飛浩隆のレビュー一覧

  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    『グラン・ヴァカンス』の先日談。

     前著では、アイデアとしては新しい部分は少ないのだが、そんなものを全く弱点だとも思わせない圧巻の表現力が、惹きつけてやまない魅力となっていた。そして今作においては、今まで誰も考えたことのない(あるいは手を出せなかった)怪物を作ってしまうという偉業を成し遂げた。
     仮想世界の「数値海岸」は、そこに訪れる人の欲望を映し出し形にする。ゆえにそこでは、アウシュビッツすらもお遊びとしか思えないような、AIに対する高品質な虐待が日々絶え間なくおこわなれる。それを防ぐためにおこわなれた「大途絶」。しかし、数値海岸は、決して平和になることはない。ゲストたちよりももっと残酷な、訳のわからない存在が現れて荒らし回っていく。人々の精神の暗渠としての、仮想世界―――……。
     残酷で清新で美しいもの。それが、著者の考えるSF。正しくその言葉通りの、作品でした。

     次回作の『空の園丁(仮題)』が、早く読みたいです。
     

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    2013年10月05日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    長編よりも中小編の方がやはり切れ味が有ると改めて思いました。
    前作「グラン・ヴァカンス」の伏線を回収していく中編集。
    あちら側とこちら側の視点で描かれるどちらの世界も美しい文体で綴られ、
    最早中毒気味です…次回作が楽しみ過ぎます!
    「魔述師」「蜘蛛の王」辺りが個人的には好み。

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    2012年12月15日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    先にこっちを買ってしまった廃園の天使シリーズ。面白かったので①を読もうと思ったら、地元の本屋は全滅。

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    2012年12月10日
  • 象られた力

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    「デュオ」ミステリ要素たっぷり、音と匂いの描写が素晴らしい。ページを捲る手が止まらない。「呪界のほとり」コミカルなキャラとテンポの良い展開でページを捲る手が止まらない。続編希望。ジジイ最高!「夜と泥の」視覚的・聴覚的な描写が素晴らしい。全体を通しての緊張感にページを捲る手が止まらない。「象られた力」視覚的描写が美し過ぎてお腹いっぱいです!次のシーンが「見たくて」ページを捲る手が止まらない。アニメとかにならないだろうか。

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    2012年11月19日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    『グラン・ヴァカンス』を読んだのはたぶん1年ぐらい前だけど、これは連続で読めば良かったなー。
    『グラン・ヴァカンス』を読んだときは、”数値海岸”、”夏の区界”…etcと一つ一つの単語からも感じる凄まじいこだわり、静謐ってこういうことだなと思わされる文章力からなる見事な世界の美しさに圧倒された。そして、それとは全く正反対とも思えるんだけどやはり美しい残酷な痛み・苦しみの表現、これも本当に凄かった。
    本書でも飛浩隆の書く世界の美しさというのは改めて感じ入った。が、それよりも彼の書く世界というのが”数値海岸”の中だけでなく、ちゃんと現実の理論があってフィクション(数値海岸)があるとまで練られているところが驚きだった。もちろん、この現実の理論もフィクションではあるのだが、まるで別世界か遠い未来でも見てきたんじゃないかと思えるほど虚構が理に敵っている。第三作が本当に楽しみです。

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    2012年10月05日
  • 象られた力

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    理想の文体かもしれない。
    憧れは山尾悠子氏、それはこれからも変わらないが、自分が目指すとしたら。

    肉体は五感を支配しているだろうか。
    あるいは、五感が肉体を支配するのだろうか。

    文字を読むということが、ここまでの体験をさせてくれるのだ。
    そんな満足感をもたらしてくれた一冊。
    しばらくは余韻を引きずりそうだ。
    五感が、騒ぎすぎて。

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    2014年01月07日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    「ぼくはね、現実世界に対してなんで右クリックが利かないのか、それが子どもの頃から歯がゆくってさ」

    「ばかみたい?でも私は気づいてしまったの。小説の酷い場面に眉をひそめている私たちこそが、ほんとの実行犯なのよ」

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    2012年04月10日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    前作よりこっちの方が好きだけど、前作を読んでないと面白くないです。世界観が解明されてくる短編集な感じ。あっち側とこっち側の話が交錯してます。「ラギッドガール」と「蜘蛛の王」が特に面白かったです。見事な世界観。ゆるぎないですね。

