安藤祐介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ブラック企業がどう人を追いやるのか、現実を織り交ぜながら登場人物が陰で繋がっている短編集に引き込まれました。
洗脳されると洗脳されていることに気づかない、弱者や馴染めない人は自分が悪いから駄目なんだと思い込む。その社会の構図はきっと人が存在する限り終わらないと思います。
でも、そんな中にも助けようとする人がいて、誰かの力になろう、這いあがろうとする人がいる。
ピアノマンが届けていた曲は確かに人を救っていて、救われた人がまた誰かを助けたいと頑張る。
それが当たり前の世の中になればいいなと思いました。
個人的に、ラストで二番目に美味いビール、と言われて泣いた男性店員のシーンがぐっときました。 -
Posted by ブクログ
いい本だ。
1冊の本にどれだけの人が携わり、どれだけの手がかかっているか。そのとおりだよ!と、何度もうなずきながら読んだ。それを、巻末のエンドロールが物語っている。いや、エンドロールにあがっている名前だけではなく、本書内で描かれている職種だけではなく、たとえ奥付に名前はなくても、まだまだ本に関わっている人は大勢いる(そこまでカバーしている点で『重版出来!』は名作だと思う)。
本だけではなく、どんなモノもいろんな人が関わっているんだろうな、と想像させる。
仕事との向き合い方は、人それぞれ。その人のやり方をいかに尊重するか、それも考えさせられる小説だった。
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Posted by ブクログ
〝やっぱりここは、俺の居場所だ〟
生きる希望を失い、死に場所を求めて河川敷をさまよっていた丸川は、泥まみれになって楕円のボールを追う男たちと出会う。
そうして生き続ける道を選んだ。
「不惑」とは、数え年で40歳のことなんですね。
そして字の通り、「迷いのないこと」という意味もあるそう。
論語の「四十にして惑わず」
からの言葉からきてるらしいが、私はいまだ迷いだらけ(;´∀`)
きっと死ぬまで迷ってる気がするwww
この作品は、40歳以上限定の「不惑ラグビー」に打ち込む男たちの熱い物語。
週末のグラウンドに集まる仲間は、社会的地位や利害関係もなく、ただ楕円のボールに集まったシンプル -
Posted by ブクログ
勤め人小説。
社長の一言から、配下の役職社員たちが大騒ぎし、それに振り回される一介の社員を描いた作品。
会議のための会議、会議のための会議のための資料作りのための打ち合わせ、根回し地獄、生産性のない資料作り、見もしない資料の印刷(大量)、スタンプラリーなどなど…
「上の人」たちの気質や、会社の制度上のしがらみなど、社会人あるあるの描写が見事。
間に入る大人たちが、自己の保身や権威を示すために、1を10にも100にもややこしくしてるんだと、つくづく思わされた。
まじで発出元と直接話させてくれと思うことしきり。
してその本質は、「なんのために働くのか?」を考えさせる内容。
結局のところ、生きる -
Posted by ブクログ
ネタバレ大成功、だからハッピーエンド!
という訳じゃないストーリー構成がよい。
成功したり一番にならなければハッピーになれない訳じゃない。
少し厚めの本で、
その分、各キャラクターのいく先に引き込まれて読んだ。
最後の文、
お笑い芸人のいない世界よりも、お笑い芸人のいる世界のほうがきっと楽しい。
というのが結局この話を纏めてるのかなと、終わり方も心地よかった。
以下、好きな箇所。
自分は選ばれなかった人間だと思っていた。それは、手からこぼれ落ちていったものば
かりに目を向けていたからだ。
学園に出場した、プロ野球選手になった、スーパーの社員になった、お笑い実業団と出会った。与えられた場所のひと -
Posted by ブクログ
「本のエンドロール」というタイトル通りに巻末に出版社だけでなく印刷会社や製本会社の各工程の担当者の名前が記されている。こんな本は今まで見た事がなく、本というのは本当にたくさんの人が関わって生まれるのだなと実感できる。
ストーリーはトラブルあり、厄介な人物ありのよくあるお仕事小説なのだけど、営業をはじめ製版や工場など、何をする仕事なのだろう?と思っていた印刷会社の仕事ぶりが丁寧に描かれていて勉強になった。あまりに詳細なので作者は元印刷会社の人なのかと思ったら、各所への綿密な取材のおかげらしい。
浦本は、少し理想主義ながらも共感できる主人公だったけど、野末は普通にモラハラなので嫌だな。