佐川光晴のレビュー一覧

  • 牛を屠る

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    圧倒された。
    作家となる前に10年以上にわたって埼玉の屠畜場で働いた作者のノンフィクション。私たちがスーパーで綺麗にパック詰めされた牛肉を買う前段階にはこのような作業があることをしっかりと認識させてくれる。
    屠畜、という仕事から被差別部落問題に直結させたり、「命の尊さ」などという「美しい」価値を持ち出したりすることなく、仕事をするとは、真剣に対象に向き合い、工夫して、熟練度を上げていくことであることを力強く提示してくれる書。
    巻末の対談で、「他人や他人の仕事に対してちょっとでも舐めた口をきくような人間に自分をしたくなかった」とあり、この姿勢がよく表れていると思った。

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    2021年05月22日
  • 昭和40年男 ~オリンポスの家族~

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    金メダルを目指した体操選手が大会で鉄棒から落下し脊椎損傷になる。同じ体育大学で走り幅跳びの元日本記録保持者だった彼女と結婚し、キャリアウーマンに変身した彼女の支えのもと、主夫として二人の娘の父親として暮らしている。妻の父親は「巨人の星」の星一徹さながらの高校バレーボール界に知れ渡る鬼監督。
    新体操の日本代表となった美人の長女、「じゃりン子チエ」を地でいくような大阪弁を話す次女、仕事に没頭するキャリアウーマンの妻、そんな昭和40年男の日常が三篇の連作短編で構成されている作品集。
    評価としては4.5の作品だが、連作短編のなかに描かれた家族の温かさを評価して、おまけで☆5つにした。

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    2020年03月01日
  • 昭和40年男 ~オリンポスの家族~

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    昭和40年生まれの三男、体操、オリンピック、歌謡曲、がんこ親父に専業主夫、昭和から平成の出来事てんこ盛りで、楽しく読める。
    家族のありかたもよかった。
    佐川さんの本は読みやすいけど、これは特にするする読めた。

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    2020年02月24日
  • 牛を屠る

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    一昔前の大宮と場に勤務した佐川光晴さんの体験記。と畜場作業員としては異色の経歴であった佐川さんがなぜと畜場作業員になったのか、そしてそこでどのように「働いていく」ことを自身の気持ちの中に落ち着かせていったのかということが感じられる作品でした。

    牛を屠るというタイトルから想像するほど、血なまぐさい風景が展開されるわけではなく、むしろ淡々と語られる中に、現実感が迫ってくるようでとても興味深かったです。

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    2020年01月26日
  • 昭和40年男 ~オリンポスの家族~

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    ネタバレ

    佐川光晴先生得意の主夫の話。
    すごく引き込まれましたが、読んでいる間に何度も三男(ミツオ)を三男(サンナン)と読み違え、ストレスが溜まりました。

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    2019年12月12日
  • 鉄道少年

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    ネタバレ

    物語全体を覆う謎解き、佐川作品には珍しくミステリー?かと思いきや、謎解き要素はあるものの、やはりそこは佐川光晴、上手くて読ませる職業小説であり家族小説として展開していく。

    温かい小説を読みたい鉄道ファンは是非読んでほしい。

    交通手段は生活を便利にするためにある。より早くより快適に目的地につくこと、インフラとしての鉄道はそうでなければならない。新幹線、リニア、在来線のオール電化、高速化、トンネルや架橋…そして人口が集中化する以上、過疎地域のダイヤ減少や廃線も営利企業である以上やむを得ず行われる。そして古き良き鉄道の旅の醍醐味やロマンは影をひそめ滅んでいく。

    それでも鉄道はまだまだ滅びないだろう。生活に根差したライフラインであり、自動車や飛行機に無い運輸能力がある以上。滅びないということはロマンが新たに生まれる土壌もあるということだ。

    俺自身は熱心な鉄道ファンではない、電車の中では本を読んでるだけだし、便利であれば自動車でも飛行機でも舟でも高速バスでもなんでも使うし…。

    それでも、出張に使う新幹線の座席に座って枕木を踏みしめる車輪のリズムをなんとなく感じる時、陸橋を渡る通勤電車の窓から淀川に落ちる夕日をみた時、たまーにやる青春18切符旅の合間に「やっぱり鉄道はいいなぁ」と感慨にふけることもある。鉄道はやっぱりどこか特別だと思う。

    ところで、文庫タイトルはどうやろ?俺は原題の「鉄童の旅」のままの方がいいと思うのだが?

