小林由香のレビュー一覧
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もし、自分の家族が犯罪に巻き込まれたとして、被害者と加害者になるとしたらどっちがいいだろう。それが殺人事件ともなったら簡単に答えは出せそうもない。
以前『望み』を読んだ時、散々考えたけれど、なかなか答えが出せなかったことを思い出した。
さて、この『魔者』は、ある週刊誌の記者、柊二が自分の幼少期の記憶に酷似する小説を読み、疑問を持つ。その記憶とは、自分と亡くなった姉しか知らないはずの記憶だった。
その謎を解くべく、作家を探すことにした柊二。その頃から柊二の職場に『おまえの兄は人殺しだ』という嫌がらせの電話がかかるようになる。柊二の兄は『美麗村少年リンチ殺人事件』の犯人だった・・・。
作家を探すことになってからはミステリ全開の展開に。謎が謎を呼んで一気にクライマックスまで連れて行かれる。
なんとも悲しい物語だった。家族が殺人事件に巻き込まれるとして、被害者と加害者、どちらがいいか。未だに答えが見つからない。 -
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『復讐法』か…
犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に刑罰として執行できる!
今って、殺された被害者より、生きてる加害者の方の人権ばかり…
なので、こういうのをテーマにした小説できるんやろな。
自分の子供が、めっちゃな殺され方したら、感情としては、殺してしまいたい気持ちは分かるし、私もそう思うやろうな。
しかし、自分の手で、刑を実施しないといけない(相手を殺す)ので…
加害者と同じで、クズな人殺しになるって事なんで。
その刑が執行されるのを短編集5篇にして描いてる。
どれも、刑を受ける人は、受けるだけの資格がある(要は、思いっきりクズってこと!)ので、同情はしないけど、執行する人、それに同伴する役人さんはツラい。
ほんまに、こんな事してええんかな?って思うもんな。
実際に、刑受けた人の事は、自業自得の面はあるけど、執行する側も、今後、まともに生きていけるとは思えず…
でも、もうその刑の執行を決めた時点で、後のことなんか考えてないんか…
う〜ん… -
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ネタバレ亡き姉の夫が逮捕された。人を殺してホルマリン漬けにし、自宅で保管していたというあまりにもおぞましい容疑だ。
娘を亡くし離婚して独り身の主人公は、姉の息子である良世を引き取るのだが、言葉を話さず何を考えているのか分からない子で、もしかして「悪魔の子」なのではないかと不安になる……といったお話。
ミステリに分類はしたが、かなりヒューマンドラマに近い味わいで、いままであまり読んだことがないタイプの作品だった。
良世は「悪魔の子」なのか、兄は本当に殺人犯なのか、亡き姉は本当は自分を憎んでいたのか、さまざまな疑念にかられ不安に揺れる主人公の心情をとても繊細な手つきで描写しており、信じるべき人を信じることの難しさをひしひしと感じる。
猟奇的な描写もあり終始ぞわぞわしながら読んだが、救いのある結末でほっとした。
神様ではない我々は、神様ではないゆえに、自分が何を信じてどう行動するのか、つねに責任を持たねばならないのだな。 -
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「イノセンス」とは、無罪、潔白を表す英語、別に純粋さた無邪気さを意味することもあるらしいです。
主人公は中学生の頃不良に絡まれた音海星吾…星吾を助けようとして命を落とした医大生の氷室慶一郎…彼を助けることなくその場から逃げ出した星吾は、GK(ゲスクズ)と世間から批判を浴び、息を潜めるかのように生きてきた…。大学入学後は、美術サークルに所属し、顧問の宇佐美やバイト仲間の吉田光輝、ひょんなことから知り合った黒川沙椰との交流を得て自ら抱える闇に向き合う中、命を狙われることに…。
星吾も沙椰も法的な犯罪を犯したわけではないのに、ふたりの抱える苦しみは限りなく深い…。だって、まだ中学生なんだから…そこまでの判断を強要しても…と思う反面、でも大事な人を失った悲しみがそこに向くのもわかる気がして…。どこまでも苦しく切ない思いを感じながらの読書、でもラストにはちょっと救われました。これから…です!!
最後に、星吾のおじいいちゃんが本当にいい人です!
