【感想・ネタバレ】ラギッド・ガール 廃園の天使IIのレビュー

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ネタバレ

凄まじかった、これも…。
廃園の天使シリーズⅡ作目。前作で登場した仮想リゾート〈数値海岸〉がどのようにして作られたか、〈大途絶〉がなぜ起こったか、他にもいくつかのキャラクター達の起源が明かされる反面、新たなキャラクターや謎、まだまだわからないことも多い。
上手く言葉に出来ないけど、人間が抱えていながら現実世界では抑制して生きている(対象は自他問わない)破壊衝動みたいなものが、似姿では抑制がはずれ顕著になる。もっとも純粋な悪意みたいなものになる。〈天使〉も〈鯨〉もジョゼに埋め込まれた〈歯の女〉も、もとは人間から抽出された要素が振るう猛威なんだと思うと人間てやっぱり怖いね。でも正直この卓抜した想像力で容赦なくAIの世界を蹂躙する作者が一番怖いみたいなところあるけど…
続きも楽しみです。

⚫︎あらすじ
人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート〈数値海岸〉。その技術的/精神的基盤には、直観像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった──〈数値海岸〉の開発秘話たる表題作他『グラン・ヴァカンス』の数多の謎を明らかにする全五篇を収録。解説/巽孝之
(ハヤカワオンラインより引用)

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

VRやAR、また最近になって出てきたMRなどに興味がある人にはめちゃくちゃおススメの作品。数十年後の視覚世界がどうなっているかを書き上げた傑作。
またSFの中でもハードSFという、今ある科学の実績にちょろっと嘘を上乗せしたSFだから、未来の一つの可能性として世界観を楽しむことができる。
この本は、前作のグラン・バカンスから続く、廃園の天使シリーズの続編であるが、この本単体として読んでも十分楽しむことができると思う(もちろん合わせて読んだ方がより楽しめるのは言うまでもない)。
そして最終巻はいつ出るんだ。

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2016年04月24日

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ーーー人間の情報的似姿を官能素空間に送りこむという画期的な技術によって開設された仮想リゾート“数値海岸”。その技術的/精神的基盤には、直感像的全身感覚をもつ一人の醜い女の存在があった―第1章たる『グラン・ヴァカンス』の数多の謎を明らかにし、現実と仮想の新たなる相克を準備する、待望のシリーズ第2章。


飛浩隆『廃園の天使』シリーズ第2章の中篇集
凄いの一言。詩のような美しい文章が特徴的だった第1章『グラン•ヴァカンス』の肉厚なバックボーンを、物理世界と仮想世界の両面から描き出す。この中篇たちがあればこそ、第1章がさらに輝きを増す。

表題作は、AR(拡張現実)を一歩進めたような概念と、そこから更に飛躍させた技術の芽吹きがリアリティを持って迫ってくる。

最後の中篇にあたる「蜘蛛の王」も、純然たる冒険小説としても通用しそうな躍動感にワクワクした。





秒四十のレートで世界と摩擦すること、それが人間という現象なのだから。

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2014年11月13日

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『グラン・ヴァカンス』の先日談。

 前著では、アイデアとしては新しい部分は少ないのだが、そんなものを全く弱点だとも思わせない圧巻の表現力が、惹きつけてやまない魅力となっていた。そして今作においては、今まで誰も考えたことのない(あるいは手を出せなかった)怪物を作ってしまうという偉業を成し遂げた。
 仮想世界の「数値海岸」は、そこに訪れる人の欲望を映し出し形にする。ゆえにそこでは、アウシュビッツすらもお遊びとしか思えないような、AIに対する高品質な虐待が日々絶え間なくおこわなれる。それを防ぐためにおこわなれた「大途絶」。しかし、数値海岸は、決して平和になることはない。ゲストたちよりももっと残酷な、訳のわからない存在が現れて荒らし回っていく。人々の精神の暗渠としての、仮想世界―――……。
 残酷で清新で美しいもの。それが、著者の考えるSF。正しくその言葉通りの、作品でした。

