青木創のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白かった。
もちろん訳者の方の力もあるだろうが、とても読みやすい。
著者ダンカン・ワッツが説く「スモールワールド」という概念は知っている人も多いと思うが(世界中の人と人の間には平均6人存在する)、この本はそれにも言及しつつ、もっと広く社会学を語っている。
物事には明確な理由がなく、複雑な要因が絡まって結果がある。
常識の脆さ、因果の複雑さ、予測の困難さ、それを一つ一つ説いていく。
自分が認識している世界に対し懐疑的な視点を持ちたいならこの本を読むべきだ。
しかしながら人が常識に頼ったり予測をしたり因果を単純に理解したがるのは、自己防衛でありリスクヘッジだ。
それらが不可能になれば、社会は人にとってもっと耐え難いものになるだろう。
私は常日頃常識を鵜呑みにしないことを心掛けているが、それでも多くの常識に振り回されているし、様々な「当たり前」を何の疑問もなく受け入れている。
そして比較的直感を信じるタイプである。
中でも言及されているが、「悪い計画でも無策よりはまし」だし、何か事があればそれを理解することで自分を落ち着かせる。
これらは生きる知恵なのだ。
ダンカン・ワッツは予測困難な偶然の世界の中で、どうすればよりよく未来を予測ができるのかも説く。
私には結局の所、情報が大切なんだと説いているように見える。
広い世界を知り、統計を元にし、理解すること。盲目にならず、前提を排除し、想像の介入を許さないこと。
本序盤では、ダン・アリエリーが「予想通りに不合理」という著書で述べられた実験のいくかがいくつか見受けられ、その焼き直しなのかな? と正直思った。
しかしながらダンカン・ワッツはただ広範囲に論文を読み、多くの知識があるだけのようだ。読みすすめると参照している研究が他にも多数出てくる。
巻末の脚注も読み応えがあり、仕事が丁寧、あるいは厳密に事実もしくは根拠を提示し論を進めている印象。
不用意な断言はしていないところも、慎重な印象を与える。
バックグランドがかなりユニーク。理論応用力学の博士号を持っており、その後海軍、社会学者。
優秀なんだろうな。 -
Posted by ブクログ
リー・チャイルド『葬られた勲章(下)』講談社文庫。
ジャック・リーチャー・シリーズの第13作。2009年の作品。
さすがに11年前の作品だと電子モバイル機器などの描写に古さを感じる。また、この時代だからこそ重大な秘密情報も今となれば、さほどの情報でもないだろう。出来ればリアルタイムで読んで、面白さをさらに味わいたかった。
自ら火中に飛び込むかの如く巨大な陰謀の渦に巻き込まれていくジャック・リーチャー。深夜のニューヨーク地下鉄でリーチャーが何もしなければ、これだけの死者は出なかったのではとも思う。
自殺した国防総省の事務員スーザン・マークが盗み出した秘密情報は、やはり下院議員のジョン・サンソムの陸軍時代に関連していた。しかも、その情報はサンソムの議員生命を脅かし、アメリカ政府の存亡にも関わる重大なものだった……
ついに正体を現したライラ・ホスとスヴェトラーナ・ホスとリーチャーの息詰まる闘いの行方は……
本体価格1,000円
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Posted by ブクログ
初めてのオーストラリア発ミステリー。
日本で生まれ育った者としてはなかなか考えにくいのだが、オーストラリアでは干魃は珍しくなく、十年から二十年に一度は大規模な干魃が起こりそんなときに起こる山火事は大惨事になるらしい。
日本のように毎年どこかで豪雨や台風の災害が起こる国とは真逆だが、これもまた自然が起こす災害だ。
原題は「THE DRY」。だが邦題ではそこに「偽り」が加わる。
その「偽り」とはどんな「偽り」なのか、それは読んでいくうちに分かっていく。
主人公は普段はメルボルンで仕事をしているアーロン・フォーク。主に経済犯罪を担当する連邦警察官だ。
その彼が生まれ育ったキエワラという田舎町を二十年ぶりに訪れる。家族を道連れに自殺した友人ルークの葬儀のためだ。
