小林泰三のレビュー一覧
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“でも、今ならまだ間に合う。即死していないところを見ると、動脈が切れたわけじゃない。手当てさえ早ければ、助かるはずよ。
「みさき、よく聴いて。このままだとあんたは死んでしまう」
「嫌だよ……。死にたく……な……い」
「助かる方法は一つしかない。なんとか電話をとって、そして、一一九に電話するの。そして、ここの住所を言って救急車に来て貰うの」
「でき……ない。難しい……」
「そんなこと言わないの!」わたしは泣き叫んだ。「それしか、助かる方法はないの」
「お母……さん、電話……して……」
ああ。それができさえすれば、どんなにいいだろう。でも、現実にはそれは無理だった。
あまりに面倒すぎる。
みさきの血が床の上のゴミの間に広がり、ポテトチップスを浸した。
「それはできないのよ、みさき」わたしは懸命にみさきを説得した。「自分の足でしっかりと立つの!!」”[P.113_ものぐさ]
「ものぐさ」の狂い具合に酔いつつ、最後の「英雄」のグロさがくる。
酷くてグロいのに面白いから手が止まらない。
最後にハッとなってしまった。突然関西弁になるのがたまらない。この二人って……!
“「あなたはいったい何者?」
「彼方に去りし者。そして今はあなたより出でし者」
探偵はいなくなっていた。霧の中に写真だけが残されていた。
「待って。わたしにはまだあなたが必要なのです、先生」
霧の中に声が響いた。
「僕はここにいるよ。いつも、この探偵事務所に。いつまでも君の傍らに」”[P.242_依頼人と探偵] -
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“「僕と話が合うだって!?そんな女、嫌だな。気が休まりそうもない」
「『先生と話が合いそう』と言うただけで、礼都のイメージは的確に伝わったようですけど、好みのタイプと違うというのは意外でした」
「当たり前じゃないか。『僕と話が合う』というのはつまり理屈っぽくて、先読みが得意で、人の揚げ足をとるのが好きってことだろ。そんな者同士で話をしたら、どうなる?しかも、潤滑剤であるべきユーモアを解さないとなると絶望的だ」
「目も当てられませんね」
「しかし、そういう女性が魅力的であることも事実だ」
「どっちなんですか!?」”[P.263]
事件解決後に谷丸警部が傍らですごく多くを語ってるんだよねそこがぞくぞくする。
“「もう事件は解決したも同然です。四里川探偵が堂々と全員の前に登場したということはすでに事件の真相が明確になっているはずです」
「いったい何者ですの?」順子はおたおたと周囲の人々に目を移しながら尋ねた。どうやら、誰に訊いたらいいのか、決めあぐねているらしい。
「しつこいわね。警部さんが困ってらっしゃるじゃない。わたしにはわかったわ。彼が何者かね。誰にも入ることができない部屋に入ることができる唯一の人物」礼都はほんの僅か顔を上げた。「あなたは『不思議の国のアリス』に登場するんじゃなかったかしら、探偵さん」
「『鏡の国のアリス』の方です、お嬢さん。……なんのことかわかるかい、四ッ谷君?」
「いいえ。全然」
「結構」先生は浬奈の部屋の中から一歩踏み出した。”[P.350] -
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表紙は「海を見る人」のワンシーン。
こうやって見れば、感傷にとらわれたせつない印象的な恋情場面なんですが。
このきれいだけど、せつない場面は、限られた期間だけの話ですよね。
老人の時間間隔では、おそらくきれいなままで見るだけでしょうけど。老人の死後、どうなっていくのかを考えたときに、ちょっとホラーなんじゃないかな?と思ってしまって、現実に引き戻されました。
なんか、そう思った自分が哀しい。
彼女が、引き伸ばされていくのって、そこまで観賞に耐えれるものですか?
舞台設定を理解するのに、体力使う物語が多かった。入り込むまでに、時間かかりました。
なので、入り込めたと思ったときは、たまらんね。
でも、短編集なので、入り込めている時間が短いんです。 -
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割と好きな作家さんの奇妙な物語集
でも最初の「見晴らしのいい密室」は夢や仮想世界でがっかり。ディック流の「目を擦る女」の斬新さはいいが、グロさが前面に出るから、テーマが読み取りにくい。
バカも『泰三泰三』言えってな感じの QR コード小説「探偵助手」は中身はさっぱり。
既読の「忘却の侵略」はシュレディンガーの猫ネタだから、やはり楽しい。かなり楽しい。このあたりから、ジャンルというかカテゴリーは SF になる。
オチがわかりにくいのが、難点の「未公開実験」はまぁまぁかなぁ。まさに王道テーマの「囚人の両刀論法」は楽しい SF だ。
そして既読の「予め決定されている明日」。いいね。
唖然呆然のって紹介だが、奇をてらっただけで、ミステリー部分はおもしろくないなぁ。でも、SF 部分はかなりおもしろい。既読が多いけど満足。