飛浩隆のレビュー一覧

  • 零號琴

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    作り上げられた世界観も(宇宙観?)物語もキャラクターも素晴らしくてお腹いっぱいでめまいがしそうでした.それに,物語の中にまた物語がありその物語を書き直すといったような複雑さで,追いきれないくらい.フリガナがあるとはいえ漢字も難しく,とうとう関係図を含めてノートに書き出しての読書.久しぶりにじっくり楽しめました.あと音楽のすばらしさ,もちろん聞こえてくるのではないけれど,頭の中で荘厳なオペラ風の鐘が鳴っていてその表現力にも脱帽しました.

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    2019年03月03日
  • 零號琴

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    600頁に及ぶ超大作娯楽活劇SF、集中して、楽しんで読めた。言葉遊びに溢れた文章から紡ぎ出される登場人物が魅力的で、この作品だけじゃもったいないくらい。また、音や闘いの描写が映像として眼に浮かぶ、とても映像的な文章で、まるで映画を観ているような気分にさせられた。内容は徹底的にエンターテインメントで、40年代男も楽しめる小ネタのオンパレード(それは読んでのお楽しみ)。年末に今年印象的だった本を思い返した時、必ず思い出すであろう一冊。作家さんの別の本も読みます。

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    2019年02月12日
  • 象られた力

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    『知る人ぞ知る』とか、『伝説の』とかが頭につく作家。
    どういう経緯で知ったんだったか……思い出せないけど、シリーズものがドはまりで、それを執筆するまでの作品が読みたくて借りた。
    この収録作を最後に10年のブランクを経て、わたしが続きを熱望しているシリーズが発売された。
    やはり、すごい。
    文章で、これほど視覚的に訴えてくるSFははほかにない。

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    2019年02月07日
  • 零號琴

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    【壮麗な終焉とその先に】特殊楽器技芸士のトロムボノクは、巨大楽器の「美玉鐘」の竣工を記念した假面劇が演じられる予定の惑星「美縟」に降り立つ。全住民がその上演を心待ちにする中、トロムボノクと相棒のシェリュパンは、その星に隠された驚愕の過去と直面するのだが......。著者は、『自生の夢』、『グラン・ヴァカンス』などで知られる飛浩隆。

    タイトルや装丁からかなり重たい内容を予期していたのですが、著者があとがきで記すように、ドタバタを描いた娯楽読み物としての性格が強い作品でした。しかしそれだけでは表現できない奥行きと立体性を兼ね備えていることもまた確かであり、なんとも独特な味わいの読書体験を経験する

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    2019年01月07日
  • 零號琴

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    SFマガジンに連載されていた作品を書籍化したもの。巷では、早く出してくれという要望が多かったそうだが、連載を読んでいない私にとっては、話題の作品だから読んでみたという程度のきっかけであった。読んでみて、非常に楽しい作品であることが分かった。勝手に硬いイメージを持っていたが、中身はアニメと特撮ヒーローと宮崎駿が混じった音楽SFである。楽しい要素をてんこ盛りにした感じだ。ページ数が多いので、文字量と作品から出る音量に圧倒されるが、全身で作品を感じることができてライブで大音量を浴びたような経験をした。

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    2018年11月09日
  • BLAME! THE ANTHOLOGY

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    劇場版が面白くてノベライズを探していたけれど、このアンソロジーもとても面白かった。
    設定資料集とか関連資料を探して読みたくなる気持ちが分かる気がする。
    原作を読みたい気持ちも高まった。
    181103

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    2018年11月03日
  • 象られた力

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    初めて読んだ飛先生作品。
    静かで不思議で美しいSF小説短編集。
    例えると、広く暗い宇宙の片隅でいつかあった誰かの人生の一部を物語として切り取ってきたという短編が連なっている。なぜ?という質問には決して答えない。そこが逆に素晴らしい。あるがままの状況を切り取ってきて、物語として仕上げた、いわばフォークソングのような物語たち。

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    2018年08月25日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    久々に「ヤバい」小説。田舎の鄙びたリゾートをおそう謎の物体。天才少年の活躍により、どうやら別の世界からやってきた人工知能に襲われていることがわかり、生き残った住民は不思議な力を発揮する「石」を駆使して謎の物体と戦うが、、、というよくある設定で映画マトリックスを想像させるが、大きく異なるのは、襲われている方も人工知能の世界の住人であること。高度に発達したAIにより、各自(各AI?)が独自の個性と記憶と判断能力を持ち、まるで自然人のように振る舞う。AI対AIなのか、そのAIを操っている人間がAIを襲わせているのか、全くわからないままストーリーは進む。読んでいて不思議なのは、まるで自分が傍観者として

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    2018年04月03日
  • 象られた力

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     三本の短編と一本の短めの中編からなる作品集。
     この手の本を読んでいつも思うのは「これがSFか?」ということ。
     別にSFに拘る必要もないし、読んで面白ければそれでいいのだけれど、例えば本書の冒頭の作品「デュオ」なんかは、SFのS……科学……というよりも、非科学的事象を題材にしている。
     江戸川乱歩や夢野久作が書いてもおかしくない内容なのに、SFなのか……。
     あるいはSFってもっと広義の意味合いが含まれているものなのか。
     まぁ……いいけど(と書きつつも、どうもいつもひっかかってしまう)。
     その「デュオ」なんかはブライアン・W.オールディス の「ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド」

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    2018年01月04日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ネタバレ

