佐川光晴のレビュー一覧
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内容(「BOOK」データベースより)
医学部入学を目指し大学浪人中のアキラは、いとこの善男が営む老人グループホーム「八方園」に下宿することになる。三十半ばでバツイチ、元役者、めっぽう口が悪くて老人たちを婆ぁ呼ばわりする善男だが、なぜかホームに暮らすみんなからの信頼は厚い。赤の他人ながら共同生活を送るうち、彼らは互いにかけがえのない存在になっていく。著者の代表作『おれのおばさん』に繋がる連作短編小説。
なかなかの佳作である「おれのおばさん」のスピンオフで、おばさんの別れた旦那の話です。アナザーストーリーではありながら元ネタ読んでなくても十分楽しめる内容で、家族という単位のあり方を描きたかっ -
Posted by ブクログ
家庭での仕事は、どちらかが負うのではなく、
両方ができたほうがいい。
掃除、洗濯、料理は、
家族の健康、家族のシアワセにダイレクトに繋がる仕事。
やるほどに頭も使い、感性も鋭くなり、技術も上がる。
「自分が作ったもので、子供が大きくなる」
これほどのやりがいはない。
男性側の視線で主婦(主夫)の仕事を見直されると、
ないがしろにされている、当たり前だと思われている家での仕事の多くが
それこそ自分にしかできない、意味のある仕事なのだと分かる。
「作家という職業だからできるんでしょ」と関係ないものと思わず
自分だったらどう対応するか、と考えるところからはじまる。
なんにしてもゴハンひとつも作れない -
Posted by ブクログ
ネタバレ「おれのおばさん」の続編ですが、短編式で3作収録されています。
主人公は父親の逮捕が原因で養護施設に預けられるが、そこで多くの事を学んで成長していく。
今回は養護施設を立ち上げた「おばさん」の話と、主人公の仲間の過去と成長の話と、主人公のその後を描いていて、内容は感動もあるが、短編だけにあまり満足感が得られなかった気がします。
これの続編も出ているのでそちらも読みたいと思っています。
最後に、施設と言うと暗いイメージが多いと思うのですが、こちらは愛情あふれる施設(実際にそういうところがあるかはわからないが)で、そういう場所がたくさん存在すれば救われる人がたくさんいるだろうと祈る気持ちと希望が湧 -
Posted by ブクログ
社会で生きることの問いと結論を描いた物語二編。
佐川光晴作品は『金色のゆりかご』に続き2冊目。
屠殺場で働く自分自身への自問自答と説明を描いた『生活の設計』は、自答な文章なだけにやや堅苦しい印象を受けた。
しかし内容は面白い。
一種の新書や教科書を読んでいる説明文で、屠殺場の世の中の偏見を訴えている節も感じる。
表題作の『虹を追いかける男』も面白い。
不器用な人間の過去と今後の生き方を描いていた。
人物の心情を深く掘り下げた作品が好きな私にとっては、説明口調が残る文章にやや物足りなさを感じる。
でも無意に掘り下げないからこそ、その人物達と物語構成が際立つ作品もある。この本は後者に当てはまる -
Posted by ブクログ
今回の佐川さんの小説は、著者の地元を舞台に、ある教育一家に生ずる波紋を巧みな設定で描いている。フィクションだけれど、かなり知り合いのキャラクターや家族関係が投影されているような色合い。 埼玉県の公務員から希望して中学校教師に転じた男と教育一家に育った保育士の妻。著者の住む埼玉県志木市を舞台に、若い教員家庭の平穏だったはずの新婚生活に、学校教育の現場で生じたトラブルが思わぬ波紋を投げかける。 勤務先の中学校で起きた事件がどう展開していくのか、はらはらする場面もあるけれど、平穏な解決へと向かうと知って一安心。これは展開次第では通俗的なサスペンス小説にもなりうるような、、、そうならないところが佐川さ