白河三兎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「神様は勝たせない」でも思ったけれども、白河三兎さんはスポーツがテーマの作品はその競技についてとても詳しく描写するだけではなく、プレーヤーの心理描写もすごくリアルで読む方もつい手に汗握ってしまう。あれ、自分もゲートボールやってみたいかもという気になってしまった。
モン美だのピン子だのなかなかなあだ名を付けられても孤高を貫きつつ、ちょっと不思議な愛情と共に過ごした話は彼女らの親よりも年上であろう自分でもいいなと思った。
モン美のお祖父ちゃんが余命わずかなのかと思わせつつ実はモン美が病を抱えていたというのは読んでいるうちに予想がつくのだけれども、それも作者は織り込み済みなのだろうな。それで結局この作品でもかみさまは勝たせないわけだけど、ちゃんとそれぞれの未来に繋がっていて読後感はとても良かった。最後の最後は最高に嬉しいサプライズで読んで良かったと思った。やはり自分は白河三兎作品が大好きみたいです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ「みんなに感謝してほしい。食事の前後に。服を買う時も。寝る前も。死ぬ直前にも手を合わせて声に出して感謝してほしい。そう感謝するべきなのよ」
「僕、生まれて初めてあの言葉を使うよ。あれを言うのは今しかないって感じだ」
「のび太、心の友よ!」
「僕はのび太じゃねぇ」
「俺はジャイアンでもねぇし」
僕たちはインターホン越しに笑い合う。
一人の方がラクだと言うのは簡単だ。自主的に一人になるのもそれほど難しくない。でも周囲の意図により一人にされるとかなり堪えるのだ。予想の何十倍も効いた。無視いうのは見ないことじゃなかった。その反対だ。常に監視されている。正しく無視するためには僕と一定の距離を保たねばならないのだ。だからみんなは僕の動きを把握しようと注視する。
狡猾な生徒たちだ。自分の心を穢さずに人の心を削る方法を知っている。
もちろん死は哀しい。でもそれで終わりじゃない。その先がある。遺された人たちには未来がある。哀しみをコンパクトに携帯するすべを習得し、前へ進まなければならない。
大人たちは言う。教室の中のことしか知らないのが子供の弱点だ、と。でも僕たちは教室の中のことだけなら大人よりもずっと深く知っている。
それはキヨコの求めた『普通』ではない。足踏みや回り道のない人生。みんなが当たり前のように享受している普通の人生を送りたいのだ。高校、大学と進学し、普通に就職して、普通に結婚して、普通の家庭を築くことをキヨコは望んでいたのだ。小さな望みだ。同級生同士でそんな話をしたら笑いものにされるだろう。でもキヨコにとっては高いところにある望み。精一杯手を伸ばしても届かなかった望みだ。なんでだ?なんでその小さな望みを誰も叶えてあげられない?世の中にはお金は溢れ返っているし、親切な大人だって少なくないし、古今東西いたるところに神様が蔓延っている。それなのになんでキヨコに『普通』を与えられないんだ?
この作品がおもしろいのは、こういった登場人物たちの多くが、見たままではなく、本人が思っているままでもない、ということが次第にわかっていくところだろう。 -
Posted by ブクログ
この小説に書かれているのは何か?
家族か、恋愛か、青春?
成長、共感、嫉妬、孤独、愛情、友情、希望、絶望?
全部だ。
20の章に細かく分けられた物語は、その一つ一つが起承転結の立ったエピソードで成っており、メッセージ性もある。
エピソード同士は深くかかわって、ある出来事の伏線になって、読者に先を読ませない展開を生む。
これは白川三兎の作品に共通する構成力だ。
しかし構成力ばかりほめても仕方がない。
ストーリーが面白い。
クラスから無視されているキヨコと、転校生のシンペーの交流。
こういうあらすじで端的に伝えるのが難しいほどいろいろ起こる。
キヨコの抱える秘密には途中で気づいてしまうかもしれないが、いつ訪れるかもしれない「その時」にハラハラしながら読み進めることになる。
秘密に気付かなかった場合は、エピソードの落差に驚愕することだろう。
山があって谷があって、とにかく揺さぶられる。
それほどのめりこんでしまうくらい、印象的なシーンが多い。
とはいえ、やはりピークは魔女の宅急便を真似るところだろう。
ツンツンしたキヨコがとあんなかわいい一面を見せてくれるとは。
それが影響するラストもいい。
普通の生活のために感情を抑える。
切ないとしか言いようがない。
いやあやはりラストだね一番は。
本当に物語が作りこまれていて、ご都合主義に見えるところもちゃんと理由付けがなされている。
たとえば、ラストに向けてはシンペーの生い立ちやアヤの功績が影響している。
アヤはシンペーと別れても、彼に後押しされたことを支えにして頑張ったんだろうな。
とすると、シンペーが親を後押ししたともいえる。
いじめ問題の解決にしても、ミータンはもともと友達思いのやつなのだ。
金原瑞人の解説にもあるが、「登場人物たちの多くが、見たままではなく、本人が思っているままでもない」のだ。
キヨコにも原因はあったし、暴行を加えたわけでもない。
比較的受け入れやすい解決ではないか。
キヨコのシンペーと高野に対する態度には終始悶々とさせられたが、ラストに影響してくるとは。
恋とはやはりままならないものだと思った。
振り回されるのが醍醐味の一つだから、あまり細かく書けないのが歯がゆい。
面白い小説に限ってうまく言葉で表せない自分の文章力も悔しい。
でもたくさんの人に読んでほしい小説だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレやっぱオモロい白河三兎。この本もまたグイグイひきつけられて読んでしまったなぁ。
中学3年生で家の歯科医を継ぐ運命にある男の子が主人公。彼女は学校で一番の容姿端麗かつ才媛かつ運動抜群の人気者。学校を締めてた裏番が姉。親友もいてライバルもいて…と、キャラクターが整ったところにやってくる教育実習生、主人公は彼女を知ってるような気がして…
あぁ、これ学園物のジュブナイルな、なんて早とちりしてはいけない。前半確かにそういうところもあるが、ティーンに読ませるだけでは勿体ない展開が後半待っている。
風俗やら人間のドロドロやら、ちょっとキツい(俺は10代の子が読んでも全然いいと思うが、咀嚼しきれるかは不明)描写もありぃの、でも不安定に揺れていたあの頃を思い出して、「そうか、それでもあの頃一所懸命かじりついて生きてきたんやな俺」と思える描写が後半溢れるほどに出てきて、そこが読ませどころである。
いつからか、理性が本能を抑えるスキルを身につけた大人が読む本である。それでもどっこい生きていくのである。周囲に感謝しつつ、不器用にしたたかに。