白河三兎のレビュー一覧
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ネタバレ高校のとき、同級生に田島という苗字の人がいて、もしハルって名前だったらタージマハルっぽいな、と思っていました。なので、本作のタイトルを見た時「遂に来たか」と意味不明なインパクトを受けました。
内容に関しては……空気の読めない少し変な子だけど、他の人とは違う着眼点や発想で事件や問題を解決するお話は割と珍しくないと思ってまして、それ故本作にもさほど新鮮さ・斬新さは感じられず。
各章のエピソード(事件というか、問題?トラブル?)はちょっと面白いなと思いました(三毛輪の話が個人的には好き)が、肝心のタージが実際にいたらめんどくさそうなキャラで感情移入や共感がしづらかったので、本作にハマりきれなかった気がしています。ケレン味は薄れますが、タージの性格はもうちょっとマイルドなくらいが、個人的には丁度よいかなぁと思いました。 -
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ネタバレ「プールの底に眠る」から二冊目の白河作品。白河三兎の登場人物はみんなかなり理屈っぽいのだ。たしかにそれが少年少女期の一つの思考回路であったりもするけど。
だから少し発想や展開に鼻白むことがないとは言えないいが、甘ずっぱさや軽快さに惹かれ読まされてしまう。ぐいぐいと。きらいなわけない。
特に学生時代にはそんな生徒間での機微があったのかなんて気づかない鈍感な青春を過ごしてしまった自分には、面白く追体験した。
途中、重い暗転(ばあちゃんの事)があるなと早々に気づいてしまったけど、気になって一挙に読んだ。どう話を落とすんだって。
ハッピーエンドな感じだけど、未来永劫に続きそうな主人公の苦しみを想像するとなぁ。ハッピーエンドなのかな?
正直いうと自首するところまでは、よい作品と思った。
そこから先の解決編は解決に感じないしファンタジー過ぎる気もするし、それを引きずってか恋愛成就もストンとこない。シンペーは一生子供の頃から被ってたような仮面をつけて、一生自分を凍結して生きるのか。
自首で終わるストーリーもあったんじゃないかな。それじゃ「薄情」すぎるか。 -
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ネタバレ達観したような主人公(黒田くん)が嫌いだったけど、人の繊細な気持ちの変化に気づいて、望むような行動ができて、好きな子に言い訳したり子供らしい一面もあってますます嫌いになった。
序章で「好きな子が結婚したのかな?」って感じたけど、最後の展開は予測できず話にどんどん引き込まれた。
黒田くんは達観してるようで、じぶんの恋には本当に気付いてなかったんやなあ。
キヨコの結婚相手は高野くん?
ミータン(クラスのボス)もアヤも好き。
人は生まれた環境で生き方や人間関係をレールにはめられてしまうように感じるけど、それだったら救われないから、過去の原因を追求するんじゃなく、自分で未来を切り開いていきたい。 -
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校舎の窓から飛び降りた担任教師。原因は、生徒との恋愛が発覚したことによるもの。果たして、それだけが原因なのか?クラスメートの証言から見えてくる真相。高校生達の贖罪が、一歩一歩成長させていきます。
全5章+αからなる青春ミステリーで、各章ごとに一人のクラスメートにスポットを当てます。その人視点で独白するかのように語っていき、段々と自殺事件の全体像が見えていきます。最初から核心に迫っていく訳ではないので、個人的に前半部分は、蛇足っぽい感覚がありました。
中盤になると、「命」や「罪」に対する事が高校生ならではの解釈で語られるのですが、グイグイ引き込まれました。真っ正面から事実と向き合い攻めてくる転校生、それに引き込まれるクラスメートの人たちなど、未成年の主張が、共感するところもあれば、ムカつくところもあり、一風変わった青春ミステリーで、面白かったです。
