中川右介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
19世紀末から第一次世界大戦、第二次世界大戦、共産圏崩壊間近に至るまでの激動の時代を生き抜いた10人の大ピアニストを中心に、歴史を横にスキャンすれば同年代、先輩・後輩が織りなす友情、ライバル心、嫉妬、誤解、すれ違い、悔恨、迫害、韜晦等々の物語があり、縦にスキャンすればマエストロたちの華々しいコンサートの熱狂ぶりを思わぬところで目撃して発奮したり、無視されて絶望した10年後、15年後のマエストロたちがいたりと、クラシック音楽の世界はまことに意外性に富んだ物語を秘めている。その綾をひもといて、飽きさせることなく読ませるのは、さすが <クラシック・ジャーナル> 編集長たる著者の力量あってこそ可能だ
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Posted by ブクログ
10大ピアニストの物語であると同時に、音楽家からみた激動の20世紀の物語。
音楽家、というと、なんとなく浮世離れしていてピアノばかり弾いている、、というイメージがあるけれど、考えてみれば当然ながら、歴史の流れに翻弄され、それでも自分の技量と音楽への情熱を武器に生き抜いていく。
故郷のロシアを愛しながらもアメリカへの亡命後は一度も故郷の土を踏めなかったラフマニノフ。
時に精神を病みながらも「鍵盤の魔術師」と言われた技巧で人々を魅了したホロヴィッツ。
陽気で社交的でありながら、ユダヤ人であるために親族をほぼ皆殺しにされたため生涯ナチを許さず決してドイツで演奏を行わなかったルービンシュタイン。
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Posted by ブクログ
歌舞伎界を指す言葉に「梨園」というものがある。それは、楊貴妃を溺愛したことで知られる唐の玄宗皇帝が、梨の植えられた園で舞楽を芸人たちに教えたという故事にちなんでいるのだとか。どこか浮世離れしたようなイメージがする言葉……。
本書は、十一代目市川團十郎と六代目中村歌右衛門という、人気を集めた二人の名優が繰り広げた「権力」闘争を軸に、戦後の梨園がどのような軌跡(大衆娯楽→人気喪失→伝統芸能=文化財化)をたどったのかを丹念に追っている。
松本幸四郎家(高麗屋)の長男に生まれながら、養子となって「海老様」ブームを巻き起こした十一代目團十郎は、絶えて久しかった「團十郎」という大名跡を復活させること -
Posted by ブクログ
本屋で見つけた瞬間に読もうと思った本。クラシックを齧っていながら指揮者には全然こだわりがなかったんですが、読んでドイツ指揮者の時代の流れがよく分かりました。まずそもそも第二次世界大戦のヒトラー統治下のドイツで、政治に利用されながらも活動を続けていたという事実に驚き。カラヤンとフルトヴェングラーなんてほとんどまともに顔を合わせたこともないだけに、余計に相手を過大視し恐れ、陰謀・策略を巡らせていく様が、哀れ且つ人間臭い。チェリビダッケは三者の中では一番純粋?に自分のやりたいことを貫いた印象があるけど、やっぱり天才芸術家はどこか螺旋がずれてるのねと実感。三者三様の指揮者を受け入れ演奏したベルリン・フ