白河三兎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冒頭───
入学式が終わって体育館を出ると、部活動の勧誘が待ち構えていた。それぞれのコスチュームに身を包み、キャッチセールス顔負けの無駄に爽やかな声で新入生に呼びかける。
体育館から校門まで桜並木が続いている。入学式に合わせたかのように見事に満開になっているのだが、桃色の花弁が散る中でカラフルなコスプレもどきをした人たちが騒いでいるのは、あまりにも見苦しい。桜への冒涜に等しい。
新入生の双子の姉小松茂子は、妹三重子を盲目の恋から立ち直すために高校内に政治部を創設する。
メンバーは、いつでも沈着冷静な茂子。
恋に恋してしまった妹の三重子。
電波オタクのムセンこと田崎もも。
大富豪の息子、ボンボンこと成村明人。
中年のような風貌のオッサンこと柏木保。
この五人が『政治部』という隠れ蓑の中で、訳あって“総理大臣暗殺”という目的を掲げ、それぞれの役割をこなしていく。
途中から、ガイコツこと清水弥生もそのメンバーに加わる。
この個性的で、自分の目的のためには手段を選ばぬ自己中心的な生徒たちが、用意周到な計画を練り、総理大臣暗殺に向かって着々と突き進む。
一見、荒唐無稽な設定なのだが、これがなかなかに面白い。
と言っても、実際の暗殺には当然のごとく、多くの障壁が立ちはだかるのだが。
自分の利益でしか結びついていなかった部員たちだが、最後の事件を機に、六人の間に不思議な心情が芽生え始める。
それまで経験しなかったことに遭遇し、一人一人が確実に子供から大人への一歩を歩みだしたことの証。
このときの六人は眩しく輝いてさえ見える。
あれだけ幼く、独りよがりの考えしか持たなかった六人が、自分の本音を吐露することで人間としての連帯感が生まれる。
冷酷なまでに無機的で感情を表さなかった茂子さえもが、ここにきて突然、血の通った人間になる。
その転換部分が見事だ。
そして、予想だにしなかった最後の三重子の行動。
この作品は何やら不思議な小説だ。
SFでもミステリーでもない。
読み終わってみれば、爽やかな青春小説にさえ思える。
白河三兎という作家の懐の深さを知る作品だ。
ちょっと変わった面白い小説を読みたい人にはお薦めの作品です。 -
Posted by ブクログ
中学生が主人公のサッカー小説。
といっても、技術的なことはそれほど細かくないので、サッカーをよく知らない人でも楽しめるだろう。
全国大会に出場するための予選。
前半2対0の劣勢から追いついて、勝負はPK戦へ。
そのPK戦に挑む、それぞれの選手のサッカーとの関わり、学校生活や友達、家族などへの思いを語りながら話は進む。
中学生の語りのせいか、テンポが小気味よく、すらすらと読める。
彼らの様々な心情にも共感できる部分がたくさんあり、なかなか興味深い。
ただ、最後がなあ------。
薄々は気付いていたものの、さすがにちょっと強引過ぎる。
過去の話だけに、深い掘り下げもないので、かなり無理矢理感がある。
それでも、ちょっとウルウルはしちゃったけどね(笑)
純粋だった中学生の頃に戻りたいな。
まあ、楽しく読めるスポーツ小説といったところでしょう。
ちょうどWCの真最中の時期だけに、決勝トーナメントでPK合戦があったら楽しく見られそう。 -
Posted by ブクログ
白河三兎は凄い。ぐいぐい進む展開に全身で惹き込まれてしまう。
実際にはあり得ない設定やシーンの連続なのだが、妙なリアリティがあり、バラバラのことと思っていたエピソードや人物がストーリーが進むに連れてどんどん結び付いて収斂していく。その思いがけなさに、ハッとして、ますます惹かれてしまう。相当緻密に構想を練って書かれたのだろう。
こんな白河三兎は、もっともっと注目されていいと思う。純文学というよりエンタメ小説という位置付けだから評価されないのだろうか。エンタメっぽい突拍子のなさもあるが、登場人物の語る言葉の中には、物事の本質を突くような哲学的な鋭い知見が含まれていて、人生とか世界とかを語らせても十分世の中に通じると思うのだが。
とにかく、多くの人に読んでみてもらいたいと思う。ただ、本書は、ラストがちょっと分かりにくかった。作者は余韻を残したかったのかもしれないが、それまで主人公の感情の一つ一つまで言葉で表されていたのが、最後だけ、それが省かれていて戸惑った。そこが少し残念。 -
Posted by ブクログ
部活をしている方々の視点が変わっていく。連作短編集のようだ。
青春の頃を思い出す。
ただ最後の仕掛けにはおどろかされた。
そんだ仕掛けがあったのかと驚いた。
彼らは苦しくてもピッチに立つと決めた――『私を知らないで』の著者による新たな傑作
中学サッカーの首都圏大会、県予選の準々決勝。
2点ビハインドから追いついて迎えたPK戦。
各チーム二人ずつ蹴り終え、0-2でリードされた状況に、
キャプテンでゴールキーパーの潮崎隆弘は試合を諦めかけていた。
そんな絶望的な状況下で、点取り屋の阪堂隼人、
司令塔の鈴木望、マネージャーの広瀬はるならは、
自らの弱さ、葛藤と向き合っていく――
繊細な中学生たちの揺れ動く心情とともに運命の試合が、いま決着する。/掲出の書影は底本のものです -
Posted by ブクログ
ネタバレ私を知らないで
銀行員の子供として転入を繰り返しているが故に、シニカルに一歩引いて考える主人公の少年と同じ時期に転入してきてクラスを揺さぶるもう一人の少年。そして、クラスから無視されている美少女。
様々な学校でのエピソードによって微妙に変わる三人の関係が、学園祭と通り魔事件で大きく動くとき、少女の秘密が。。。
竹蔵もひねた性格なので、ある程度は理解できますが、こんな中学生いないだろう?というところが残念です。
それから、少女の謎もある程度途中で推測できてしまうところもいまひとつ。
この作者の物語は、プロットや謎から組み立てる作り方だと思いますが、もう少しそれを見えないように組み立ててくれると良いのになあ。
竹蔵