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    2011年11月24日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    作家「飛浩隆」はSFとしてのフレームワークがしっかりしている事が好きな理由であるが、SFであるのに多彩な色・香り・風景・音などを感じられる希有な作家であると理解している。物語の内容については前作で語られなかった背景や、異なる平行時間の物語の入った短編集。期待が裏切られることは無いと約束する。

    SFファンでなくとも本シリーズは読んでいただきたい作品の一本である。またこれは個人的ベストSFランキングの中では比較的近年にランクインした作品でもあり間違いなくベスト3に入る。

    追伸:いつも読み返す時期は冬~春であり、これから暖かくなって行き、初夏を迎えるまでには「夏の扉」を読み返してみたくなる不思議な物語。

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    2011年03月19日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    「グラン・ヴァカンス」に引き続き、とても良かったです。「夏の視硝体」は前作の後で読むと切なくなりました。
    個人的に最も印象に残ったのは「魔述師」。これ、未来版『非実在青少年』問題…ですよね?
    現在リアルに起きている論争に関しては、フィクションを愛する者の端くれとして規制に反対ですが、この作品内の<ダイ・イントゥ>の行動には一定の倫理的正当性がある、と感じてしまう。そんな自分に気が付いて少しだけぞくっとしました。
    フィクションは現実を直接的に変えたりはしないけれど、優れたフィクションは現実を解釈する私達の内面を揺さぶる。
    文章の持つ力というものを見せ付けられた気分です。

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    2010年10月29日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    『グラン・ヴァカンス』の前日譚を集めた短編集。前作で残された謎の一部が明らかになり、緻密な設定の一端が伺える。阿形渓や<数値海岸>など退廃的で美しい登場人物、舞台が複雑に絡み合うのもたまらない。

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    2010年08月03日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    廃園の天使シリーズ中・短編集ということでしたが、一作目の背景が語られていて面白かったです。一作目で、イマイチぴんとこなかった用語にも説明がついて、ほっと一息というか。

    表題作も好きでしたが、ランゴーニの過去が語られる『蜘蛛の王』が一番楽しかった。彼にもナイーヴな少年時代があったんだなぁみたいな…。

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    2010年05月30日
  • 象られた力

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    文章が重たいが精緻で美しい。ストーリー駆動ではないが、設定がユニーク。ややファンタジーっぽさあり。余韻に浸れる文章。

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    2026年07月14日
  • 鹽津城

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    6編からなる短編集。「鎭子」は飛浩隆を象徴する作品とも言える「海の指」のディテールが引用されつつ、現代的に再構成されている。
    タイトル作品である「鹽津城」も同じく「海の指」のディテールをベースにしつつ、突如海から分離した塩=鹵=鹽が覆う世界がメタバースに展開していき、後半になるにつれでどんどん盛り上がっていく。その読書感はたまらない唯一無二の体験だ。
    ちなみに「このSFが読みたい 2026」の国内作品第一位になっていたが、確かにさもありなんと思わされた。

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    2026年04月23日
  • 鹽津城

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    果たして
    世界はひとつだけではなく
    こっちとつながり合うように
    あっちやそっちの世界もあるのではないだろうか。
    絵空事が今現在となり
    いつかあり得るかもしれないと思っていた未来が
    すでに過去になっている。
    時間や空間を越え
    現実と並行するようにして存在する別の世界もまた
    現実なのだろうか。
    …なんて、そんな答えのわからない
    難しいことを考えさせられてしまった。

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    2026年03月05日
  • ポリフォニック・イリュージョン 初期作品+批評集成

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    小説(初期作品集)、作品解説、批評集、対談、エッセイなどなどが収録されている。
    小説はちゃんとしっかり読んだ。先日読んだ「鹽津城」よりも、いわゆるSFっぽくてこれはこれで面白かった。でも、最近の作品の方が、日常と地続きにある異世界みたいな雰囲気があって、私の好み。
    小説以外は流し読み。ソラリスの作家のレムの話とか、ちょうど読んだところだったからうれしかった。あと、伊藤計劃を読み直したくなった。

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    2025年09月03日
  • 鹽津城

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    お初の作家さんでした。中短編集。この作家さん、今までなんで知らなかったんだろう。どのお話も、この後どうなっちゃうの〜!と気になって仕方がない。壮大なザ・SFではなくて、日常にいつの間にか入り込んでた非日常みたいな。その入り込み方がちょっぴり生々しいというか、ぬるり、とした薄気味悪さを伴う雰囲気があるのだけど、それがかえってクセになる感じ。別の作品も読みます!

