麻見和史のレビュー一覧
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麻見和史『鴉の箱庭 警視庁殺人分析班』講談社文庫。
シリーズ第15作。フライングして解説をチラッと見たところ、シリーズは第16作『罪の硬度』を経て、第17作で完結するようだ。次巻と最終巻では前作に引き続き、本作にも登場する恐るべきゲームマスターとの闘いが描かれるのだろうか。
本作に登場する連続殺人犯は『鴉』と自称しており、それが芥川龍之介の『羅生門』にある『鴉』という記述に由来することが冒頭に描かれており、なかなか巧みな導入の仕方だ。
また、『鴉』の綿密な計画による猟奇的殺人の背後にはゲームマスターの影があり、顔の見えない犯人を逮捕するべく事件を捜査する如月塔子と門脇仁志、鷹野秀昭に襲い掛かる生命の危機と、ストーリーは起伏に富んでいる上に非常にスリリングで面白い。
新宿歌舞伎町のドラッグストアのごみ置き場で高級ブランドの手提げバッグの中から切断された右手が見付かった。
如月塔子と門脇仁志がコンビを組み、遊撃班として捜査に乗り出す。高級ブランドバッグと切断された右手にはめられていた保湿用の手袋から被害者はホストではないかという如月の推理で歌舞伎町のホストクラブをあたると、被害者はとある店のナンバー2ホストであることが判明する。
すると今度は超高層ビルのレストラン街でホストとは別人の切断された左手が高級ブランドのポーチに入れられた状態で見付かる。
そんな如月塔子と門脇仁志らの捜査の様子を影から窺う凶悪犯『鴉』は如月の醸し出す雰囲気に惹かれ、如月を次なるターゲットにする。なかなか姿を見せない狡猾な『鴉』の正体は……
そして、ついにゲームマスターが如月に接触して来る。
本体価格850円
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東京西部の山中で発生した立てこもり事件。殺人事件の被疑者でもある犯人との交渉の末、如月塔子は人質交換に応じることになる。だが事件はそこで終わらず、事態はさらに予想外の方向へ動き出していく。
今回は「警視庁殺人分析班」シリーズでありながら、いつもの“分析”だけでは突破できない状況が続くのが印象的だった。犯人の心理を読み、痕跡を積み上げ、論理で追い詰める――そんなシリーズの軸は残っているのに、本作ではそれだけでは届かない。むしろ、極限状態の中で人が何を守ろうとするのか、どこで覚悟を決めるのか、そこに焦点が当たっていたように感じた。
特に良かったのは、塔子の扱い方。単なる“危機に陥る主人公”では終わっていない。閉塞感のある状況の中でも、彼女は彼女なりに観察し、考え、動こうとする。その姿を見ていると、このシリーズは単に事件を解決していく物語ではなく、塔子という人物の成長記録でもあったのだと改めて感じる。
また、今回は「チーム」の物語としてもかなり熱かった。誰か一人のスーパープレイではなく、それぞれが自分の立場で必死に動いている。だからこそ、救出に向けた流れに妙なリアリティがあり、読んでいて感情が乗った。シリーズを重ねてきた積み上げが、こういう場面で効いてくる。
そして犯人側も印象深い。ただ残虐な敵ではなく、「ここまでやるのか」という執念と計算高さがあり、だからこそ緊張感が切れない。読んでいる側も、“安全地帯”を感じられないまま引っ張られていく。
読み終えて強く残ったのは、「砦」というタイトルの意味だった。守る側にも、立てこもる側にも、それぞれ譲れないものがある。そのぶつかり合いが、単なる警察小説以上の重さを生んでいた気がする。シリーズの面白さを残しながら、かなり異色でスケール感のある一冊だった。 -
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麻見和史『罪過の代償 警視庁文書捜査官』角川文庫。
シリーズ第12作にして第一部の完結編。文庫書下ろし。
何とも息の長いシリーズになったものだ。そして今回も面白かった。
次々と連鎖していく凄惨な殺人事件事件。今回、文書解読班に命ぜられたのは、盗まれた企業機密が隠されたSDカードの所在を探すことだった。企業と警察組織の密約、企業機密の正体、連続殺人事件の真相とまるで真っ暗な闇の中を手探りで進むような文書解読班の捜査の様子が描かれる。
そして、かつて文書解読班のメンバーを助けた『掃除屋』と呼ばれる犯罪者の宇賀神という男が再び文書解読班の前に姿を見せるという予想外の展開。最後の最後まで目の離せない。
