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資本主義の果て、大いなる格差に覆われる現代。教育やヘルスケアを「脱商品化」するには? 左派はなぜ世界的に弱体化したのか? 大学入試や議会選挙にくじ引きを導入すべき? 当代一の経済学者と政治哲学者が相まみえ、真の「平等」をめぐり徹底的に議論する
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Posted by ブクログ
非常に示唆に富んだ本でした。 都議選を終え、参議院選挙を控えた今の時期にぜひ読んでほしい一冊です。 トランプの台頭、日本でも排外主義が蔓延し始めた状況に危機感を覚えつつも、ポピュリズムに一定の魅力を感じなくもないと私は思ってしまいました。 怖かったです。 だってヒトラーでも民主主義のプロセスの...続きを読む中から出てきたのだから、自分が誤った価値観で投票することが一票という小さな影響がしれないけれど日本を悪くしてしまうかもしれないと。 なので、勉強の一環としてこの本を手に取りました。 漠然としか認識していなかった、 能力主義 平等と公平 グローバリゼーションの物/人/金の違った側面 それぞれが明確な形を持って切り取られ議論されています。 何がいいか悪いかの結論はすぐに出るものではありません。問題点の輪郭がはっきりとしたのが、すごくよかったです。 グレーな問題に対して自分はどういう立場を取るのか、どんな社会を望むのか、これからよく考えていきたいと思います。
大学入試や議会選挙にくじ引きを導入すべき? アメリカのトランプ大統領の言動に始まり、 世界中の国で格差が拡大している現在、これだけタイムリーなテーマがあろうか。 しかも、それを語るのが「21世紀の資本」の著者のピケティと、 「実力も運のうち」のサンデル教授! 確かに、ピケティの言うとおり、昔っ...続きを読むから世の中は不平等だった。 ある意味ここ数百年はましになってきていた。 しかし、ここにきて世の流れは富を集中させる方向に行きつつある。 ピケティが一番問題視するのは、GAFAMに代表される、 多国籍企業の莫大な利益に税金が取れないこと。 21世紀の資本はこれに真っ向から取り組み、国際的な累進課税を訴えていた。 そう、累進課税。 ひところは80-90%が最高税率だったものが、 新自由主義でどんどん引き下げられた。私が敬愛するフリードマンがその主張者だった。 なので私も当初は、稼ぐやる気をなくす高すぎる累進課税はよくないと思っていた。 でもね、、 昨今の世襲議員やら、東大生の年収1000万以上の親ばかりで、 そいつらが行う政治が血の通ってないろくでもないものになっているのを見ると、 運よく稼いだ者から吸い上げた富を運悪く貧しい人に再配分することは重要、 と考えるようになった。 もちろん、与えられた金で酒ばかり飲まれては無駄な金だが、 少なくとも、ヤングケアラーやら、奨学金という名の借金で大学を出ても結婚すらできない、 なんて状況がいいわけがない。最初から若者に負債を背負わせてはいけない。 これは日本の話で、ピケティやサンデルが直接言ってることじゃないけど、 でも、言いたいことは一緒。 5割が大卒未満なのに、なんで議会は9割が大卒なのか!と。女性の割合は増えたのに、と。 ・・・日本はここすらまだまだ行ってない。 大学入試も、まず一定数試験で絞った後はくじ引きにすれば、富裕層じゃない子が入れる確率は増えると。 それだけでは足らんでしょ、とピケティは鋭いが。 右、左という言葉がどんどん出てくる。ここでは資本主義が右、社会主義が左、なのだが、 今の資本主義は社会主義要素はどんどん入っている。それをどこまでにするか、何に重点を置くか。 そもそも今の日本のように、所得の低い人からも5割を税金で持って行っていて、何が資本主義だ。 むしろ富裕層は株だので上限2割しかとられない、とか逆転現象すら起こっている。 ベーシックサービスの話が結構出ている。 貨幣経済によらない無償のサービスを提供すればよいのではと。 これもやり方は難しく、下手するとソ連のような品質低下になりかねないが、 工夫すれば、、というところか。 しかし、今の参院選の各党の主張を聴く限り、こんなレベルにはなく、 「我々が貧しいのは海外から安い労働力が入るからだ!」になってしまう。 