あらすじ
資本主義の果て、大いなる格差に覆われる現代。教育やヘルスケアを「脱商品化」するには? 左派はなぜ世界的に弱体化したのか? 大学入試や議会選挙にくじ引きを導入すべき? 当代一の経済学者と政治哲学者が相まみえ、真の「平等」をめぐり徹底的に議論する
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Posted by ブクログ
不平等の3つの側面=経済的側面、政治的側面、そして社会関係-尊厳、身分、尊重に関する側面、について語り合う。
トランプやル・ペンを生み出したものは左派がそれらについて置き去りにしてきたからだ、という。そしてそれらを解決していくためには、経済の脱商品化、累進課税の強化、大学入試や議員をくじ引きで・・と、幾つもの提案がなされる。二人の考えは、微妙に異なるが、大筋では合意されながら議論は進んでいく。
読者の覚悟が求められています。平等であるべきだ、とすれば3つの側面で大胆な改革を進める必要があることを明白で、それを現実の政治に引き付けて考えれば、各政党の今の主張、施策は平等を拡大するものか、不平等を拡大していくものなのかを見極めていく必要があり、それについて行動することが求められるということです。
ピケティ「公共サービスや基本財に投入する国民所得の割合を増やしていかなければならないという考えを、われわれはどこかの時点で受け入れなくてはなりません。では、どこまで増やせばよいのでしょうか? ヨーロッパ諸国を見ると、第一次世界大戦前までは税収が国民所得の10%未満でした。それがいまでは50%です。これを60%、70%、80%にあげなくてはならないのでしょうか? それは分かりません。ですが、あげる必要はあるのです。」
「アメリカでは20世紀、何十年にもわたって所得税の最高税率が80%や90%だったのです。1930年から1980年までのあいだ、所得税の最高税率は平均した82%でした。それでもアメリカの資本主義が崩壊したようには見えません。むしろこの時期のアメリカ経済は、労働時間あたりの国民所得で見た生産性は世界最高で、ほかの国々を大きく引き離していました。」
Posted by ブクログ
本当に、こうして本に収めたい対談ですね、感謝。
ピケティの頭の中ーそれを世界に、伝える体力と精神力。
サンデル教授も、自分の言いたいところちゃんとついてくる+まとめるのうますぎる。
何を今話しているか、きっと常に宇宙から衛星で眺めているんだろうね。
サンデル教授が問いを重ねて、ピケティの持論が展開されていく、
という問答スタイルに一見感じる部分も多いのだけれど、
最後にはサンデル教授の論、
つまり、これまでの著作で主に論点として議論されてきた、
グローバリゼーション、リベラリズム、
金融化、商品化、
能力主義、学歴偏重主義、
について、
ピケティもそれに合わせて話しているところはあるのだけれど、
思いっきり全面的に話してまとめられている気がしてくる。
ソクラテス強し。
二人の専門や注目するところが違いながらも、
違うからこそ、
使ってる言葉の意味を確かめ合ったり、
大事だと思っていることを共有し合って、
読者の理解も助ける。(わかっているつもりになっている部分もある。)
‥
本書対談では、言葉遣いとして、「格差」ではなく、「不平等」について議論する。
格差(Disparity)は、上下的な関係のあるような違い、優劣と言った意味も含むということで、
不平等(Inequality)は、本来平等であるべきものが、不均等にある状態。
人間はみな平等だ、という認識が基盤となっている現代社会だから、議論する必要があるテーマだということでもある。
で、なんで不平等がよくないのか。
現在の所得と富の規模は、社会的距離を伴う、という。
対等な話し合いができる環境が金銭的不平等で脅かされている。
よく考えてみればそういう側面がある。
そもそも同じ人間とは思えない生活をしている人がいて、
でもそれは王様とか貴族ではない同じ一般民の話だから、問題になる。
サンデルの、民主主義にとって、政治の運営にとってそのメンバーの間の一定の平等が欠かせない、という話に加え、
ピケティの、人類の繁栄にとって、歴史的にも、包摂性と平等、特に教育分野の平等な利用機会が不可欠だった、という視点。
‥
平等について、いま私も話したい。