物語全体を覆う謎解き、佐川作品には珍しくミステリー?かと思いきや、謎解き要素はあるものの、やはりそこは佐川光晴、上手くて読ませる職業小説であり家族小説として展開していく。
温かい小説を読みたい鉄道ファンは是非読んでほしい。
交通手段は生活を便利にするためにある。より早くより快適に目的地につくこと
...続きを読む、インフラとしての鉄道はそうでなければならない。新幹線、リニア、在来線のオール電化、高速化、トンネルや架橋…そして人口が集中化する以上、過疎地域のダイヤ減少や廃線も営利企業である以上やむを得ず行われる。そして古き良き鉄道の旅の醍醐味やロマンは影をひそめ滅んでいく。
それでも鉄道はまだまだ滅びないだろう。生活に根差したライフラインであり、自動車や飛行機に無い運輸能力がある以上。滅びないということはロマンが新たに生まれる土壌もあるということだ。
俺自身は熱心な鉄道ファンではない、電車の中では本を読んでるだけだし、便利であれば自動車でも飛行機でも舟でも高速バスでもなんでも使うし…。
それでも、出張に使う新幹線の座席に座って枕木を踏みしめる車輪のリズムをなんとなく感じる時、陸橋を渡る通勤電車の窓から淀川に落ちる夕日をみた時、たまーにやる青春18切符旅の合間に「やっぱり鉄道はいいなぁ」と感慨にふけることもある。鉄道はやっぱりどこか特別だと思う。
ところで、文庫タイトルはどうやろ?俺は原題の「鉄童の旅」のままの方がいいと思うのだが?