 次回作の『空の園丁(仮題)』が、早く読みたいです。
 

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2013年10月05日

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長編よりも中小編の方がやはり切れ味が有ると改めて思いました。
前作「グラン・ヴァカンス」の伏線を回収していく中編集。
あちら側とこちら側の視点で描かれるどちらの世界も美しい文体で綴られ、
最早中毒気味です…次回作が楽しみ過ぎます!
「魔述師」「蜘蛛の王」辺りが個人的には好み。

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2012年12月15日

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先にこっちを買ってしまった廃園の天使シリーズ。面白かったので①を読もうと思ったら、地元の本屋は全滅。

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2012年12月10日

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『グラン・ヴァカンス』を読んだのはたぶん1年ぐらい前だけど、これは連続で読めば良かったなー。
『グラン・ヴァカンス』を読んだときは、”数値海岸”、”夏の区界”…etcと一つ一つの単語からも感じる凄まじいこだわり、静謐ってこういうことだなと思わされる文章力からなる見事な世界の美しさに圧倒された。そして、それとは全く正反対とも思えるんだけどやはり美しい残酷な痛み・苦しみの表現、これも本当に凄かった。
本書でも飛浩隆の書く世界の美しさというのは改めて感じ入った。が、それよりも彼の書く世界というのが”数値海岸”の中だけでなく、ちゃんと現実の理論があってフィクション(数値海岸)があるとまで練られているところが驚きだった。もちろん、この現実の理論もフィクションではあるのだが、まるで別世界か遠い未来でも見てきたんじゃないかと思えるほど虚構が理に敵っている。第三作が本当に楽しみです。

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2012年10月05日

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「ぼくはね、現実世界に対してなんで右クリックが利かないのか、それが子どもの頃から歯がゆくってさ」

「ばかみたい?でも私は気づいてしまったの。小説の酷い場面に眉をひそめている私たちこそが、ほんとの実行犯なのよ」

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2012年04月10日

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前作よりこっちの方が好きだけど、前作を読んでないと面白くないです。世界観が解明されてくる短編集な感じ。あっち側とこっち側の話が交錯してます。「ラギッドガール」と「蜘蛛の王」が特に面白かったです。見事な世界観。ゆるぎないですね。

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2011年11月24日

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作家「飛浩隆」はSFとしてのフレームワークがしっかりしている事が好きな理由であるが、SFであるのに多彩な色・香り・風景・音などを感じられる希有な作家であると理解している。物語の内容については前作で語られなかった背景や、異なる平行時間の物語の入った短編集。期待が裏切られることは無いと約束する。

SFファンでなくとも本シリーズは読んでいただきたい作品の一本である。またこれは個人的ベストSFランキングの中では比較的近年にランクインした作品でもあり間違いなくベスト3に入る。

追伸:いつも読み返す時期は冬~春であり、これから暖かくなって行き、初夏を迎えるまでには「夏の扉」を読み返してみたくなる不思議な物語。

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2011年03月19日

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「グラン・ヴァカンス」に引き続き、とても良かったです。「夏の視硝体」は前作の後で読むと切なくなりました。
個人的に最も印象に残ったのは「魔述師」。これ、未来版『非実在青少年』問題…ですよね?
現在リアルに起きている論争に関しては、フィクションを愛する者の端くれとして規制に反対ですが、この作品内の<ダイ・イントゥ>の行動には一定の倫理的正当性がある、と感じてしまう。そんな自分に気が付いて少しだけぞくっとしました。
フィクションは現実を直接的に変えたりはしないけれど、優れたフィクションは現実を解釈する私達の内面を揺さぶる。
文章の持つ力というものを見せ付けられた気分です。

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2010年10月29日

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『グラン・ヴァカンス』の前日譚を集めた短編集。前作で残された謎の一部が明らかになり、緻密な設定の一端が伺える。阿形渓や<数値海岸>など退廃的で美しい登場人物、舞台が複雑に絡み合うのもたまらない。

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2010年08月03日

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廃園の天使シリーズ中・短編集ということでしたが、一作目の背景が語られていて面白かったです。一作目で、イマイチぴんとこなかった用語にも説明がついて、ほっと一息というか。

