あらすじ
資本主義の果て、大いなる格差に覆われる現代。教育やヘルスケアを「脱商品化」するには? 左派はなぜ世界的に弱体化したのか? 大学入試や議会選挙にくじ引きを導入すべき? 当代一の経済学者と政治哲学者が相まみえ、真の「平等」をめぐり徹底的に議論する
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Posted by ブクログ
非常に示唆に富んだ本でした。
都議選を終え、参議院選挙を控えた今の時期にぜひ読んでほしい一冊です。
トランプの台頭、日本でも排外主義が蔓延し始めた状況に危機感を覚えつつも、ポピュリズムに一定の魅力を感じなくもないと私は思ってしまいました。
怖かったです。
だってヒトラーでも民主主義のプロセスの中から出てきたのだから、自分が誤った価値観で投票することが一票という小さな影響がしれないけれど日本を悪くしてしまうかもしれないと。
なので、勉強の一環としてこの本を手に取りました。
漠然としか認識していなかった、
能力主義
平等と公平
グローバリゼーションの物/人/金の違った側面
それぞれが明確な形を持って切り取られ議論されています。
何がいいか悪いかの結論はすぐに出るものではありません。問題点の輪郭がはっきりとしたのが、すごくよかったです。
グレーな問題に対して自分はどういう立場を取るのか、どんな社会を望むのか、これからよく考えていきたいと思います。
Posted by ブクログ
大学入試や議会選挙にくじ引きを導入すべき?
アメリカのトランプ大統領の言動に始まり、
世界中の国で格差が拡大している現在、これだけタイムリーなテーマがあろうか。
しかも、それを語るのが「21世紀の資本」の著者のピケティと、
「実力も運のうち」のサンデル教授!
確かに、ピケティの言うとおり、昔っから世の中は不平等だった。
ある意味ここ数百年はましになってきていた。
しかし、ここにきて世の流れは富を集中させる方向に行きつつある。
ピケティが一番問題視するのは、GAFAMに代表される、
多国籍企業の莫大な利益に税金が取れないこと。
21世紀の資本はこれに真っ向から取り組み、国際的な累進課税を訴えていた。
そう、累進課税。
ひところは80-90%が最高税率だったものが、
新自由主義でどんどん引き下げられた。私が敬愛するフリードマンがその主張者だった。
なので私も当初は、稼ぐやる気をなくす高すぎる累進課税はよくないと思っていた。
でもね、、
昨今の世襲議員やら、東大生の年収1000万以上の親ばかりで、
そいつらが行う政治が血の通ってないろくでもないものになっているのを見ると、
運よく稼いだ者から吸い上げた富を運悪く貧しい人に再配分することは重要、
と考えるようになった。
もちろん、与えられた金で酒ばかり飲まれては無駄な金だが、
少なくとも、ヤングケアラーやら、奨学金という名の借金で大学を出ても結婚すらできない、
なんて状況がいいわけがない。最初から若者に負債を背負わせてはいけない。
これは日本の話で、ピケティやサンデルが直接言ってることじゃないけど、
でも、言いたいことは一緒。
5割が大卒未満なのに、なんで議会は9割が大卒なのか!と。女性の割合は増えたのに、と。
・・・日本はここすらまだまだ行ってない。
大学入試も、まず一定数試験で絞った後はくじ引きにすれば、富裕層じゃない子が入れる確率は増えると。
それだけでは足らんでしょ、とピケティは鋭いが。
右、左という言葉がどんどん出てくる。ここでは資本主義が右、社会主義が左、なのだが、
今の資本主義は社会主義要素はどんどん入っている。それをどこまでにするか、何に重点を置くか。
そもそも今の日本のように、所得の低い人からも5割を税金で持って行っていて、何が資本主義だ。
むしろ富裕層は株だので上限2割しかとられない、とか逆転現象すら起こっている。
ベーシックサービスの話が結構出ている。
貨幣経済によらない無償のサービスを提供すればよいのではと。
これもやり方は難しく、下手するとソ連のような品質低下になりかねないが、
工夫すれば、、というところか。
しかし、今の参院選の各党の主張を聴く限り、こんなレベルにはなく、
「我々が貧しいのは海外から安い労働力が入るからだ!」になってしまう。
安い労働力じゃないと零細企業がつぶれちゃうからでしょう、、
この構造自体がまずいんだよ、大企業はろくに税金も払わず、高い報酬を得る経営陣。
そういえばこの本で、10対1が限度だろう、といってた。
そう思う。今100対1だもんな。日本ですら。サラリーマン社長ですら。
