飛浩隆のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『グラン・ヴァカンス』を読んだのはたぶん1年ぐらい前だけど、これは連続で読めば良かったなー。
『グラン・ヴァカンス』を読んだときは、”数値海岸”、”夏の区界”…etcと一つ一つの単語からも感じる凄まじいこだわり、静謐ってこういうことだなと思わされる文章力からなる見事な世界の美しさに圧倒された。そして、それとは全く正反対とも思えるんだけどやはり美しい残酷な痛み・苦しみの表現、これも本当に凄かった。
本書でも飛浩隆の書く世界の美しさというのは改めて感じ入った。が、それよりも彼の書く世界というのが”数値海岸”の中だけでなく、ちゃんと現実の理論があってフィクション(数値海岸)があるとまで練られていると -
Posted by ブクログ
作家「飛浩隆」はSFとしてのフレームワークがしっかりしている事が好きな理由であるが、SFであるのに多彩な色・香り・風景・音などを感じられる希有な作家であると理解している。物語の内容については前作で語られなかった背景や、異なる平行時間の物語の入った短編集。期待が裏切られることは無いと約束する。
SFファンでなくとも本シリーズは読んでいただきたい作品の一本である。またこれは個人的ベストSFランキングの中では比較的近年にランクインした作品でもあり間違いなくベスト3に入る。
追伸:いつも読み返す時期は冬~春であり、これから暖かくなって行き、初夏を迎えるまでには「夏の扉」を読み返してみたくなる不思議 -
Posted by ブクログ
「グラン・ヴァカンス」に引き続き、とても良かったです。「夏の視硝体」は前作の後で読むと切なくなりました。
個人的に最も印象に残ったのは「魔述師」。これ、未来版『非実在青少年』問題…ですよね?
現在リアルに起きている論争に関しては、フィクションを愛する者の端くれとして規制に反対ですが、この作品内の<ダイ・イントゥ>の行動には一定の倫理的正当性がある、と感じてしまう。そんな自分に気が付いて少しだけぞくっとしました。
フィクションは現実を直接的に変えたりはしないけれど、優れたフィクションは現実を解釈する私達の内面を揺さぶる。
文章の持つ力というものを見せ付けられた気分です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレグラン・ヴァカンスのようなのを想像していたら、「あしたもフリギア!」が出てきて、これは飛浩隆版プリキュア二次創作なんだなと思って読んだ。
プリキュアは見たことがないので、フリギアが出てくるたび「プリキュアはわからないな」と引っかかってしまうので、ここがオジリナルだったらもっと読みやすかったなとは思う。著者的には必須だったのだろうけど。
それと固有名詞がすべて難しい漢字と馴染みないカタカナばかりなので、話は面白いんだけどなかなか読むのに苦労した。
紙で読んだけど、今回ばかりは検索しやすい電子のほうがよかったかもしれない。
前半はそんな感じだったのだけど、後半はさすが怒涛の展開、認識が全てひっ -
Posted by ブクログ
ネタバレ穏やかで優しい海辺の田舎町の何気ない一日の風景、心安らぐ平凡な日常のシーンから物語が始まる。
ただ、最初からシミュレーション内の世界であり登場人物達がAIであることを隠そうとしないためであろうか、のどかだがどこか不思議な雰囲気の導入だとも感じた。
『1000年』という時間が比喩ではなく何度も文中に現れる。
このAIたちに対しては、世界や時間・過去に対する認識や内面が揺れ動く様で人間のようだと感じる一方で、1000年間を(正気のまま)少年であり続けられることやそれだけの長時間を共に過ごしたヒトを失った際の反応など、狂ってしまわない点に「やはり人間とは違うモノだ」と感じる、相反する感想が入れ子に