橘木俊詔のレビュー一覧
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前回読んだ『ポピュリズムとは何か』において、課題意識として上がった社会的分断の下となる資本主義下での格差について、経済学的な見地からの示唆を得たいと思い、本書を手に取った。
まずは日本についての現状認識だが、所得格差を示すジニ係数は先進国においては、アメリカに次いで高く、日本は所得格差が小さい国ではない、つまり格差社会と言うことができる。また、さらには相対的貧困率も高い(16.1%)。なお、相対的貧困率とは、所得の50%tile値の半分に満たない所得の人口の割合である。
本書は、日本の所得格差の現状についてみた上で、歴史的に経済学が厚生経済学をはじめとして、どのように再分配をテーマに格差について捉えてきたかを概観する。また、直近の研究結果としてピケティを引き、有名な[r(資本収益率)>g(経済成長率)]の不等式を用いて、歴史的に資本を持つ資本家における収益が労働所得の伸びを示す経済成長率を上回ることで、経済格差が進んでいることの説明もある。こうした格差に対して、累進課税を通じた再分配機能が期待されてしかるべきであるが、ピケティに続く研究としてズックマンらは、アメリカの実質的な税率は節税手法等により、所得の最上位400人では平均税率を下回っていることが示されている。これは、累進どころか逆進的な税率となっており、再分配はおろか格差の加速を促してしまっていることになる。累進課税に対する主な批判として、高所得者の労働意欲の減少がよく唱えられているが、筆者は様々な研究を引きながら、高所得者における税率と勤労意欲に因果関係がないことを示している。つまり、トップレベルの高所得者においては、(よほどの高税率ではない限り)税率による勤労意欲の阻害よりも、内的動機付けのモチベーションが高く、ほぼ意欲に影響がないのである。これは面白い事実であった。
また、こちらも累進性に対する批判としてよくあるのが、トリクルダウン論法であるが、筆者はこれも否定する。過去、高所得者による成長が、不況や下請けたたきなどにより、低所得者の厚生を向上させた実績がないとしている。もっと言えば、高所得層になればなるほど、所得に占めるストックの割合も増えるので、r>gの不等式が成り立つ限り、トリクルダウンは起こらないのではないかとも感じる。
上記の事実は、効率性と公平性という経済学における二律背反と考えられているものに対しての一定の示唆があると考えられる。公平性を高めることで、効率性が阻害されるというロジックが、少なくとも限定的であるということが本書では示されているのではなかろうか。(このテーマは同じタイミングで読んでいた清水洋氏の『イノベーションの科学』でも考察されている。)
これらの事実をもって、日本の今後の方向性として、現在の低福祉・低負担の国家モデルではなく、北欧型の高福祉・高負担モデルへの転換へのアイデアが最終章では述べられている。そして、筆者は北欧型モデルでも経済成長ができるとしており、その理由として会社が一定の生産性をもとにした収益を上げられない場合には積極的に倒産し、従業員も会社間でのスムーズな移動やリスキリングを失業保険や国の学習支援制度による支援のもと、当たり前と受け止めていることを挙げている。日本が福祉国家となり、福祉の下となる経済成長を追うのであれば、こうした国民全体の生産性の向上が求めらるものであり、北欧型モデルにおける労働市場の在り方に対しても学ばなければならないと感じる。 -
Posted by ブクログ
格差と向き合って資本主義を深掘りした良書。
そう。格差。私の現状持つ問題認識と一致する。
データをもとに、現状の日本は格差が大きい国、と断言している。
私の漠然とした感覚を明らかにしてくれている。
高所得者の多くはオーナー経営者、というくだりがある。
これはまっとう。こうでなくては、と思う。
問題なのは、そうではないサラリーマン社長。
偏差値エリートかつ社内政治でのし上がり、コスト削減で利益を出し株主にいい顔
しているだけの無能経営者がのうのうと高い報酬を得ている。
これは公平感まるでなし。
末端の社員、いや、社員ですらない下請けが雀の涙、時給1000円程度の最低賃金
でいる中、サラリーマン経営者がその50倍くらいをもらってるとしたら、、
説明つかない。
何かのタイミングで日本の経営者の報酬が低い、アメリカをまねよう、
というところからこうなってしまった。オーナー以外は低くていいのだ。
学生時代勉強してきたから、社畜として働いてきたから、、、
そんなもんでそんな差がついてはいけない。と思う。
累進課税でもっと取って所得再分配すべきだ。
新自由主義で悪者にされているわれらがミルトン・フリードマン教授は
負の所得税という概念を打ち立てている。これぞ再分配。
同時に最低賃金を否定している。
これは教育期間はそれより低くしないと企業がその人を雇わない、と。
実際日本は最低賃金1,000円すら払えない零細企業が多数あるという。
だから留学生を低賃金で雇う、という悪手に出たわけで。
貧しい日本。欧米の半分。
そうなった要因の一つに、利益を得た大企業が内部留保ばかりしている、