「今は不寛容な時代だと言われているけれどな、人を許すのはとても大切なことなんだ」
「人間は誰しも失敗する生き物だよ。完璧に生きられるものなんていやしない。過去を探れば誰だって愚かな出来事のひとつやふたつ見つかるもんさ。心から反省しているのに、それをずっと責められたら誰も生きてはいけない。もちろん、自分自身の過ちも許してやらなければならないよ。歳を重ねるとな、ときどき誰も悪くなかったんじゃないか、そう思うことがあるんだ。ただ、必死に生きようとしていただけじゃないのか」
「お前が優しい子なのは、じいちゃんはよくわかっている。これだけは忘れないでくれ。星吾はじいちゃんの大切な宝物だからな」
こんなこと精神的に追い詰められているときに言ってくれるおじいちゃんの優しさ…こんな風に言ってくれるおじいちゃん、ほしいですよね!! -
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週刊誌記者の今井柊志が主人公。柊志が幼いころ、当時19歳の兄がリンチ殺人を犯したことで、姉の小夜子とともに過酷な生活を送らなければならなくなった…。被害者は小夜子の親友、梨七の弟であった。父母は立て続けに家を出ていき、小夜子は親友だった梨七とうまくいかなくなり、さらにいじめを受けた末に交通事故死…一人になった柊志を伯母夫婦が引き取り育ててくれた過去がある…。そんな過去を題材にした小説を手にした柊志…また時期を同じくして勤務先に、「今井柊志の兄は殺人者だ」というような怪文書が届いたのだった…。
読んでみて感じたのは、被害者と加害者の問題ということもありますが、ネグレクトの問題もはらんでいます。だけど、それだけではなく、小夜子と梨七のエスポワール(フランス語で希望)という友情や、柊志を思う職場の人間関係にはじーんとさせられました。
小林由香さんの作品はこの作品で4作目…結構好きなタイプの作家さんなので、少しずつ読み続けたいと思ってます。でも、今のところの一番は「チグリシアの雨」だなぁ…これから他の作品読んだら、順番変わるのかもしれないですね!!それは、それで楽しみです。 -
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「児童保護救済法」という法律が可決された世界を舞台に、虐待やいじめ、貧困などで苦しむ子供たちを救うための「児童救命士」を主人公とした小説作品で、4つの事件が連作短篇形式で語られています。
「子どもを救う」という、まさに失敗が許されない仕事に対して、恐怖を感じながらも真正面から取り組もうと奮闘する主人公や、その傍らに立ちつつも昼行灯のように何の役にも立っていないように見えるのに、しっかりと真相を把握している先輩など、登場人物のキャラクターもしっかりと描かれています。
なにより、辛く厳しい環境におかれて崩れ落ちそうになる子供たちを、ギリギリのところでつなぎとめている児童救命士たちの活動には、創作ではありますが頭が下がる思いがします。
読後感としては、以前少年マガジンで連載されていた『シバトラ』という生活安全課の刑事を主人公としてあ漫画に近いでしょうか。主人公やその先輩に救われた児童たちが、少しずつ心を開いていく様子は感動的です。
一方で、いじめや虐待などで苦しんでいる(苦しんでいた)当事者やそれを見ていて救うことができなかった周囲の人々にとっては、思い出したくない記憶を思い出させることになるかもしれません。現実では、この作品で描かれているように「救う」ことができなかった例もすくなくありません。そういう意味では「大人向け」の本かも知れません。 -
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最終話のジャッジメントを読み終えて、
二の腕には鳥肌が立ち、背中は粟田って
身震いし、言葉では言い尽くしきれない
さまざまな感情に心が震えました。
第1章 サイレン
第2章 ボーダー
第3章 アンカー
第4章 フェイク
第5章 ジャッジメント
凶悪な犯罪に対し法改正で“復讐法“が生まれ、
被害者側が加害者へ合法的に復讐することが
認められるように変わった時代。
ただし、復讐の執行は被害者側が自らの手で
行い、かつ被害者が受けたことと同じことを
加害者に対して応報する。
大切な人を失った悲しみ、怒り、後悔、
憤り、喪失感、虚無感、やり場のない
さまざまな感情を抱えて思い悩む被害者と
関係の深い人たち。
大切な人を失ったとき、法に則って加害者に
復讐ができるとして実際に実行できるのか。
同じ痛みを相手に仕返しし、命を奪えば、
被害者の無念を晴らせるのか。
失った悲しみを乗り越えられるのか。
とても深いテーマでした。
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Posted by ブクログ
葉月翔子は、5歳だった娘を交通事故で亡くし、夫と離婚してから1人で暮らしている、元美術教師だ。
ある日、亡くなった姉の夫である南雲勝矢が、自宅に2人の遺体をホルマリン漬けにしていたという事件が起きる。
勝矢と亡き姉の息子である良世(りょうせい)は小学生であり、もし翔子の娘が生きていれば同じ年だ。
翔子は、兄から頼まれて良世を引き取る決意をする。
良世は場面緘黙症であり、当初言葉でのコミュニケーションをとることはできない。