字の大きい、150ページちょっとの本だったけれど、非常に考えさせられる本だった。
第1章 なぜ不平等を懸念するのか
第2章 お金はもっと重要でなくなるべきか
第3章 市場の道徳的限界
第4章 グローバリゼーションとポピュリズム
第5章 能力主義
第6章 大学入試や議員選挙にくじ引きを取り入れるべきか
第7章 課税、連帯、コミュニティ
第8章 国境、移民、気候変動
第9章 左派の未来―経済とアイデンティティ
Posted by ブクログ
不平等ineaquality(格差disparityではない)をアメリカの哲学者ハーバード大学教授マイケル・サンデルとフランス経済学者のトマ・ピケティとの対談本。
不平等がもたらす人間個人と社会のマイナスを累進課税とか大学入学を親の経済力ではなく能力プラスくじ引きで入学させると提案したり、アメリカアイビーリーグの出身者が社会で高い地位についているとの現実を学歴主義から脱皮させようと論じている。左派の論が経済富裕層をより富ませて民主党がアメリカの分断に拍車をかけ、トランプの支持を高めたと説いている。
地球温暖化、環境破壊も西欧社会が作ったもので、グローバルサウスに負担を強いるような西欧の対応はおかしいと言っている。
不平等がなぜ問題か。
①すべての人による基本的な財の利用機会
②政治的平等
③尊厳
Posted by ブクログ
早川書房ってこんな本も出すんだね。感動したよ。
作者だけでなく出版社も選ぶタチなので、これから狙いつけておく。
マイケル・・サンデルもトマ・ピケティも気にはしてたけど読むのは初めて。いきなり「再分配と脱商品化」から対談が始まってうれしかった。私のいまの関心事は教育や介護など公共物の民営化の危険性なのでドンピシャだ。さっそくノートを用意して構えを作った。
熱いトマと沈着冷静なマイケルが共感しながらも火花を散らしながら考えを交える。サスペンスフルだ。だから早川か。
市場勝利主義や能力主義が新自由主義と結んで現れるとき結局被害者になるのは我ら普通の国民。豊かさとは縁遠い自分のような人間はほんとに平等な社会をもとめているよ。
超富裕層には大幅に増税すべきだと思うし、株主優遇が第一の大企業などの内部留保などはきっちり吐き出させろと強く思う。だって自然に儲けが増えたわけじゃない。働く者が作り出した価値だろ。
勝手に蓄えたやつに天罰降れ。
米欧の中道左派がしゃんとせんから右翼ポピュリズムが伸びたとの指摘も同感。いま日本でも「ユトウ」と呼ばれる政党がバカな役割を得意げに誇ってるけど、いずれ歴史に裁かれるだろう。
まだまだ読んで学びたい二人だ。
Posted by ブクログ
市民の『尊厳』という視点を失った国家は分断が進み、やがて全体合意が取れず前進できなくなるというダイナミクスがイメージされる。読んでいるとドキドキする。
トランプのような人物が生まれる背景についても実直に議論していて、非常に納得感がある。
対談形式なのでライトに読み進められるし、読めるところだけ掻い摘んでも今の世界構造に対する解像度が上がると思う。
多くの東海岸の住民たちが同時にこの対談に触れたら、その時彼らはなにを思うのだろうか。
昔からマイケル・サンデルの思想は自分にめちゃくちゃフィットするのだけども、同じような方向を向きつつ違う視点での提案をするトマ・ピケティの話もおもしろかった。今まで読んだことなかったし、今度適当に手にとってみたい。
Posted by ブクログ
確かトマ・ピケティは、途中挫折したけ、要約本を読んだか、程度で、歯が立たないと思ってたが、この本は対談だから読みやすくて良かった。
私が特に感銘を受けたのは
・株主による企業の保有割合を半分までとする案
・金持ちとそうでない人の闘争にしようという案(昔はアメリカも高額所得者への税率が高かったことへの驚き)
Posted by ブクログ
不平等の3つの側面=経済的側面、政治的側面、そして社会関係-尊厳、身分、尊重に関する側面、について語り合う。
トランプやル・ペンを生み出したものは左派がそれらについて置き去りにしてきたからだ、という。そしてそれらを解決していくためには、経済の脱商品化、累進課税の強化、大学入試や議員をくじ引きで・・と、幾つもの提案がなされる。二人の考えは、微妙に異なるが、大筋では合意されながら議論は進んでいく。
読者の覚悟が求められています。平等であるべきだ、とすれば3つの側面で大胆な改革を進める必要があることを明白で、それを現実の政治に引き付けて考えれば、各政党の今の主張、施策は平等を拡大するものか、不平等を拡大していくものなのかを見極めていく必要があり、それについて行動することが求められるということです。