当初フォークは故郷に戻るつもりはなかった。なぜなら二十年前、女友達のエリーが溺死した事件で犯人扱いされ父と共に町を追われたからだ。
だがルークの父親からの意味深な手紙に呼び出され故郷に戻り、ルークの両親から事件の真相を調べてほしいと頼まれることになる。
ルークの家族を巻き込んだ無理心中の真相と、二十年前に起きたエリーの溺死事件の真相。
フォークは期せずして二つの真相に斬り込むことになる。
もちろんメルボルンではない町ではルークの連邦警察官としての権限はなく、個人の資格で調査をすることになるのだが、頼もしいコンビが出来る。それがキエワラに赴任してきたばかりのレイコー巡査部長。このレイコーは優秀で熱意もあり、なかなか良い警察官だ。
大地だけではない、モラルも町としての機能も何もかもが枯死しかかっているようなキエワラという小さな町の人間模様は日本の小説にも出てきそうだ。
キエワラで生まれ育った住民は互いをオムツをしていた頃からどころか親の世代、その上の世代から知っていて濃密な関係を築いている。
だがキエワラに移ってきた住民に対しては、例え十年以上前からキエワラに住んでいても新参者として一線を引いていて、それが両者の間の見えない溝となっている。
過去の因縁によりフォークは町の人々に散々な嫌がらせをされる。この辺り、横溝正史先生の「八ツ墓村」のようでハラハラする。
特にエリーの父と従兄は強烈だ。
中傷ビラを撒かれたり店で買い物を出来ないようにしたり、極めつけは車を糞だらけにされたり(子供か!)。
私だったらここまでされたら心を病んで逃げ出してしまいそうだが、フォークは逃げない。
一度逃げ出した過去と向き合い事件の真相を突き止めようとする。
読み進めていくに連れてエリーの事件に関しては嫌な予感しかしないし、ルーク一家の事件にしても様々な側面が想像出来てくる。
フォーク自身、エリーの事件に関してはアリバイがなく偽のアリバイをルークに拵えてもらうという嘘を吐いている。
だがそれは同時にルークにもアリバイがないということでもある。
『隠し事があるのはみんな同じみたいね、アーロン』
「偽り」を抱えているのは誰なのか、どんな「偽り」なのか、二つの事件にどう繋がるのか。
最後の真犯人を追い詰めるシーンでの真犯人の足掻きの様子はまさに『渇き』きった大地ならでは。こういう演出は日本の小説では想像出来ない。
あれだけの一方的で酷い悪意を向けてきた町の人々がその後フォークにどう対応したのかを見て溜飲を下げたい気持ちになるのだが、そこまで書くのは無粋というものだろうか。
読み終えて印象に残ったのはいろんな家族や生き方が出てくること。
例えばフォークはキエワラでの経験の所為なのか女性関係が長続きせずいまだ独身だが、相棒のレイコーは良好な関係の妻がいてもうすぐ子供が生まれる。
女友達の一人グレッツェンはシングルマザーだし、エリーの父親は母親に愛想を尽かされ出ていかれ、町の医師はゲイであることを隠している。
一見良好そうに見える家族関係がそうでないことはよくあることだが、その逆もある。
そんな雑多な人々が詰め込まれ互いに互いを見定め合って自分の立ち位置を確認する、そんな小さな町の今後が不安になるが、それを外の者がどうこういうのはそれこそ大きなお世話なのだろう。
この作品は作者のデビュー作らしいが続編も出ているらしい。フォークがこの事件を乗り越えてどのような再出発を果たしているのか、機会があれば読んでみたい。 -
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重かった 表紙の絵の雰囲気からは程遠い どろどろ展開
大学生時代のフィンの行状があまりにもひどい 自分のイケメンに胡坐をかいてるクズ男 クズ過ぎる
女は産んだら100%我が子だけど、男はDNA検査せんとわからんもんね ざまーw でも、このクズ男フィン、転んでもただでは起きない ラストでそうきたか…
乱暴者アンガスが障碍者カルムにまさかのリアルエンジェル対応 それも20年間毎週? いやいや、そんなことしてたらとっくに村中の噂になってるやろ おかしいって モヤモヤ
伝統食文化を外野が抗議する 抗議団体の方々にお聞きしたい ”おめーらは霞でも食って生きてるのか?”