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    2018年05月03日
  • おれのおばさん

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    主人公の男の子が、まっすぐでかっこよかった。「夫婦であり、親であるということは、そんなにも難しいものなのか」。逮捕されたお父さんが弱い人間だから、そういう弱い人って人間関係が近い家庭というものは作れないのかもしれない。

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    2016年01月10日
  • 牛を屠る

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    家畜というより、哺乳類を解体するという営みは、差別的な視線ではとても覆いきれない、ものすごく永い──人類が人類になる以前から繰り返してきた行為があるわけです。その末に辿り着いた道具の形があって、その道具に潜むポテンシャルを自分が解放できるようになった時の嬉しさといったらないですよ

    この労働観について書かれてる。
    面白い。

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    2015年12月26日
  • おれたちの青空

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    札幌の養護施設を運営する恵子おばさんと、縁により移り住むことになった陽介と卓也のその後を描くシリーズ第2弾。
    深い余韻を残すというのは、こういう作品をいうのだろう。三人の人生の選択を誇張することなく、自然な時の流れのように描かれている。個性的でありながら場面に無理がないので、読む者に一種の癒しを与えてくれる。
    シリーズはまだまだ続くようなので、三人のこれからが非常に楽しみだ。

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    2015年02月18日
  • おれたちの青空

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    「おれのおばさん」の続編。陽介、おばさん、それから同じ施設にいる卓也の視点で物語が展開する連作集です。卓也の複雑な事情はある程度すでに分かっているのですが、あらためて卓也の視点から語られると、その重みに押しつぶされそうになってしまいます。それでも生きていくことを、日々を大切に過ごすことを選んだ卓也には、幸せになってほしいと心から思いました。おばさんも陽介も、この物語に登場するすべての人たちが、かけがえのない存在でありきらきらと輝いている。彼らの行く手に幸あれと、願わずにはいられません。

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    2014年04月21日
  • ぼくたちは大人になる

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    最初は、重い本だとの印象が強かったのですが、終わりにかけてスピード感が出てきて本当に読んで良かったと思わせる一冊です、

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    2012年09月26日
  • 見えなくても王手

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    将棋の知識はないのだけど、楽しく読めた
    全盲の世界ってこんなにもいろいろ出来るんだ(もちろん努力があって)と感心した
    自分もいつか視野がどんどん狭くなって、見えなくなるんじゃ?と不安
    若い時に失明も嫌だけど、年取ってからだと気持ちが落ちそうだし、かわりに手指の感覚とかもそんなにあてにならないなーって、、
    何より本が読めなくなるのはかなりダメージ
    でも希望になった
    生まれつき全盲の正彦くん、素敵な家族、将棋との出会い

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    2026年09月13日
  • おれたちの約束

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    なんとなく読み始めた「おれのおばさん」シリーズ。
    面白いけど物足りなさも感じていた。ただシリーズものはちゃんと読みたいと思うことが多く、この作品もシリーズ三作目(スピンオフ含めたら四作目)まで読めたようだ。
    わたしはシリーズを読むことをやめなくてよかった。
    きっとこのシリーズはこの一冊を読ませるためにあったのだとすら思った。
    まだあと一冊ある。楽しんで読みたい。

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    2026年03月22日
  • 見えなくても王手

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    あとがきを読んで、これがフィクションだと知ってびっくりしました。
    もとになったエピソードがあったわけでもなく、将棋の教え方なんかもすべて作者が考えられたことだそうで、本当に驚きました。
    意外に将棋は視覚がい者の方がされるのに合っているのかもしれません。
    先の大会まで読みたかったです。

