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本の奥付に載っている会社名の後ろには、悩みながらも自分の仕事に誇りを持ち、本を造る「人」たちがいる。豊澄印刷の営業・浦本も、日々トラブルに見舞われながら「印刷会社はメーカーだ」という矜持を持ち、本造りに携わる一人。本を愛する人たちの熱い支持を集めた物語が、特別掌編『本は必需品』を加え、待望の文庫化!
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Posted by ブクログ
昔から読書好きだけど、本がどうやってできるかを考えたことがなかったことに頭を殴られた。 本が本としてできあがるまでに、これほどの人や職人さんの技術がかかわっているとは。 お仕事小説かつ、本への賛歌でした。 電子書籍の黎明期&印刷業が斜陽という世相もふまえつつ、本作りに誇りをもっていた製本業界のリアル...続きを読む。 当初は紙の本は駆逐されないだろう見通しも、コロナ禍と断捨離思考で電子化はここ数年で一気に躍進した。 紙の本はなくならない、でも仕事としては淘汰されていくのを止められない悲しさ。 それでも誰かのための一冊が今日も生まれていく。 本当に読んで良かった本でした。
紙の書籍派である人間として、この本を買ってからしばらく読まずに積んでいることを後悔した。奥付に出版社だけではなく印刷会社も記載されていることは知っていたが、その裏にどういう人たちがいるか考えたことがなかった。自分も仕事をするようになって1つのサービスの裏にたくさんの人がいることを知っているはずなのに...続きを読む。彼ら、彼女らがいなくては私のもとには本が届かない。当たり前のように本が読めることに感謝しつつ、これからも紙の書籍の購入を続けていきたい。
目の前のことに立ち向かい、一生懸命になる人達の生き方、気持ちの揺れが描かれていた。 なんのために働くのだろう。 なんのためにこれをするのだろう。 誰にでも当てはまる疑問を登場人物たちも抱えていた。 先が不安だからやめようという ……ではなく、 先が不安でも今を頑張ろう という気持ちの切り替え方、...続きを読む私もまねしたい。 そして、本を作る過程を学ぶこともできたのが良かった。
印刷会社から本、そして業界の内情や将来などを見据え、その中に仕事とは、家庭とは、という現実的な悩みも交え、大団円的に収束していく。 とてもよかった。本に携わっていくことに希望が湧いた気がします。
良い本でした。 機会があって、本を何度か出版しましたが、その裏側を改めて知れてよかったです。 事実を淡々と映すような文章でも伝わることはありますが、このような読み応えのある物語にしてくれたおかげでまた違う角度から理解できた気がします。
読みたいリストの中から手に取った作品。 印刷会社営業、印刷オペレーター、DTPオペレーター…様々な視点から描かれる印刷会社を舞台としたお仕事小説。 一冊の本を造るために、こんなにたくさんの工程があり、こんなにたくさんの人が関わっているなんて…! 本がどのように造られているのか、本の価格設定がどの...続きを読むようにされているのか、など分かっているようで分かっていなかったことを今作を読んで学べた。 思ったより手作業が多いことにも驚いた。 印刷会社を沈みかけの船に例え、いつかは沈むとしても現役でいる間は絶対に沈ませない、よりよい本を造りたい、と奮闘する登場人物たち。 最初は不穏な感じが漂っていたが、営業の浦本を中心に数々の困難を乗り越える度にチームワークが深まっていく展開がとても胸熱だった。 彼らの労働を通して読み手も自分に問いかけたくなるのではないか。 「なぜ働くのか」 「なんのために働くのか」と。 巻末に設けられている奥付。 私は奥付を読むのが好きで、自分の本も子どもの本もまず奥付から目を通す。 でも全部の項目に目を通しているわけではなかったので、これからは隅々まで目を通そうと思った。 私が日々読んでいる本にはたくさんの方の想い、苦労が詰まっているのだということを心に留めておきたい。 私は電子書籍よりも紙の本が好き。 本が増えすぎて困るという悩みはあるけれど、これからも紙の本を愛読していこうと思った。 とても素敵な作品だった。 ✎︎____________ 印刷会社は決められたものを刷って複製するだけではない。 物語に"本"という身体を授け、お似合いの服を着せて世に送り出すのだ。(p.11) 人の出会いに縁があるように、本と人との出会いもまた縁だ。 本と人は一対一で対峙する。 読者はたとえ「つまらなかった」と読み捨てた本からも、何かを受け取る。時には一冊の本が読者の心を突き動かし、人生を変えることもある。 本とはそういうものだ。 