派遣会社から、とある企業に派遣されるプログラマーの小谷野清文という男性が自宅で激しい拷問を受けた後で殺害される。その現場からは4枚のSDカードが持ち去られ、現場には『room made up』(清掃済み)と印刷されたカードが残されていた。
また、小谷野は殺害される前に3つの段ボールを知人に送っていたことが明らかになる。文書解読班の鳴海理沙、矢代、夏目はSDカードの捜索を命ぜられ、段ボールの送り先を探り当て、その家に向かうとそこでも小谷野と同様、拷問の果てに殺害された男の死体が見付かる。
最後の最後に第一部完結の意味が明らかになり、それは同時に第二部への期待へとつながる。
本体価格900円
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資産家の男が惨殺され、喉には“青い花”が飾られていた。行方不明の妻、そして警察を挑発する犯人の“ゲーム”が幕を開け、如月塔子をはじめとする警視庁殺人分析班は、不穏な連続事件の真相を追う。
このシリーズの面白さって、事件の残虐性や猟奇性で読者の感情をグッと冷やしながら、同時に分析班の“人間的な部分”を浮き彫りにしてくるところだと思う。ショッキングな出来事が起きるほど、捜査する側の迷い、葛藤、踏ん張りが否応なく見えてくる。だからただの「犯人当て」や「トリックの妙」ではなく、“人が人を追う仕事のしんどさ”まで含めて読まされる。そこが絶妙だった。
特に今回は、塔子とバディを組む鷹野との関係性がしっかりクローズアップされていて、シリーズを追っている人ほど楽しめる回になっていると感じた。ふたりの距離感って、近いからこそ言葉にしない部分があったり、信頼しているからこそぶつかる部分があったりするけれど、その「言外の温度」がこの巻は丁寧に拾われている印象。事件の緊迫感の中で、相棒としての呼吸が合っていく瞬間や、逆にズレが生む緊張が効いていて、“捜査の物語”と“人間関係の物語”が同じ熱量で走っていく感じが良かった。
さらに尾留川とのコンビもなかなか面白くて、単なるサブ要素ではなく、班としての動きがより立体的に見えてくる。誰か一人の正義感や閃きで進むのではなく、それぞれの役割や視点が噛み合って前に進む。そういう意味で今回は「殺人分析班」というチームが、ひとつの組織じゃなく“人の集まり”としてちゃんと機能している回だったと思う。事件が重いぶん、その支え合いが余計に響く。
そして結局、読み終えて強く残るのは「事件の怖さ」だけじゃなくて、塔子をはじめとする分析班の結束と成長を見守ってきた感覚だった。毎回、簡単に割り切れる事件ばかりじゃないし、精神的にも削られる場面がある。でも、そのたびに班としての経験値が積み上がり、関係性が少しずつ変わっていく。シリーズを追うほど“事件の解決”と同じくらい“チームが壊れずに前に進むこと”が気になってくるのが、この作品の強い魅力だと思う。
猟奇性と人間味、その振れ幅が大きいのにバランスが崩れない。だからこそ一気読みできて、読後には「次も追いたい」と素直に思わされる一冊だった。 -
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駅のコインロッカーから女性の右腕が発見された。その手にコインロッカーのカギを握らせ、ヒントを元に次のパーツを探せと指示してくる。警視庁の女性刑事・城戸葉月は、所轄の刑事・沖田とコンビを組んで事件の謎を追う。
面白かった!もう最初から猟奇的で、犯人からの挑戦状には振り回され、葉月の暗い過去は気になるし、おばあちゃん子だけど意外とデキル沖田のキャラは楽しいし、読み始めたら止まらない。事件は二転三転して、最後はちょっと駆け足だったけど、「筋読み」が得意だという設定の、葉月の面目躍如な展開だった。
葉月と沖田のコンビは、また読みたいと思う。続編、期待したい! -
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上野の空きアパートで発見された、顔と腕を損壊された遺体。残されたのは謎めいた数字と聖人カードだけ――。如月塔子ら「殺人分析班」は、連続殺人を予感しながらも次の事件を防げず、捜査は迷路のように絡み合っていく。数字が示す意味、犯人の意図、すべてが霧の中で進む緊迫の推理戦。