表題作も好きでしたが、ランゴーニの過去が語られる『蜘蛛の王』が一番楽しかった。彼にもナイーヴな少年時代があったんだなぁみたいな…。

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2010年05月30日

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前作グラン・ヴァカンスは終盤まで全体像が見えてこない話の展開に何度も挫折しかけ、正直あまり面白いとは思えなかったのですが、ラギッド・ガールを読み、やっと「廃園の天使」という作品の詳細が見えてきて「あれ?グラン・ヴァカンスってもしかして面白かったのか??」という気持ちになりました。今は読み返したくて仕方がないです。

さて、本作ですがいずれの短編も単独で読み応えのある作品ばかりで、非常に面白い短編集でした。特に表題作からクローゼット、魔述師までの流れが素晴らしいですね。人間を仮想現実世界に送り込むまでの現実的な課題とその解決方法はリアリティに溢れており関心しましたし、そこから生じる課題(現実に及ぼす影響やAIの人格問題など)は、我々のいる現実世界が同じ場面に直面した際の議論に活かせるのではと感じるほどでした。20年以上前にこういった視点から問題を提起し、物語に落とし込んでいた飛先生は本当に素晴らしいSF作家ですね。

また、表題作のラギッド・ガールは美醜やジェンダーの観点から見たSF作品として素晴らしい完成度を誇っているので、単体でも多くの読者の手にとって欲しいですね。自分の環境や年齢などによって捉え方が変わるかもしれないと感じたので、また時間をおいて再読したいと思います。

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2023年03月28日

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前作「グラン・ヴァカンス」は評価を三にしようか四にしようか迷いましたが、今作を読んで四にして間違いなかったと感じました。

前作で語られなかった部分が短編を読むごとに明らかになり、気持ちいいです。

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2021年12月10日

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SF。シリーズ2作目。
〈数値海岸〉を舞台にした短編集。
一言でいうと、やっぱりスゴイな…、という感じ。
エロくて、グロくて、美しい。
全体的に、前作よりも分かりやすかったかも(あくまで比較的)。
もう1回『グラン・ヴァカンス』読みたくなる。
「蜘蛛の王」がベスト。アクションシーンが多くて読みやすいが、SF的アイディアに溢れていて、とても楽しく読めた。

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2021年07月15日

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中短編5編
グランヴァンカスの世界が,その成立事情や理念,崩壊のプロセスなどわかる仕掛けになっている.短編それぞれも面白いが,グランヴァンカスを読んでなかったら★は3かな

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2019年07月15日

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前作「グラン・ヴァカンス」は、舞台となる仮想空間「数値海岸<コスタ・デル・ヌメロ>」の成り立ちやここに至るまでの経緯等がほとんど描かれておらず、謎が謎のまま幕を閉じる作品ですが、この「ラギッド・ガール」に収録されている作品群を読むと、その謎のかなりの部分が解明します。こちらを先に読んでも作品としては十分成立しますが、「グラン・ヴァカンス」を先に読んでおくことを絶対におススメ。物語の解像度が、相当異なってくると思います。

人間が仮想空間を”体感”するために、計算資産をできるだけ食わないように実レベルで開発された画期的技術「情報的似姿」。「ラギッド・ガール」に収録されている作品の半分は、この「情報的似姿」開発の経緯と展開を、生身の人間社会でのひとつのできごととしてサスペンスフルに描写しています。
「グラン・ヴァカンス」の登場人物たちは、全てAIでした。それと比べると、人間が主役の作品は平易で感情移入しやすいんだろうなぁ・・・なんて思いながら読み進めた鴨が浅はかでした(^_^;人間の登場人物たちの方が、数倍グロテスクで感情移入不能であるという、この驚き。特に、作品群のドライバーとなる阿形渓と杏奈・カスキの両女性キャラの異形ぶり、激烈ぶりといったら、正に夢に出そうなほどのユニークさ。特に杏奈・カスキは、作中では相当な美女であることが仄めかされているのに、読後のイメージは「気持ち悪い」の一言しか思い浮かびません。このキャラ設定、どこから想起されるんだろう。飛浩隆の想像力に脱帽。