自分たちが造っているものは、そういう大切なものなのだ。(p.61) こだわりなんて、見方によってはばかばかしいものだ。だが、こだわりを捨てたら、俺たち職人は職人じゃなくなる。(p.69) お守りを信じる心こそが、お守りになると知ったわけよ。つまりそれがご利益ってわけだ(p.71) 仕事を超えて恩を感じたり、感謝を表したい時もある(p.180) 書店は本と人との出会いを繋ぐ場だ。作りこまれた本棚が、良い本を一冊でも多く売りたいという書店員の熱量を物語っている。(pp.185~186) たとえ他に何もできないとしても、これしかないと思える仕事に出会えたなら、なんと素晴らしいことだろう。(p.198) 大事にすれば、機械は応えてくれる。仕事仲間だよ(p.261) 厚み、重み、手触り。紙やインキの香り、ページをめくる音、表紙カバーのたわみ。五感の端々に伝わるもの全てが本なのだと思う。(p.294) 正しくなくても、後悔さえしていなければいいと思う(p.340) 豊澄印刷の文字の向こうに、全社員の名前が刻まれていると思う。奥付は本のエンドロールだから(p.356) 考えるべきは『どうなるか』ではなく『どうするか』だ(p.375) 誰かの役に立つこと、あるいは何かの役に立つことは、自分の幸福につながる。自分のために働いていいのだ。(p.414) 夢や希望を語るには、今日明日の実績が必要だ。(p.429) 理想や矜持があってこそ、目の前の仕事に向かう熱量も高くなる(p.470) この仕事をやっていてよかった。そう思える瞬間が日常の端々、所々にあればそれはきっと幸せなことだろう。(p.471)
印刷会社社員のお仕事小説 以下、公式のあらすじ ---------------------- 彼らは走り続ける。機械は動き続ける。電子化の波が押し寄せ、斜陽産業と言われようとも、この世に本がある限り。印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。「印刷会社はメーカーです」営業、工場作業員、DTPオペレー...続きを読むター、デザイナー、電子書籍製作チーム。構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付に載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。 ---------------------- 新卒採用の説明会で「印刷会社はメーカーです」という言葉を放った浦本学 営業のエース 仲井戸が「夢は目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせることです」と言った後の反発した想いも含みながらも、あながち的外れではない ただ、工場の野末には「お前はただの伝書鳩だ」と自分の仕事を否定される 映画なら制作に携わった人たちの名前がクレジットされるのに、 本の場合は、奥付に記載される情報は著者、出版社、印刷会社、発行年月日程度 しかし、その裏には様々な人が携わっている 作者が綴った文章が、編集者、装丁デザイナー、DTOオペレーター、印刷者、製本者など様々な人の手を経て「本」になる そして、その本を配本し、書店でお客の手元に届ける仕事もある 5章で構成される物語の中で、それぞれ「紙の本」制作に関するドラマが描かれる ・スロウスタート ・長篠の風 ・ペーパーバック・ライター ・サイバー・ドラッグ ・本の宝箱 ・文庫版特別掌編「本は必需品」 特定の月に間に合わせるように出版したい作者、出版直前に発覚した致命的な誤植 連絡がつかなくなった編集者、有名デザイナーのこだわりと無茶振り ヒットに恵まれない作家が増刷をかけて背水の陣の決意で挑んだ意欲作、意外な販売戦略 紙の本と電子書籍の違いの現状 締め切りのない、作家の想いが込められた作品紹介 斜陽産業であることが確定的な中で、それでも業界に立ち続ける意義とは? 理想と現実の差異 そんな中で自分できることとは何か? 私自身、本を読むのは好きだけど、その業界で仕事をしたいとは思わない 斜陽産業であるのも理由であるけれども、自分はそこまでの熱意も知識もないからかな なので、今も尚本を出版するために携わっている人たちには感謝している あと、自分の仕事への矜持に関してもあまりないかな 特に望みがあるわけでもなく、何も問題なく運用できていればいいという思いはある なので、どちらかというと仲井戸のようなスタンスだろうか しかし、自分の仕事が天職と呼べるような人は羨ましいとも思う 「夢で飯が食えるのか」という嘲り いや、でも、もし自分が野末と同じような立場だとしたら、似たような感情を覚えるかもしれない 特にメロンのくだりのあたり まぁ、その後のはしゃぎっぷりに関してはもっと上手く誤魔化すけどね あと、調子の良いことを言って厄介なトラブルを持ち込む営業に対する反応としては正当な理由があるようにも思える 仲井戸さんなら余計な部分を捌いて持ってくるという対比があるからこそ尚更そう思う 知識のない部分に関しては伝書鳩になるのは仕方がないけれども、だとしたら営業の意義とは?