中原尚哉のレビュー一覧
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在りうる未来技術をベースに未来社会を予測した小説(SF)を展開する。絶対に面白いに違いないと思ったわりには、普通。2041年は近すぎたか?
知っている技術と未来予測のオンパレード。ビッグデータと深層学習AIから予測される、保険、成りすまし、AI教師、ロボット医療、バーチャルアイドル、遠隔操作運転、自律兵器、AI代替による仕事内容の変化、個人データから派生する個別サービス、エネルギーや食糧の低価格化とベーシックインカム。
良かったもの:日本を舞台にしたアイドル償還、日本のオタク文化の描写はグッド豊穣の夢:豊穣という言葉は覚えておこう。豊穣の世界での幸福って、定年後の不自由ない年金生活者の幸福論に似ている。
2024年12月3日再読:AI解説本として面白い。2022年出版だが、すでに本書の予想を生成AIの進化が上回っている。AIによるエネルギー革命・材料革命・生産革命がおこると、豊穣の時代即ち人間が働かなくても必要なものを万民が手にすることがでkる時代が私が生きているうちに実現するかもしれない。そのとき社会システムは貨幣を含めてどのように変わるのだろう? -
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・ケン・リュウ編「金色昔日 現代中国SFアンソロジー」(ハヤカワ文庫SF)は「折りたたみ北京」に続く中国SFの第2弾である。登場人物等、さすが中国である。カタカナでではなく、漢字の名前が多い。ま づこのことに感心してしまつた。それほど私が中国とは無縁の読書生活を送つてゐるといふことである。さういふ内容の作品もあればさうではない作品もある。実に様々である。「本アンソロジーには、全部で十四名の作家による十六篇の作品が収録されて」(「序文」12頁)をり、「作品渉猟の場を拡大する方向に目を向けて」(同前)編まれたといふ。ただし、「本プロジェクトは、中国現代SFの代表的な作品を集めるという意図は」(同13頁)持つてゐないといふ。私にはいかなる作品が「中国現代SFの代表的な作品」か分からない。「中国SFと呼びうる作品の多様さと中国SF作家界の雑多な構成」(同前)といふことは、中国SFといつたところで、決して一つにくくれるものではないといふことなのであらう。
・表題作宝樹「金色昔日」はおもしろい作品であつた。私は現代中国の歴史を知つてゐるわけではないが、 それでもこの作品が現代中国の歴史をさかのぼつてゐることは分かる。主人公の「いちばん古い記憶はオリンピックの開会式だ。」(222頁)といふのが北京五輪であれば、彼は私達の同時代人であると言へる。 「三年生のときに感染症のSARSが流行し」(226頁)た。次にサダム・フセインやビン・ラーディンが出てくる。例の9・11もある。かうして様々な出来事があり、ゴルバチョフがソ連邦を作り、「?小平の計画経済改革が失敗し、経済は悪化の一途をたど」(243頁)る。さうして共産党内部抗争から天安門事件が起きる。主人公は学生側の指導部に加はるも、最後は軍隊に掃討される。……ここまで書けば十分であらう。この作品は歴史を改編しつつさかのぼつてゐる。従つて、最後は日独伊の三国同盟対米ソ同盟であ り、この中国側の動きとして国共内戦と国共統一戦線による抗日闘争である。この間に幼なじみの恋人が登場する。この女性の運命は歴史に弄ばれてゐる。最後は日中戦中に主人公に会ふことかなはず死ぬ。「ある意味で本書の作品中最も中国的な物語であ」(ケン・リュウ解説218頁)り、「人民共和国の歴史を知れ ば知るほど、この物語の意味もはっきりと見えてくる。」(同前)といふ。私に見えたものが宝樹の見たものであるなら、これが中国国内で発表できるのかと思ふ。「最初の公式な出版が英語版と」(同前)なるさうである。原典には"No Chinese publication"とある。中国語版なし。訳者はケン・リュウである。「公式な出版が英語」であるなら、非公式な中国語もあるのであらうか。