著者は1971年生まれだから私より2歳下だ。最初物理学を学んだようだが、複雑系の系譜を継ぐ「スモールワールド」だかいう学説を提唱し、ネットワーク理論に基づいた社会学者といった立場にあるようだ。
この本は一般読者向けに非常に易しく書かれており、何も難しい話ではないが、新たな視角をもたらしてくれる、実に
...続きを読む面白い読み物だった。
「まえがき」で「アメリカ人のおよそ90%は自分が平均より車の運転が上手いとおもっている」という統計を明らかにする。日本人も、おそらく男性では似たような結果になるのではないだろうか。
この例のような自己に関する「錯覚された優秀性」、そして「常識」全般が、人々の認識・判断を絶えず誤らせている。「思い込み」の間違いを、著者ワッツは執拗に指摘してくる。こちらも身に覚えのあることが多く、反省を迫られる。
複雑系で有名な「バタフライ効果」の話、人々のあいだの相互影響作用、インターネットを活用した大規模なリサーチと「実験」。結局だれもただしく結果を「推測」することはできないこと。偶然の条件が重なってできごとが起こり、そのもろもろの影響からさかのぼって、もっぱら論議されること。
かなり刺激的な内容で、読んでいてとても楽しい。
著者はYahooリサーチに携わっていたので、マーケティングの話も後半出てくる。
複雑系に基づくネットワーク社会学、もう少し本格的な本も読んでみたいと思った。