安藤祐介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
宝くじ。誰もが一度は、「当選したらどうしようか」と考えたことがあるのではないでしょうか。
ジャンボ宝くじに当選したわくわく食品の経理課勤務の修一をめぐるお話です。
当たった時に考えていた「仕事はつづけて生活水準を落とさず、温存する」という当初の目的から外れ、ひとつの綻びがまた一つの綻びを生み……と、物語としては飽きさせない展開が待ち受けています。
実際、ネット炎上なんかしたらもうその辺で刺されるくらいの危険があるんじゃないかと思ったりするのですが、命を取られるほどの大事件が起こらないのが、この本の良いところ。
海外と違って、富くじ当選者の氏名が公開されないというのが日本の救いだなあ、と感じました。アメリカなんかは実名公表されるんでしたっけ? もしアメリカ在住で当選したとしたら、私ならそのお金で人をやとって影武者の住所を公表しますけど……なんて(笑)
作中では、「持ってる人」ではなく「持っちゃった人」という言葉が出てきますが、この言葉には以前、とある方から聞いた言葉を思い出しました。それは「人間、自分が扱えるだけの金額を持つことが妥当である」というもの。
自分が扱える金額以上の金額を持ってしまうと、持て余したり、誰かに付け入られたり、トラブルに巻き込まれるもとなんだなあ、というお手本のような物語です。
金持ち初心者、という言葉が主人公にはしっくりくる気がします。
実際、私を含む大勢の方が当選者になれば同じようなことをしでかしてしまうのだろうなあ、ということも容易に想像できます。
作中に「諭吉のリトマス試験紙」という言葉が出てきますが、まさにお金が人間関係を左右してしまうあたり、お金って怖いものだなあ、としみじみ考えさせられました。
持っていなければ持っていないことに困るわけですが、持っている(なおかつ、そのことを周囲が知っている)ということは、それ以上に大変なのだなあ、などと思いつつ。世の中の大金持ちの方々は、それをどうにか上手くやっているんですよね。
莫大な資産を築き上げたということよりも、ある意味ではそちらの努力や才能の方が、私は凄いなあと思います。
しかし、そうは言っても一度は当選してみたいなと思うのが人間の常。欲望は尽きないということなのでしょうか。
ちなみに私だったら、今のままの生活を続けるとして何年生きられるかを(冒頭の主人公のように)やっぱり一番に、細密に計算するんだろうなと思います。
大切なのは豪華で派手な生活ではなく、老後の不安の少ない平穏無事な、そして健康な暮らし。
だとすれば、毎年費用を気にせず定期健診をすることや、健康的あるいは人道的に生産された栄養価の高い食品を買えることのほうが確実な幸せが手に入るような気がします。
とはいえ、実際当選してみたら最新家電とか本代とかに消えてしまうんだろうなあ、とも思いました(笑)
現時点での結論は、「当たったらどうしようか、と考えている時点が一番楽しいものかもしれない」です。
買い物と一緒で、買ってしまった後よりも「どれにしようか」と悩んでいる最中の方が楽しかったりするのです。
宝くじも恐らく一緒です。多分。 -
Posted by ブクログ
ネタバレその夜、悟は来来軒で時給九百円の労働に精を出しながら思った。課せられた”ノルマ”を補填するために始めたアルバイト。お金のためだけに始めた生まれて初めての労働に、お金ではない何かを感じるようになったのはいつ頃からだろうか。注文を取り、水を出し、レジを打ち、食器を洗っているうちに時間があっという間に過ぎてゆく。仕事に没頭していると、全てを忘れることができた。レジ打ちを手早くできた時、たまった食器をタイミングよく見計らって洗えた時、入口で逡巡している客さんに声を掛けてうまく店内へ案内できた時。そんなさあいなことひとつひとつに達成感を覚えるようになった。「おつかれさまでした」の挨拶のあとで身体を包む心地よい疲れ、シャツに染み付いた汗や油の臭い。いつしか、一時間九百円の仕事に没頭しているこの時間が、とても好きになっていた。
これは自分にとって必要な日々だったのだ。そんなふうに受け入れることができた。 -
Posted by ブクログ
<今の気持ちのまま他へ行っても、あなたはまた同じ過ちを繰り返す>
そしてもうひとつ。
<あなたは変われる>
学生の頃は毎朝同じようなスーツを着て同じ方向へ歩いてゆく人々の流れを見て、自分もこんな風に普通の勤め人になるのだろうかと味気なく感じたものだ。しかしそれはとんでもない思い上がりだったと気付く。普通に勤めるということは大変なことだ。
奇妙な縁の力によって集い、同じ崖っぷちの境遇を分かち合う営業零課の人々。僕はこの先もこの営業零課で仕事を続けたい。だからこそ、この仲間のために少しでも役に立ちたい、ベストを尽くして頑張りたいと思える。
「そうか・・・。その節は非礼なことを言って申し訳なかった。最近、部下に謝ってばかりだな」黒田ばバツが悪そうに顔をしかめて苦笑した。
営業零課に 異動してから怒濤のように過ぎた1年の中で、父の言った<一隅を照らす者は 国の宝なり>という言葉の意味が自分なりに少し分かった気がする。それは身の丈をわきまえつつも目の前にある物事にベストを尽くせということなのだと僕は思う。