マイケル・サンデルのレビュー一覧
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正義をめぐるこれまでの政治哲学の議論を、さまざまな事例をもとに紹介している。功利主義(ベンサムとミル)→リバタリアニズム→リベラリズム(カントとロールズ)→アリストテレス→コミュニタリアニズムと展開し、サンデルは功利主義やリバタリアニズム、リベラリズムを批判し、コミュニタリアニズムの立場をとっている。
訳文であるため少し読みにくいけれども、さまざまな事例と政治哲学を結びつけて論述しているため、政治哲学の入門書として読めると思う。
ただ一つ気になるのは、善き生に基づく政治を提案しているが、世界で市場原理を採用した政策、新自由主義的な政治が行われる中で、市場・効率と政治のバランスをどうとるのか -
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読書録「それをお金で買いますか」4
著者 マイケル・サンデル
訳 鬼澤忍
出版 早川書房
p169より引用
“実のところ、それだけではない。一二週間
ほどしてから保育所が罰金を廃止しても、上
昇した新たな遅刻率はそのままだったのだ。
お金を払うことで、迎えの時間に遅れないと
いう道徳的義務がいったん蝕まれると、かつ
ての責任感を回復させるのは難しかった。”
目次より抜粋引用
“市場と道徳
行列に割り込む
インセンティブ
いかにして市場は道徳を締め出すか
生と死を扱う市場”
哲学者である著者による、経済学の市場原
理が人の日常生活に及ぼす影響について論じ
る一冊。
行列に並 -
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「脱商品化」という考え方。
金で買えないものはない、という定型句を聞いたことがあるが、こうした考え方に対するアンチテーゼである。「売らない、商品にしない」という心掛けが試される。
というのも、超金持ちはその元手となる金を運用してさらに増殖させていく。だが、幾らお金があっても「売る側が〝平等“を演出する」ことで、超金持ちも一般も同じになるのだ。
例えば「お一人様一個まで」。これは売る側の共産主義であり配給制に近い。金さえあれば幾らでも買い占められる商品ではなく、皆に行き渡る商品に脱商品化されているわけだ。
他にも「私たちは買われた」ではなく、「私たちは売らない」ことが徹底できるなら、金持ち -
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米国に蔓延する「能力主義」に対する批判。
第一次トランプ政権の誕生のきっかけになった「分断」の原因が「能力主義」にあるとしている。そして、その「能力主義」を蔓延させるきっかけとなった、グローバルな自由市場を受け入れ続けてきた今迄の政権にあると批判している。
そもそもなぜ能力主義は分断を生み出すのか?結論を言えば、格差が固定化されてしまっているから。
アメリカでは、機会の均等があれば、誰でもアメリカンドリームを手にできる。その地位は、自らの能力に起因するものである。これが能力主義の社会である。しかし、現実には、格差は固定化されている。成功者は自らの地位を確固たるものとするし、貧困なものは貧困 -
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ネタバレとても興味深い考え方と感じる。
確かに我々が選んでいると信じている人生についても、結局は運によるものなのかもしれないし、結局は親の裕福さに左右されているのかもしれない。
ただ、一つ言えることは昔よりも可能性は拡がっていること。
それが結果的に良い方向に向いているのかはわからず、貴族制度の時代の方が精神的尊重という点では優れており、人間にはそちらの方が良かったのかもしれない。
しかし、その制度に疑問を抱き、より良くしよう、したいと思う活動が今を作り、貴族制度を過去に変えたのなら、その過程や、そこから今抱える課題にで会えていることとして、人類は良い方向に進んでいるのかもしれない。
また数年後 -
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今年の初めに出版されたばかりの本。日米同時発売だがら、翻訳のタイムラグもなく、まさに今の社会状況についての本である。ピケティという人は初めて知ったが、サンドルは読むたびに感心させられる刺激的な哲学者で、彼の名前に惹かれて、ほとんど対談であることも意識しないで購入した。全体としては互いに対するリスペクトに満ち、わかりやすい話し言葉で展開されており、とても気持ちよく読むことができた。
ふたりの意見は必ずしも一致しているわけではなく、いくつかの側面で激しく対立するが、共通している認識も多く、その共通の部分について、僕自身もなるほどと思い、確かにそのとおりと思うところが多かった。それはこの本の中 -
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如何に自分がtechnocrat的な,meritocracy的な思考の上に「平等」を思考していたのかを思い知らされる事になった.読み始めた当初,オバマやヒラリークリントンに対する批判の一部が分かったようで分からなかった.トランプを支持する人々が奪われてきたモノに対する理解も,言葉の上では理解していたけど,「消費する側の倫理」「生産する側の倫理」という言い回しに,ハッとさせられた.そういうことか,実体経済を回している人々が蔑ろにされ,金勘定で漂ってる奴らが富を掠め取っていく…この違和感や怒りは,この「裏表」にあったのか,と.
筆者は高学歴エリートの「価値」のあり方を批判こそすれ,能力そのものを批 -
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だいたい海外の学者さんが書く本は分厚くて怯んでしまう。でもこの本はスター学者2人の議論をたのしめるしな、とミーハー心とコスパ精神から取り寄せましたが、手にとってみれば150ページ強という薄さ。対談なのでさらにリーダブル、という読みやすい本でした。対談ものは日本以外はあまりウケない、とどこかで読んだ気がするけれどそんなこともないのかな?内容についての自分の理解としては、我々は特にここ数十年の政治的社会的経済的体験をもとにいわゆる個人にあらゆる責を帰す「公正社会仮説」信者状態だけれど、そのよって立つ足場はあらゆるものが商品化された「市場」だよー。ということ。2人の学者は大きくは脱商品化と人としての