司馬遼太郎のレビュー一覧
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▼2巻。嘉兵衛は乞食のような放浪民から兵庫で「船員さん」になる。まだまだ貧しい。ところが優秀である。フリーの特殊技能者としてごりごり出世する。このあたり、農村の秩序のなかで陰湿にいじめられていた前史に比べて、実に爽快に実力主義です。このあたりは、現代でも同じでしょう。なんであれ商売や生産や、工事や料理などの「現場、最前線」では、役に立つ立たないが、学歴や所属会社と関係なくずる剥けに見えてしまう。
▼そして嘉兵衛は、「フリーのイチ労働者」から、「船(ぼろだけど)という資本?を所有する商売人」へと変貌していきます。このあたり、言ってみれば出世譚ですね。多少のわくわくがありますが、それだけに流され -
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紀元前221年に春秋戦国時代の中国を統一し、秦王朝を打ち立てた始皇帝の末期から始まる本書。それまでの封建性に取って代わり、官僚制による各地を統治するという斬新な方法で全国を支配した。万里の長城を始めとする数々の大型土木工事を行ったが、これを実行する為に各地から労働力を徴用しつづけたことで民心は離反していた。始皇帝が死ぬと各地で武力勢力が蜂起する。宦官の趙高は胡亥(こがい)を担いで形ばかりの後継の皇帝とし自らがすべてを取り仕切る事に成功する。
統制が乱れた地方では同じ様に各地域の旧王族を担ぎ上げた自称王国が多数誕生する。その中の一つが、江南の楚であった。項梁がかつての楚の王を血を引く男、羊の糞 -
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▼エンタメと考えれば、この小説は(日露戦争は)いろいろあっても最後が日本海海戦で圧勝して終わるので、溜飲が下げられて素晴らしい。その、苦しい辛い中で最後スッキリというヤクザ映画的な語り口がこれまた上手い。海戦でも、まずは三笠が被弾しまくる描写も延々とやる。その次にロシア側の(日本軍と比べ物にならない)被弾を描く。そういう順番構成とか。上手い。
▼一つ勘違いしていたことがあって。ポーツマスの和平のあとで、日比谷焼き討ち事件がある。つまり民衆が「より戦争を、戦果を」と暴動を起こした。その戦慄の描写があって。そして、日本海海戦の完勝、その成果であるポーツマス条約。だがその中から昭和の戦争と完敗に向 -
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▼奉天の戦い〜日本海海戦前夜。▼「坂の上の雲」の、「小説的ではない西洋歴史一般文章部分」を抜いたら、この上なく面白いのでは。なんだかんだ、外交のファクトを確認していくと、白人至上主義や各国の自国エゴが(当たり前だけれど)浮かび上がる。▼また、ロシアもドイツも結局は「遅れてきた新参者」だったから無理をする。日本も日露戦争で一応勝つことで「帝国主義的侵略者の新参者」として、なんというか、「一部リーグに昇格」することになる。講和が匂い立つこの巻あたり、そんな雰囲気が横溢。正義がどうこうではなくて、各自のエゴの問題です。善悪でもない。戦争だけではなくて人生万事その観点で、己と周りを客観視したいものです
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▼旅順を、あっという間に落としてしまう児玉さん。ここンところの描き方は天晴。ヤクザ映画の終盤のような、カタルシス。▼当然、戦闘ではなくそこに至る人間模様が滋味深い。確実に「坂の上の雲」で司馬さんが書きたかったことベストテンに入るくだりであろう。▼それにしても、たかが紙に文字がいっぱいあるだけなのに、そこに未知の山河で右往左往する幾万の軍勢が、その足元の凍てつく寒さまで感じられる。割と突き放した「半ルポルタージュ風」なのに。取材の情熱と、話題の並べ方。それに加えて、「感情的にならぬよう」と自分に叫びながら溢れ出ちゃう書き手の思い入れ。▼そうか、敢えて言えば「戦争と平和」トルストイ。アレも読み終え
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▼旅順が落ちない。なんともストレスである。ただ、通読3回目にして、司馬さんの「なんとなくの小説的意図」に気づく。司馬さんは旅順描写がストレスであろうとわかっていて、加減してはる。でも後でスカッとするためにはある程度ストレスも与えねばならぬ。▼司馬さんの取材もすごいが、それ以上に語り口がすごい。何かといえば「前代未聞」、「古今に例がない」、「史上初であろう」、みたいな文句が手を変え品を変え。それくらい、つまりは「面白いんだよこれ〜、ね?面白いでしょ?」、「この人物のこのエピソード、最高なんだよね〜、ね?最高でしょ?」ということ。▼これが逆に非難する場合も同じくになる。旅順の作戦司令部とか。▼とい
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▼日露戦争開戦。司馬さんは戦争が好きだ。ちょっと言い方が雑だけれど、司馬さんは戦争の細部や人間臭さが好きであろう。司馬さんは人間の明るさとか賢さとか合理性とか機能性とか合目的性とかが好きだし、そういうリーダーに率いられる人間の集団について、汲めども尽きない興味を持っておられる。▼そういうわけで、機械好きの子供がラジオを解体して仕組みを発見して喜び、そしてまた組み立てるように、司馬さんなりに明治日本と日露戦争を解体して検証しておられる。そして、司馬さんのような意では多くの人が戦争が好きであろう。「ガンダム」だって「銀河英雄伝説」だって「大河ドラマ」だって同じくでしょう。戦争が好きなのは男子が多い