安い労働力じゃないと零細企業がつぶれちゃうからでしょう、、 この構造自体がまずいんだよ、大企業はろくに税金も払わず、高い報酬を得る経営陣。 そういえばこの本で、10対1が限度だろう、といってた。 そう思う。今100対1だもんな。日本ですら。サラリーマン社長ですら。 字の大きい、150ページちょっとの本だったけれど、非常に考えさせられる本だった。 第1章 なぜ不平等を懸念するのか 第2章 お金はもっと重要でなくなるべきか 第3章 市場の道徳的限界 第4章 グローバリゼーションとポピュリズム 第5章 能力主義 第6章 大学入試や議員選挙にくじ引きを取り入れるべきか 第7章 課税、連帯、コミュニティ 第8章 国境、移民、気候変動 第9章 左派の未来―経済とアイデンティティ
不平等ineaquality(格差disparityではない)をアメリカの哲学者ハーバード大学教授マイケル・サンデルとフランス経済学者のトマ・ピケティとの対談本。 不平等がもたらす人間個人と社会のマイナスを累進課税とか大学入学を親の経済力ではなく能力プラスくじ引きで入学させると提案したり、アメリ...続きを読むカアイビーリーグの出身者が社会で高い地位についているとの現実を学歴主義から脱皮させようと論じている。左派の論が経済富裕層をより富ませて民主党がアメリカの分断に拍車をかけ、トランプの支持を高めたと説いている。 地球温暖化、環境破壊も西欧社会が作ったもので、グローバルサウスに負担を強いるような西欧の対応はおかしいと言っている。 不平等がなぜ問題か。 ①すべての人による基本的な財の利用機会 ②政治的平等 ③尊厳
早川書房ってこんな本も出すんだね。感動したよ。 作者だけでなく出版社も選ぶタチなので、これから狙いつけておく。 マイケル・・サンデルもトマ・ピケティも気にはしてたけど読むのは初めて。いきなり「再分配と脱商品化」から対談が始まってうれしかった。私のいまの関心事は教育や介護など公共物の民営化の危険性なの...続きを読むでドンピシャだ。さっそくノートを用意して構えを作った。 熱いトマと沈着冷静なマイケルが共感しながらも火花を散らしながら考えを交える。サスペンスフルだ。だから早川か。 市場勝利主義や能力主義が新自由主義と結んで現れるとき結局被害者になるのは我ら普通の国民。豊かさとは縁遠い自分のような人間はほんとに平等な社会をもとめているよ。 超富裕層には大幅に増税すべきだと思うし、株主優遇が第一の大企業などの内部留保などはきっちり吐き出させろと強く思う。だって自然に儲けが増えたわけじゃない。働く者が作り出した価値だろ。 勝手に蓄えたやつに天罰降れ。 米欧の中道左派がしゃんとせんから右翼ポピュリズムが伸びたとの指摘も同感。いま日本でも「ユトウ」と呼ばれる政党がバカな役割を得意げに誇ってるけど、いずれ歴史に裁かれるだろう。 まだまだ読んで学びたい二人だ。
市民の『尊厳』という視点を失った国家は分断が進み、やがて全体合意が取れず前進できなくなるというダイナミクスがイメージされる。読んでいるとドキドキする。 トランプのような人物が生まれる背景についても実直に議論していて、非常に納得感がある。 対談形式なのでライトに読み進められるし、読めるところだけ掻い摘...続きを読むんでも今の世界構造に対する解像度が上がると思う。 多くの東海岸の住民たちが同時にこの対談に触れたら、その時彼らはなにを思うのだろうか。 昔からマイケル・サンデルの思想は自分にめちゃくちゃフィットするのだけども、同じような方向を向きつつ違う視点での提案をするトマ・ピケティの話もおもしろかった。今まで読んだことなかったし、今度適当に手にとってみたい。
確かトマ・ピケティは、途中挫折したけ、要約本を読んだか、程度で、歯が立たないと思ってたが、この本は対談だから読みやすくて良かった。 私が特に感銘を受けたのは ・株主による企業の保有割合を半分までとする案 ・金持ちとそうでない人の闘争にしようという案(昔はアメリカも高額所得者への税率が高かったことへの...続きを読む驚き)
平等にまつわる問題について、深い議論というよりは、考えるタネをたくさんばら撒いてくれている。 サンデルファンとしては真新しい主張は見受けられなかったが、ピケティの本をもっと読んでみようと思えた。 みんなルソー好きだなあ。ルソーももう一回ちゃんと読んでみよう。
