安藤祐介のレビュー一覧
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不器用な主人公「日ノ出楽志」の唯一の取り柄はモノを大切にすること・・・
彼が名前をつけたモノには、心が宿っている・・・
想像以上に面白く心がポカポカと温かくなる物語でした。
僕自身もモノを大切にするこだわりがあるのでかなり共感して読めました。
モノを誤って落としたりしたら、「ごめん」て無意識に言ってしまいます。
名前をつけて愛着をもつっていいですね。自分も少し真似をしたくなりました。
また子供の成長や物に対する接し方など良い見本になる物語だと思います。
自分は「九十九神」や「やおよろず」などのモノに関する物語が好きなんだと実感した気がします。
いい小説に出会えて心が満たされました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わったあと、会社の仕事に対して、前向きになれる本。
会社の不祥事をきっかけに、会社の新しいコンプライアンス理念立ち上げを命じられた主人公が、急増のコンプライアンスメンバーと共に、思想が固い経営陣に立ち向かい、コンプライアンスを立ち上げていくという物語。
「どうせ通うなら、毎日楽しい職場がいい」にはめちゃくちゃ共感。他にも、役員へのご機嫌取りのための資料作りなど、社会人あるあるが詰まっており、社会人の人が読むと面白い本だと思った。
「コンプライアンス」と言うと、どうしても固めなイメージが持たれるが、この物語ではコンプライアンスについて、徐々に原理原則に立ち返っていく。「原理原則」とは、挨拶をする、困った時に助ける、とかそんな当たり前な話である。そんな社会人としての原理原則を議論する場面がなんとも印象的であった。
最後の半径5メートルをまず良くしよう、というのが「先ずは自分の出来るところから」という無謀な目標ではなく、着実にというメッセージが伝わってよかった。
印象に残ったスマイルコンプライアンスは
・挨拶をしよう
・時々、雑談もしてみよう。
・上司、部下、同量のいい所をみつけよう。
人の繋がりを大切に、という仕事以前の大切な繋がりを感じた。
【スマイルコンプライアンス12ヶ条】
一、挨拶をしよう。おはようございます、ありがとうございます、おつかれさま。
二、忙しくしている人がいたら、手伝えることを探して、声をかけよう。
三、困った時は騒いで周りに助けてもらい、みんなで早く帰れる職場にしよう。
四、明るく愚痴をこぼし、明るく弱音をはこう。そしてお互いに思いやろう。
五、時々、雑談もしてみよう。
六、悩んでいることがあったら相談窓口に話をしてみよう。
七、過ちをおかした社員が、やり直すチャンスを得られるようにしよう。
八、ミスを憎んで人を憎まず。小さなミスも知らせて、みんなでカバーしよう。
九、社員が日々、よりよく変身できる環境を作ろう。
十、出ていく社員をやさしく見送り、もどってくる社員をやさしく迎えよう。
十一、上司、部下、同僚のいいところを見つけよう。
十二、余計なルールがあれば、どんどん見直して、廃止しよう。
附則 この十二箇条を守るか守らないかは、それぞれの自由です -
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35歳の主人公は、広報部で仕事をしていたが、晴天の霹靂の人事異動で社長肝入りの『スマイルコンプライアンス』なるものの専任担当になり、これに沿った会社方針を策定することになる。しかし社長に忖度する役員の無茶ブリ、会議のための会議、終わらぬ資料作り…無限地獄のような仕事の中で心を病み、心療内科のお世話になる。唯一の趣味のバンド活動ではバンド仲間が余命宣告を受ける。
上司の吐くこんなセリフ。
『テキトーにやるんだ。一生懸命に考えたフリして、直して、見せて、時間切まで繰り返し、ゴングアウトになれば、上は渋々ハンコを押す。』
なんか暗澹たる気持ちで仕事していた時期を思い出す。不毛な毎日が続き、日曜日の夜になると翌日からの仕事のことを想像し無気力になる…
主人公のプロジェクトには頼れる仲間が何人かおり、中には60歳過ぎの謎の過去を持つオッサン社員がいる。今の僕は年齢からしても、このオッサン社員のような役割なのだが。
紆余曲折、試行錯誤、バンドメンバーの死去など、様々な苦労の末、会社の12箇条の方針を策定する主人公…これが素晴らしい。眼からウロコの内容。小説の世界のことだけど、リアルに会社の問題点を捉えていた。実際の会社でもこんな方針内容が認められるような企業風土の会社がないものかと思った。
『仕事のためには生きていない。』
ほんと、その通りだから。 -
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読みたいリストの中から手に取った作品。
印刷会社営業、印刷オペレーター、DTPオペレーター…様々な視点から描かれる印刷会社を舞台としたお仕事小説。
一冊の本を造るために、こんなにたくさんの工程があり、こんなにたくさんの人が関わっているなんて…!
