佐川光晴のレビュー一覧
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陽介は名門中学で勉強に勤しむ14才。過保護気味の母と銀行員の父と3人で破綻の無い人生を送っていたはずだった。
ある日父が業務上横領で逮捕される。3,500万円を着服し、愛人に1,000万円のマンションを購入。残った2,500万円を運用し穴埋めしようと画策するもリーマンショックの影響で全て水の泡と変わった。
陽介は母と犬猿の仲の叔母に預けられる。
叔母は北海道で児童養護施設の寮母をしている。
叔母は穏やかで上品な母と違い、とにかく豪快でユニーク。
寮生と野球拳をやろうとして止められたり、ミスで割れてしまった卵を使ってホットケーキ大食い大会を開催するなど豪放な人物。
かつては医大を中退し劇団を立 -
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小説家でもあり、主夫でもある、兼業主夫を営む著者。
ここ最近、女性の活躍に関する話題や育児世代を対象としたキュレーションサイトの増加から、「主夫」に関する記事や記述も多くみられるようになり、「主夫」本も多く発行されるようになっています。
この著者もずいぶん前から「主夫」だったと思うのですが、たぶん、以前から主夫という存在もまた社会のマイノリティとして影を潜めていて、ようやく少しずつ表舞台に出られるようになってきた(需要が高まってきた)ということなのかもしれません。
長年、主夫を営んでいるだけあって、佐川さんの言葉はどれも説得力のあるものになっています。
主夫のお悩み相談室と題した最初の -
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これは楽しい!「牛を屠る」が面白かったので、タイトルにもひかれて読む気になった。肩肘張らない書き方で、すんなり読んでいける。「おれのおばさん」シリーズ作者による「主夫生活のすすめ」はとても具体的で、実践の中から出てくる言葉がしみじみあたたかい。
小学校の先生である妻と二人の息子、四人家族の家事をほとんどすべてやってきたのだそうだ。時には同じ敷地内に住む奥さんのご両親にもごはんを持っていくという。その姿は、ほんとにありふれたごく普通の「主婦」と同じ。そこがいいなあと思う。
「男のナントカ」的にあれこれ能書きを垂れるのでなく、家事を煩わしいものとして「合理化」のワザを語るのでもなく、「丁寧でエ -
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父親が横領で逮捕され、名門中学退学を余儀なくされた陽介。
母の姉である児童養護施設を運営するおばさんに預けられる。
そこで出会った仲間たちに助けられながら、色々なこと学びながら、将来の夢も諦めない陽介はたくましい。
作中の『人と人はお互いの何もかもを知らなくてもつきあっていけるのだし、だからこそ、いつかすべてを知っても、それまでと変わりなくつきあいつづけられるのだ』という一節が心に残った。
ここでは言い切ってあるけど、これって意外と難しいことじゃないかなって気もする。
だけど、みんな頑張って生きているって感じられる作品って好きだなぁ。
続編も読みたい!
2014.12.21 -
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【本の内容】
作家専業となる以前、埼玉の屠畜場に勤めていた日々を綴る。
「おめえみたいなヤツの来るところじゃねえ!」と先輩作業員に怒鳴られた入社初日から10年半。
ひたすらナイフを研ぎ、牛の皮を剥くなかで見いだした、「働くこと」のおおいなる実感と悦び。
仕事に打ち込むことと生きることの普遍的な関わりが、力強く伝わる自伝的エッセイ。
平松洋子氏との文庫版オリジナル対談を収録。
[ 目次 ]
1 働くまで
2 屠殺場で働く
3 作業課の一日
4 作業課の面々
5 大宮市営と畜場の歴史と現在
6 様々な闘争
7 牛との別れ
8 そして屠殺はつづく
文庫版オリジナル対談 佐川光晴×平松洋子―働くこと -
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大学時代の恩師から、お勧めされた作家の初読書。読みやすい文章で、ボリュームとしても薄い方なのでサクサク読んでしまった。
「わたし」は障害児学級を担任する教師。この小説全体は、「わたし」の元に現れたかつての教え子・牧野(障害児ではなかったが、問題児として有名だった)が何者かに襲われ、意識不明の昏睡状態になった、その数ヶ月のことを「わたし」が記した手記となっている。
結末にわかりやすい何かを期待してはいけない話である。面白くないと感じる人も多そうな小説だ。
しかし、私はこの手の一人称小説が謎めいていて結構好きだ。手記という体裁は解説文の言葉を借りるなら「信用できない語り手」なのだ。
妻との