飛浩隆のレビュー一覧

  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    読後、その本のことが頭から離れない…思考が止まらない。そう思える作品が良い本だと思います。この作品がまさにそうでした。

    読むだけで痛い。心の奥底まで震える。
    自分の深層心理に触れられた気がする。
    圧倒的情報量に頭がクラクラした。
    次々移り変わる場面…現実世界や仮想現実の区界。家にいながら色々な世界を旅することができる。遥か上の視点から旅をすることができる読者はゲストよりも贅沢かもしれない。

    グラン・ヴァカンスと同じく、至る所に散りばめられた残虐性に、その倒錯的な美しさにやはり惹かれてしまう。残酷なのにも関わらず、何故こんなにも美しいのか。圧倒的な文章量なのにも関わらず、最初から最後までつま

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    2024年09月20日
  • 自生の夢

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    SF作家飛浩隆の中短編集。これまでいくつかアンソロジーで短編を読んできた中でも強烈な印象があったけれどやはり凄まじい作家だ。特に表題作『自生の夢』といくつかの派生作品は言語・言葉をテーマとする作品群だが、なんというか読む前と読んだ後で自分が別物に変えられてしまったような感覚がある。変わってしまったのが言葉や意識についての認識なのか、自分の考え方や物の見方なのか、そしてそれがどの程度なのかを思考したり言語化するのは難しいのだけれども。伴名練氏の解説も流石。なんとなく手が伸びず未読のままになっていた『屍者の帝国』、いよいよ読もうかと思う。

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    2024年07月27日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    理系ではない頭では設定に理解がついていかない部分はあるけれど、それにしても面白かった。
    登場人物はAIであり、グロテスクで救いのない場面が続くけれど、無機質ではない。むしろ、情や執着や羞恥心のような人間味と、生きていることの切なさのようなものがある。もっと雑にいえば、なんだかよくわからないけれど、切ない。
    なんだかよくわからないというのは、設定やストーリーではなく、読み終わった後の感情がうまく形容できないという意味である。その、「なんだかよくわからない」を受け入れられる人にはこの本をお勧めしたい。

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    2024年02月25日
  • ラギッド・ガール 廃園の天使II

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    ネタバレ

    凄まじかった、これも…。
    廃園の天使シリーズⅡ作目。前作で登場した仮想リゾート〈数値海岸〉がどのようにして作られたか、〈大途絶〉がなぜ起こったか、他にもいくつかのキャラクター達の起源が明かされる反面、新たなキャラクターや謎、まだまだわからないことも多い。
    上手く言葉に出来ないけど、人間が抱えていながら現実世界では抑制して生きている(対象は自他問わない)破壊衝動みたいなものが、似姿では抑制がはずれ顕著になる。もっとも純粋な悪意みたいなものになる。〈天使〉も〈鯨〉もジョゼに埋め込まれた〈歯の女〉も、もとは人間から抽出された要素が振るう猛威なんだと思うと人間てやっぱり怖いね。でも正直この卓抜した想像

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    2024年02月17日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ネタバレ

    読み終わりたくなかった…読み終わってしまった…。
    「零號琴」が面白かったのでこちらも、と手を伸ばしたのだけれど凄まじかった。2章のアンヌの登場あたりから面白さがどんどん加速していく。徹底した、容赦のない残酷さ。無慈悲さ。全編とおして、それこそ「天使」みたいな無機質さと美しさを感じる文章。
    美しい永遠の夏の区界。表向きのコンセプトは「古めかしく不便な街で過ごす夏のバカンス」だけど、それは「踏みにじられる為のイノセンス、無垢」という意味合いも内包していて、その成り立ちからしてもう、この区界そのものが残忍さと美しさの集積で出来ている。 
    「零號琴」のときもそうだったけど、本作も一見美しく豊かな世界観

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    2024年02月09日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    これほどまでに文章だけで人を惹きつけることができるのか、と思った。どこまでも残酷で、救いがない。「作られた」存在であるAI。だがそこに確かに感情は存在している、心はある。例えそれすらも最初から規定されていたものだとしても。読めば読むほど苦しくなるのに読むのをやめられない。かけ離れているように思える残酷さと美しさが共存していた。そのアンバランスで脆く壊れそうな、高度の低い宝石のような美しさが好きだった。

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    2023年11月03日
  • 自生の夢

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    「自生の夢」(飛浩隆)を読んだ。
飛浩隆さんの作品読むのは「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」以来二冊目。
    
六つの短篇収録。
    
やっぱり飛浩隆さんの創造力(!)についていくのは容易じゃないな。
    
私の貧困な想像力では長い鼻に触れてあぁシワシワの太い蛇の様だなと思うのがせいぜいで全体を理解なんかできっこないのにこんなに面白いのはなんでだ。
    
「曠野にて」の中で克哉が選択したセンテンス
『鳴き砂の浜へ、硝視体をひろいにいこう。』(本文より)
を読んでニヤリとしてしまった。
「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」の書き出しのセンテンスだからね。
    
「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」では登場人物たち

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    2023年08月14日
  • 零號琴 上

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    センス・オブ・ワンダーに満ち溢れた快作。基本はSF。それに神話をもとにしたファンタジー、重要人物の死を題材にしたミステリー、兄妹の財産の奪い合いなど盛りだくさん。後半もとても楽しみ。