高校生達の「正義」といいましょうか、自分自身を正当化する志が垣間見れて、大人から見ればそれは、未熟な部分が多くあります。でも同時に大人になると、欠けていく部分でもあるので、読む人によっては色々な感想を持つのかなと思いました。どうしても大人になると、他と調和していかなければならなくなるので、読んでいてイラッとした気持ちにはなりましたが、忘れかけていた情熱を呼び覚ました感覚にもなりました。
段々とわかってくる担任教師の自殺の真相。後半になるにつれて、気持ちとしては胸糞悪い気分でした。高校生達の憎悪や嫉妬が渦巻いていて、陰湿な雰囲気を醸しています。
担任教師があまりにも不憫だなとも思いました。
最後の合唱シーンは、一見感動を誘う場面ですが、裏側を知ってしまうと、ある意味恐怖に似た感覚があり、素直に楽しめない自分がいました。
高校生達が、今後どのように大人への階段を上がっていくのか。贖罪とどう向き合っていくのか。きちんと向き合った大人になってほしいと切に思いました。 -
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白川三兎の他作品と比べるとあっさりしていて、いくらか違う読み味。
読みやすいと言い換えることもできるが、著者のよく練られた伏線や構成力が見られなかった。
定番のどんでん返しのオチも読めてしまった。
前半は青春小説のようだが、途中からミステリに変わるというのはおもしろい。
しかし、そのせいで登場人物たちの存在感がふわふわしている。
というのも、一見、中学サッカー部を舞台にした群像劇のようだが、結局は望の物語に収束していってしまうのだ。
極端なことを言えば潮崎・広瀬・真壁は終盤のミステリ部分については不要だ。
そのせいか、エピローグで彼らのその後も描かれなかった。
読み味が途中で変わるのは面白いが、そのせいでどっちつかずになってしまった。 -
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いつも衝撃的などんでん返しを見せてくれる作家なので、注意深く読んでいたが、違和感を何度も覚えながらもその正体はつかめないまま読み進めた。
少しずつ全貌が見え始めたところで一気にすべてが明らかになる瞬間は圧巻。
登場人物の人数がおかしい、旅行の日程がおかしいということには気づいていたが、今話しているのは誰なのか勘違いしてばかりだった。
ミステリとしての構成のうまさが光る一方で、物語の深さはこれまでの作品と比べると浅かった。
やはり群像劇でそれぞれのキャラクターを深掘りするのは難しい。
逆境に負けない芯のあるヒロインが登場しなかったことも残念。
私がこれまで読んだ著者の作品の中ではこれは初めてのことだ。
第六章の語り手の心境の変化にもあまり納得がいかなかった。
手代木麗華をもっと物語の中心に据えることができれば違っていたかもしれない。 -
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後味が悪い。
タイトルのように「勉強になったね」と軽く済ませることはできない。
登場人物たちは「中学生らしさ」をとことん突き詰めたような人ばかり。
虎の威を借るばかりで自己が確立せず、嘘をついたり「何でもするから」とすぐに自分を差し出す卓郎。
自己愛を拗らせてしまったユーカ。
長年の母親による束縛から抜け出した瞬間、暴走を始めるヨッシー。
その設定はいいのだが、彼らは互いに傷つけあうばかりで前に進まない。
薫子はいつもの芯のあるヒロインポジションにいるようだが、私はあまり共感できなかった。
暗い過去があって、自分のプライドを保とうと必死で、それでも他人を気遣おうとしている。
でもそれは一面に過ぎない。
彼女はある種の高潔さを求めているようで、そのためなら他人を欺いたり傷つけたりすることを厭わない。
私にとってそれは醜い。
彼女の持つ価値観も、その境遇を考えると仕方ないのかもしれないと思いつつも、すんなり受け入れるのは難しい。
薫子の思考に沿って川島さんが話した「薫子の体は薫子のもの。薫子が好きに使っていい」とか。
恋人や家族、友人知人が彼女の体を心配するのはいけないことなんだろうか。
教師になる夢のために、睡眠を削って夜中に働いて息抜きもないまま4年間過ごすのは大変だから風俗で働く、というのもそう。
どこかで諦めなければいけない夢はあるし、奨学金とか他の手段はなかったのかというのは、当事者じゃないから言えることだろうか。
世の中には、本当にやむにやまれずその仕事をしている人もいるのだろう。