本がどのように造られているのか、本の価格設定がどのようにされているのか、など分かっているようで分かっていなかったことを今作を読んで学べた。
思ったより手作業が多いことにも驚いた。
印刷会社を沈みかけの船に例え、いつかは沈むとしても現役でいる間は絶対に沈ませない、よりよい本を造りたい、と奮闘する登場人物たち。
最初は不穏な感じが漂っていたが、営業の浦本を中心に数々の困難を乗り越える度にチームワークが深まっていく展開がとても胸熱だった。
彼らの労働を通して読み手も自分に問いかけたくなるのではないか。
「なぜ働くのか」
「なんのために働くのか」と。
巻末に設けられている奥付。
私は奥付を読むのが好きで、自分の本も子どもの本もまず奥付から目を通す。
でも全部の項目に目を通しているわけではなかったので、これからは隅々まで目を通そうと思った。
私が日々読んでいる本にはたくさんの方の想い、苦労が詰まっているのだということを心に留めておきたい。
私は電子書籍よりも紙の本が好き。
本が増えすぎて困るという悩みはあるけれど、これからも紙の本を愛読していこうと思った。
とても素敵な作品だった。 -
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ネタバレどのみち毎日通うなら、楽しい職場がいいですね。
かつて経験した、大量の仕事や厄介なクレーム対応は、ある程度ゴールが見えていた。頑張ればなんとかなる類のものだ。しかし今回の仕事には、頑張ってもどうにもならない何かがあった。何で忙しいのか訳も分からぬまま、いたづらに怒涛のような日々が過ぎていった。
「トップダウンで大きな方針やルーツが作られると、それに付随した細かい規則や手続きが山ほどできて、部門間の軋轢も増えます」
「俺は今、満員電車で会社に通いたい。くだらない会議にも参加したい。仕事や会議を陳腐で退屈なおのにしているのは自分自身なんだって、言ってやりたい。どんなにくだらない会議だって、楽しんでやろうと思う。そうすりゃ周りも面白くなるかもしれない。生きてるだけで、どれほどすげえことか、今ならわかるんだよ」
「自分のことって、案外分からないものですね(ヤマキョー)」
詩人・金子みすゞの有名な詩の一節「もう遊ばない」と言えば「遊ばない」と返ってくる。「ごめんね」と言えば「ごめんね」と返ってくる。
それぞれの半径五メートルが少しだけでも良くなるようなものを作りたい
ただ、ひとつだけ自信をもっていえることがある。スマコンは、社内のだれの存在も否定しない、職場の良心を信じてみるところから始まる行動規範だ。 -
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「どのみち毎日通うなら、楽しい職場がいいですね」
最近はルールにがんじがらめになって疲れてしまう。でも、この本を読んで明日も頑張ろうと思った。うちの職場に似てる!と思う。この作者の話は偶然にもうちの職場の課題がテーマになっている気がする。
職場にいる時間は一日の3分の1以上で、それに要する通勤時間も入れるともっと長い。だからこそ、楽しい職場がよい。小難しいルールに溢れる中で、プリンシプル=原理原則に立ち返ることが大切だと思ったし、オープンでフラットって分かりやすいようで分かりにくいけど、つまりはスマコンだなと。
私ももうベテランの域に入っている。組織全体を良くしようとは思わないけど、自分の身近な方が楽しく働けるように頑張りたい。巻末で紹介されていた本も読んでみたい。そして、管理職には強くお勧めしたい一冊です^_^ -
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この広い世界で1人の人が亡くなっても、覚えてくれている人は家族や知人だけではない、人はその人の名前を知らなくとも、その人との出来事は覚えている、そう思わせてくれた一冊。
この小説は、当時では「ブラック企業」という言葉が今までほど浸透していなかった時代を背景とし、3人の新卒入社のサラリーマンが上司から不当に罵詈雑言され、上司の奴隷になっていることから始まる。それはもはや、人間としての扱いを受けておらず、想像するだけで酷なものである。
章が変わるごとにメインとなる人物が変わり、人が人を紡いでいく。
社会という名の中にある、本来の人間の感情、優しさ、そして情を強く感じさせる一冊だった。 -
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ネタバレブラック企業に就職した大友、夏野、村沢の3人、束の間の休息で駆け込んだ居酒屋の店員のしんじさん、夏野が学生の時にやっていた六畳間のピアノマンを応援していた女子高校生、夏野のお父さん、夏野を助けられなかった警官の脇見さんらが、8年を経てまた関わりあう。その中心にビリージョエルのピアノマンがある。関わりあっていることに気づいてなかった人たちと、最後の最後に気づいたしんじさんがかけたピアノマン、、、。この場面が胸に響いた。お父さんが夏野にやさしい人になれと育てたことを悔やむ場面は辛い。
逃げられなかった君へ、という元のタイトルの方が内容を示してたけど、8年を経て今も聞かれている六畳間のピアノマンがタイトルとしてはエモいな。 -
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安藤作品の企業モノ?は読み易く、好きな作家の1人です
本編も際立ったキャラクターの主人公が登場しその変遷がたくさんの仲間との就活を通じて描かれています
内容も重くなりすぎないのが安藤作品の特徴で、とてもコミカルで軽やかに読み進められます
物語の最後の方で、
「人生は選択の連続で、勝つことも負けることもない。ただ心の声に耳を澄ませ、選び続ける」
と書かれています
たいした人間ではない私も人生の節目では同じようなことを思って選択決断してきました
その選択決断に正否はなく、選んだ道を精一杯進んでいくだけと日々過ごしています
人生の色々なタイミングでヒントをくれる作品だと思います -
Posted by ブクログ
最後にポロリと涙が頬をつたいます。
ピアノマンは周りをとりまく人たちの生き方に大きな影響を与えていて、いまもみんなの心の中で生きているんだなと。
自分自身、かつて毎日のように日付が変わる頃まで働いていた時期があります。
当時は色々な感情をグッと我慢しながら、逃げたら負けだと思い仕事に向き合っていました。
いま、同じような過酷な状況に出くわしたとしても、わたしは逃げるという選択肢を選ぶこともできます。
様々な経験を重ねるにつれ、逃げることが悪いことではないと思えるようになったからです。
大人になる・成長するということは、嫌なことや苦しいことをうまく避ける術を身につけることも含まれるものだと信じています。