飛浩隆のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ全体の基盤に「言語」のテーマ性、そして伊藤計劃の存在がずっとうっすら漂っている。出典は忘れたけど作者本人がどこかで「SFは美しく残酷なものと信じている」と言ってた通り、本作もすべての文章が美しく、凄絶で、大体ラストは寂しいか恐ろしかった。
「海の指」…グランヴァカンスの筆致に近いかんじ。人への恋しさ、各々が抱えた寂しさ、それを丸ごと蹂躙していく恐ろしい状況。明るくない結末に向かって疾走していく感覚はずっとあるのに文章が面白すぎて最後まで一気読みしてしまう。志津子さんが「来た」ら、絶対怖いよね…
「自生の夢」…一番強く伊藤計劃へのリスペクトというか、存在を意識しているのを感じる。彼に宛てた文章というか、もはや一個人を二次創作したというか…。伴名練がかなり詳しく解説してくれてるので、それを読んでから再読すると解像度がぐんと上がるのでありがたいですね。間宮へのインタビューの担い手だった〈わたし〉〈ぼく〉はそれぞれ「ハーモニー」「虐殺器官」なのかなぁ、と思って読み直すとかなり熱い。
「はるかな響き」…生物が言語を得る以前、すべてに名前がつきカテゴライズされ、私達が「理解」を得る以前にあった「あの響き」を生命は皆求めている。というのはかなりロマンがある設定で素敵だった。
⚫︎あらすじ
73人を言葉だけで死に追いやった稀代の殺人者が、怪物〈忌字禍〉を滅ぼすために、いま召還される。現代SFの最高峰、10年ぶり待望の作品集。「この作者は怪物だ。」――穂村弘
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73人を言葉の力で死に追いやった稀代の殺人者が、怪物〈忌字禍(イマジカ)〉を滅ぼすために、いま召還される----第41回星雲賞日本短編部門受賞作「自生の夢」他、今世紀に発表された読切短編のすべてを収録。最先端の想像力、五感に触れる官能性。現代SFの最高峰、10年ぶり待望の作品集。
「この作者は怪物だ。私が神だったら、彼の本をすべて消滅させるだろう。
世界の秘密を守るために。」----穂村弘
その他の収録作品:
◎「海の指」第46回星雲賞日本短編部門受賞
霧が晴れたとき、海岸に面した町が〈灰洋(うみ)〉となり、異形の事物は奏でられていく。
◎「星窓 remixed version」日本SF大賞受賞第1作
宇宙空間からぽんと切り抜いたガラス板を買ってきた。
◎「#銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻」
天才詩人アリス・ウォンの生み出したもの、遺したもの。
◎「はるかな響き」
人類誕生以前に行われた犯罪、その結果、人類を殲滅させるに至った犯罪。
(河出書房HPより引用) -
Posted by ブクログ
前作グラン・ヴァカンスは終盤まで全体像が見えてこない話の展開に何度も挫折しかけ、正直あまり面白いとは思えなかったのですが、ラギッド・ガールを読み、やっと「廃園の天使」という作品の詳細が見えてきて「あれ?グラン・ヴァカンスってもしかして面白かったのか??」という気持ちになりました。今は読み返したくて仕方がないです。
さて、本作ですがいずれの短編も単独で読み応えのある作品ばかりで、非常に面白い短編集でした。特に表題作からクローゼット、魔述師までの流れが素晴らしいですね。人間を仮想現実世界に送り込むまでの現実的な課題とその解決方法はリアリティに溢れており関心しましたし、そこから生じる課題(現実に及ぼす影響やAIの人格問題など)は、我々のいる現実世界が同じ場面に直面した際の議論に活かせるのではと感じるほどでした。20年以上前にこういった視点から問題を提起し、物語に落とし込んでいた飛先生は本当に素晴らしいSF作家ですね。
また、表題作のラギッド・ガールは美醜やジェンダーの観点から見たSF作品として素晴らしい完成度を誇っているので、単体でも多くの読者の手にとって欲しいですね。自分の環境や年齢などによって捉え方が変わるかもしれないと感じたので、また時間をおいて再読したいと思います。 -
Posted by ブクログ
伊藤計劃氏から最近のSFにハマり、たどり着いた一冊。少し気を抜くとついていけなくなりそうな、自分の持つ想像力でぎりぎりで楽しめた。海の指、星窓は文章なのに景色の美しさを感じられたし、設定も最初は?だったけど読むほどにSFらしくて面白かった。後半の表題作含む"詩"をテーマとしたアリスウォンの話では、横文字に付いていきつつぎりぎり理解して読み進めた(受け止めきれなかったのが悔しいくらい!)。潤堂の能力は伊藤計劃氏の「虐殺器官」を思い出した。本でこれだけ感じられるものがあって誹謗中傷で人がしぬこの世を思えば、言葉で人を殺める人がいても全然フィクションじゃないなと思う。
著者のほかの本もこれから読んでいきたい。もっと理解したい。