佐川光晴のレビュー一覧
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瀬戸内がすぐそばに見える風光明媚な広島・尾道に育った真記の中学から33歳までの20年のこと。
ただ20年と言えど、とても努力し何事にも一生懸命で、両親の特に父の言葉を忘れることなくすべてにおいて真面目である…と思った。
けっして愛情がないわけではない両親。
特に父は「誰にとっても、一度きりの人生じゃ。男も女もない。自分の気がすむように、思いっきりやってみい」と餞別がわりのことばで東京へ行くことを許す。
東京に出てきて、大学も卒業したかったであろうが、実家の倒産で学費がままならぬことで両親を恨むこともせずに退学し、看護学校に進むという道を選ぶ。
この判断と潔さに何も言えないほど…
どれだけ強い -
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ネタバレ猫がつなぐ人の縁。
短編8話を通して、愛らしい猫たちが登場します。
猫が好き、猫と暮らしている方にはおすすめの一冊です。装丁も可愛らしく、とりごえまりさんと言う絵本作家さんが担当されています。
8話にそれぞれ登場する人物達が数珠繋ぎのように関わり繋がっていくお話の構成が、短編集でありながらストーリーへ深く入り込んでいける要素でした。
個人的に印象に残った一節をメモとして転載。
「第三話 それぞれのスイッチ」より
「それとね、生きとし生けるものは変化し続ける。自分自身の心とからだも、自分以外の生きものの心とからだも変化し続ける。そうした変化し続けるものどうしがある時に出会い、さまざまな仕方 -
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モモに乗っかったネコの温もり感じながら、「あるある、えー」とつぶやきながら読破。「猫を飼っていることを条件に部屋を貸す」なんて素敵なアイデア。どっかでやってそう。「たまに猫になるのが夢」「我関せずという猫のたたずまいに救われる」「気まぐれな猫に付き合うには精神的なゆとりがなくちゃいけない」「なにものにもおもねらず気ままにすごす生きざま」「猫島は楽園か考えさせられた。かわいい、かわいいだけではすまない現実」「恩返しというと、日本では鶴の専売特許になっているが、恩返しと言えば猫だと、僕は思っている」物語としてはともかく、ネコへの温かい眼差しが伝わってくる。
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高校生になった陽介。父親が服役中であることは隠して、勉強に邁進する高校生活を一人静かに送るのかなと思っていたら、意外や意外、友だちに恵まれて楽しい寮生活をすごし、ひょんなことで父親のことを学年全体の前で話すことになる。そんな風に楽しく高校生活を送れると思っていなかったので、なんだか嬉しい。そんな陽介をそのまま受け止めてくれる友人や教師が周りにいるのは恵まれているね。
大震災が起きて、周りが混乱する中でも陽介はしっかりと生きている。自分にできることを考え、行動に移し、周りを励ます。そんな陽介を母、ほうぼう舎の仲間達、波子さんも支える。大震災で中断してしまった学園祭パート2で女装させられ、仲間から -
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物語だけど、どこかノンフィクションぽく、人と人との関わりが濃くて面白い。
おれのおばさん、の続編。
同級生の卓也の今まで、おばさんの大学〜おばさんになるまで、タイトルの陽介の高校受験にまつわる今後への話は20ページほどの3編。卓也の境遇、思い、人への優しさなど深くわかる。
おばさんは大学時代からの友達、次期教授、玉木さんも出てきて今でも好きな元旦那との出会い、演劇、浮気〜離婚と壮絶な半生を辛気臭くなく、テンポ良く語る。
ついつい読んでしまう面白さがある。
登場人物の素直さ、頑張り、努力、その陰には児童養護施設という環境で育つという道で、強烈なおばさんとの生活で曲がることなく生きていく様がま -
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屠殺、というものに興味をもったのはいつだったか。
品川(芝浦)のことを知ったのは何気なく写真集を手に取ったのがきっかけだったように思うし、岐阜の養老のことも知識としては知っていたし地形や社会史との関係で解釈していた、ただし実作業工程までは当然わかっていなかった。
屠殺場で働くきっかけを「偶然」と表現するのも素直だし、父親の反省に対して「会社を辞めず給料をもらい続けたおかげで親としての役目は果たした」「人生に運不運は付き物だし、信念を曲げず生きてこられただけよしとすべき」という感想もまた、考えさせられる。
「おいそれとは身に着につけられない」「技術と経験を求められる」仕事を志向し、そしてこの