ピケティ「公共サービスや基本財に投入する国民所得の割合を増やしていかなければならないという考えを、われわれはどこかの時点で受け入れなくてはなりません。では、どこまで増やせばよいのでしょうか? ヨーロッパ諸国を見ると、第一次世界大戦前までは税収が国民所得の10%未満でした。それがいまでは50%です。これを60%、70%、80%にあげなくてはならないのでしょうか? それは分かりません。ですが、あげる必要はあるのです。」
「アメリカでは20世紀、何十年にもわたって所得税の最高税率が80%や90%だったのです。1930年から1980年までのあいだ、所得税の最高税率は平均した82%でした。それでもアメリカの資本主義が崩壊したようには見えません。むしろこの時期のアメリカ経済は、労働時間あたりの国民所得で見た生産性は世界最高で、ほかの国々を大きく引き離していました。」
Posted by ブクログ
本当に、こうして本に収めたい対談ですね、感謝。
ピケティの頭の中ーそれを世界に、伝える体力と精神力。
サンデル教授も、自分の言いたいところちゃんとついてくる+まとめるのうますぎる。
何を今話しているか、きっと常に宇宙から衛星で眺めているんだろうね。
サンデル教授が問いを重ねて、ピケティの持論が展開されていく、
という問答スタイルに一見感じる部分も多いのだけれど、
最後にはサンデル教授の論、
つまり、これまでの著作で主に論点として議論されてきた、
グローバリゼーション、リベラリズム、
金融化、商品化、
能力主義、学歴偏重主義、
について、
ピケティもそれに合わせて話しているところはあるのだけれど、
思いっきり全面的に話してまとめられている気がしてくる。
ソクラテス強し。
二人の専門や注目するところが違いながらも、
違うからこそ、
使ってる言葉の意味を確かめ合ったり、
大事だと思っていることを共有し合って、
読者の理解も助ける。(わかっているつもりになっている部分もある。)
‥
本書対談では、言葉遣いとして、「格差」ではなく、「不平等」について議論する。
格差(Disparity)は、上下的な関係のあるような違い、優劣と言った意味も含むということで、
不平等(Inequality)は、本来平等であるべきものが、不均等にある状態。
人間はみな平等だ、という認識が基盤となっている現代社会だから、議論する必要があるテーマだということでもある。
で、なんで不平等がよくないのか。
現在の所得と富の規模は、社会的距離を伴う、という。
対等な話し合いができる環境が金銭的不平等で脅かされている。
よく考えてみればそういう側面がある。
そもそも同じ人間とは思えない生活をしている人がいて、
でもそれは王様とか貴族ではない同じ一般民の話だから、問題になる。
サンデルの、民主主義にとって、政治の運営にとってそのメンバーの間の一定の平等が欠かせない、という話に加え、
ピケティの、人類の繁栄にとって、歴史的にも、包摂性と平等、特に教育分野の平等な利用機会が不可欠だった、という視点。
‥
平等について、いま私も話したい。
Posted by ブクログ
平等にまつわる問題について、深い議論というよりは、考えるタネをたくさんばら撒いてくれている。
サンデルファンとしては真新しい主張は見受けられなかったが、ピケティの本をもっと読んでみようと思えた。
みんなルソー好きだなあ。ルソーももう一回ちゃんと読んでみよう。
Posted by ブクログ
個人的には期待以上の本であった。確かに掘り下げた議論になっておらず、噛み合っていなかったり上手くかわしているだけのところも多いのだが、対談録と言うことで、具体的なデータや筋を追ったわかりやすい議論、ましてや一定の結論を示すというのはそぐわないであろう。むしろ、議論の中から浮かび上がる「平等」と言うテーマに対するスタンス、アプローチの違いこそが重要で、それを把握した上で、自身なりの考察をするに当たって、大変良い本と思う。中でも解説が大変分かりやすく、思考の整理に役立った。
個人的には、サンデルは平等を社会が追求すべき「善なるもの」の定義に関わる前提条件の一つとして捉えている様に思われる。社会が共通善を達成するために必要な器であるとして(アリストテレス的な)、それを達成するためには平等と正義が共通認識として成員の間に共有化されている必要がある、と考えているのではないか。