個人的には期待以上の本であった。確かに掘り下げた議論になっておらず、噛み合っていなかったり上手くかわしているだけのところも多いのだが、対談録と言うことで、具体的なデータや筋を追ったわかりやすい議論、ましてや一定の結論を示すというのはそぐわないであろう。むしろ、議論の中から浮かび上がる「平等」と言うテ...続きを読むーマに対するスタンス、アプローチの違いこそが重要で、それを把握した上で、自身なりの考察をするに当たって、大変良い本と思う。中でも解説が大変分かりやすく、思考の整理に役立った。 個人的には、サンデルは平等を社会が追求すべき「善なるもの」の定義に関わる前提条件の一つとして捉えている様に思われる。社会が共通善を達成するために必要な器であるとして(アリストテレス的な)、それを達成するためには平等と正義が共通認識として成員の間に共有化されている必要がある、と考えているのではないか。 対してピケティは、平等と言うものは社会が機能する上で備えるべき条件の一つとして認識している様に読める。だからこそ、租税法や富の再分配を通じて、システムとしての平等をいかに整備すべきかに力点をおいているのではないか。解説にある通り、現実政治での実行を優先する立ち位置なのだろう。 まず人々の心の中にある平等や正義、尊厳といった善に関する共通認識が整えられた上で、それを実現する社会システムが整えられるべきなのか。それとも、国家/国家群として再分配のシステムを整備し、富の偏在は正義にもとると言うメッセージを明確にした上で、その中で善に関する共通認識を培うべきなのか。 個人的な見解としては、政治とは何処から税金を取って何処に分配するかを決定する、つきつめればその為だけに存在する技術(アート)だと思っている。その取り方、分配の仕方にその国家が追求する善が示される、という事である(不幸にして、本邦のように何も追求していない様に見える政治もあるが)。その意味では、上記のどちらのアプローチのみでは上手くいかず、両方の組み合わせが必要なのは当然だが、個人的にはサンデル寄りである。何を善とするかの合意なくして徴税システムのみ整備しても、仏作って魂入れずで、人間は抜け道を考え出すだけではないか。 また、何故リベラル勢力が近年、説得力を失ってきたかに関する分析が興味深い。人々の不満が何処にあるのか。十分な賃金が支払われず、富が偏在していること。それを一つの理由として、富裕層から人間として尊重されていないと感じる事。おそらくは両方が理由で、両輪で解決すべきなのだろう。ここでも個人的にはサンデル寄りで、リベラルがいつの間にか富裕層の傲慢を中和する道具(国際協調の御旗の元に)として利用されるようになった、その視点を正さなければ、彼らから税を毟り取ってもまた別の差別を生み出すだけに思える。文中で指摘される通り、これ程便利で、人道色の化粧も着いた思考停止の道具は無いだろうから。もちろん、選択の自由を持てるだけの経済力をすべての人に約束する、下世話に言えばまず腹を満たす、事は必要なのだが。 教育の脱商品化については、両者とも比較的似た結論だが、ピケティが教育の脱商品化により熱心なのは面白い。教育に関わる人達が生活の心配をする事なく、その人達の内在的な動機を腐敗させない為に、脱商品化を徹底的に進めるのは一つの意見であろう。それによって起こる質の低下があり得るかは、議論の範囲を超えるだろうが、少し聞いて見たかった。我が国の議論では、税負担主体や所得格差、公立学校の存続性、私立の過当競争に力点が置かれがちだが、教育と言うものをどう捉え、社会としてどうサポートするかの議論が少し足りないようなのは気の所為だろうか。 それにしても、給付金や税の多寡のみが議論され、社会善や政治哲学の議論を寡聞にして聞かない国に居る人間としては、このような議論がされて、本になるという時点で既に羨ましいと感じる。少し僻みすぎで、私がそういう本を知らないだけかも知れないが。
「平等」というテーマを経済、政治、尊厳の3方向から、ピケティとサンデルが語り合う対談集です。平易な文章で書かれていて、とても重要な内容だと思います。
この2人の討議は非常に面白い。 ただ自分の国際政治・歴史の知識が足りないだけに十分に理解できたとは思えないのが悔しい。 色々読んでまた帰ってきて、2人と一緒に考えたい。
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