司馬遼太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
幕末の医者たちの話。主人公たちはみんな医者だし、基本的に物語は彼らの行動に沿って展開されるんやけど、結局のところ人物は点景として一枚絵に添えられているだけ、という印象を受ける。たぶんそれで間違いない。もちろんその「一枚絵」は「明治維新」という時代なんだけど、言葉としてはこれよりも「幕末」のほうが正しい。主人公たちが幕府に寄っていたから、というわけでなく、司馬が作品で意図したのは新時代の幕開けではなくて、旧秩序の崩壊であったに違いないから。
作中で語られるこの時代の医者、特に蘭医というのをふたつの側面から切ると、まず身分制度の埒外にいる。それから、蘭学を通していちはやく西洋思想に触れている。このふたつの側面をもって、江戸時代の秩序とその崩壊への過程を考察している。真の意味での時代の変容が外部からの圧力ではなく、内部に白熱する方向性を失った鬱屈によるものだとすれば、時代を読み解こうとするのにこの選択は素晴らしいとしか言えん。軍事の面を筆頭に司馬史観が疑われることは多いけれど、こういう洞察を見ると司馬遼太郎はやっぱり歴史の脚本家、あるいは俯瞰する人、としての天分を持っていたとしか思えへん。
ということで、例によって英雄譚ではなく時代の点描なんやけど、十分におもろい。人物によるスパイスがよく効いているというのももちろんあるんやけど、恬淡とした人々の向こう側にある悲劇性が滲み出るように感じられるのが良い。
-
Posted by ブクログ
本当は「国盗り物語」は全4巻だけど、歴史に疎い私は斉藤道三という人をよく知らないので、知っている織田信長の方だけを読んだ。
そうかそうか、斉藤道三は信長の舅だったのか。
私は歴史上の人物の中では、今まで織田信長が一番好きだった。
なんかこう、潔いというか、パキッとしてるというか、決断力も早そうで、戦に出るときはいつも一人で馬に乗って飛び出して、途中途中で馬を止めて部下が到着するのを待っていたとか、今までの武士とは違う考え方だったとか、そういうエピソードがすごく「かっこいい!」と思っていたから。
この本を読んでもやっぱり「信長はすごい」という考えは変わらなかったけど、でももし信長のような人が社長の会社があったら、私は働きたくないなぁ。
私には出世欲とか野心もないし、ただただ穏やかにのんびりと、平和に日々を過ごせればいいなぁというのほほん性格なもんで、もし信長が上司だったら速攻リストラにあっているだろう。
つーか斬られてたか。
信長の口癖の「デアルカ」というのが、なんだか私にはとてもかわいく思えてしまった。
なんでだろう、カタカナで書いてあるからかな?
この言葉が出てくると、いつもクスリと笑ってしまった。
信長が好きだったので、明智光秀のことは「嫌な奴!!!!」とずっと思っていたけど、この本を読んでその考えが変わってしまった。
すごく苦労した、かわいそうな人だったんだなぁ、光秀は。
ごめんよ光秀。
そんな辛い目に遭わされりゃあ、確かにその当時なら「殺してやる!」くらい思ったかもしれないよね。 -
購入済み
中身の話ではなくて、酷い話
池波さんの表紙で、路上でタバコ咥えている写真が載っているのがあります。
紙版の司馬さんの小説でも見たことがある。確か裏表紙。
携帯灰皿なんてない時代だから、ほぼ間違いなく、吸殻は道路にポイ。
この本の表紙も、電車の中で新聞広げてる写真が出てます。
電車の中で新聞広げる行為も、いっとき随分叩かれた行為です。
邪魔ですよね、特に混んでる時は。故に、今日ほとんど見ることはない。
作家さん本人にとって、出版側からの指示とはいえ、
こうした今日ではルールに反する写真を掲載するのは、あんまりな話です。
作者さんは故人だからどうしようもない。
タイトルもすごいですね。
のちの書籍のタイトルが概してスッキリしてるのは、この時に失敗してるからかなと勘ぐっちゃいます。
失敗から成功を紡ぎ出す貴重な例、なのかいな。
まあ、お好みで。
-
購入済み
賛否両論があるかもしれない
腹蔵なく具申させていただけば本作品は毀誉褒貶が激しいかもしれない。歴史観の乖離は誰にもある故、必ずしも司馬史観と一致しないことがかんがえられるゆえに。されど司馬作品には享楽できるような述懐が必ずあるようなので読んで後悔するとも限らないと思われる。
-
購入済み
大隈重信の描写に難あり
司馬氏が早大出身者に私怨でもあるのだろうか。必要以上に大隈重信のことをあしざまにけなしている点が見苦しかった。司馬ファンであるだけに実に残念だった・・・。