マイケル・サンデルのレビュー一覧

  • これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学

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    誰かの正義は誰かの悪。
    「どっちも正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなものだよ」
    みたいなドラえもんの台詞、あったなあ。

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    2026年03月17日
  • 実力も運のうち 能力主義は正義か?

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    「成果主義的な競争社会」が格差を正当化し、社会結束を損なっている。努力や能力(能力主義)によって得られる地位や報酬を過度に称賛する風潮は公平を謳っているが、不平等を生み出し、社会的連帯を崩壊させると言う。公正な社会を目指すなら、功績だけでなく「努力の背景」「機会の平等」「社会的支援の分配」も考慮すべきだと主張しており、その公平性と機会の平等の実現には、教育・雇用・社会政策における介入が不可欠、だと主張している。結局、人材育成のための労力を惜しまず、教育の平等化を推し進めることを優先すべきだと言うことか。幾ら哲学的に平等と述べても、社会及び組織で難しい点は上司等の評価の違いであったり、その的確な指導的な役割と内容にも大きな違いがあると思う。それでも格差が出るのは生まれ持った家柄の属性、功績・能力と本人の特性、それと運命であるとしか言えない。

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    2026年02月21日
  • 実力も運のうち 能力主義は正義か?

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    サンデル先生を知ったのは『これからの「正義」の話をしよう』が最初ですが、そちらは読んでいません。何となく読もうと思ったのはこちら。一応読んだとは言えるが、アメリカの社会状況を理解していない部分があるのと、少々議論が長すぎて端折って読んだ部分もありで私は十分理解したと言えるかどうか。
    親ガチャという言葉ができたのはいつ頃だっただろうか。そのひとことで語れるものではないが、この本の特に第4章の内容はその親ガチャという言葉の内容とかなり重なる。学力によらず入学を認めるようになっている大学が日本でも上から下まである。体育系以外の領域へのスポーツ推薦入学。女性優遇枠。在籍年月の分の学費を払えばよしとして学歴付与、つまり学歴を金で買うような低レベルの大学。経営資金のためにあるような大量の留学生枠。学歴による偏見の度合いは拡大しているのに容認されているのは日本でも同じ。トランプも学歴はあるが金で買ったようなものだろう。そしてこの本全体が、日本に向けて書かれているのではないにもかかわらず、日本の状況と重なる。この本の内容とは関係ないが移民問題も、日本には存在しなかったはずなのに問題化しつつある。日本以上にアメリカの後追いをしている国はないのではないだろうか。
    最後の入試をくじ引きで決める件、興味深いが机上の空論でしかない。と思うが、スポーツ推薦枠や寄付金(学費)で入学可否が決まるなら、くじ引き枠があるのはむしろ機会の平等に寄与するのではないだろうか。
    読んだのは文庫版だが、文庫版のための解説が当初の単行本の解説者により追記されている。この文庫本が出版されたのは2023年。文庫版のための解説ではトランプに代わってバイデンが大統領になったところで、「置き去りにされた人々」によるトランプ支持は一応の区切りがついたと書かれているが、トランプは再選された。この内容も、原著は2020年出版のようだが、現在も継続中だ。サンデル先生の洞察はそんなに浅いものではなかった…というか、長く言語化されてなかったものがサンデル先生によって言語化されたということだろう。
    この問題は今後どうなるのか。ここで取り上げられている問題を問題視しない人も多いだろうね。学力によらず高評価の大学の学歴を得ている人は特に。だが小学校から大学まで、教育のありかたは国のあらゆる面に影響する。変わるのは簡単ではなく数十年の年月が必要だろう。

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    2026年02月01日
  • 平等について、いま話したいこと

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    現在の問題点を議論する事で輪郭が捉えやすく問題の本質のありかにつても見えてくるものはある。

    脱商品化であるとか、解説にあった「格差」と呼ばずに「不平等」と訳してあることの意味など勉強になった。

    読みやすい本なので、時折、読み返したい。
    この様な対話と議論は極端なポジショントークの応酬に終止しがちな茶番的な話とは違って学ぶところが多い。

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    2026年01月07日
  • これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学

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    10年前に買ってた積読。今になってやっと読み終わった。

    正義とは何か、自由が重視されるアメリカ社会の諸問題を取り上げて論じていく。

    何が正しいのか何が善いのか

    全てを理解できたとは言い難いが、難しいなりにも面白く読み終えれた。

    これを機に哲学を学び直すこともできた。

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    2025年12月14日
  • 平等について、いま話したいこと

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    ネタバレ

     期待していたよりも面白い議論で、いくつも気付かされる点があり、とても参考になった。

    ・現在の成功者は、先人の作り上げてきた現在の環境の恩恵を受けている。

    ・累進課税は、同胞感覚を醸成できるか否かにかかっている。

    ・不平等の結果として、個人の尊厳が蔑ろにされる問題がある。

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    2025年11月25日
  • 平等について、いま話したいこと

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    「平等」というテーマを経済、政治、尊厳の3方向から、ピケティとサンデルが語り合う対談集です。平易な文章で書かれていて、とても重要な内容だと思います。

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    2025年11月18日
  • 実力も運のうち 能力主義は正義か?