というのがある。サラリーマン経営者が現業に投資しないから。
悪循環だ。
格差の根っこは日本の偏差値優遇教育にある、と見る。 -
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「女女格差はある」
その原因が
男女の性差なのか
親の考え方なのか
親の経済力なのか
女性同士の軋轢なのか
それとも本人の選択なのか
なんにせよ本書では格差はあると言うことを分析結果として出してます。
結婚と離婚
子どもをもつかもたないか
専業主婦と勤労女性
総合職が一般職か
正規労働が非正規か
美人と不美人…
いろいろな比較がありますがかなりセンシティブな課題を突っ込んで分析されてると思います。
個人的にはほとんど実生活で感じてることと違わないかなと思います。
ただ子供のところはちょっと攻めすぎかなと思いました。
やっぱり妊娠中絶は望まない妊娠の場合は尊重すべきで産む方に説得するのはいかがかなぁと思います。
少子高齢化ですから少しでも子供が増えるのは望ましいです。
ただ親の顔がわからない子供が増えるのは経済政策とはまた違う分野なのかなあと。 -
Posted by ブクログ
全体の構成もグラフも文章も凄く分かりやすかったです。普通に生きていると、自分と同じような環境の人達が自分と同じような変化のない生活をしているように思ってしまいがちですが、データを通して、自分と違う国の人や自分とは違う世代の人達がどのように生きているかを知るいい機会になりました。富裕層と貧困層、教育格差あたりは特に興味を持って読めたし、自分の生活にも関連があって面白かったです。自分以外の人がどういうことを感じながらこの本を読んだか…についても興味があります。
1人の日本人として、もっと働いてもっと稼いで、もっと日本を良い国にするために還元したいな…
1度真剣に将来を考えよう…という気になれました。 -
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ネタバレ「パワーカップル」「ウィークカップル」
本書はとりあえずシングルは置いといてカップルの格差拡大に言及しています。
昔は旦那に甲斐性があれば専業主婦で家を守り子供を育て
無ければ補うために奥さんが働いて
ってのが「ダグラス・有沢の第二法則」やったそうです。
今はその法則が崩れて稼げる女子がそのまま稼いで同じで甲斐性の旦那を見つけ
「パワーカップル」が生まれてきたそうです。
ただそうなると晩婚化と少子化が進んでいくとのことです。
子供は社会的に効用が高いです。
労働力としてだけではなく消費としても期待できます。
たしかに毎年何回も旅行に行くとかええトコに外食に頻繁に行くとかしないと消費性向に向かわず貯蓄性向に向かいます。
我が家も今年はダブル受験生なのでまさに飛ぶようにお金が出ていきますが子供がいなければこんなに使うことはないと思います。
ただ「子供は社会的効用が高い」といっても「パワーカップル」は自分の楽しみを犠牲にしてまで子供を持つインセンティブが働かないと思います。
また「ウィークカップル」はもっと切実で先立つモノがなければ子供なんて…ってなると思います。
そうなると少子化対策と連動した貧困対策が必要になるとは思います。
ただもっと必要なのは意識なんでしょうね。
子供が社会に有用であるならもっとお金をかけて良いと思いますし不幸な子供たちが減る政策にお金をかけるべきなんやと個人的には思います。
もっと若いうちに子供が欲しくなるような支援があれば「パワーカップル」も早くに子供を産み育てるでしょうし
「ウィークカップル」もお金に気兼ねなく子供が持てるでしょうし
結婚したいのに所得が低くて諦めてる層も希望が持てる社会になるんやないかなと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ作者ご本人はいまその状況のお子さんがいたらどうするか?という問に、
「小学校、中学校までは公立で高校生くらいから私立もいいのかも」
というご意見でした。
BS日テレの久米書店リターンズという番組で紹介されていたものです。
ご本人ゲストでその本について語るのですが、
ゆとりは中学2002年から2011年、高校は2014年くらいまでっていう。
その世代についてと、いじめ問題について。
都内、大都市の偏差値の高い私立のいじめと、
郊外、偏差値の低い私立のいじめの質。
公立のいじめより私立のほうが多い理由は国が関与しているかどうからしい。
偏差値の高いところはいじめが少ない。
とか。
色々なるほどがありました。 -
Posted by ブクログ
中の人でもある自分がどうコメントしたら良いものやら。
この種のことを面白おかしく書き散らしている類書も多い(それだけこの職業は、良い意味でも悪い意味でも世間から注目されているからだと思う)が、視点の次元が高いと言うのか、私と著者の感性が同じ(などと言うのはおこがましいが)なのか、ぴったりと「嵌まる」。
ムキになって否定する人も多いが、実際にいい加減なことしている同業者も居るのは事実。(多いか少ないかは別として)
学生の実態も。
「関係者がひた隠す不都合な真実」、まさにそのとおり。
まだ「上がり」には少し早い私は、これからどうすれば良いのだろう・・・