ただし、絵が抜群に上手い。
少しづつ言葉を交わすことができるようになっても、良世が何を考えているのかは、よく分からない。
良世の父親が老婆と幼女を殺害して首を切断し死体を保管していたという猟奇生の強い事件を起こしたことからも、翔子の良世への疑念は強くなっていく。前半は心理サスペンスさながらだ。
良世が残酷な遊びや残酷な絵を描くことについて、私だったらどう声をかけられるだろう…と考えたが、的確なことを言えないだろうということしかわからなかった。
特に亡き娘の部屋に入り娘の持ち物やアルバムを持ち去った上で、娘の首をはねる絵を描いてたときは、私ならここで養育をギブアップするだろうと思ったよ…。
それでも良世の手を離さなかった翔子はえらいよ。
南雲勝矢が事件を起こした背景と良世の生育歴が明らかになり、姉の過去が明らかになり、色々と頭の中で解決するものの、色々と疑問はのこった。
姉は南雲にとって神様みたいな人なのだろうが、それならばなぜ命と引き換えに産み落とした良世を愛せなかったのだろう…。
姉も、南雲が良世を大切に育ててくれると信じて死んだだろうに。自分が死んだ後の世の中について、何も手出しすることはできない。姉の無念を思うとともに、自分はこの世からお別れしてしまおうという南雲の自分勝手さ、南雲が起こした事件の影響が残る世界で生きていかなければならない良世への頓着のなさに、腹が立った。
最後まで読んでみれば、身体的虐待をしていなかったしても、あんな事件を起こす南雲が適切な養育をできていたはずもなく、良世に事件の悪影響があったんだとわかるはずなのに、私も良世が生まれながらの危険な人物、サイコパスなのではないかという疑念にかられてしまった。
前半の心理サスペンスは、それくらい真に迫っていたと思う。
犯罪者の子として生きていかなければいけない良世は、これからの人生もつらいことがあるんだろう。
良世は小学生、中学生という子どもでありながら、身近にいる人を無条件で信用することができないことのつらさが、身に染みた。
それでも、生きていかなければならない。
できるだけ良い人生を、信頼できる人とともに生きていく。それは簡単なことではないんだ。愛された記憶、経験が人の土台になるし悪にながれないための抑止力になるのだと、私も思う。すべての子どもに、それがありますように。
子どもにとっての心のホームグラウンドとしての家族、大人の存在について、深く考えさせられた本だった。 -
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ネタバレ読書備忘録699号。
★★★★☆。
小林由香さんを読んで苦しむシリーズ。笑
苦しかったです。ただ、小林さんらしくラストは救いのある終わり方でした。
主人公音海星吾、大学2年生。
ベランダに「カガイシャハシネ」と書かれた文庫が投げ込まれる。どうやら何かしらの事件の加害者とされていることはわかる。
動揺する気持ちを落ち着かせ、大学に向かう。
最寄り駅で電車に飛び込もうとする男性を救う。ただ、「昼間に飛び込むな。迷惑だ。飛び込むなら深夜にしろ」と暴言を吐く。
その場に居合わせた女子大生が「今の発言でこの男性が今夜自殺したら、貴方のせいだ!」と星吾を罵る。その言葉に星吾は動揺する・・・。
星吾の心の闇。中学3年の時・・・。
成績優秀だった星吾は、数か月後に行われる高校受験に向け、夜遅くまで塾に通っていた。塾からの帰宅途中、カツアゲに合う。助けてくれた大学生氷室慶一郎。そして、慶一郎はナイフで刺されて殺された。
ナイフで刺されて苦しむ慶一郎を見捨てて逃げてしまった星吾。逃げた中学生は加害者と同じだ!とネットで誹謗中傷が吹き荒れる。個人を特定された星吾はネットで、リアル世界であらゆる嫌がらせ、攻撃を受け、心的外傷後ストレス障害を患い今に至る。
そして今。大学では美術サークル顧問の宇佐美に労わられるようにひっそりと生活を送っていた。
コンビニでのアルバイトでも、同じ大学に通う吉田光輝くんが良くしてくれていた。
そして、ホームでの自殺未遂現場に居合わせた女子大生、黒川紗椰。母親を自殺で亡くしており、それは自分のせいだ、と星吾と似た加害者としての闇を抱えていた。次第にお互い惹かれていく星吾の紗椰。
そして加害者への復讐が動き出す・・・。
星吾を狙っているとしか思えない花瓶の落下事故や、車道に突き飛ばされる事故が起きる。
慶一郎を殺害した加害者がナイフで刺されて殺される。
復讐しようとしているは誰なのか?
宇佐美の過去、光輝、紗椰の慶一郎との関係が徐々に明らかになっていく。
そして星吾への復讐が実行に移される!
良く練られたミステリでした。
加害者への復讐心に精神を乗っ取られ、正常な判断が出来なくなっていく様が恐ろしい。
自らをずっと加害者だとして悩み、執拗に繰り返される嫌がらせと誹謗中傷の中で他人との係わりを極度に恐れて生きてきた星吾の苦しみ。
そんな中で手を差し伸べてくれた宇佐美や光輝。星吾は学生コンクールに心の様を描いた絵を応募する。
その絵とは何を描いたものなのか・・・。
星吾への復讐事件の真相と共に、絵の内容が明らかになるエンディングは例にもれずジジイの目が潤んでしまいました。電車の中で。笑
加害者とは?贖罪とは?復讐とは?を考えさせられる物語でした。
まだまだ続く小林由香さんを読んで苦しむシリーズ!
実は私の苗字も小林だったりする。笑