青木創のレビュー一覧
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原題は"The Dry"。なので邦題も『渇き』だけの方が良かった。完結なタイトルは好みなのだ。
オーストラリア発の邦訳作品は滅多に手に入らないので、南半球ミステリとはかなり興味深い。ここでの『渇き』とは、ずばり乾燥のことである。オーストラリアでは雨に恵まれず長期的な干魃に身まれた挙句、大規模な山火事に発展することもあると言う。雨と湿度の多い日本に住んでいるぼくらには想像すべくもない水不足事情の下で本書はスタートする。
幼い子供まで含めた農場の一家惨殺という衝撃的な開幕の地に、かつてこの土地を追いやられた主人公が帰郷する。捜査官として経歴を積んだ主人公の心中で、かつ -
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ネタバレ「カルテル」を先に読んだけど、こちらの方が先に執筆されていたらしい。・・・なるほど。
妻子をテロで失った男性の復讐劇、と言えば凡庸に聞こえるがそこはドン・ウィンズロウ、あまたある同様の作品レベルを遥かに超えている。
傭兵部隊を組織しテロリストたちと戦う、という設定はアリステア・マクレーン(よりフレデリック・フォーサイス?)、ウェットな主人公の心情描写はジャック・ヒギンズを思わせる部分もある。
しかし、歯切れよく展開される物語はまさしくウィンズロウ節炸裂。特にアクションシーン(冒頭の飛行機テロの描写の恐ろしさ!)はスローを交えたような演出が目に浮かぶようにリアルだし、何より現代の近接戦闘戦のリア -
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ドン・ウィンズロウの作品は久しぶりだ。ブーン・ダニエルズのシリーズとベンとチョンとOのトリオのシリーズ、トレヴェニアンの『シブミ』続編『サトリ』と、あちこちのヒーロー、ヒロインを追いかけたかと思うと、どうやらそこに落ち着く様子もなく、『フランキー・マシーンの冬』以来となる単発作品の本書を、ここで『失踪』とともに同時二作発売という鮮度で、しかも母国USでは未発表のまま、ドイツに続いて日本での翻訳先行で出版という奇抜さで、この作家の奇行とも取れる創作行動は世界を驚かせている。
そして単発ながら、どちらもこれまでにない類いの内容を伴い、ウィンズロウという作家の彷徨の途上にあるらしい彼なりの才気 -
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警察官フィンが担当中の猟奇殺人と酷似の殺人事件が彼の故郷で起き、18年ぶりに帰郷し捜査をおこなう。
被害者はフィンの幼なじみだったため、その他の古くからの知り合い数人と久々に再会して、つらかった少年時代や苦い過去を思い出す羽目になるが、少しずつ事件の真相に近づき、最後は衝撃の結末が。。。
20年近くたっても手つかずの自然、荒涼とした大地と海。自然の描写が美しく、読んでいる間もどこからともなく風や海の音が聞こえて来そうだ。
しかしその閉鎖された田舎での人間関係はかなり複雑だ。自然のように美しいとは言い難く、人の心の機微を読み取れず、フィンの捜査は難航し、どんどん深みにはまっていくようにも思える。 -
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著者は1971年生まれだから私より2歳下だ。最初物理学を学んだようだが、複雑系の系譜を継ぐ「スモールワールド」だかいう学説を提唱し、ネットワーク理論に基づいた社会学者といった立場にあるようだ。
この本は一般読者向けに非常に易しく書かれており、何も難しい話ではないが、新たな視角をもたらしてくれる、実に面白い読み物だった。
「まえがき」で「アメリカ人のおよそ90%は自分が平均より車の運転が上手いとおもっている」という統計を明らかにする。日本人も、おそらく男性では似たような結果になるのではないだろうか。
この例のような自己に関する「錯覚された優秀性」、そして「常識」全般が、人々の認識・判断を絶えず誤 -
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ネタバレニューヨークにおける中国、アイリッシュマフィア抗争版ドン・ウィンズロウ的ストーリー。