対してピケティは、平等と言うものは社会が機能する上で備えるべき条件の一つとして認識している様に読める。だからこそ、租税法や富の再分配を通じて、システムとしての平等をいかに整備すべきかに力点をおいているのではないか。解説にある通り、現実政治での実行を優先する立ち位置なのだろう。
まず人々の心の中にある平等や正義、尊厳といった善に関する共通認識が整えられた上で、それを実現する社会システムが整えられるべきなのか。それとも、国家/国家群として再分配のシステムを整備し、富の偏在は正義にもとると言うメッセージを明確にした上で、その中で善に関する共通認識を培うべきなのか。
個人的な見解としては、政治とは何処から税金を取って何処に分配するかを決定する、つきつめればその為だけに存在する技術(アート)だと思っている。その取り方、分配の仕方にその国家が追求する善が示される、という事である(不幸にして、本邦のように何も追求していない様に見える政治もあるが)。その意味では、上記のどちらのアプローチのみでは上手くいかず、両方の組み合わせが必要なのは当然だが、個人的にはサンデル寄りである。何を善とするかの合意なくして徴税システムのみ整備しても、仏作って魂入れずで、人間は抜け道を考え出すだけではないか。
また、何故リベラル勢力が近年、説得力を失ってきたかに関する分析が興味深い。人々の不満が何処にあるのか。十分な賃金が支払われず、富が偏在していること。それを一つの理由として、富裕層から人間として尊重されていないと感じる事。おそらくは両方が理由で、両輪で解決すべきなのだろう。ここでも個人的にはサンデル寄りで、リベラルがいつの間にか富裕層の傲慢を中和する道具(国際協調の御旗の元に)として利用されるようになった、その視点を正さなければ、彼らから税を毟り取ってもまた別の差別を生み出すだけに思える。文中で指摘される通り、これ程便利で、人道色の化粧も着いた思考停止の道具は無いだろうから。もちろん、選択の自由を持てるだけの経済力をすべての人に約束する、下世話に言えばまず腹を満たす、事は必要なのだが。
教育の脱商品化については、両者とも比較的似た結論だが、ピケティが教育の脱商品化により熱心なのは面白い。教育に関わる人達が生活の心配をする事なく、その人達の内在的な動機を腐敗させない為に、脱商品化を徹底的に進めるのは一つの意見であろう。それによって起こる質の低下があり得るかは、議論の範囲を超えるだろうが、少し聞いて見たかった。我が国の議論では、税負担主体や所得格差、公立学校の存続性、私立の過当競争に力点が置かれがちだが、教育と言うものをどう捉え、社会としてどうサポートするかの議論が少し足りないようなのは気の所為だろうか。
それにしても、給付金や税の多寡のみが議論され、社会善や政治哲学の議論を寡聞にして聞かない国に居る人間としては、このような議論がされて、本になるという時点で既に羨ましいと感じる。少し僻みすぎで、私がそういう本を知らないだけかも知れないが。
Posted by ブクログ
期待していたよりも面白い議論で、いくつも気付かされる点があり、とても参考になった。
・現在の成功者は、先人の作り上げてきた現在の環境の恩恵を受けている。
・累進課税は、同胞感覚を醸成できるか否かにかかっている。
・不平等の結果として、個人の尊厳が蔑ろにされる問題がある。
Posted by ブクログ
「平等」というテーマを経済、政治、尊厳の3方向から、ピケティとサンデルが語り合う対談集です。平易な文章で書かれていて、とても重要な内容だと思います。
Posted by ブクログ
この2人の討議は非常に面白い。
ただ自分の国際政治・歴史の知識が足りないだけに十分に理解できたとは思えないのが悔しい。
色々読んでまた帰ってきて、2人と一緒に考えたい。
Posted by ブクログ
「脱商品化」という考え方。
金で買えないものはない、という定型句を聞いたことがあるが、こうした考え方に対するアンチテーゼである。「売らない、商品にしない」という心掛けが試される。
というのも、超金持ちはその元手となる金を運用してさらに増殖させていく。だが、幾らお金があっても「売る側が〝平等“を演出する」ことで、超金持ちも一般も同じになるのだ。
例えば「お一人様一個まで」。これは売る側の共産主義であり配給制に近い。金さえあれば幾らでも買い占められる商品ではなく、皆に行き渡る商品に脱商品化されているわけだ。
他にも「私たちは買われた」ではなく、「私たちは売らない」ことが徹底できるなら、金持ちが他者の尊厳まで金で支配する事は止められる。
〝財の利用機会“を制限する。お金の再分配は現状どおりだけれども社会生活は脱商品化されるとしたら、社会はどうなる?