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    2025年05月20日
  • 駒音高く

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    めちゃくちゃ将棋の出来る男の子、女の子。奨励会目指したり、夢破れたり。将棋を巡る連作短編集。

    すごく良かった。将棋なんてやったことないのに、面白いし、考えさせられる。秀逸な将棋ドラマ

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    2025年04月28日
  • 見えなくても王手

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    国語の教科書に掲載されていそうな一作。
    目が見えない子どもたちに
    楽しみを与え、「できる」を与えた
    大人たちがすごいと思う。

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    2025年03月03日
  • 見えなくても王手

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    視覚障害者の正彦。盲学校小4の時にやって来た小倉先生から将棋を教えてもらい夢中になる。

    本当に何かに熱中することの尊さ、目が見える見えないなんて本質的な違いじゃない、目が見える俺なんて全然アカンやないか等色々考えさせてくれた傑作。中学受験の国語で出題されそう。

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    2025年03月01日
  • おれのおばさん

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    一気読み、文体も読みやすく楽しい時間だった。
    過酷な状況下で少年が大人になっていく話。少年が賢すぎ逞しすぎるけど小説だしいいか。
    なんせおばさんがパワフルでカッコ良いのに人間臭くて好き。続きが読みたい

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    2025年01月11日
  • 日の出

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    反戦、厭戦と朝鮮人差別に関する人道的立場からの反発を主眼に置いた小説。
    日清・日露の対戦から関東大震災に至る激動の時代に生きた馬橋清作と中学校の社会科教師として現代に生きる清作のひ孫・あさひの物語が交互に描かれる。
    清作は日露戦争で心身とも傷ついて帰ってきた父親の姿を見て、徴兵を忌避し、故郷・小松を捨て、岡山県美作で鍛冶職人としての人生をスタートさせる。その手配をしたのは、近所の商家の息子・幸三郎。彼は、文武両道に秀でた青年で、上級生にいじめられる清作を助けていた。
    清作は徴兵拒否を許さない兄・栄作の追っ手に怯え、筑豊の炭坑地帯へと移る。地獄と称される炭坑では、日韓併合で日本に来た朝鮮人労働者が低賃金で危険な作業に従事していた。
    清作はとある事件から朝鮮人女性の姜香里とともに川崎へ逃亡する。それらの過程には常に幸三郎のサポートがあった。
    一方、あさひは中学時代に在日コリアンの転校生に出会ったことをきっかけに差別をなくす教育を目指し、中学校の社会科教師になる。
    清作の物語では、捕虜となった朝鮮軍の兵士を連れてきて炭坑で奴隷のごとく作業をさせたこと、日本政府が朝鮮語による教育を厳しく禁じ、朝鮮人の子どもたちの多くが朝鮮語を話せなくなったこと、川崎の朝鮮人町の劣悪な環境、関東大震災での朝鮮人に対するデマなどの歴史が盛り込まれている。
    また、あさひが生きる現代では、奴隷のような朝鮮人は存在しないものの、ヘイトスピーチなど、根深い偏見や差別が残っている様子が描かれている。
    鍛冶職人としての能力をひたすら高めていく清作、世界に目を向け、正義を貫く幸三郎、朝鮮半島の歴史を勉強し、教育の機会均等を重んじるあさひ。主な登場人物は、いずれもまっすぐで人の道を進む清々しさを感じさせる。
    平和の大事さ、人権の尊さをストーリー性豊かに描いた作品であり、学校教育の副読本として活用しても良さそうな気がした。

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    2024年11月01日
  • 日の出

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    解説まで読んで一気に物語が蘇り、私もどういう生き方をしていきたいのか、今もどこかしらで続く戦争や紛争、小さな偏見や差別にどう対応していけばいいのか、非常に考えさせられるきっかけになった本でした。

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    2024年10月09日