当初はイギリスでは版元が見つからず作者在中のフランスで出版されベストセラーになりヨーロッパ中で出版されてからイギリスで出版される アメリカでは「ゴーンガール」を抑えてバリー賞(長編賞)受賞 私は今作より「ゴーン~」の方がインパクト強かったけどな まぁ、次作「忘れゆく〜」も読むけどさ(たぶん) -
Posted by ブクログ
まず邦題が秀逸だと思った。
旱魃によってより一層疲弊してしまった田舎町・キエワラ。
その町に20年振りに帰郷するアーロン・フォーク。
「ルークは嘘をついた。きみも嘘をついた。」という手紙と共に。
ルークの事件の真相、そして20年前フォークが町を出なければいけなくなったエリーの死の真相。
過去と現在を行き来しつつ話は進む。
ミスリードに嵌りなかなか真犯人がわからなかった。
そして何回か登場する「火災の危険度→極度に高い」という表現。
旱魃の水分がなく暑さだけが残るカラカラした風景、そして疲弊した町の人々の心中。
読んでいてなんだかこちらまで疲れて来た。
いつかこの町に纏まった雨が降れば良いのにと思う。 -
Posted by ブクログ
ここはどこだ、なぜ自分は家ではなくここにいる?重度の認知症のケアをする施設に入ったトーモッド。孤独な彼のもとを元刑事フィンが訪れる。フィンはトーモッドの娘の元恋人だった。その頃、泥炭地からは身元不明の遺体が発見されていた。被害者はトーモッドの血縁関係者だという。フィンは事件を調べ始めるが、明らかになったのは、家族も知らないトーモッドの秘密だった…忘れゆく男の記憶と想いをめぐるミステリ。
前作「さよなら、ブラックハウス」も印象に残る作品だったが、今作はそれ以上かもしれない。スコットランドのルイス島の風景描写が今回も良い。そして実に切ない結末。 -
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いやもうすさまじい。「ストリートキッズ」のリリカルな世界から遠く離れて、これは「犬の力」をしのぐ血と暴力にまみれた物語だ。
元デルタフォース隊員の主人公デイブは、飛行機事故で妻子を失う。それはイスラム過激派によるテロだったのだが、政府により隠蔽され「事故」とされる。そのことを知ったデイブは「世界最強の傭兵チーム」とともに、自らの手で報復する決意をする。
と、こういう紹介を読んで、これって政治的な陰謀がどうとか利権がどうとか、そういう話なのか(あんまり好きじゃない)とちょっと思っていたのだけど、いやそっち方面にはまったく行かない。ほぼ全篇、デイブと仲間たちが、テロリストを追い標的を追い詰めて行く過程が、ウィンズロウの圧倒的筆力で、これでもかとばかりに真に迫って描かれる。
いや実に「迫真」とはこういうことかと何遍も思った。冒頭、ミサイルに撃墜され墜落する飛行機内の様子なんかリアルすぎて、そうかエンジンが爆発したら乗客はこんな風に死ぬのか、ああ当分飛行機乗れないよ~と震え上がった。ミリタリー関係はとんと疎いので、微に入り細をうがって描写される武器のスペックがどれほどのものなのかほとんどわからないが、「本物」の持つパワーが放射されていてねじ伏せられてしまう。
短くたたみかけていくような展開で、冗長さは皆無。ダイハードなデイブの内心の苦悩や、傭兵チームのメンバーそれぞれの背景なども、くどくど語られないのに、きっちり伝わってくる。やはりウィンズロウは当代きっての書き手の一人だ。
まったくすごい。すごいのだが…、「犬の力」のように手放しで「いやあおもしろかったー」とは言えない読後感が残る。「犬の力」では、闘う相手は麻薬マフィア=絶対悪であった。ここではイスラム過激派。イスラム=敵、という図式にそう簡単に乗る気にはなれない。対イスラムという形は「わかりやすい」。エンターテインメント小説では大事なことなんだろうとは思うが、そこにどうしても引っかかりを感じてしまうのだ。
もちろん、ウィンズロウなのだからして、そんな安っぽい単純な描き方はしていない。テロリストたちは信仰を捨てた者であり、テロ行為はなによりも私利私欲を満たすビジネスであると明示されている。傭兵チームの一人アミールはパレスチナ人のムスリムで、彼がここにいる理由も説得力を持って語られる(このアミールがデイブよりも同情を誘うかも)。アメリカ政府は、都合が悪ければ、国のために闘った兵士たちを躊躇なく泥沼に追い落とすようなことをする存在として描かれる。
ここでは、テロの首謀者を殲滅することは、デイブ個人の復讐だ。当然ながら、復讐を成し遂げても妻子が戻るわけではない。それがわかっていてなお、死地へと駆り立てられていくデイブの姿を、作者は時に突き放したように描く。死や暴力や危険は、一面ひどく魅力的で、人を惹きつけてやまないが、それはどこにも行き着かない。アメリカ人の好きなヒーローも、今やひどく孤独なものだなあと思う。