今でも自発的に「お一人様一個まで」をやっているのは、買えなかった人からのクレームを避け、お客をファンとして繋ぎ止めたいという動機があるからだ。そうでなければ、手っ取り早く売り切れた方が良いはず。
つまり〝評判“を重んじるという事。
これはお金のために尊厳まで手放さない、という姿勢にも通ずる。
これを一歩押し進め、次に指摘するのが、学歴偏重主義という偏見。仕事の尊厳は重要な問題だが、大学の学位がなくても共通善に貴重な貢献をおこなっている人たちがまったく認められず、学歴による不平等、ブルーカラーの軽視という現象が起きている。
平等性の切り口として、お金のことだけではなく、評判や尊厳から考えてみるという視点を与えてくれる本だった。
Posted by ブクログ
哲学者と経済学者、著名なふたりの対談。
平等について語るといっても、まずは「平等」とはなにかを考える必要がある。この二人はどちらかというと、富の再分配による教育や医療等の充実を重要視しており、自分の考えにも近いので読みやすかった。
その中で、「尊厳」や「承認」が重要だとしており、ああなるほど、先を見ないと社会はうまく回らないのだなと感じた。
多くの人が読むべき本です。
Posted by ブクログ
今年の初めに出版されたばかりの本。日米同時発売だがら、翻訳のタイムラグもなく、まさに今の社会状況についての本である。ピケティという人は初めて知ったが、サンドルは読むたびに感心させられる刺激的な哲学者で、彼の名前に惹かれて、ほとんど対談であることも意識しないで購入した。全体としては互いに対するリスペクトに満ち、わかりやすい話し言葉で展開されており、とても気持ちよく読むことができた。
ふたりの意見は必ずしも一致しているわけではなく、いくつかの側面で激しく対立するが、共通している認識も多く、その共通の部分について、僕自身もなるほどと思い、確かにそのとおりと思うところが多かった。それはこの本の中の論で納得したと言うよりも、元々自分の中にそういう考え方があり、それがこの本を読むことが掘り起こされた、という感じが強い。例えば、比較的最初の方に出てくる、自由経済主義は考えることの放棄と考えられるといった話は、漠然と心の中にあるイメージに言葉を与えてくれたような気がした。
だから、彼らが話す「方策」についてもいちいちなるほどと思い、それが正しい道だと思いながら読んだ。ただ、現実の社会を見ていると、彼らの述べるような形で平等が実現することは極めて困難に思える。既得権者に苦い薬を飲ませることになるからだ。
ピケティの語る歴史の流れは頭ではわかるものの、自分が死んだあとのような長い人類史の流れよりも、今目の前の不平等をなんとかしたいと心が焦ってしまうのは確かだ。まさに今の社会情勢を観るにつけ、特に本書の中では言及されない日本の現状を思うと特にそう考えてしまう。50年後に10前進するために、今の10歩後退があるのかもしれないが、その後退が溜まらなく辛い人はたくさんいるのだから。
そんないらだちを超えて、特に強く心を打たれたのは、平等というのはなによりも尊厳の問題だという指摘である。例えば経済的な不平等は、単に経済的な不利益だけではなく、そのような扱いを受ける人間が感じるアイデンティティに損失を与えざると得ない。自分はダメな人間だと思わされてしまう危険がある。そのとおりだと思うし、経済に起因する自己尊厳への深い傷が、今の社会に毒ガスのようにただよっている気がする。
経済的な不平等、政治的な不平等などは大きすぎる問題で、ごくありふれた一人の人間の力だけでどうこうできるものではないかもしれない。しかし、この尊厳の平等については、なにかできることがあるような気がする。根本の問題には手が届かないにせよ、自分自身やごく近くにいる仲間のことだけになってしまうにせよ。まずは、ここからでいい。そこからがいい。