シリーズ5作目。猟奇性と緊張感に支配される物語に一気に引き込まれた。用意された仕掛けは読者の予想を軽々と裏切り、どんでん返しに心を揺さぶられる。事件の背後にある動機や人間模様は単なる犯罪譚ではなく、哀しさや切なさを濃く刻み込んでいる。善悪の線引きが揺らぎ、読み終えた後もしばらく思考がまとわりつくような余韻。
ミステリーとしての緻密さと、人間を描く眼差しの鋭さが同居した作品。重いけれど、だからこそ忘れられない一冊。面白かった。 -
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麻見和史『骸の鍵』双葉文庫。
警察小説の新シリーズの開幕だろうか。
麻見和史の警察小説シリーズと言えば、『警視庁犯罪分析班シリーズ』、『警視庁文書捜査官シリーズ』など女性刑事が主人公を務めるシリーズが目立つ。主人公は、如月塔子、鳴海理沙と推理力や捜査能力に長け、魅力的な女性刑事ばかりである。
本作も警視庁捜査一課殺人犯捜査第6係の筋読みに優れた女性刑事である城戸葉月が主人公を務める。これまでの麻見和史の警察小説シリーズの女性主人公とは少し毛色が異なり、例えるなら誉田哲也の『姫川玲子シリーズ』の姫川玲子に似ている。そして、ストーリーは二転三転しながら全く予想もしなかった結末へと進んでいく。
葛西駅近くのコインロッカーから偶然発見された切断された女性の左腕。その左腕はコインロッカーの物と思われる鍵を握り締めており、左腕が発見されたコインロッカーの中には『ロックスミス(錠前師)』を名乗る犯人から、左腕以外の身体の一部を捜すよう指示されたメッセージが残されていた。
警視庁捜査一課殺人犯捜査第6係は筋読みに優れた女性刑事である城戸葉月を中心に都内を奔走し、犯人の行方と犯人が残した鍵と合致するコインロッカーを捜す。
一方、日本国内屈指のエンバーマーである31歳の折口聡子はウツロと名乗る正体不明の男に拉致監禁され、四肢を失い、顔面を激しく損壊された若い女性の遺体のエンバーミングを命ぜられる。
そんな中、城戸葉月は相棒の沖田と共に犯人が残した鍵と合致するコインロッカーを探り当て、中から切断された女性の右脚と新たなコインロッカーの鍵、コインロッカーの場所を示すヒントとなるメッセージを発見する。
本体価格870円
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麻見和史『最後の告発 警視庁文書捜査官』角川文庫。
テレビドラマ化された異色の警察小説シリーズのの第11作。今回もまた書き下ろし。
『警視庁文書捜査官』シリーズの面白さは、鳴海理沙を中心に、奇妙な事件を犯人が残したメモや脅迫状、或いは暗号などから事件を解決に導くプロセスにある。しかも、描かれる事件は皆、時勢を反映した現実味があるところが魅力の一つなのだ。
ある日、警視庁文書解析班に1通の告発状とも取れる手紙が届く。その手紙には7年前に行方不明になった人物についての再捜査依頼と共に疑わしい人物の名前が記され、再捜査しない場合は差出人自らが犯人を殺害すると書かれてあった。
鳴海理沙率いる矢代、夏目たち文書解析班は7年前の行方不明事件を調べ直すうちに当日の夜に発生していたATM強奪事件との関係に目を付ける。行方不明事件は最悪の結末で解決するが、再び文書解析班に新たな事件の再捜査依頼が届く。
手紙を書いた人物の正体な何者か、そして、その目的は……
本体価格840円
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麻見和史『魔弾の標的 警視庁殺人分析班』講談社文庫。
知らぬ間にシリーズ第14弾を数えた。このシリーズは非常に面白く、毎回楽しみにしている。
相変わらず見事なプロットだ。恐るべき連続監禁殺人犯の正体を簡単には読者に悟らせず、幕間に描かれる母子の物語で少しずつ事件の真相を見せていくのは本当に見事である。
今回、如月塔子がコンビを組むのは鷹野秀昭ではなく、門脇仁志というのも新鮮であり、事件が決着しても背後にゲーム・マスターという謎の人物が居たことを匂わせ、第15弾、第16弾へと話をつなげていくというのも憎い演出だ。
空家で発見された異様な男性の遺体。男性は全裸で動物用の檻に閉じ込められ、手をワイヤーで縛られ、口枷を着けられた状態で腹部を何らかの銃器で撃たれた上に首を締められていたのだ。
門脇と共に事件を捜査する塔子だったが、同様の第二、第三の事件が起こり、謎は深まるばかりだった。犯人が被害者たちを動物用の檻に監禁した理由、被害者たちの関係、謎の銃器の正体と判らないことばかりだった。
本体価格850円
★★★★★