人間の情動をコピーしたともいえる「情報的似姿」とは、生身の人間本体とは切り離されて独自に仮想空間を動き回る存在であり、人間社会のモラルや規範に縛られない存在です。それ故に、コピー元の本人の意思とは関わりなく隠された欲望や衝動がストレートに表出されてしまう、その醜さを描くのが、この作品群のテーマの一つなのかもしれません。
・・・とか理屈臭いこと書いてますけど、そんなお利口な理屈をこねる作品ではないことは、鴨も肌感覚でよく判りますヽ( ´ー`)ノとにかくグロテスクで醜悪で破壊的な作品ばかりだけれど、でも、美しいんです。破壊し、分解し、浸食する、そのシーンひとつひとつの美しいこと、艶やかなこと、そしてセンシュアルなこと。細かいロジックを突き詰めていけば、突っ込みどころはたくさんあります。が、そんなことを気にしていては楽しめない世界観だと思います。

キャラがぶっ飛び過ぎていて鴨的には☆5つまでには行かない感じですが、でも次作が出たら絶対買います!楽しみです!

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2019年06月16日

Posted by ブクログ

続き物の二作目だった!しかも三部作だった!これは帝国の逆襲から観始めるようなもんなのかも、と思ったけど、全然関係なく楽しめた。いやありがたい。

SFと言えば宇宙を攻めずにはいられないわけだけど、いや思いこみだけど、ここは宇宙には行かずに仮想現実オンリーで来た。しかし今の現状を考えると、もしかして近い将来にこんな世界が来るのかも、来たらスゴイかも、と思ってワクワクしてしまうし、その世界をめっさ考え尽して、こんな問題が起きて、こうなるんじゃね?って宇宙シリーズよりよほど現実感があるというか、こんなことを考えてる人が普通に大学とかにいるんじゃねーかとか。思ったり。

でもって短編がゆるゆると絡まりながら、リンクしながら進むし、その絡まり方がなかなかにうまくできていて、好きよ。

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2018年07月08日

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〈数値海岸〉の世界観に複数の視点から触れる短編集。

表題作が一番好きかな。読み終わって印象に残っているのは、阿形のざらざらとした皮膚の質感や太い指だから。
こういう比較した言い方は良くないのだろうが、真賀田四季レベルのインパクトがあるキャラクターだった。

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2018年01月22日

Posted by ブクログ

毛細血管をやわやわと刺激されている気分。

センチメンタルと緻密さとエログロが同居している。
正直、好みだ

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2014年01月07日

Posted by ブクログ

 前作、グラン・ヴァカンスの続編。
表題作はアンソロジーで先に読んでいたがいまいちピンとこなかった部分があった。だが前作のグラン・ヴァカンスを読んだあとではすっきりした。
グラン・ヴァカンスの続き、別視点からの話なんだなと。あのVR世界の開発者や大途絶の原因の事件を描いている。

いつもどおりの残酷な世界。思うにこのようなVR世界だと世界破滅ものが不自然ではない。んまあ現実世界以上に魅力的なものをもってこないと説得力がないが。
箱庭世界で神として世界をコントロールしたい、徹底的に破壊したいのは人間としての業なのかと読後に考えた。
VR技術として「似姿」という方法をもってくるのは非常にリアルだ。面白い。
さて、三部作の最終巻はいつ出版されるのかなと……

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2012年08月12日

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スピンアウトもの、という範疇ではないのだけど、続編ものの短編集でここまで質が高いものはなかなかない。ほのめかす程度に物語が絡み合っている、そのさじ加減がたまらない。

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2011年01月21日

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前作、グランヴァカンスを補完する短編集。現実世界と仮想世界が交差する。廃園の天使シリーズが完結されることを望む。

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2018年06月16日

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グラン・ヴァカンスでは描かれきれてなかったところを補完した短編集。
AIの人権。情報的擬似の心。制作者と利用者のエゴ。そして読み手への当事者意識。
謎は解けた。あとは3部を待つばかり。

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2013年07月09日

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前作の『グラン・ヴァカンス』は寓話的すぎて物足りなかったが、こちらを読むことで〈数値海岸〉の世界観の深みを感じることができた。

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2011年07月18日

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