小林泰三のレビュー一覧
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2015年、20冊目は小林泰三のSF(?)短編集。全七編。
現在は入手困難な1冊。実際は数編差し替えて、同じくハヤカワ文庫から『見晴らしのいい密室』として出てるらしいです。自分はBOOK・OFFの¥108コーナーで入手。
今回のお気に入りは「刻印」がベスト。SF的設定ではあるが、小難しい理論少な目で、普通にホラーの短編に納められてても通用すると思える作品。大オチは、らしさ全開。
次いで表題作「目を擦る女」。コレもホラー短編集に納められてても通用しそうな感じ。
「未公開実験」は、氏のコミカルな面が出てて好き。登場する四人の会話回しもイイ。理論的な部分は、正確には、半分も理解してないだろうけど……。そして、『家に棲むもの』収録の「肉」、『大きな森の小さな密室』収録の「正直者の逆説」「遺体の代弁者」へと繋がっていく。
「脳喰い」は小林泰三、お得意の時間軸を、前後させながら、物語を収束させていくパターンのSFホラー(?)。
「空からの風が止む時」はこの中だと、比較的オーソドックスな部類のSF。しかし、オトの父は結局……?この大オチはチョット予想出来なかった。
以下二編は少々、ネタバレ的だが、上位概念、ヴァーチャルオチ。
「予め決定されている明日」はデジタルの裏側を超アナログで描く設定+ヴァーチャルオチで特に目新しさはない。しかし、読後感は(肯定的に)良くない。
「超限探偵Σ」。コレは正直、ごめんなさい。ミステリーとして、コレはやっちゃいかんでしょう。
SFもあまり得意ではないジャンルだが、なかなか楽しめた。
★★★★☆の評は結構甘め。 -
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2015年15冊目は小林泰三の連作短編。
「奇憶」
何をやってもうまくいかない主人公、直人はつれづれなるままに幼少期の記憶を遡ってゆく。ソコには……。
「器憶」
直人の元恋人、博美。その現在の恋人が腹話術に没頭するあまりに陥ってしまったコトとは……。
「土危(←変換できず)憶」
直人の唯一の友人、田村二吉は「前向性健忘症」となり記憶をつなぎ留めるためノートを持ち歩いている。しかし、そこに書かれていたこととは……。
最初の「奇憶」の登場人物をスピン・オフしたかのような連作短編。
中身的には「土危憶」、オチは「器憶」で、個人的好みは並びの逆順かな。 どれも小林泰三的造りと世界観だが、「コレ」というインパクトには欠けてたかな。 -
Posted by ブクログ
長らく絶版になっていた小林泰三の初期作品を含む傑作短編5編を再録、新たに2編の描き下ろしを加えたグロテスクホラー短編集は初球からいきなりストレート。
南極での戦闘、地底に眠っていた生物、海百合っと読めば、≪その方面≫のファンならば、もうニヤリが止まらない第1話「ショグゴス」
ファンサービスを兼ねた江戸川乱歩真っ青のエログロ描き下ろし短編の第2話「首なし」
初期の短編で傑作の誉れ高い正統派ホラーの第3話「兆 KIZASI」
大戦末期、京都が爆撃されなかった真の理由と、古都の守りを汚した事で祟りが現実になってしまった第4話「朱雀の池」
小林ファンの為にあるエログロ&ブラックの極致!描き下ろし第5話「秘めやかな趣味」
SFゴシックホラーの傑作。第6話「試作品三号」
究極のスプラッターとグロテスクな描写で生理的な嫌悪感を抱かせ読者の感情を激しく揺さぶる表題作の第7話「百舌鳥魔先生のアトリエ」
の収録は小林泰三ファンにとっては感涙もの。 -
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ネタバレ確か軌道エレベーターが話題になった時にいつか読もうと思ってWishlistに入れていた作品。小林泰三はどちらかと言うとぐろいホラー畑というイメージだったので、読み始めてから途中で「そういえば、この人って確かホラーなんじゃなかったっけ?」と気付いた(本人はSFが本職と考えているらしいが)。
表紙がアレなのでそういう話がメインかと思いきやそんなこともなく、SFとファンタジー(+グロ)の境界線で自由に発想を動かす短編8編を収録している。
短編集となるとどうしても作品ごとに当たり外れはやっぱりあって、個人的なお勧めはミステリー風味かつコメディタッチで読者にはまったく説明がなく物語が進んでいく「あの日」。こういう「よくわからない世界で起承転結の物語を描く」というのは、短編のほうがやっぱりむいている。
一方で、あんまり気持ちよく読めないというのは、最後の「時空争奪」。たぶん、ここのあたりが著者の真骨頂なんだろうけど。 -
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とある別荘で起きた殺人事件。
被害者は鍵のかかった部屋のベランダから10mほど下の池へ身を投げて死ぬ。
落ちた瞬間は見ていないが三人の人物が被害者が部屋に入るところ、そこから誰も出入りしていないこと、悲鳴が聞こえてから被害者の二つ隣の部屋のベランダから下に倒れている被害者を確認した。
SFものやホラーものしか読んでこなかったがこの作品はロジックで積み立てられた純粋な推理小説である。SFな要素は主人公側にある。そしてこの要素は好きな人は好きだろうけど私は不要だと思う。物語に関わらなさすぎるしぼかされてもいる。
それと登場人物の女性が気持ち悪いくらい現実離れした会話をするため(他の登場人物は現実にいそうな人物像で描かれてるから際立つ)完全に満足はしにくい。だが事件の真相や探偵の導き方だけでも楽しめる作品なのは確かだ。 -