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    厚くて読みづらいが、第一次トランプ政権の頃の話しがそっくりそのまま今になっていて、アメリカ社会の理解が深まる

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    2025年11月16日
  • これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学

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    正義をめぐるこれまでの政治哲学の議論を、さまざまな事例をもとに紹介している。功利主義(ベンサムとミル)→リバタリアニズム→リベラリズム(カントとロールズ)→アリストテレス→コミュニタリアニズムと展開し、サンデルは功利主義やリバタリアニズム、リベラリズムを批判し、コミュニタリアニズムの立場をとっている。

    訳文であるため少し読みにくいけれども、さまざまな事例と政治哲学を結びつけて論述しているため、政治哲学の入門書として読めると思う。

    ただ一つ気になるのは、善き生に基づく政治を提案しているが、世界で市場原理を採用した政策、新自由主義的な政治が行われる中で、市場・効率と政治のバランスをどうとるのかということだ。

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    2025年11月07日
  • これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学

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    自分の中での世界が広がった気がする。
    当たり前だけど立場や環境が違うと考え方や正義が違うことが分かった。
    読む前に比べるとより深く、それぞれの正義について考えられるようになった。

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    2025年11月05日
  • それをお金で買いますか 市場主義の限界

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    市場主義、資本主義ってものに漠然とした嫌悪感があるけど、結局金持ちへの嫉妬なのかもしれない。
    ほぼ全てが金でどうにかなる時代、どうにかならないものに焦点を当てて生きたいけどその時点で金に囚われている気もする、難しい。

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    2025年11月05日
  • それをお金で買いますか 市場主義の限界

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    世の中がここ数十年でいかに商業主義に蝕まれてきたかの実例が詰め込まれた一冊。人の生命すらギャンブルの対象に変えてしまうおぞましさを見た。

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    2025年11月02日
  • それをお金で買いますか 市場主義の限界

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    読書録「それをお金で買いますか」4

    著者 マイケル・サンデル
    訳  鬼澤忍
    出版 早川書房

    p169より引用
    “実のところ、それだけではない。一二週間
    ほどしてから保育所が罰金を廃止しても、上
    昇した新たな遅刻率はそのままだったのだ。
    お金を払うことで、迎えの時間に遅れないと
    いう道徳的義務がいったん蝕まれると、かつ
    ての責任感を回復させるのは難しかった。”

    目次より抜粋引用
    “市場と道徳
     行列に割り込む
     インセンティブ
     いかにして市場は道徳を締め出すか
     生と死を扱う市場”

     哲学者である著者による、経済学の市場原
    理が人の日常生活に及ぼす影響について論じ
    る一冊。
     行列に並ぶことについてから公共物への名
    付けについてまで、値段が付くことがどのよ
    うに作用するかの多くの実例を挙げてかかれ
    ています。

     上記の引用は、保育所のお迎え遅刻と罰金
    に関する一節。
    一度壊れてしまったものは、完全に元に戻す
    のは難しいようです。形のあるものでも、修
    復した跡が残るのに、目に見えないものは、
    ちゃんと元に戻ったかどうかも、確かめられ
    ません。
    お金を払うことで商品として扱うようになる
    ことは、思っている以上にリスクをはらんで
    いるものなのかも知れませんね。
     経済市場がどれ程人の日常生活に影響と変
    化を与えるのかが、多くの実例を示して書か
    れているので、説得力が高く感じ取れます。
    どのような物事になら、お金を使って介入し
    ていいのかについて、考える元になる一冊で
    はないでしょうか。
     姿形の無いものにお金を使うときは、よく
    よく考えて使いたいものです。
     著者は哲学者であるためか、人は考え続け
    ることで良い方向へ動くものだと、信じてお
    られるような感を受けます。
    しかし、作中で示される事例を見ていると、
    考えれば考えるほど強欲になっていく人々も
    居るものではないかと、思わざるを得ませ
    ん。

    ーーーーー

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    2025年10月22日
  • 平等について、いま話したいこと

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    この2人の討議は非常に面白い。
    ただ自分の国際政治・歴史の知識が足りないだけに十分に理解できたとは思えないのが悔しい。
    色々読んでまた帰ってきて、2人と一緒に考えたい。

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    2025年10月21日
  • これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学

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    「チ。」とサンデル

    政治哲学の功利主義ベンサムから、リバタリアニズムの流れ。
    市場において各人が自由にお金を稼ぎ、政府はあまり干渉しないで!を推し進めた結果、社会の格差が進む。
    そこから自由への制限をかけるリベラルのイマヌエルカント、ジョンロールズ達のリベラリズム。