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    2025年06月11日
  • 鹽津城

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    飛浩隆は初読なのだけれど、世界観にやられた。お気に入りは、大災害と40年間政権を握る男の「流下の日」 。1番気になった「ジュヴナイル」は前作『自生の夢』と関係があるらしいのでそっちも読まなきゃ。

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    2025年05月06日
  • 零號琴

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    ネタバレ

    グラン・ヴァカンスのようなのを想像していたら、「あしたもフリギア!」が出てきて、これは飛浩隆版プリキュア二次創作なんだなと思って読んだ。
    プリキュアは見たことがないので、フリギアが出てくるたび「プリキュアはわからないな」と引っかかってしまうので、ここがオジリナルだったらもっと読みやすかったなとは思う。著者的には必須だったのだろうけど。

    それと固有名詞がすべて難しい漢字と馴染みないカタカナばかりなので、話は面白いんだけどなかなか読むのに苦労した。
    紙で読んだけど、今回ばかりは検索しやすい電子のほうがよかったかもしれない。

    前半はそんな感じだったのだけど、後半はさすが怒涛の展開、認識が全てひっくり返り、文字どおり世界が足元から崩れていく感覚はたまらない。
    長編だけど一気に読んだ。

    主要キャラが皆たっていて、ここで物語が終わったと思えない。
    トロムボノクの体が全て見つかるまで見たいけど、あとがきを見ると空の園丁のあとにもう1本予定してるのか。それもうれしいけれど、こちらのシリーズは無理そうだな…

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    2025年04月27日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ネタバレ

    穏やかで優しい海辺の田舎町の何気ない一日の風景、心安らぐ平凡な日常のシーンから物語が始まる。
    ただ、最初からシミュレーション内の世界であり、登場人物達がAIであることを隠そうとしないためであろうか、のどかだがどこか不思議な雰囲気の導入だとも感じた。
    『1000年』という時間が比喩ではなく何度も文中に現れる。

    このAIたちに対しては、世界や時間・過去に対する認識や内面が揺れ動く様が人間のようだと感じる一方で、1000年間を(正気のまま)少年であり続けられることやそれだけの長時間を共に過ごしたヒトを失った際の反応など、狂ってしまわない点に「やはり人間とは違うモノだ」と感じる、相反する感想が入れ子になっていた。人間としか思えないような優しく”人間味”のあるキャラクター達に感情移入や思い入れが生じるが、それが間違っていると心の隅で引っかかっているような妙な気分で読み進めていた。

    序盤は「正統なSF作品だ」という感想だったが、中盤では巧みな恐怖演出とAI達の恐れが文章から良く感じられ「これはパニックホラーだ!」という印象を抱いた。終盤の世界観が完全に崩壊していく様や通常の動きを越えていくキャラクター達の様子はファンタジーのようでもある。
    これは描写が克明で写実的であるためだろうか。
    最終盤のジュールがジュリーに追いつくあたりのシーンが特に印象に残っているが、綺麗なシーンは音(無音・静寂)まで感じられそうだと思った。
    逆に中盤からの残虐なシーンはAI達の最期があまりにグロい。緻密で鮮やかな描写も相まって著者の暗い性癖を反映しているのではないかと思えるほどだった。思い入れのあったAI達を次々に虐殺された怒り(?)から、「コレを人間で描写することに抵抗があったから作品の世界観を仮想空間とし、キャラクターをヒトのアバターではないAIにしたのではないか」と勘繰ってしまった。

    最終章は、今までのエピソードが伏線のように別の側面を持っていたり、グラスアイやドリフトグラスの謎が明かされていく。
    外の世界や大途絶の事、天使についてのようなAI達の世界の“外”のことはわからないが、それでも、それはそれとしてスッキリとした終わりかただと感じた。

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    2025年03月19日