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“「何を言ってるんだ?」ドッペルが真顔になった。「他人てのは俺のことか?俺はおまえじゃないか。自分で自分の記憶を思い出す切っ掛けを作ってるだけなんだから、おかしくもなんともない。それとも、まさか、おまえ俺を自分から切り離して考えてるんじゃないだろうな」
「そんなことはないよ」僕は慌てて首を振った。
「それで安心した」ドッペルに笑顔が戻った。「俺はまた、おまえが俺に名前でもつけたんじゃないかと冷や冷やしたぜ」
僕の全身にゆっくりと鳥肌が広がる。”[P.114_友達]
「脳髄工場」
「友達」
「停留所まで」
「同窓会」
「影の国」
「声」
「C市」
「アルデバランから来た男」
「綺麗な子」
「写真」
「タルトはいかが?」
“「ムッシュムラムラ!」先生が呪文を唱えた。
まるでビデオを巻き戻すかのように、すべての針はそれが発射されたのと全く同じ軌跡を後戻りして、六型の体内に戻っていった。どんなに頑丈な鎧に守られていようが、針の発射口は無防備だ。六型は動きを止めたかと思うと、不気味な軋む音を発し、粉々に砕け散ってしまった。
「先ほどのお言葉を返すようですけど」先生は退屈そうに言った。「やっぱり核兵器の方が厄介だと思いますよ。以前、食らった時には、爆風と放射能を無効化するのに苦労しましたもの」
わたしは左目から飛び出す舌の先を握り締めると、七型をぐいと引っ張った。七型は床の上で滑ってひっくり返った。
「先生、こいつどうしましょう?」
「吸収しちゃえば?あなた最近鉄分不足のようだから、ちょうどいいわ」”[P.251_アルデバランから来た男] -
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探偵助手・四ツ谷礼子は探偵・四里川陣に命じられ殺人事件の調査に赴くことになる。その事件は密室にいたはずの被害者が外で転落死していた、という不可解なものであった。
自分の中で小林泰三さんはヘンな小説を書く人、というイメージが出来上がっているのですが(笑)、今作は礼子が事件関係者から話を聞く様子がとても丁寧に書かれていて
「あれ? 普通の本格ミステリだ」とすこし意外な印象すら感じてしまいました(笑)。
事件の調査をする礼子も関西弁やドタバタっぷり、四里川に振り回される様子も読んでいて楽しく、
「あれ? キャラもそこまでぶっとんでないのにいいキャラだな」と思ったり(普段小林さんにどんなイメージを持ってるんだ、ということになりますが…)
事件の解決も非常に本格っぽい…、かと思いきや意外なところではしごを外されます(苦笑)。個人的には納得しきれないというところもあるのですが。
やっぱり小林作品は一味違うな、と改めて思いました。 -
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ネタバレどんでん返しの傑作、と聞いていて、(まあネットの情報だけど)ずっと探していたのだが、絶版になっていたらしく、なかなか見つからず、今回再販ということでようやく手に入った。
内容はそれほど引き込まれるものではなかった。どんでん返しがあることは当然知っていたので、興味はどんな叙述トリックだろう?の一点に。
その体で読んでいると、明らかに怪しい所が・・・
ただ、そうなると警部の存在が・・・
最後は、ああ、なるほどね、と。
結構楽しんで読めた。
以前読んだ「大きな森の小さな密室」は、この作品の登場人物が多く登場する、スピンオフ的な作品だったのね。読む順番が逆だったら、楽しみ方も違ったのに、残念。 -
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“「馬鹿な。君はわれわれが架空世界の住人だと言うつもりなのか?」
「架空ではなく仮想です」Σは冷静に訂正した後、宙に向かって叫んだ。「さあ、正体を現すがいい。われわれを監視しているのはわかっているんだ」
「おい。いったい何を言い出すんだ?」警部の顔が青くなった。
「今回の現象がエラーによるものだとは思えません。不合理なことが出鱈目に起きているのではなく、ある種のシナリオにそって密室殺人が行われたように見えます。つまり、誰かがこの仮想現実に干渉して演出しているはずです。そして、そのようなことをした人物がその事件に関与する者を観察するのは自然なことです」
Σの言葉は一見荒唐無稽のように思える。しかし、それが現状を説明し得る唯一の仮説であることも確かだ。論理は完璧で一分の隙もない。わたしはあらためてΣの推理力に感服した。”[P.71_超限探偵Σ]
「目を擦る女」
「超限探偵Σ」
「脳喰い」
「空からの風が止む時」
「刻印」
「未公開実験」
「予め決定されている明日」
「刻印」の最初のドアのやりとりでちょっと笑ってたら恋愛ものに発展して驚いた。オチもしっくりきてよかった。
あと、「未公開実験」の終わり方最高。
“そういえば、今まで部屋の鍵を掛けたことがなかった。一人暮らしだし、金目のものもないので、外出する時もいつも開けっ放しだ。普段はそれでも平気なのだが、事件の現場がすぐ近くらしいこともあって、少し心配になってきた。
僕は玄関とベランダの鍵を掛けた。部屋の鍵はこれだけ。簡単なものだ。いや。待て。トイレにも窓があったはずだ。小さくて人間なら入れないだろうが、エイリアンはどうだろうか?いちおう閉じておいたほうが無難だろう。僕はトイレのドアを開けた。
トイレの中に等身大の蚊がいた。
僕はすぐさまドアを閉じた。ゆっくりと深呼吸をする。”[P.170_刻印]