ずっと前から「読みたい」に入れていたが、ようやく中古本屋で見つけて購入。
ものづくりの面白さとそれに携わる人々が描かれていて、とても面白く読んだ。
営業・生産管理・工場のぶつかり合いからスタートするが、かつて地方工場で勤務した時のことを思い出した。
増産や短納期になれば管理部門とて他人事ではなく、
...続きを読む人の手当てや稼働時間延長の労組との折衝、場合によっては間接部門からの応援など色んなことが降りかかってくる。
自分たちが携わったものが店頭に並んだのを見た時の誇らしい気持ちは、よって管理部門の人間でも変わりはない。
お荷物扱いされていたデクノ、ずっと昔から動き続けお役御免間近の一号機。工場で印刷機が動いている場面を読むだけでジンとしてきて、つくづくメーカー育ちを実感する。
営業の浦本、工場で印刷機を動かす野末 DTPオペレーターの福原。この三人の視点から話は進む。
青臭く理想を語る浦本は、現場一筋の野末が苦手とする気持ちもよく分かるが、差し入れを持ってきたり作業服を着て手伝いに来たり、メーカーの営業はこうでなくっちゃねというところもあり。
営業部や工場で周りを固める面々も多士済々。
中でも手堅い仕事ぶりの仲井戸、かつては敏腕営業として鳴らした毛利部長、職人気質丸出しのジロさんやキュウさんなど、「いたよね、こういう人たち」という人ばかり。
紙の本が読書人口の減少と電子化という二つの逆風に直面している中で、印刷機の稼働率向上に取り組む印刷会社の面々に、通常業務の他にゲラやプルーフを読んで販促までする書店員の姿に好感。
彼らの働きぶりを通して、何のために仕事をするのかという問いも掘り下げられる。
この歳になっても答が見つけられず、もはやお金のために働いているようなところもあるのだが、仲井戸が言う『目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせること』の難しさと自分の仕事ぶりを照らし合わせると、確かにお金のためだけで人に嫌なことを言ったり頭を下げたりが多い仕事をしているわけでもないなと思うところはあり。
エピローグの家族見学ツアーの場面はなんだか自分の家族のことのようでもうウルウル。野末の家族も壊れなくて良かったよ。
本の最後にSTAFFとして記され並んだ役割とお名前に粛然とした。