小林由香のレビュー一覧
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ネタバレ亡き姉の夫が逮捕された。人を殺してホルマリン漬けにし、自宅で保管していたというあまりにもおぞましい容疑だ。
娘を亡くし離婚して独り身の主人公は、姉の息子である良世を引き取るのだが、言葉を話さず何を考えているのか分からない子で、もしかして「悪魔の子」なのではないかと不安になる……といったお話。
ミステリに分類はしたが、かなりヒューマンドラマに近い味わいで、いままであまり読んだことがないタイプの作品だった。
良世は「悪魔の子」なのか、兄は本当に殺人犯なのか、亡き姉は本当は自分を憎んでいたのか、さまざまな疑念にかられ不安に揺れる主人公の心情をとても繊細な手つきで描写しており、信じるべき人を信じるこ -
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「イノセンス」とは、無罪、潔白を表す英語、別に純粋さた無邪気さを意味することもあるらしいです。
主人公は中学生の頃不良に絡まれた音海星吾…星吾を助けようとして命を落とした医大生の氷室慶一郎…彼を助けることなくその場から逃げ出した星吾は、GK(ゲスクズ)と世間から批判を浴び、息を潜めるかのように生きてきた…。大学入学後は、美術サークルに所属し、顧問の宇佐美やバイト仲間の吉田光輝、ひょんなことから知り合った黒川沙椰との交流を得て自ら抱える闇に向き合う中、命を狙われることに…。
星吾も沙椰も法的な犯罪を犯したわけではないのに、ふたりの抱える苦しみは限りなく深い…。だって、まだ中学生なんだか -
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週刊誌記者の今井柊志が主人公。柊志が幼いころ、当時19歳の兄がリンチ殺人を犯したことで、姉の小夜子とともに過酷な生活を送らなければならなくなった…。被害者は小夜子の親友、梨七の弟であった。父母は立て続けに家を出ていき、小夜子は親友だった梨七とうまくいかなくなり、さらにいじめを受けた末に交通事故死…一人になった柊志を伯母夫婦が引き取り育ててくれた過去がある…。そんな過去を題材にした小説を手にした柊志…また時期を同じくして勤務先に、「今井柊志の兄は殺人者だ」というような怪文書が届いたのだった…。
読んでみて感じたのは、被害者と加害者の問題ということもありますが、ネグレクトの問題もはらんでいま -
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週刊誌記者の今井柊志には子供の頃、美麗村少年リンチ殺人事件で、当時19歳だった異父兄の舜士が15歳の天地晃太郎を四対一でリンチ殺人をして殺している過去があります。
そして当時6歳だった柊志の異父姉の小代子17歳も自殺とみられる交通事故で、その年の7月7日に亡くなっていました。
柊志は覆面作家の書いた小説『ゴールドフィッシュ』が当時の自分と姉の小代子との間にあったこととまるで同じシチュエーションで書かれているのを読んで、なぜ作家が知っていたのか調べ始めます。
すると覆面作家の本名は天地梨七で、リンチ殺人で亡くなった天地晃太郎の姉であり、また自分の姉の親友であることがわかります。
しかし柊志 -
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週刊誌記者の今井柊二は、『ゴールドフィッシュ』という小説を読み寒気を覚えるほどの驚愕を覚える。
雨宮世夜という著者が書いた本の内容が、幼い頃に体験した記憶だったからだ。
覆面小説家である雨宮世夜の正体を探ろうとした矢先に封印していた過去の事件のことを知る者からの電話が…。
幼い頃、親に愛された記憶はなかった柊二には父親が違う歳の離れた兄と姉がいたが、兄が起こした事件で父が失踪し、しばらくして母も家に戻らなくなり、姉は事故で亡くなるという悲惨さを経験したが、伯母夫婦に引き取られて育てられた。
何故、今になって兄の事件のことを…誰がと思う気持ちと姉の事故のことも詳しく知らなかったこと、そして電 -
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「児童保護救済法」という法律が可決された世界を舞台に、虐待やいじめ、貧困などで苦しむ子供たちを救うための「児童救命士」を主人公とした小説作品で、4つの事件が連作短篇形式で語られています。
「子どもを救う」という、まさに失敗が許されない仕事に対して、恐怖を感じながらも真正面から取り組もうと奮闘する主人公や、その傍らに立ちつつも昼行灯のように何の役にも立っていないように見えるのに、しっかりと真相を把握している先輩など、登場人物のキャラクターもしっかりと描かれています。
なにより、辛く厳しい環境におかれて崩れ落ちそうになる子供たちを、ギリギリのところでつなぎとめている児童救命士たちの活動には、創作 -
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※
最終話のジャッジメントを読み終えて、
二の腕には鳥肌が立ち、背中は粟田って
身震いし、言葉では言い尽くしきれない
さまざまな感情に心が震えました。
第1章 サイレン
第2章 ボーダー
第3章 アンカー
第4章 フェイク
第5章 ジャッジメント
凶悪な犯罪に対し法改正で“復讐法“が生まれ、
被害者側が加害者へ合法的に復讐することが
認められるように変わった時代。
ただし、復讐の執行は被害者側が自らの手で
行い、かつ被害者が受けたことと同じことを
加害者に対して応報する。
大切な人を失った悲しみ、怒り、後悔、
憤り、喪失感、虚無感、やり場のない
さまざまな感情を抱えて思い悩む被害者と
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葉月翔子は、5歳だった娘を交通事故で亡くし、夫と離婚してから1人で暮らしている、元美術教師だ。
ある日、亡くなった姉の夫である南雲勝矢が、自宅に2人の遺体をホルマリン漬けにしていたという事件が起きる。
勝矢と亡き姉の息子である良世(りょうせい)は小学生であり、もし翔子の娘が生きていれば同じ年だ。
翔子は、兄から頼まれて良世を引き取る決意をする。
良世は場面緘黙症であり、当初言葉でのコミュニケーションをとることはできない。
ただし、絵が抜群に上手い。
少しづつ言葉を交わすことができるようになっても、良世が何を考えているのかは、よく分からない。
良世の父親が老婆と幼女を殺害して首を切断し死体を保 -
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著者初読み。
死んだ姉の子良世と同居することになった翔子。父親が猟奇殺人を犯している良世は、場面減黙症となって口を閉ざし、何を考えているかわからない。翔子は娘を事故で亡くしており、その過去が良世との関係にも影を落とす。
彼との関係を良好にしたい翔子は、姉の親友の助けも借り、何とか良世が口を聞くようになる。
しかし、翔子が良しと思った決断も、「翔子さんは神様じゃないのに責任がとれるのですか」との良世の言葉が暗示するがごとく、二人の環境が暗転する。
現代を舞台にした場合、ISNなどネット関係を取り入れない小説はあり得ず、本書でもネット社会の負の側面が物語の展開に影響を及ぼす。
不穏な状況の連続に、