父はカトリックのアイルランド系アメリカ人、母はプロテスタントのイギリス人、アイルランドで生まれたが、半ば自暴自棄の流れで香港警察に身を置き、そこでの破滅一歩手前のやらかしを挽回すべく、アメリカの地で潜入捜査に身を賭す主人公カラム・バークの緊迫感尽きぬ日々。
ニューヨーク進出を狙う香港マフィア、チャイナタウンを牛耳る堂(とん)、ヘルズ・キッチンでの勢力を広げようとするアイリッシュマフィア。
NYPD(ニューヨーク市警察)とDEA(アメリカ麻薬取締局)が手を組み、取り組む界隈の麻薬組織一網打尽計画の行く末は。。
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面白かった
謎解きはビリヤニとともに
という楽しそうな題名に惹かれて読んだ
インド小説は初めてみた
最初は
名前をちゃんと覚えられるだろうか
文化の違いから、物語に入っていけないなんてこともあるんじゃないだろうか
とか思ってたけれど、なんてことはなかった
後半は特にあっという間だった
最後の、真犯人がわかるところも、結構わくわくした
賛否両論あるかもだけど、終わり方も結構好き
ひとつ。
読み終わった後に気付いた疑問点
思ったよりも、内容は全然フランクじゃなかったしどっちかっていうとハードボイルド系(いや、そうではない?かも?けれど、コメディよりかはシリアスよりかなと)なので
謎解きはビリヤ -
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▼安定のジャック・リーチャー・シリーズ。
副大統領に、暗殺を匂わす手紙が来て、リーチャーが依頼されて「その警護係」をやりながら、最後には犯人をやっつける。以上。
▼きっかけは、
・副大統領を警護するシークレット・サービスのとある女性から依頼。彼女はリーチャーの亡くなった兄の、元彼女だった。
そして、その彼女とリーチャーが結局恋愛関係になる。んだけど、彼女が殺されてしまう。というわけで、副大統領を守る、という目的が「彼女の仇を討つ」に変換されて最後の戦い。
▼いつもどおり、全体の七割地点まで、犯人と動機が明確に分からない。分かったらあとは段取り(笑)。今回みたいに国家権力そのものと共闘す -
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偶然の科学
著:ダンカン・ワッツ
訳:青木 創
ハヤカワ文庫 NF400
ネットワーク科学の世界的権威が放つ、複雑系社会学の決定版とある
題は「偶然の科学」であるが、意味するところは、違う
原題 Everything is Obvious. "Once you know the Answer"
「すべては明白だ、いったん、答えがわかれば」 でいいでしょうか
偶然とは、いきあたりばったりで、対応をしてしまう人間の行動を科学しようということであって、確率論に支配される偶然を解明するための科学ではない。あくまでも、社会科学的、社会学的な偶然を扱うことが目的である。
社会 -
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(上下巻併せた感想)
▼何作目かの、ジャック・リーチャー・シリーズ。アメリカ退役軍人のジャック・リーチャー。軍人としてのキャリアをずっと憲兵隊として過ごした、つまり軍隊内の警察であり、捜査官だった。叩き上げのエリート(矛盾?)だったが若くして少佐で思うところあって退官、その後は年金暮らしだが、なんとホームレス。着のみ着たまま、所有財産は着てるものと歯ブラシとパスポートとキャッシュカードだけ。ヒッチハイクか電車バスで安宿から安宿へ、アメリカを放浪している…つまり、たれも彼に電話できないし、行動を捕捉できない。格闘と記憶力と銃器の扱いと洞察力で米軍随一と謳われたリーチャーの行先に、毎回1話完結で -
Posted by ブクログ
ビリヤニ〜とタイトルにあり衝動買いしたが原題にビリヤニはなかったし、ビリヤニは本作品では重要なお料理でもなかった。でも日本ではザ・ウェイターというわけにはいかないだろうから仕方ないか。
コルカタとロンドンの暮らしが窺い知れたのが1番の収穫、特にロンドンで暮らすインド出身の方々の暮らしぶりやマインドの描写が役立った。
主人公や婚約者の考え方は一貫してるようなしてないような。上の世代親の世代及び富裕層なら若い世代にも見られる岩盤固定観念だからこその賄賂や不正みてみぬふり、これは日本も同じで日本の方がひどいかな。キャラとして一貫してしっかり立ち上がっているのはアンジョリ。インド料理は読むだけで本で