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    2022年10月20日
  • 零號琴

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    遠い未来。人類は〈行ってしまった人たち〉によって整備された〈轍宇宙〉と呼ばれる銀河団に居住地を広げていた。〈行ってしまった人たち〉が遺した楽器を扱う特殊楽器技芸士のトロムボノクは、大富豪フェアフーフェンの依頼で、相棒のシェリュバンと共に惑星〈美縟〉へ赴く。そこは首都全体が巨大楽器〈美玉鐘〉のために設計され、毎週末には建国神話〈美縟のサーガ〉にまつわる假面劇が上演される異様な星だった。だが、トロムボノクとシェリュバンにとって初めての假劇の夜、何者かが放った刺客の〈亞童〉にフェアフーフェンが殺される。サーガが語る美縟建国の真実とは。そして、〈美玉鐘〉が500年ぶりに鳴るとき奏でられるという秘曲〈零

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    2022年03月31日
  • 自生の夢

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    カルチャーショックってこういうことだろうか…って読みながらずっとびっくりしていた。
    難しいけど読みきりたい、と辿り着いた解説を読んでさらに驚いた。これは文脈を読み取れる人ならより一層楽しい読書体験だろうなあと羨ましく悔しい。もっと本を読まねば。
    個人的には「海の指」の鮮烈さに圧倒され酔ってしまった。美しくて映像的。漫画も読みたい。

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    2022年01月15日
  • 零號琴 下

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    傑作である。
    オマージュの大盤振る舞いでオタクであるほど面白いはず。

    本作で終わらせるにはもったいなさすぎる世界観。続きを読みたい!

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    2023年06月25日
  • BLAME! THE ANTHOLOGY

    購入済み

    実は初BLAME!でした。

    有名な作品なのに、初BLAME!がこの本でした。飛浩隆先生目当てで買いました。
    予備知識なしで読み始めたのですが、とても面白かったです。一番最初の「はぐれ者のブルー」を読むと、世界観を大まかに理解できるので、その後の話もスムーズに入って来ました。そして、その後の話も新しい情報を提供してくれるので、どんどん世界が広がります。
    どの話もワクワクするような世界観で、BLAME!の世界に引き込んでくれます。原作の漫画も読みたくなってしまいました。

    #ダーク #ドキドキハラハラ

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    2022年09月29日
  • 零號琴 下

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    ネタバレ

    「グラン・ヴァカンス:廃園の天使」以来の第2長編とのこと。
    遅筆遅筆とはいいながらも確実に作を重ねている作家で、情けないことに9年前に読んだ「グラン・ヴァカンス」の思い出に酔うばかりで他の著作に手を伸ばせずにいた。
    ハードカバー版をチラ見して、重厚そうだなと感じていたが、なに、読み始めれば娯楽そのもの。
    キャラクターは丁寧に描き分けられ、漫画やアニメに親和性が高そう、と冒頭十数ページで、容易に軌道に乗れた(萩尾望都の絵柄で脳内再生)。
    ところがなんと漫画っぽいとかアニメっぽいという印象を越えて、そのまんまポップカルチャー諸々を取り入れた作りだと判り、断然面白くなった。
    あー「プリキュア」ね。そ

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    2021年11月10日
  • 零號琴 上

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    レビューは下巻にてまとめて。
    とりあえず、これまで読んできた飛浩隆作品に比して、ストーリーテリングの巧みさは素晴らしかったです!下巻でこの勢いを保ちつつどう展開するか、楽しみです。

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    2021年10月29日
  • 零號琴 上

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    良いところで上巻が終わり。楽器演奏の描写が異質すぎて、読み応えがありすぎる。それに、日本のカルチャーをゴリゴリ詰め込んで話を展開していくのは強引であるが、ホントに面白い。

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    2021年10月17日
  • 零號琴 下

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    単行本で二度読んだはずだが、面白くて文庫でも一気読み。イラストも解説も素晴らしい。「メタ戦後日本SF史小説」とも読めるだなんて、解説を読まないと気づかなかった。

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    2021年10月17日
  • 零號琴 下

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    ネタバレ

    楽器?をモチーフにしたSFに対し、あらすじを読んだだけでは面白さがわかりませんでした。

    しかし、読み進めるにつれ物語に強烈に引き込まれました。
    想像は無限であり、凄まじい力です。

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    2021年09月29日
  • 零號琴

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    すごい。すごい壮大なニチアサ合同劇場版を見てるような作品だった。
    街全体を巻き込んだヒーローショー風大スペクタクル仮面劇って舞台立てがまずアツい。光景を想像するだけで超楽しい。
    その劇を取り巻く様々な人々の思惑や情念や、主人公ペアの驚き・戸惑いが渾然一体となって迎えた本番がまた最っ高のエンターテインメントなんだわ!
    神話の世界に特撮や魔法少女の表層を重ね合わせて、さらにその下の地層には美褥という星に秘められた凄惨な歴史と住民たちの秘密があって……
    何重ものメタファーをそっと剥がしながら「今の描写ってまさか……」と考察するのもまた楽しい、幾重にもレイヤーがかさなったこの感じ。表現する言葉はきっと

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    2021年09月20日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ネタバレ

    全く前情報無しに読み始め、序章はちょっと変わった良くある能力バトルかと思いきや。
    結構エグい描写が満載でゾクゾクしたが、悪趣味と思う人もいるかも。しかし話はなかなか凝っていてエヴァを想起させる様な描写もありかなり楽しめた。次回作も読んでみます。

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    2021年07月13日
  • グラン・ヴァカンス 廃園の天使I

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    ネタバレ

    なんて残酷な、なんて美しい。
    絵葉書の中の風景のような《夏の区界》の美しさと、それが崩壊する恐ろしさと。
    そして崩壊しながら段々と見えてくる《夏の区界》の正体。
    目をそむけたくなるくらいグロテスクなのに、凝視したくなるほど美しい。

    挿絵もないし映像化もされていないのに、何故だか映像が想起される小説でした。

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    2020年11月01日