    千年間の夏を繰り返し、ゲストをもてなす永遠の平穏を秘めているかのように見えたリゾート地。その突然の崩壊と悲劇の幕開け。露わにされていく、プログラムされたAIたちが秘めてきた叶わぬ想い。
    冒頭ジュールとジュリーのボーイミーツガール的な物語を期待したところ、どんどん不穏な方向に運び始め…グロテスクでエロティックでありながらどこか艶かしく官能的。
    何が起こっているのやら、と目を離せないまま覗き見るようにじっと読み進めてしまう。

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    2017年06月15日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    VRやAR、また最近になって出てきたMRなどに興味がある人にはめちゃくちゃおススメの作品。数十年後の視覚世界がどうなっているかを書き上げた傑作。
    またSFの中でもハードSFという、今ある科学の実績にちょろっと嘘を上乗せしたSFだから、未来の一つの可能性として世界観を楽しむことができる。
    この本は、前作のグラン・バカンスから続く、廃園の天使シリーズの続編であるが、この本単体として読んでも十分楽しむことができると思う(もちろん合わせて読んだ方がより楽しめるのは言うまでもない)。
    そして最終巻はいつ出るんだ。

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    2016年04月24日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    最初20ページ読んだあと、別の本読むために放置していたのだが、20ページ目までの感想は「メシがうまそう」
    この後少しでも読み進めれば、メシがうまそうなどと呑気なことは言ってられない展開なのだが、この描写力で残酷ながら美しい人間臭くもAIの域を出られないAIの最期が描写されていく。
    謎が多く散りばめられた第一巻だったので、今後に期待。

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    2015年01月04日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    ーーー人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート“数値海岸”。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった―第1章たる『グラン・ヴァカンス』の数多の謎を明らかにし、現実と仮想の新たなる相克を準備する、待望のシリーズ第2章。


    飛浩隆『廃園の天使』シリーズ第2章の中篇集
    凄いの一言。詩のような美しい文章が特徴的だった第1章『グラン•ヴァカンス』の肉厚なバックボーンを、物理世界と仮想世界の両面から描き出す。この中篇たちがあればこそ、第1章がさらに輝きを増す。

    表題作は、AR(拡張現実)を一歩進めたような概念と、そこから

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    2014年11月13日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ーーー仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1,000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だがそれは突如として終焉のときを迎える。
    仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作


    初めて読む作家、飛浩隆の長篇SF

    特徴はなんといってもその文章だと思う。
    ときには韻文を連ねながら、詩的に美しい文章と、SFとしての「理屈づけ」が絶妙にブレンドされている。

    続編への期待を余韻として残しながらも、すごく綺麗な終わり方だった。

    シリーズ2作目の既刊『ラギッド•ガール』も早く読みたい。





    「決め

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    2014年10月14日
  • 象られた力

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    ネタバレ

    WishListは「当時読みたいと思った」本が大量に入っていて、自分でもどうしてこれが読みたくなったかわからないのが多々あるのだが、これもそう。後からWikipediaで見直して「ああ、ラギッド・ガールの人だったんだな」と思いだしてようやく入っていた理由がなんとなく推測できた(ラギッド・ガールはアンソロジーで読んだので、著者名を失念していたのであった)。

    本編には表題作を含めて、4つの短編がおさめられている。個人的には幻想的な雰囲気が全体を通じて漂っていて、最後にストンとおとす「夜と泥の」がお気に入り。

    本書はハードSFという感じの表現もあるが、基本的にはファンタジーとSFの間ぐらいに位置

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    2013年12月22日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    「最期の言葉は―――そうだ、あの蜻蛉にかけてやったのと同じ科白」

     美しく清新で、残酷な物語。
     存在意義を失われて1000年。設計されたものと、使用されたことによって蓄積された負の記憶。この数値海岸のAIたちが、ゲスト(人間)によって付けられた爪痕が、来訪者によって抉りだされる。
     その時に生じた、苦しみと痛みと何よりも悲しみは、ひとつとしてみていて気分のいいものではないはずなのに、目が離せない。それは、人間を限りなく模倣したAIたちが、観客でしかない自分では感じることができない苦痛と悲劇に、哲学的ともいえる絶望に見舞われているから。それを憐れむことや先を求める残酷さすら、読者たる自分には

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    2013年10月13日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    『グラン・ヴァカンス』の先日談。

     前著では、アイデアとしては新しい部分は少ないのだが、そんなものを全く弱点だとも思わせない圧巻の表現力が、惹きつけてやまない魅力となっていた。そして今作においては、今まで誰も考えたことのない(あるいは手を出せなかった)怪物を作ってしまうという偉業を成し遂げた。
     仮想世界の「数値海岸」は、そこに訪れる人の欲望を映し出し形にする。ゆえにそこでは、アウシュビッツすらもお遊びとしか思えないような、AIに対する高品質な虐待が日々絶え間なくおこわなれる。それを防ぐためにおこわなれた「大途絶」。しかし、数値海岸は、決して平和になることはない。ゲストたちよりももっと残酷な

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    2013年10月05日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    長編よりも中小編の方がやはり切れ味が有ると改めて思いました。
    前作「グラン・ヴァカンス」の伏線を回収していく中編集。
    あちら側とこちら側の視点で描かれるどちらの世界も美しい文体で綴られ、
    最早中毒気味です…次回作が楽しみ過ぎます!
    「魔述師」「蜘蛛の王」辺りが個人的には好み。

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    2012年12月15日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ネットで買えばいいものを、なんとなく本屋の本棚から自分の好みに合う本と出会えた時のあのワクワク感がたまらなくて、つい栄のジュンク堂まで出かけましたが、買ってよかった。

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    2012年12月10日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    先にこっちを買ってしまった廃園の天使シリーズ。面白かったので①を読もうと思ったら、地元の本屋は全滅。

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    2012年12月10日