ってる。話はどれも陰鬱で思索的なのに描写が瑞々しくて映像的で、そのギャップがシーラッハだよ...続きを読む
  • カールの降誕祭
    罪とは何か。これがシーラッハ文学の中心テーマだ。
    …「罪」という漢字を分解すると「目に非ず」と読める。「現実」を把握するのに「百聞は一見にしかず」というが、こと「罪」に関してはこれが通用しない。なぜなら「罪」に見入る者は心の闇を覗くことになるからだ。
    ー訳者あとがきより

    ブラック・クリスマス、タダ...続きを読む
  • 刑罰
    初のフェルディナン・フォン・シーラッハ。
    短編集。巻末の解説から、実は「犯罪」「罪悪」との三部作で完結作とのこと。失敗しました。

    作品全体にだが、余計な文章が全くない。
    登場人物の感情がほとんど描かれておらず、その辺りは読み手が推察することになる。
    ここまで徹底するのは凄い。

    犯した罪と、その罰...続きを読む
  • 犯罪
    「物事は込み入ってることが多い。罪もそういうもののひとつだ」。当事者でない人たちがいくら物語を作ろうともそれは真実ではない。。
    それでも、作者は現役の刑事事件弁護士なので(こういうこともあるかも…)のリアルさがあります。冷静だけど冷徹ではなくて、情緒もあるけど大仰ではない文章、好きです。
    お話は特に...続きを読む
  • 刑罰
    止むに止まれぬ心情から繰り出された犯罪の瞬間を描いた傑作短編集。
    短い文章で、ことの顛末を描き出す見事な描写に毎回唸るしかない。その犯罪に対して、司法がどのように対峙したのかも描かれる。ドイツの司法制度ではあるが、法の解釈、考え方を学ぶ場にもなっている。
    夢中になって一気に読み切った。今のところ翻訳...続きを読む
  • コリーニ事件
    中編ほどのページ数で、わずかな登場人物。それでいて、ちょっと何かを触れるとネタバレになりそうなくらいの緊張感を含んだ良質のミステリー。

    これは素晴らしい!しかもこの本が売れたことで、本国ドイツでは現実が動かされ始めているという。

    こんな本、日本では絶対出ないだろうなぁ。書ける作家は要ると思うが、...続きを読む
  • コリーニ事件
    法律論を、マッティンガー vs. ライデンの痛快な法廷劇に仕立てつつ、戦時の罪について現在とつながった話として問い続ける。
  • 罪悪

    きました

    待ってましたノシーラッハ‼️最後の作品、どーいう意味なんだろう。前作に続いての心に残る感じ。次が楽しみだ
  • 犯罪
    精神科をやっているからかもしれないけど、こういうことは本当にありうるし、現実でも息を飲むことがある。それをミステリーに変えて商品化した本としてはすごいとおもう。りンゴねぇ。
  • テロ
    戯曲なので、読みやすい。逆に読みにくいと感じる人もいるかもしれません。
    有罪か無罪か。正義なのか、命の選別なのか、とても難しい問いかけに明確な答えはありません。考え続けるしかないのです。
    そもそも、発端はテロ行為です。如何なるテロ行為も許すまじ、神の名の下であっても!という著者の思いに共感しました。
  • テロ
    テロリストに乗っ取られ、7万人が居るサッカー場に突っ込もうとしていた航空機を撃墜した軍人は有罪か無罪か・・・

    いままさに生じてもおかしくはない出来事ですね。この作品の秀逸なところは、その結末。有罪と無罪の結末、両方が書かれています。読者に考えさせると言う事なんですね。

    あっという間に読み終わりま...続きを読む
  • コリーニ事件
    法廷もの。しかも過去と現代を行きつ戻りつするのにすごく読みやすくておもしろかった。
    映画化されてますね。顛末をわかっていても観てみたくなります。
    「やがて来る者へ」というイタリア映画に第三帝国時代のドイツの蛮行が描かれています。
    併せて観るとコリー二の無念さがより浮かび上がってくると思います。
  • コリーニ事件
    主人公・ライネンは、弁護士になってやっと42日。
    初めて殺人犯の国選弁護人になったが、容疑者、いや、犯人は犯行を認めるものの、動機を明かさない。
    犯行に至るまでのどんな背景が事件にはあったのか、そして、なぜ犯人は動機を明かそうとしないのか。

    何を書いてもネタバレにかすってしまうので、感想を書くの...続きを読む