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【Innocence:[名]無罪、潔白】
音海星吾は美術サークルに所属する大学生。中学生時代、不良に絡まれた星吾は、彼を助けようとして身代わりに刺された青年を見捨てて逃げてしまう。青年はその後死亡したため、星吾はネット社会を中心とした世間の誹謗中傷を浴び続ける。
大学入学後も星吾は心を閉ざして生きていたが、ある日、ホームから飛び降りようとした中年男性に「そんなに死にたいなら、夜にやってよ。朝やられると迷惑なんだ」と心無い言葉をぶつけてしまう。現場を目撃していた同じ大学の学生・紗椰にその言葉を批判されるが、それがきっかけで星吾は彼女と交流を持つようになる。星吾は心惹かれるようになった紗椰に思いを告げようとするが、自らの過去の重みのため、踏み出すことができない。コンビニのバイト仲間の吉田光輝、美術サークルの顧問・宇佐美ら周囲の人間との交流を通して、徐々に人間らしい心を取り戻しかける星吾。
そんななか、星吾を狙うように美術室の花瓶が投げ落とされ、さらに信号待ちの際、車道に突き飛ばされるという事件が起こる。星吾を襲う犯人の正体は? そして星吾の選択とは――。
一度過ちをおかした人間は、
人を好きになってはいけないのだろうか。
魂を揺さぶるラストが待ち受ける、慟哭のサスペンス!
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Posted by ブクログ
「イノセンス」とは、無罪、潔白を表す英語、別に純粋さた無邪気さを意味することもあるらしいです。
主人公は中学生の頃不良に絡まれた音海星吾…星吾を助けようとして命を落とした医大生の氷室慶一郎…彼を助けることなくその場から逃げ出した星吾は、GK(ゲスクズ)と世間から批判を浴び、息を潜めるかのように生きてきた…。大学入学後は、美術サークルに所属し、顧問の宇佐美やバイト仲間の吉田光輝、ひょんなことから知り合った黒川沙椰との交流を得て自ら抱える闇に向き合う中、命を狙われることに…。
星吾も沙椰も法的な犯罪を犯したわけではないのに、ふたりの抱える苦しみは限りなく深い…。だって、まだ中学生なんだから…そこまでの判断を強要しても…と思う反面、でも大事な人を失った悲しみがそこに向くのもわかる気がして…。どこまでも苦しく切ない思いを感じながらの読書、でもラストにはちょっと救われました。これから…です!!
最後に、星吾のおじいいちゃんが本当にいい人です!
「今は不寛容な時代だと言われているけれどな、人を許すのはとても大切なことなんだ」
「人間は誰しも失敗する生き物だよ。完璧に生きられるものなんていやしない。過去を探れば誰だって愚かな出来事のひとつやふたつ見つかるもんさ。心から反省しているのに、それをずっと責められたら誰も生きてはいけない。もちろん、自分自身の過ちも許してやらなければならないよ。歳を重ねるとな、ときどき誰も悪くなかったんじゃないか、そう思うことがあるんだ。ただ、必死に生きようとしていただけじゃないのか」
「お前が優しい子なのは、じいちゃんはよくわかっている。これだけは忘れないでくれ。星吾はじいちゃんの大切な宝物だからな」
こんなこと精神的に追い詰められているときに言ってくれるおじいちゃんの優しさ…こんな風に言ってくれるおじいちゃん、ほしいですよね!!
Posted by ブクログ
自分にとって、大切な人がトラブルに巻き込まれ、理不尽な形で亡くなってしまったとき、きっと、多くの人がその命を奪った相手に対して"憎しみ"を抱くと思う。
だが、もし、憎みに憎んできた相手が、自分と同じくらい"苦しみ"を背負って生きているとしたら、果たして、それまで抱え込んできた"憎しみ"はどうなるのだろう・・・。
誰かを殺すということは、相手の命を奪うだけではなく、その人を大切に想っている、周りの人の心を殺してしまうことでもあるのかもしれない。
そして、心を殺されてしまった人は、強い。守りたいと思う者がいなくなって、空っぽになってしまった人は、だからこそ、強い。
憎しみの連鎖がどんな風に始まるのか、憎しみは、人をどんな風に突き動かすのか、考えさせられた。
誰かを憎んだり、誰かに憎まれたり、そんな悲しい連鎖が、今もどこかで起きているんだろうなと思うと、なんだか、やるせなくて、とても切なくなった。
Posted by ブクログ
デビュー作『ジャッジメント』で度肝を抜かれた小林由香氏の最新作『イノセンス』。
本作も非常に考えさせられるものがあった。
あらすじであるが、
不良3人からカツアゲされていた中学生がある若者に助けられた。しかし、その若者は不良にナイフで刺されてしまった。その場でその中学生が助けを呼べばその若者の命は助かった可能性が高かったが、中学生は何もせずにその場から逃げ出してしまう。このことが後で世間から問題となった。この逃げた中学生は、犯人以上に社会からバッシングを受け、住所、名前を特定され、ネットで炎上した。この中学生は社会から逃げるように日々を生き、現在身をひそめるようにこっそりと大学生となって暮らしている。そこへまたある出来事が降りかかってくる。
という感じである。
デビュー作の『ジャッジメント』でもそうであるが、小林由香先生のテーマは『罪と罰』であろうと思う。言い換えるなら『憎悪と赦し』であるだろうか。
どんな人間でも『過ち』を犯す。それを『赦す』ことができるのもまた人間だけであろう。
外国の文学であれば、ここに『神の赦し』というテーマが入ってくるのであろうが、日本では『神の赦し』をテーマにするとちょっとおかしな方向に行ってしまう可能性もあるのであえてそこには触れていない。
やはりこの部分が日本と西洋の大きな違いなのだろな。ドストエフスキーの『罪と罰』を引き合いを出すまでもなく、人間を赦せるのは西洋では『神』であり、日本では『人』ということなのだろう。
このテーマを論じ始めるとレビューが終わらなくなるので、このあたりでやめたいが、非常に興味深いテーマであることは間違いない
本書も、人のあるべき姿を映した良作である。
おすすめである。
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