大崎梢のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
由佳利の恋人との顛末も、百年越しの事件も、都合の悪いことを見て見ぬふりをしていると後々大きくなって身に降りかかってくる。それがこのお話のテーマなのかと思うものの、ミステリが軸のようなので、それについては詳しく描かれない。
それ故むしろ、作中の生家館の扱いにみるような、文化が軽んじられている状況に思いをはせてしまった。全てのものに採算という物差しを持ち出してもよいものか。金を稼げないものイコール存在意義がない、というわけではないだろう。特定の人物、業者にしか利益がないようなものには巨額のお金が使われる一方で、歴史的・文化的に価値があるものでさえ、易々と取り壊し廃棄する様は、妄執すら感じる。
郷土の文化は継承したい、と思う人が増えるといいなと改めて思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大崎氏の作品は初めて手にした。
序盤は、大きな展開もなくストーリーはゆっくり進む。ページを捲る手もなかなか進まない。
そのうち、この作品の目指すところが見えてきてから、やっと読むペースが上がった。
終盤には、序盤のゆっくりさが嘘のように急展開した。
由佳利の「婚約破談」が、主たるストーリーにほとんど効いてないのが実に勿体無い。結果的に恋愛小説ではなかったから、生かしようがない要素ではあるが、それならば端から要らないエピソードだった。読みはじめにはその点の期待もあったので、その後に展開されるミステリー要素には、完全には入り込めなかった。 -
Posted by ブクログ
でもあれは、本とはちがいますね。だって、誰も読めないもの(p.240)/かつての同僚で今は信州にいる有田美保からHELP! 勤めている老舗書店「まるう堂」に幽霊が出る? 多絵の悪魔のささやきで一緒に行くことになった/多絵の推理の進め方がおもしろい。僕やったら…ひとりKJ法でも使うかな/とはいえこの作品は探偵と競い合って犯人当てしようというような感じにはならないですね。ただ読むだけ。杏子と多絵たちのかけあいを楽しむだけ。
■簡単な単語集(第二巻から)
【有田美保/ありた・みほ】『晩夏に捧ぐ』の二年前まで成風堂で働いていた元同僚。現在は信州の老舗本屋「まるう堂」で働いている。『晩夏に捧ぐ』時点で二十七歳。口が悪くてけたたましくて人情に厚い。
【石丸多遜/いしまる・たそん】嘉多山成治邸に住み込んでいた内弟子。
【壱橋亜也子/いちはし・あやこ】嘉多山成治と結婚話が進んでいた。当時二十八歳で五十八歳の成治とはかなりの年齢差があった。没落した名家の娘でバツイチ。当時二十四歳だった小松秋郎の恋人だったという噂もある。
【大内】かつての同僚有田美保が勤めている信州の老舗書店「まるう堂」副店長。
【嘉多山成治/かたやま・せいじ】往年の流行作家。まるう堂をよく利用していた。『晩夏に捧ぐ』の二十七年前、当時住み込んで作家修行をしていた小松秋郎に殺された。現在ほとんどの本は実質絶版状態。
【嘉多山久嗣】嘉多山成治の遺産を相続した甥。自称「プロの画家」だがワカメヘアーの下品なおっさんにしか見えない。
【加藤浩伸/かとう・ひろのぶ】嘉多山成治が殺された事件を担当した刑事。現在は県警の警部。
【杏子/きょうこ】主人公。木下杏子。成風堂の社員。児童書担当。バイトを含めたら『晩夏に捧ぐ』時点でほぼキャリア六年。『晩夏に捧ぐ』時点で二十四歳。《そしたら杏子さん、お客さん相手に言いました。「どんな道でも、ほんとうは横道や脇道だらけ」って。「たまにはそっちを歩いてみればいいのに」とも》p.243
【小松秋郎/こまつ・あきお】師匠ということになると思われる嘉多山成治を殺したとされている。刑に服し二年後、刑務所で病死した。真犯人ではないという噂もある。まるう堂に出る幽霊は彼だとされている。多絵いわく《彼はどこかが壊れている子どもだったと思うんです。そしてそれをぜったい外に出すまいとした。》p.110。《誰でも飛べる、誰でもちっぽけ。》p.150
【成風堂】駅ビル六階の書店。
【多絵/たえ】西巻多絵(にしまき・たえ)。成風堂のアルバイト。杏子より三歳年下の大学生。細かなところに気がついて頼りになる。探偵役。「本屋の謎は本屋が解かなきゃ」。仕事を覚えるのが異常に速く、そのかわり? 異常に不器用。ピアノを弾けるがレパートリーは五曲で「イエスタデイ」「夜空ノムコウ」「ミッキーマウスマーチ」と…。絵、というか地図を描くのはおそろしく下手。空間把握能力が壊滅的と思われる。《もともと「いい子」なんかいないんです。いるとすれば「大人にとって、都合のいい子」であって、それはもう立派な欠陥品ですよ》(p.110)。《本屋の店員たぶらかして、ただですむと思うなよって、言ってもいいですか?》p.182。《いつだって私は、わかりやすく話してるつもりなんです》p.186
【朋彦/ともひこ】正也の息子。郊外型のショッピングモールっぽい施設内にある支店の店長。根っからのビジネスマンでセンスよい店作りに杏子は感心した。
【根本佳江/ねもと・よしえ】嘉多山邸に住み込んでいたお手伝いさん。現場の発見者。
【野沢裕一】嘉多山邸に住み込んでいた書生の一人。現在は地元の公立あけぼの中学教頭。
【ヒロ】成風堂のアルバイト。
【ポチ】美保んちの豆柴。人懐っこい。
【正也/まさや】宇都木正也。まるう堂二代目店長。好々爺。七十歳。
【まるう堂】信州の老舗書店。正式名称は「宇都木堂書店」。かつての同僚、有田美保が勤めている。最近幽霊が出るとご近所では大評判。店主の心配りが行き届いている、杏子好みの書店。一階の奥の古い看板のそばに往年の流行作家、嘉多山成治のコレクションが置かれている。