    サンデルは最後にアリストテレスを紹介し、個人の権利、自由を出発とするロールズらのリベラリズムを批判し、コミュタリニズムで連帯を目指す。

    リベラルの個人の自由の間違いを例を出して説明していく。
    例えばナチスドイツの過去の間違いを現在のドイツ人が背負う必要があるのか?
    リベラルは何者にも縛られない個人の自由を出発とするので過去のことなど私達に関係ないと言うことができる。
    それは全ての国の過去の罪に言えてしまう。
    関係はないかもしれないが歴史を背負わない個人の集まりの社会はいい社会なのか。

    魚豊「チ。」の漫画では「歴史」や「自由」のワードが出てくる。
    「チ。」は地動説というバトンを主人公達に渡していく物語。
    異端解放戦線の隊長ヨレンタはお金しか信じないドゥラカに「あなたは主人公」と言われ思いを託される。
    ドゥラカは「私には関係ない」と拒否するが、ヨレンタに「あなたはこの歴史の主人公で、歴史があるとわかれば人が死んだら全てが終わりなんて考えない。そうやって'善'にみんなで近づく。」と言われる。
    「これからの正義の話をしよう」でサンデルは自己をどうすれば歴史の中の位置にいる自己と考えらるかをマッキンタイアの「美徳なき時代」を引用する。
    人間は物語の登場人物のように家族がいて、街や都市に生きている。生まれた時点で家族や国の負債を背負っている。ロールズの「無知のヴェール」状態で生まれることはありえない。
    「自由」という言葉があまりにカッコよく、便利だから、したいことをするのが自由だと現代では多用されがちだ。
    「多様性」というワードが日常で出てくる時、それは色んな人を尊重するというニュアンスより、「放っておく自由」というニュアンスに近いのではないか。
    紹介される哲学者カントは「自由」を自分が決めた法則に従って行動することを自由と定義する。
    「チ。」の主人公達は地動説を残すため自由のために戦う。それは現代のなにをしてもいい自由の意味ではなく覚悟の自由であり、物語の歴史的な位置ある自己の自由ではないか。
    「チ。」がこれだけ多くの人を熱狂させたのは、みんな「放っておかれる自由」に人生の意味を見いだせなくなってきているのでは。

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    2026年01月03日
  • これからの「正義」の話をしよう ──いまを生き延びるための哲学

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    大学の頃に読んだ一冊。
    哲学の講義の推薦図書として掲げられていたから読んだのだけど、その授業はこの本をベースにしているにもかかわらず悉くつまらくて、マイケル・サンデルに失礼だ!と、思っていたのが懐かしい。

    国際政治から友人関係まで、自身の哲学の礎になった名著。全ての学生に読んでほしい。

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    2025年09月25日
  • ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)

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    道徳や正義といった普段真正面から考えないことを考えるきっかけになる。
    結局、答えがぐるぐる回ってしまうようなことにはなるが、本書の最初でも述べているように考えること自体に価値がある。
    わかりやすい部分と難解な部分があるので、メリハリつけて読むのがよい。

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    2025年09月14日
  • 平等について、いま話したいこと

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    哲学者と経済学者、著名なふたりの対談。
    平等について語るといっても、まずは「平等」とはなにかを考える必要がある。この二人はどちらかというと、富の再分配による教育や医療等の充実を重要視しており、自分の考えにも近いので読みやすかった。
    その中で、「尊厳」や「承認」が重要だとしており、ああなるほど、先を見ないと社会はうまく回らないのだなと感じた。
    多くの人が読むべき本です。

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    2025年08月28日
  • 平等について、いま話したいこと

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    ピケティとサンデルの主張はかなり違う視点からのものではあるが両方とも大いに納得できる。両者の対談だからこそ双方の主張の核が理解できる良書。

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    2025年08月21日
  • 実力も運のうち 能力主義は正義か?

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    米国に蔓延する「能力主義」に対する批判。

    第一次トランプ政権の誕生のきっかけになった「分断」の原因が「能力主義」にあるとしている。そして、その「能力主義」を蔓延させるきっかけとなった、グローバルな自由市場を受け入れ続けてきた今迄の政権にあると批判している。

    そもそもなぜ能力主義は分断を生み出すのか?結論を言えば、格差が固定化されてしまっているから。
    アメリカでは、機会の均等があれば、誰でもアメリカンドリームを手にできる。その地位は、自らの能力に起因するものである。これが能力主義の社会である。しかし、現実には、格差は固定化されている。成功者は自らの地位を確固たるものとするし、貧困なものは貧困から上がれない。人々は能力主義の社会を信頼しているからこそ、そこから上がれないことによる不満で分断が生み出されている。さらには、差別が禁止される中で、能力主義を前提とした見下しは、唯一許されている差別ともいえる。その代表が、学歴による差別。
    結果として能力主義は勝者におごりをもたらすし、敗者には屈辱と怒りをもたらす。さらに、エリートたちには能力主義がもたらすおごりを理解することは難しい。エリートたちにとっては、今の自分の地位は「自分」の力で得たものだから。