でもどんなに美化したって、人前で自慢できる仕事じゃないと思う。
薫子にはもっと純粋に高潔であってほしかったという願望とともに、薫子が自らを貶めて自傷行為に及んでいるような気がして憐みの感情がわいてきた。
卓郎も卓郎で、薫子こそが物語をひっかきまわしている中心人物なのに、彼女に惹かれる気持ちがよくわからない。
私が読みたい白川三兎はこれではない。
苦境でも強くある物語が読みたかった。
それでも、クセが強い人物ばかりなのにシーンごとにピタリと焦点が定まっていて、あまりとっちらかった印象を受けないのはさすが。
中学生が読めば登場人物を見て醜いと感じ、自己を振り返るきっかけになるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
人が死にたくなる瞬間って結構そこらへんに転がっているものかもしれない。
いじめ、就職活動、将来への不安、恋愛、身近な人の死……。
実際日本の自殺者数は多く、作中では年間3万人以上、WHOの基準にならって変死者数の半分を含めると(遺書がないと変死扱い)10万人以上になると書かれている。
3分に1人が死を選んでいることになる。
本書は2015年10月発行なので、現在の自殺者数だけを見てみるとやや減少傾向にあり、2016年には2万1千人となっている。
しかし、これでも多い。
連作となる5つの短編の主人公たちも自殺を考えていて、「小人の巣」という自殺サイトにたどり着く。
サイトを運営するシャーマンの正体は病に伏せる10歳の少女で、「楽に死ねる薬を譲る代わりに臓器を提供してほしい」と頼まれる。
白河三兎の作風と物語の流れからして、登場人物たちが自殺をあきらめる方向になるというところは予想がつく。
あとはそのきっかけをどう描くかが見どころになるのだが、ちょっとインパクトが弱かった。
そのせいで、どうもきれいごとにしか思えなくなってくる。
ただ、5編の中では「アリとキリギリス」が考えさせられる内容だったと思う。
主人公は大学卒業後、ある計画を立てた。
10年間働いて会社を辞め、貯金で15年間悠々自適に生きてから妻と心中する。
それに妻も同意し、計画通り生きてきた。
そんな考えに思い至ったのは、事故や病気、老後の不安、そして働き続けていると妻との時間を確保できないといった理由からだった。
束縛されて不自由なまま不安を抱えて長く生きるよりも、短くあっても自由に生きることを選んだ。
私も生きるために働いているのか、働くために生きているのかわからなくなることがあって、ちょっと生き方について考えさせられた。
現代社会に生きる日本人にとっては、このエピソードが一番リアルに感じられるのではないだろうか。
ラストは、登場人物のこういった不安とはまた違う複雑な思いも見えてきてよかった。
作品全体でみると、著者の作品に多いラストの衝撃的な展開が今回はパンチが弱かった。
見せ方は相変わらずうまいなと思ったが。
お決まりの芯のあるヒロインもいたが、登場人物の視点から語られることはあっても交流が多くないので、あまりヒロインの内面に迫れなかった気がする。
それと10歳にしては達観しすぎ。
著者の作品を読むのは5作目になるが、その中では5番目。
とはいえ私の中では打率の高い作家なので、引き続き他の作品を読みたい。
文庫化されていない作品が多いのが金銭的に痛いところ。 -
Posted by ブクログ
登場人物たちの抱えているものがちょっと重たくて、なかなか共感するところまで至らなかった。
これまで白川三兎の作品は短編2作と長編は本作含めて2作しか読んでいないが、暗い背景を抱えている登場人物が多い。
それでも最後には希望を見せてくれる展開が多いので、素直に爽やかな青春小説とかも読んでみたいのだが、どうだろう。
本作はメフィスト賞を受賞したデビュー作(文庫はその改稿版)だが、いつもの構成のうまさは当初からあったようで、個々のエピソードから小さな小物に至るまで、ほかの事象とかかわりあっている。
登場人物のキャラクターも、「あの事件が彼を形作った」みたいな簡単な話ではなくて、「あの事件でこうなって、それがこう影響して……」という複雑な連なりを見せる。
そのおかげでストーリーもやや複雑になっているが、その展開にも結末にも不満はない。
一つだけ希望を述べさせてもらえば、由利の現在が気になる。