麻見和史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
廃屋で、動物用の檻に閉じ込められた男性の遺体が発見される。不可解な痕跡が残された事件を、如月塔子はこれまでとは違う相棒・門脇仁志とともに追っていく。
新たに組むことになった門脇と塔子。互いに距離を測りながら捜査を進めていく様子が新鮮で、意外と相性も悪くない。今回は門脇にもスポットが当たり、鷹野とは違う人情味のある捜査ぶりが見えてきたのも面白かった。
そんな新しい関係の一方で、鷹野とペアを組む針谷にちょっぴり嫉妬する塔子がかわいらしい。そうした一面を残しながらも、捜査員としては以前よりずっと頼もしくなっていて、シリーズを追ってきたからこそ、その成長がよく伝わってくる。
分析班の面々が顔をそろえる分析会議も健在。陰鬱で重い事件と、どこかほのぼのとした彼らのやり取り。その落差があるからこそ、事件の重さも、分析班の温かさも、より強く感じられた。
事件の背景を描くパートを挟みながら、地道な捜査の積み重ねによって「なぜこのような犯行に至ったのか」が少しずつ浮かび上がってくる。本作も、犯人を突き止めるだけではなく、なぜそうなってしまったのかを考えさせられる物語だった。動物愛護というテーマも単純な善悪では割り切れず、読み終えたあとには複雑な思いが残る。
新しい組み合わせの新鮮さがありながら、塔子の成長や変わらない分析班の空気もしっかり味わえる。重い事件を描きつつ、登場人物たちの人間味にも惹かれてしまう――そんなこのシリーズならではの魅力を、改めて感じた一冊だった。 -
Posted by ブクログ
解体予定のビルで発見された猟奇的な遺体。その手口は10年前の未解決事件と酷似していた。過去と現在が交錯する中、如月塔子たちは事件の真相を追っていく。
シリーズ12作目は、「過去」が色濃く描かれた一冊だった。塔子が新人時代に指導を受けた刑事との再会、普段は多くを語らない鷹野の過去、そして事件に関わる人々が背負う時間。それぞれの過去が現在と交差し、物語に深みを与えている。
印象的だったのは螺旋階段だ。過去を抱えながら一段ずつ歩みを重ね、上り詰めた先で迎える結末。その姿は、人は過去から自由になれるのかという問いそのもののように感じた。
塔子の潜入捜査は緊張感にあふれ、シリーズを読み続けてきた読者には、彼女の成長も大きな見どころだろう。
タイトルの「鏡」は、真実を映す鏡であると同時に、人としての「鑑」でもあったのかもしれない。過去は消えない。それでも、その過去とどう向き合い、未来へ歩いていくのか。事件が解決したあとも、その問いだけは静かに心に残り続けた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026/07/23読破
都内でモルタルで固められた遺体が見つかった。その犯人から捜査一課に電話がかかってきた。自分は新橋事件の犯人だ。警察は無能だ。アドバイスしてやると。
犯人から電話相手として気に入られた新人女性刑事如月はトレミーと名乗る犯人の相手をしながら、事件解決に挑む。
その過程で亡くなった父の刑事時代の失敗をしる
警察小説を初めて読んだ。
そのため、ゲソやモン(指紋)という警察用語をへーっと思いながらよめた。
最初の如月が電話相手にされた理由が、きちんと繋がっていて面白い。
途中で犯人が分かり後を追うかたちになるが、なぜ電話をかけてきたのか、なぜ捜査にアドバイスをしたかがしっかりつながっているため読み応えがあった。
最後の被害者は警察だった。。というところがなるほど犯人の行動は全部つながっていたのか、、と驚かされた -
Posted by ブクログ
人の心は、ここまで静かに壊れていくものなのか。
湾岸エリアで発生した猟奇的な連続殺人事件。現場には犯人からの挑発的なメッセージが残され、警視庁殺人分析班の如月塔子たちは事件の真相を追う。
シリーズ11作目の安定感を感じる一冊だった。今回は湾岸エリアという舞台の存在感が強く、掲載されたマップと見比べながら読むことで、事件の広がりや土地の特徴をよりリアルに感じることができた。湾岸エリアならではの仕掛けも印象的で、シリーズの中でも特に舞台設定を楽しめる作品だった。
多くの警察小説が「誰がやったのか」を追うのに対し、本作が読者に問いかけるのは「なぜそこまでしたのか」だ。鷹野や塔子たちは証拠と筋読みを積み重ねながら真相へ近づいていくが、その先に見えてくるのは単なる犯人像ではなく、人の心の深淵である。
タイトルの「凪」は、犯人が犯行を淡々と進める心境を表していたのかもしれない。そこに至るまでには、理性では抑えきれない怒りや悲しみ、憎しみがあったはずだ。しかし感情が荒れ狂う時期を過ぎ、その思いだけが心の奥に沈殿したとき、人はかえって静かになるのかもしれない。荒れ狂う心を通り越し、凪いでしまうほどの憎しみ。その原点となった人物への思いが「残響」となって物語全体に響いていたように感じた。
また、如月塔子という主人公の魅力もシリーズの大きな魅力だ。決して万能ではなく、悩みながらも一歩ずつ成長していく姿は共感しやすく、気付けば事件の行方だけでなく、彼女自身の成長も見守りたくなっている。
犯した罪は決して許されない。それでも真相を知ったとき、そこにあったのは一時の激情ではなく、長い時間をかけて積み重なった思いだった。自分なら違う選択ができたと言い切る自信はない。そんな答えの出ない問いが、読後も静かな残響のように心に残り続けている。