Posted by ブクログ
知の巨匠二人による対談集。
平等をキーワードに展開される世界の在り方。
特に機会の不平等という視点で語られる話は考えさせられることが多かった。
自戒を込めて「お互い様」の精神が薄れている気がした。
Posted by ブクログ
ピケティとサンデルの対談本。あまり一緒に考えたことなかったけど、この2人が対談することがあるんだ。
サンデルが知的で観念的な思考実験をするのに対し、ピケティが現実社会でどのような活動をすべきかの選択を迫る展開は面白い。サンデルも哲学的な裏付けがあるものではないが〜、とか感覚的には〜とか言いながらかなり鋭い意見で応えているのも楽しい。
左派の頭のよい人たちがそういう風に考えているというのを知ることができるだけでも読む価値ある。
Posted by ブクログ
だいたい海外の学者さんが書く本は分厚くて怯んでしまう。でもこの本はスター学者2人の議論をたのしめるしな、とミーハー心とコスパ精神から取り寄せましたが、手にとってみれば150ページ強という薄さ。対談なのでさらにリーダブル、という読みやすい本でした。対談ものは日本以外はあまりウケない、とどこかで読んだ気がするけれどそんなこともないのかな?内容についての自分の理解としては、我々は特にここ数十年の政治的社会的経済的体験をもとにいわゆる個人にあらゆる責を帰す「公正社会仮説」信者状態だけれど、そのよって立つ足場はあらゆるものが商品化された「市場」だよー。ということ。2人の学者は大きくは脱商品化と人としての尊厳の回復、というもう一つ下の足場の強化が必要だと考えているのかな、と。それには政治レベルの改革と、地べたからの運動、両方やっていくのが良いのではないか、という感じでしょうか。頭の中がだいぶ整理された感じでよい読書になりました。
Posted by ブクログ
不平等についての2人の対談は、大変面白かった。色んな不平等が存在する中で我々人類が、いかに平等に、かつ幸福に生きるためのヒントが詰まっています。
しかし、政治や大学入試にくじ引きを使う案は、想像もしませんでした。
Posted by ブクログ
欧米を代表する知識人の対談を編集した書物ということで期待は大きかったものの、当たり前ではあるが対談がベースであるため、通常書物であれば解説されるようなことが両者間の知識のレベルによって省略(当然の前提として)されるため、理解が及ばないことが多々あった。また議論が噛み合わない点も多く、サンデルが多くを語らずに終わるテーマがあるのが残念。
それでも欧米の分断の背景等は説得力のある背景分析が語られ一読に値する。分量もなく2・3時間もあれば通読できる。
Posted by ブクログ
不平等は経済的なものに留まらず、仕事・生き方への尊厳にも及ぶ。そもそもあなたと私が何者かを定義しようとするから不平等が発生するのでは?鈴木大拙の「東洋的な見方」で論じる“西洋の二分的な見方”を思い出した。
Posted by ブクログ
世代的に、僕がかなり影響を受けた二人の思想家の対談本。特にピケティの『21世紀の資本』を読まなかったら今の道に進んでなかったかなとも思うので感慨深いです。内容はピケティが一方的に喋ってて、ほぼ単著でしたが、能力主義によって不平等が正当化されてしまい、その反発として反エリート主義(トランプ現象)に繋がってるというのは、頭に入れなければならない考え方だなと思います。
Posted by ブクログ
サンデルとピケティによる平等に対話。話はすれ違っている。かんたんにいえばサンデルは共同体にウェイトを置き、ピケティは社会に置いている。それぞれの駆動源は個人と制度設計である。
しかし、これは単にすれ違いなのだろうか。ピケティは制度設計による再分配で問題は解決すると考えている。最終的な目標は世界政府であり、要はシステムさえ整えれば世界はひとつになるという話だ。それが長大な時間がかかるとしても、である。