中国国内で出せないから英語版を出したのではないのか。中国の現状を見る限り、危険を顧みずに敢へて出版するとは思へない。宝樹はいかなる人かと思つても、フリーライターであるらしいとしか分からない。web上 にもこれ以上はなささうである。この人、中国で現役の作家としてやつてゐるのだらうか。天安門事件や文革を描き、?小平の経済改革を失敗といふ。かういふことが許されるのなら、中国は今少しまともな国にな つてゐさうでる。しかしさうではない。あくまで習某の中国である。かうして日本語版が出るからには、この人の現在を心配する必要はないのかもしれない。もちろんこれは例外的な作品である。本書は普通のSFばかりである、とは語弊があるか。しかし、ここに様々な傾向の作品があり、様々な内容の作品があると知れる。おもしろい作品集であつた。 -
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複数巻を並行に読むシリーズ。
六浦賀を捕まえることを決心したベンこと紅功と昭子。しかし、ジョージ・ワシントン団の拷問で腕を失った昭子は、失った腕にレーザーガンを着けることを望む。また、六浦賀の待つサンディエゴには武装アーマーでしかたどり着けないことから、サンタカタリナ島経由で行きたいのだが、そのためには負けると殺されるゲーム大会で優勝するしかなかった…。
つらつらとあらすじは書いているものの、ほとんど忘れていたので、わからないまま読み進めていた。しかもほとんど説明なく会話で進むことから、なかなか状況が把握できない。
ロボットもののドライでクールな作品ではなく、血しぶきどろどろ、『北斗の拳』よろしく無法地帯で人が死にまくる設定なので、読む人を選ぶ作風である。読みやすいが、かなり疲れる。うーむ。まだ2作買ってあるんだよなあ、トライアス。
あとがきに、やはりのディック『高い城の男』の話、日本のアニメなどの影響について書かれていて、ずるいなあ、こんなの好感持つしかないやんという状況だが、漫画的に度の人を中心に読めばいいのかわからないことや、勢いだけで先走って主語が2つある文章など、お世辞にも読みやすい良作とはいい難い部分もある。
ただ、書きたかったことはよく分かる作品ではあったな。 -
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近年スマッシュ・ヒットを飛ばし続けている現代中国SFのアンソロジー、2019年に発売された「折りたたみ北京」に続く第二弾が満を侍して発売。SF者の期待感を表すかのような分厚さ。「折りたたみ北京」の1.5倍ぐらいになっている・・・(^_^; 早川書房さん、紙の文庫本は上下巻に分かれても構いませんので一冊あたりの厚みを抑えていただけないものでしょうかね〜。紙の文庫本にとって、「携帯性」ってとても重要なポイントだと思うんですけどね〜〜。
閑話休題。
一通り読んでみて、「折りたたみ北京」を読んだ時ほどの衝撃は、正直感じませんでした。読むこちら側の期待値の違いかもしれません。「よーし、面白いSF読むぞー!」と鼻息荒く読み始めたら、肩透かしを食った感じ。SFというよりも、「幻想小説」または「実験小説」といった趣の作品が多い印象です。
ただ、面白くないわけではありませんので念のため。SF風味は薄めかもしれませんが、ひとつの小説のとしての完成度はどれも高く、読後感は良いです。これ、中国の商業作家たちが、クロスオーバーにレベルの高い作品を輩出し続けている、ということですよね。中国の文壇は今、とてもエキサイティングな状況にあるのだと思います。SFの枠に囚われることなく、もっと読まれても良い作品集だと思います。
鴨的お気に入りは、劉慈欣「月の光」、宝樹「金色昔日」、張冉「晋陽の雪」あたり。いずれもSFとしてレベルが高いです。そして、やたらとインパクトがあったのが馬伯庸「始皇帝の休日」。「どこの野崎まどだよ」とツッコミを入れたくなる斜め上のぶっ飛びぶりで、どのような心構えで読めば良いのか最後までよくわかりませんでしたヽ( ´ー`)ノ
