白河三兎のレビュー一覧
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たった一週間の美しくも儚いイルカとセミの物語、あの頃に戻れる幻想的なミステリー #プールの底に眠る
■レビュー
全編通して綺麗で儚い世界観で、それでいて悲哀あふれる作品です。
文章の芸術性が高く、純文学のソレを思わせる書きぶりで心にしみるセリフも多い。
ただ結局どこに着地するのかもわからず、テーマである愛情についても、軽いのか重いのか良く分からないという不思議ワールドを体験できます。
なにより登場人物たちのやりとりが素晴らしい。
現実的な出来事や会話は全くなく、まるでおとぎ話のように夢心地。そして辛い思いを水の底でじっと息をひそめるような彼らですが、お互いを思いやる気持ちは、じっくりと読 -
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ネタバレスリリングな展開や、少し不思議のSF設定、ミステリー仕立ての流れが良かった。
電話ボックスが不気味で超時空的なモチーフとして効果的。スマホや携帯、パソコンでは、この回顧と現代が交錯する切なさは出ない。
エンディングが「生」と「死」どちらに転ぶかで、この作品が駄作になるか良作になるか決まる、と思って読んでいた。
全体に立ち込めるペシミスト、アイロニー、空虚感から、「生」でないことを願いながら読んだ。「生きる希望を見出して前を向く」結末なら、あまりに陳腐で三文芝居。だか、そこはある程度期待通りでよかった。多少予測のつく結末でありながら、表現は退屈にはならず、まぁまぁよい。
気になったのは人物 -
Posted by ブクログ
単に、中学生のリアルな学校生活における、シニカルな恋愛ものだと思っていると、突然足もとをすくわれることになる。読んでて私も気付かぬ内に、重要なテーマを掲げられていた。
人間には、良いところも悪いところもあるということ。難しいのは、時に悪いところを出さないと、自分自身が駄目になってしまうかもしれない状況もあるというのは、言い換えると、誰かを犠牲にして、自分が成り立っているのかもしれないということ。私も時折、感じていたことがあるので、その点は、説得力があるなと思いました。
ただ、逆に「キヨコ」のネタばれ要素は、少し違和感があるように感じたけれど、それを差し引いても、きちんと「シンペー」の成長物 -
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ネタバレ高校のとき、同級生に田島という苗字の人がいて、もしハルって名前だったらタージマハルっぽいな、と思っていました。なので、本作のタイトルを見た時「遂に来たか」と意味不明なインパクトを受けました。
内容に関しては……空気の読めない少し変な子だけど、他の人とは違う着眼点や発想で事件や問題を解決するお話は割と珍しくないと思ってまして、それ故本作にもさほど新鮮さ・斬新さは感じられず。
各章のエピソード(事件というか、問題?トラブル?)はちょっと面白いなと思いました(三毛輪の話が個人的には好き)が、肝心のタージが実際にいたらめんどくさそうなキャラで感情移入や共感がしづらかったので、本作にハマりきれなかっ -
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ネタバレ「プールの底に眠る」から二冊目の白河作品。白河三兎の登場人物はみんなかなり理屈っぽいのだ。たしかにそれが少年少女期の一つの思考回路であったりもするけど。
だから少し発想や展開に鼻白むことがないとは言えないいが、甘ずっぱさや軽快さに惹かれ読まされてしまう。ぐいぐいと。きらいなわけない。
特に学生時代にはそんな生徒間での機微があったのかなんて気づかない鈍感な青春を過ごしてしまった自分には、面白く追体験した。
途中、重い暗転(ばあちゃんの事)があるなと早々に気づいてしまったけど、気になって一挙に読んだ。どう話を落とすんだって。
ハッピーエンドな感じだけど、未来永劫に続きそうな主人公の苦しみを想像す -
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ネタバレ達観したような主人公(黒田くん)が嫌いだったけど、人の繊細な気持ちの変化に気づいて、望むような行動ができて、好きな子に言い訳したり子供らしい一面もあってますます嫌いになった。
序章で「好きな子が結婚したのかな?」って感じたけど、最後の展開は予測できず話にどんどん引き込まれた。
黒田くんは達観してるようで、じぶんの恋には本当に気付いてなかったんやなあ。
キヨコの結婚相手は高野くん?
ミータン(クラスのボス)もアヤも好き。
人は生まれた環境で生き方や人間関係をレールにはめられてしまうように感じるけど、それだったら救われないから、過去の原因を追求するんじゃなく、自分で未来を切り開いていきたい。 -
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校舎の窓から飛び降りた担任教師。原因は、生徒との恋愛が発覚したことによるもの。果たして、それだけが原因なのか?クラスメートの証言から見えてくる真相。高校生達の贖罪が、一歩一歩成長させていきます。
全5章+αからなる青春ミステリーで、各章ごとに一人のクラスメートにスポットを当てます。その人視点で独白するかのように語っていき、段々と自殺事件の全体像が見えていきます。最初から核心に迫っていく訳ではないので、個人的に前半部分は、蛇足っぽい感覚がありました。
中盤になると、「命」や「罪」に対する事が高校生ならではの解釈で語られるのですが、グイグイ引き込まれました。真っ正面から事実と向き合い攻めてくる転 -
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白川三兎の他作品と比べるとあっさりしていて、いくらか違う読み味。
読みやすいと言い換えることもできるが、著者のよく練られた伏線や構成力が見られなかった。
定番のどんでん返しのオチも読めてしまった。
前半は青春小説のようだが、途中からミステリに変わるというのはおもしろい。
しかし、そのせいで登場人物たちの存在感がふわふわしている。
というのも、一見、中学サッカー部を舞台にした群像劇のようだが、結局は望の物語に収束していってしまうのだ。
極端なことを言えば潮崎・広瀬・真壁は終盤のミステリ部分については不要だ。
そのせいか、エピローグで彼らのその後も描かれなかった。
読み味が途中で変わるのは面白 -
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いつも衝撃的などんでん返しを見せてくれる作家なので、注意深く読んでいたが、違和感を何度も覚えながらもその正体はつかめないまま読み進めた。
少しずつ全貌が見え始めたところで一気にすべてが明らかになる瞬間は圧巻。
登場人物の人数がおかしい、旅行の日程がおかしいということには気づいていたが、今話しているのは誰なのか勘違いしてばかりだった。
ミステリとしての構成のうまさが光る一方で、物語の深さはこれまでの作品と比べると浅かった。
やはり群像劇でそれぞれのキャラクターを深掘りするのは難しい。
逆境に負けない芯のあるヒロインが登場しなかったことも残念。
私がこれまで読んだ著者の作品の中ではこれは初め -
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後味が悪い。
タイトルのように「勉強になったね」と軽く済ませることはできない。
登場人物たちは「中学生らしさ」をとことん突き詰めたような人ばかり。
虎の威を借るばかりで自己が確立せず、嘘をついたり「何でもするから」とすぐに自分を差し出す卓郎。
自己愛を拗らせてしまったユーカ。
長年の母親による束縛から抜け出した瞬間、暴走を始めるヨッシー。
その設定はいいのだが、彼らは互いに傷つけあうばかりで前に進まない。
薫子はいつもの芯のあるヒロインポジションにいるようだが、私はあまり共感できなかった。
暗い過去があって、自分のプライドを保とうと必死で、それでも他人を気遣おうとしている。
でもそれは一面