しかしサンデルの考えはその先にあるように見える。そのような話は、システムだけでは成り立たず、アイデンティティ(承認や尊厳、共感や帰属意識など広い意味での個人とコミュニティの精神性である)の問題をクリアしなければならない…だが、サンデルの問題意識に対してピケティはそっけない。このあたり、ピケティは自分では経済学者であることを否定するパフォーマンスをしたがるが、やはり経済学者である。哲学者のマインドは、ない。
Posted by ブクログ
格差と分断を是正する為に。エリートによるリベラルエリート批判。左派衰退の原因は、経済構造の在り方を問い直してこなかったこと、その経済構造の中で勝者の立場だったこと。雇用創出への左派の鈍感さの指摘はまさに。累進課税の強化、保健医療や教育の「脱商品化」。くじ引き民主主義や富裕税導入などの思考実験は面白いが…
Posted by ブクログ
さすが、現代の知性の先鋭同志のぶつかり合い、丁々発止のやりとりが続いて、圧倒される。
タイトルにあるように「平等」について、互いの考えを披歴し合うが、キーワードは「脱商品化」と「再分配」か。
言うは易し、行うは……の話ではあるが、サンデルさんが言う
「自分の成功は自分の手柄と考え、自身の成功を胸いっぱいに吸いこみすぎて、その過程で幸運や恵まれた環境に助けられたことを忘れ、自分が恩恵にあずかっていることを — あなた(=ピケティ)がおっしゃるように、ほかの人たちのおかげで成功できたということを — 忘れてしまうからです。」
この反省に立って、考えることだという学びがあった。
今、行き過ぎた資本主義が限界を迎えつつある中、既得権益にしがみつく旧態依然の権力が、やれ○○ファーストや、反グローバル化に固執しているが、自分勝手というか、近視眼的で、非常に危ういものを感じる今日この頃。
ピケティさんは言う。
「北側諸国は国際分業と天然資源・労働力の国際搾取によって豊かになってきた。これが、20世紀に北側で発展したタイプの社会民主主義と福祉型資本主義における何より重要な限界です。今後はこれを変えていかなくてはなりません。でないと競争が — とりわけ中国がもたらす地政学的競争が — 西側モデルにとって20世紀のソ連の脅威を上まわる深刻な脅威になるだろうと思います。」
そうなんだよなー、中国や、南側 — グローバルサウス — への危機感からの行動だとは思うのだが、長い目で見て、それは得策ではないと思う。
「脱商品化か再分配かを選ぶ必要はないと思います。歴史的にこのふたつが組み合わさって機能してきましたし、ふたつ組み合わさることで大きな効果をあげてきたわけですから。」
非常に、頭の良いお二人なので、概念的なところでどんどん論理を展開するし、互いの質問に、真っ直ぐ答えずに質問返しにしたりと、ディベートの粋をも尽くしたような高度な会話の応酬に置いていかれそうになるが、言ってることは首尾一貫、平等を獲得するため、「脱商品化」と「再分配」を、政治的、経済的、文化的に進めていくためには、「尊厳や相互尊重」を重視、それなくして、不平等を克服しようという感覚を調達しえない、ということだ。
Posted by ブクログ
書き方は平易だけど、内容は難しかった。今の政治をみていると、二人が目指しているような、不平等の解消を目指す社会の実現は、非現実的に思えてしまう。本の最後にある、「より平等な承認、敬意、尊厳、尊重を実現すること」に世の中が少しでも向かって欲しい。
Posted by ブクログ
対談の採録。
少し散漫かな。
それぞれの本を読む方が面白いと思う。
「成果・結果」を出すことを支える「公共財」への目配り
「成果・結果」に応じて配分される「報酬」の多寡
当たり前、と思いがちなことも、必ずしも当たり前ではないことに気をつけていきたい。