    さらに分断を加速化させたのが、政府を運営するエリートたちの政策。機会の平等を説き、それにより国民を鼓舞すると同時に、大きな政府を目指し、貧困層を補助しようとしている。しかしそれは根本的な解決にはならない。
    具体的には以下のとおりである。
    機会の平等による完全な平等は実現し得ないし、そもそも機会の平等な社会は本当に善い社会とは限らない。政府を運営するエリートたちは、機会の平等を説くことで国民を鼓舞していた。不平等への回答として、グローバル経済に立ち向かうために、労働者が高度な教育を受け、それに適応することを提唱した。しかしそもそも、機会の平等、能力主義は不平等の正当化である。だからこそ、努力をすればいいだろう、と反論するものもいるかもしれないが。しかし、成功は努力と才能の合成物であり、その絡まりを解くのは容易いことではない。
    また、大きな政府による貧困層の補助も、能力主義を確固たるものにしてしまう。貧困に陥った人を救う場合、無責任というレッテルを貼った人々は一切援助せず、生まれつき劣っているというレッテルを貼った人々のみ助けることになる。したがって、政府による援助は、「生まれつき劣っている」という証明をさせ屈辱的な援助を与えてしまい、結果として能力主義を補完する方向に動いてしまうからである。

    経済が成長していれば道徳的に賛否両論ある問題について議論を戦わせる必要がないというのも理由の一つかもしれない。だからこそ、エリート層は無批判にグローバル市場を受け入れることを前提にしているのである。それが分断を生み出す現実から目をそらしながら。逆にトランプは能力主義について一切触れない。支持層に対しては、国家の主権、アイデンティティ、威信の再主張を説いている。

    こうした社会でこそ、筆者が注目するのが、「労働の尊厳」の回復である。
    グローバリズムでGDPを最大化し、それを分配しても前述のとおり、労働者の怒りは回復しないのは自明。そもそも、経済的報酬を賞賛、功績、手柄と結び付けてしまうような社会自体が善ではないのである。麻薬の密売人と教師、儲けているのは前者だが、善なのは後者なのは明らか。だからこそ、賞賛、功績、手柄、「労働の尊厳」を人々が得られる社会を作るべきである。

    そして、その解決策として挙げられるのが、低賃金労働者への賃金補助。
    経済において我々が演じる最も重要な役割は、消費者ではなく生産者としての役割である。生産者として必要な財とサービスを供給する能力を発揮して社会的評価を得ることで、人々に「労働の尊厳を与える」。低所得労働者が十分な市場賃金を支払われる技能を欠いていてもまともな暮らしができるようにするのである。
    また、複雑な金融システムを抑えることも提唱している。具体的には、給与税を下げ、消費や投機に対して税をかける。金融そのものは生産的ではない、確かに経済の潤滑油たり得るが、過度に複雑化しすぎて、関係者にしか利益をもたらさない。もはやギャンブル化している。


    以下、思うこと。
    ① 生産者と消費者について
    筆者は、過度な消費社会に警鐘を鳴らし、重要なのは「生産者」として尊厳を得られることと提唱している。我々は、消費者であると同時に、生産者であることに気づかなければならないのである。この概念は、過去に読んだ「柔らかい個人主義の誕生」でもあったな、と思い返した。
    単なる消費者ではなく、消費することを楽しむ消費。それによりアイデンティティを保つ。
    モノを消費する主体であるだけでは、精神が擦り減ってしまうのだろうと思う。

    ② 資本主義社会の絶望について
    ⇒「経済的報酬を賞賛、功績、手柄と結び付けてしまうような社会自体が善ではない。」と筆者は主張しているが、そもそも賞賛、功績、手柄では食っていけない。資本主義社会であるからこそ、資本の多寡は生き死にに直結する。だからこそ、人々は経済的報酬を欲するし、それが地位に直結してしまう。いくら経済的報酬の代わりに賞賛を得られたとしても、それはキレイごとに過ぎないのではないかと思う。

    ③ 自国第一主義との紙一重
    ⇒筆者は、政府を運営するエリートたちを批判している。そして、「労働の尊厳」を回復させることを提唱しているが、やはり、分かりにくい概念。グローバル経済によって生み出される格差を批判し、生産者である人々を尊重するのであれば、グローバル経済に対抗し関税をかけて生産者を保護することが一番分かりやすい論理。そうなってしまっているのが現状だと思われる。

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    2025年08月17日