安藤祐介のレビュー一覧
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不器用な主人公「日ノ出楽志」の唯一の取り柄はモノを大切にすること・・・
彼が名前をつけたモノには、心が宿っている・・・
想像以上に面白く心がポカポカと温かくなる物語でした。
僕自身もモノを大切にするこだわりがあるのでかなり共感して読めました。
モノを誤って落としたりしたら、「ごめん」て無意識に言ってしまいます。
名前をつけて愛着をもつっていいですね。自分も少し真似をしたくなりました。
また子供の成長や物に対する接し方など良い見本になる物語だと思います。
自分は「九十九神」や「やおよろず」などのモノに関する物語が好きなんだと実感した気がします。
いい小説に出会えて心が満たされました。 -
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ネタバレ読み終わったあと、会社の仕事に対して、前向きになれる本。
会社の不祥事をきっかけに、会社の新しいコンプライアンス理念立ち上げを命じられた主人公が、急増のコンプライアンスメンバーと共に、思想が固い経営陣に立ち向かい、コンプライアンスを立ち上げていくという物語。
「どうせ通うなら、毎日楽しい職場がいい」にはめちゃくちゃ共感。他にも、役員へのご機嫌取りのための資料作りなど、社会人あるあるが詰まっており、社会人の人が読むと面白い本だと思った。
「コンプライアンス」と言うと、どうしても固めなイメージが持たれるが、この物語ではコンプライアンスについて、徐々に原理原則に立ち返っていく。「原理原則」とは、 -
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35歳の主人公は、広報部で仕事をしていたが、晴天の霹靂の人事異動で社長肝入りの『スマイルコンプライアンス』なるものの専任担当になり、これに沿った会社方針を策定することになる。しかし社長に忖度する役員の無茶ブリ、会議のための会議、終わらぬ資料作り…無限地獄のような仕事の中で心を病み、心療内科のお世話になる。唯一の趣味のバンド活動ではバンド仲間が余命宣告を受ける。
上司の吐くこんなセリフ。
『テキトーにやるんだ。一生懸命に考えたフリして、直して、見せて、時間切まで繰り返し、ゴングアウトになれば、上は渋々ハンコを押す。』
なんか暗澹たる気持ちで仕事していた時期を思い出す。不毛な毎日が続き、日曜日の -
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読みたいリストの中から手に取った作品。
印刷会社営業、印刷オペレーター、DTPオペレーター…様々な視点から描かれる印刷会社を舞台としたお仕事小説。
一冊の本を造るために、こんなにたくさんの工程があり、こんなにたくさんの人が関わっているなんて…!
本がどのように造られているのか、本の価格設定がどのようにされているのか、など分かっているようで分かっていなかったことを今作を読んで学べた。
思ったより手作業が多いことにも驚いた。
印刷会社を沈みかけの船に例え、いつかは沈むとしても現役でいる間は絶対に沈ませない、よりよい本を造りたい、と奮闘する登場人物たち。
最初は不穏な感じが漂っていたが、営業の -
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印刷会社社員のお仕事小説
以下、公式のあらすじ
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彼らは走り続ける。機械は動き続ける。電子化の波が押し寄せ、斜陽産業と言われようとも、この世に本がある限り。印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。「印刷会社はメーカーです」営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム。構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付に載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。
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新卒採用の説明会で「印刷会社はメーカーです」という言葉を放った浦本学
営業のエース 仲井戸が「夢は目の前の仕事を毎 -
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ネタバレどのみち毎日通うなら、楽しい職場がいいですね。
かつて経験した、大量の仕事や厄介なクレーム対応は、ある程度ゴールが見えていた。頑張ればなんとかなる類のものだ。しかし今回の仕事には、頑張ってもどうにもならない何かがあった。何で忙しいのか訳も分からぬまま、いたづらに怒涛のような日々が過ぎていった。
「トップダウンで大きな方針やルーツが作られると、それに付随した細かい規則や手続きが山ほどできて、部門間の軋轢も増えます」
「俺は今、満員電車で会社に通いたい。くだらない会議にも参加したい。仕事や会議を陳腐で退屈なおのにしているのは自分自身なんだって、言ってやりたい。どんなにくだらない会議だって、楽 -
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「どのみち毎日通うなら、楽しい職場がいいですね」
最近はルールにがんじがらめになって疲れてしまう。でも、この本を読んで明日も頑張ろうと思った。うちの職場に似てる!と思う。この作者の話は偶然にもうちの職場の課題がテーマになっている気がする。
職場にいる時間は一日の3分の1以上で、それに要する通勤時間も入れるともっと長い。だからこそ、楽しい職場がよい。小難しいルールに溢れる中で、プリンシプル=原理原則に立ち返ることが大切だと思ったし、オープンでフラットって分かりやすいようで分かりにくいけど、つまりはスマコンだなと。
私ももうベテランの域に入っている。組織全体を良くしようとは思わないけど、自分の身 -
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この広い世界で1人の人が亡くなっても、覚えてくれている人は家族や知人だけではない、人はその人の名前を知らなくとも、その人との出来事は覚えている、そう思わせてくれた一冊。
この小説は、当時では「ブラック企業」という言葉が今までほど浸透していなかった時代を背景とし、3人の新卒入社のサラリーマンが上司から不当に罵詈雑言され、上司の奴隷になっていることから始まる。それはもはや、人間としての扱いを受けておらず、想像するだけで酷なものである。
章が変わるごとにメインとなる人物が変わり、人が人を紡いでいく。
社会という名の中にある、本来の人間の感情、優しさ、そして情を強く感じさせる一冊だった。 -
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ネタバレブラック企業に就職した大友、夏野、村沢の3人、束の間の休息で駆け込んだ居酒屋の店員のしんじさん、夏野が学生の時にやっていた六畳間のピアノマンを応援していた女子高校生、夏野のお父さん、夏野を助けられなかった警官の脇見さんらが、8年を経てまた関わりあう。その中心にビリージョエルのピアノマンがある。関わりあっていることに気づいてなかった人たちと、最後の最後に気づいたしんじさんがかけたピアノマン、、、。この場面が胸に響いた。お父さんが夏野にやさしい人になれと育てたことを悔やむ場面は辛い。
逃げられなかった君へ、という元のタイトルの方が内容を示してたけど、8年を経て今も聞かれている六畳間のピアノマンがタ -
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昔から読書好きだけど、本がどうやってできるかを考えたことがなかったことに頭を殴られた。
本が本としてできあがるまでに、これほどの人や職人さんの技術がかかわっているとは。
お仕事小説かつ、本への賛歌でした。
電子書籍の黎明期&印刷業が斜陽という世相もふまえつつ、本作りに誇りをもっていた製本業界のリアル。
当初は紙の本は駆逐されないだろう見通しも、コロナ禍と断捨離思考で電子化はここ数年で一気に躍進した。
紙の本はなくならない、でも仕事としては淘汰されていくのを止められない悲しさ。
それでも誰かのための一冊が今日も生まれていく。
本当に読んで良かった本でした。