森沢明夫のレビュー一覧
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再読。映画の脚本を森沢さんが小説にした作品。亡くなった奥さんの遺言で奥さんの故郷の海へキャンピングカーで散骨しに行く途中に出会った人々とのつながりや夫婦の絆が丁寧に描かれている。高倉健さん主演の映画も感動したが、小説の方も心を揺さぶられるステキな作品だった。登場人物一人一人が何かしらの問題を抱えながらも前向きにあたたかく描かれているのもよかった。奥さんの2通目の遺言を読んでいて涙があふれてきてしまった。短い言葉だが「あなた」という3文字の言葉がとてもステキな言葉に思えた。倉島と奈緒子の「他人の厚意は?」(奈緒子)「受け取るべき、でしたね」(倉島)「正解です」(奈緒子)のやり取りもおもしろかった。小説の中に出て来る風鈴の音、シャボン玉、種田山頭火の句も印象的。小説の中に出て来る宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」をYouTubeで高畑充希さんが歌っているのを聴いてみたら、とても優しい歌で心があたたかくなる心に沁みる曲だった。
心に残った言葉
・「一瞬」と「永遠」は、時計で計れば大きな差が出るが、人の想いで計ればイコールで結ばれることもあるのではないだろうか。(倉島)
・「我々も蔓草になっちゃ駄目なんですよね。蔓草ってのは、絡む木がないと枯れてしまう存在ですから。我々はしっかりとした木になって、根を張って、自分ひとりの足で立って、周囲に蔓草がいたら幹も枝も貸してやり、生かしてやる。そういう人間じゃないとね」(杉野)
・「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」(洋子)
・「人生には賞味期限がない」(洋子)
・「偶然のいい出会いっていうのは素敵なことが起きる予兆で、それが三つ続いたときに、驚くような奇跡が起きるー」(洋子)
・もしかすると、この世のすべての事象は
「自分がソレのどこを見るか」だけで、がらりと変わってしまうのかもしれない」(倉島)
・ただ裸足になってドアの外に一歩出るだけで、世界はこんなにも違う。こんな小さな一歩で、世界も、自分も、変えられるチャンスは生じるのだ。たったの一歩。ゼロではなくて、一歩。その差は、無限に等しいくらいに大きいのかもしれない。(倉島)
・命とは、時間のことだと。だから私は、残された時間を大切にする。時間を大切にするとは、命を大切にすることなのだ。(倉島) -
Posted by ブクログ
『津軽百年食堂』
森沢明夫さん津軽3部作の一作目
ただ、私は『青森ドロップキッカーズ』を先に読んでしまったので順番が逆転してしまったが…
未読の方は、先ずはこの作品から読み始めるのがオススメ
さてさて、物語の舞台は津軽・弘前
百年続く食堂を守り続ける父と、東京で孤独な社会に生きる息子の物語
内容はとてもシンプルだか、そこに登場する人物一人一人が実に温かく優しくて、時に粋で…
田舎を出て都会の荒波に揉まれながら強く逞しく生き抜こうとする若者の熱量と、それと表裏一体で待ち合わせる将来への不安や葛藤の描き方が美しかった。
親と子、それぞれが個としての相手の人生を考える思いやりに満ちていて、特に祭りで設営したテント内で、賢治と陽一が心を通わせたくだりには涙が溢れた。
また、エピローグにて七海が明子にこっそり伝えた素敵な台詞…なんてチャーミングな女性なんでしょう。つい嬉しくてにやけてしまった。
シーン毎に目線を移して物語を進行するという構成のため、其々の人物に感情移入しやすく、物語が立体的で時代を超えているのに読みやすかった。
後半からは健くん親子から広がった"粋"な演出のバトンタッチが繰り広げられ、物語が一気にリズム感をもち面白味を増した。
森沢明夫さんの作品に出るキャラクター達は、みな人間味に溢れていて心が温かい。私もそういう人間になりたくて…それは無理でも近づきたくて笑、すっかりファンになっている。
この読後の心地よい余韻がさめる前に3部作の完結となる『ライアの祈り』を読もう!