いやー、相変わらず肩幅広いですねー。中国SF、当たり外れはありますが、この先も引き続きチェックしていきたいです。 -
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1948年、アメリカでの地上戦に日本の皇軍が謎の破壊兵器を投入し、アメリカ全土を制圧してユナイデッドステイツオブジャパン(USJ)を建国した。1988年、終戦時に生まれたベンこと紅功は、USJにおける日本皇軍の諜報部に所属していた。ある日、元上司と思われる男性から「娘が死んだ」と電話を受けた…。
ディックの名作『高い城の男』同様、第二次大戦を起点としたパラレルワールド物である。もっとカラッとドライな話かと思いきや、わりかし重めのストーリーで面食らった。
日本皇軍、諜報部、憲兵といった日本人コミュニティに対して、テロ組織ジョージ・ワシントン団が裏の裏をかいて手を回してくる事に対し、日本軍は情け容赦ない鉄槌を下していく。
割と初期から100円で売られていたのだが、おそらく日本を悪役として描いた反日的な部分に嫌気が差した読者も多かったのではないかと考えられる。しかし、よく読み込んでいくと細部にそうではないことが見えてくるのだ。
翻訳の作品には非常に珍しく、どうも原作者の意図と思われる日本人名が漢字で書かれる。最初にでてくる日本人が深作慧(ふかさくさと)という漢字を書く時点で、なんか普通じゃないぞという雰囲気が漂う。いくらなんでも作者の意図を無視して六浦賀(むつらが)なんていう漢字を使わないだろう。
また、序盤では「天ぷらバーガー」などと適当っぽい食事に関しても、卵かけご飯(ゆで卵だが)、「本式の伊勢うどんを出す店は少ない」とまで来ると、この人、日本マニアで日本大好きなのだなと思わざるを得ない。
1988年に電卓(携帯電話)だの、1948年に巨大ロボットだのと、ありえない設定がでてくるのも、本当じゃないんですよという意思表示なのだろう。『高い城の男』で易を使って意思決定をしていたこととも似ている。
ただ、上巻ではさほど盛り上がらなかったので☆は3つ。ようやく巨大ロボットらしきものがでてきたので、後半に期待。 -
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巨大宇宙SFってなんだ? と思っていたら、スペオペでした。あとがきではスペース・オペラを連呼しているんで、禁句と言うことはないと思うが、背表紙や帯の惹句には、どこにもスペオペとは書いてない。なんとなく不思議。
で、中身の方はニュー・スペース・オペラ以降の、アクションSFが主軸。一昔前のスペオペ・アンソロジーなら、もう少しB級感というか、やさぐれた感じを出してきたような気がするが、これはこれでいい。ただ、これはお約束なのか、どれほどとんがったSFガジェットをてんこ盛りにしていても、人情とか、家族関係なんかは今と変わっていない設定のお話がほとんど。多少の違和感はある。 -
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J・J・アダムズが編纂したパワードスーツSF短編のアンソロジー。
全12編のパワードスーツが出てくる短編集で、表紙だけでなく全編の扉絵にあのSFイラストレーターの大御所である加藤直之氏がイラストを描いているという豪華な本である。
正直、加藤直之氏の様々なパワードスーツのイラストが目当てだったので、小説の内容はさほど期待していなかったが、全12編のうち面白いと思ったのが幾つかあった。
「アーマーの恋の物語」
天才科学者であり富豪である男性とその命を狙う暗殺者の女性が繰りひろげる異色のラブストーリー。
「天国と地獄の星」
異星の敵対的なジャングルで基地建設作業に従事するパワードスーツを着用した主人公たちの体験する想像を絶する事件。
終わり方が、映画アバターを思い出させる。
「N体問題」
ワープゲート網の行き止まりの星で繰り広げられる物語。
装甲服のヒロインが出てくるが、それはあまり話の筋には関係ない。
ただ話のアイディアと落ちが面白かった。
加藤直之氏のイラストが好きな人ならば買いの一冊である。