を突きつけるのも仕方がない 電子書籍に関する議論 少しずつでもシェアを拡大しているし、しばらくは下がる見込みはない 私も紙の本の方が好きだし、それを仕事にしている人たちにとっては正に死活問題なのだろうけど ただ「紙の本をなくしてはいけない」といっているだけではジリ貧でしょうね 紙の本のメリットをもっとアピールするか、紙の本でしかできない付加価値をつけるとか、もしくは電子書籍との共存する中で如何に延命措置を図るかという方向性でいくしかないでしょ それにしても、出版社の電子書籍に対する販売戦略って適切なのか疑問 作中の人気作家のモデルは東野圭吾を想像してしまうわけだけれども 似たような事を京極夏彦は実際にやっている 「ルー=ガルー2インクブス×スクブス」の発売のとき 単行本、ノベルス、文庫、電子書籍の同時発売というアレ 結局売上的にどうだったんですかね? 京極夏彦も言っているように、単行本が買えないから文庫を買うわけでもなく文庫派だから文庫を買うという層もいるわけで 電子書籍も含めて出版の戦略のセオリーが通じない客も増えていると思うんですがね ちなみに私は文庫派だし 好きな作家さんでも出版と同時に買うような熱心なファンでもないので、出版業界がマーケティングで重要視している顧客ではない 電子書籍も未だ本格的には手を出していない 何かのきっかけに端末を手に入れたらどうなるかわからない マンガは電子書籍に移行してもいいかと少し思っている こんな層も結構いると思うし、こんな熱心ではないファン層が市場にはゴロゴロいるはずなのに、そっち向けの販売戦略ではないんだよなぁ 作者の印税が8%だとか10%が適切かどうかはわからない 出版社、取次、書店の分配もそう それぞれのリスクとコストの持ち分に関係しているようにも思える 電子書籍なら出版までのイニシャルコストはかかるものの、システムが既に出来上がっている環境であればロングテールの戦略を取れるし、もっと売り方としてできることが増えると思う 個人的にひっかかっている電子書籍のデメリットとして 電子書籍は閲覧権限であって、所有権ではないのがちょっとなぁ いつ出版差し止めになって閲覧でいなくなってもおかしくないし、一度購入したものでも、再ダウンロードできなくなるケースも聞いたことあるし メリットhは十分に理解しているけれども、やはり当面は紙の本を買うかな 最後の章は売上は見込めないけど作家の思い入れの強い本がテーマ 納期が決まっていないのでいくらでもこだわる事ができるし、デザインも二転三転ともなると 印刷会社として赤字は必至なので厄介な案件ですよね この仕事が後に繋がるという保証でもあればいいけど、口約束ではねぇ…… そして、文庫おまけの「本は必需品」 短期的にはそうではないかもしれないけど、長期的には本は必需品ですよね それにしても、文章を綴るのは作者だけど、それを「本」の形にして出版するのは名前が表には出ない人達あってこそ それがこの物語ではよくわかる 正にこの本のエンドロールのクレジットを見るに、相当な関係者に取材したんだろうなぁと思う
一冊の本が出来上がるまでの裏側について描かれた作品。 『本は必需品。不急ではあるけど不要ではない。』 『(中略あり)自分の仕事を天職と言い切れる人はほんのひと握りで、多くの人は今の仕事ではない別の仕事、今の人生とは違う別の人生にかすかな憧れを残し、ぼんやりと引きずって生きているのかもしれない。』...続きを読む この作品の最後にあったエンドロール、どの作品にも載せたらいいのに、いや、載せるべきだと感じた作品だった。
アツい仕事人たちの、心温まるストーリー。 私の行き先にはいつも本がいてくれる。その本に携わる人はどのくらいいるのか? 知っているようで知らなかった工程は、やはり人間同士の思いのぶつけ合いだ。 この作者さんのお仕事小説、好きだな。 全てのページを丁寧にめくっていくと、最後の粋なはからいによりグッとき...続きを読むますね。
「読んでよかった」と思える作品でした。 こんなにも関わる人がいて、紙、装丁、印刷、製本…そして価格決定され、私たちの手に渡る。技術やこだわり、思いなど…今後、書店で本を手に取るところから変わる作品です。 どうか書籍が無くなりませんようにと、思いを馳せながら、今後も書店に通い続けたいと思います。
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