荒俣宏のレビュー一覧
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概ね史実で、概ね実在人物なのに、圧倒的にオカルト。ワクワクする。ドーマンセーマン、陰陽道、式神、地脈、霊的にも守られた最強の都市・東京を創る…。
加藤が怖くて気持ち悪くていいかんじ。
この兄は「ブラック労働染まり野郎」なので、妹は放っておいていい。
妹が大変なことになっているのに、兄はシゴト漬け、いい感じだった兄の友人も奔走するものの最終的には疎遠、精神病院に送られて「ヒューマンロスト」な感じになっている妹が不憫でならない。
不思議な地震とか、加藤の暗躍とか、老陰陽師が最期に残した手紙とか、ワクワクする舞台じかけがいっぱい。
絶妙なフィクション具合だと思います。 -
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虚実百物語みたいな雰囲気で、あぁ、これのパロディでもあったのか?と。
三原山噴火という、当時としては極タイムリーな話題が出て来て、そうだよな、昭和だったんだよな、と。当時まだ小さい自分をひいおばあちゃんに預けて、家族みんな噴火を見に行った、というエピソードを思い出しました。
こないだTVでシンゴジラ見て、帝都が破壊される様子に、加藤は喜んでるだろうな、と感慨深いものがあったのですが、内閣総辞職の後見てたら、なんといるじゃないですか、加藤が。あ、これはこの内閣に入り込んだ男の陰謀なのでは、と妄想が進みました。
あと、荒俣先生にいいたい、その転生は洋一郎でいってくださいよ!と。最後まで加藤と洋一 -
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ネタバレこの巻は「百鬼夜行篇」と「未来宮篇」でした。
けっこうリアルに歴史をなぞってきたお話から、執筆された当時は近未来だった昭和70年あたりを描いています。
百鬼夜行篇では、70年安保闘争から全共闘運動という日本人同士が殺し合う鬼が喜びそうな時代が描かれていました。
三島由紀夫さんがけっこう重要なポジションになっていました。
今まで実在の人物をこれだけ勝手に描ける荒俣さんの突き抜けっぷりが合わなかったんだけど、未来宮篇になると時代もパラレルだし、それが逆にリアルっぽくて面白かったです。
殺伐とした時代を背景に人が人を平気で意味もなく殺していくとか(モーター付自転車の暴走族とかね…)、夢も未来も -
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複数巻の長編を平行に読破しよう月間。たまには短編が読みたい。
終戦から戦後間もなくの動乱期。加藤は一度死に、若い体で復活を遂げ、主人公の座に返り咲く。
化物系ファンタジーの色がこれまで以上に濃くなり、満州国新京の地下に巣食う鬼、帝都東京を守る妖怪・物の怪が頻繁に出現する。それと並行して、特定の人物を描くような部分は減るため、筋を追うのは比較的容易であろう。
その中で、西洋東洋の魔術から科学から、様々な薀蓄を惜しみなく詰め込んでいるあたりは非常に好感を持てる。江戸川アパートメントや松沢病院など、今後何か起こるような予感しかしない、場所などの選び方も見事である。
ただ、辰宮家の描き方が、か -
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関東大震災からの加藤暗躍が楽しい2巻前半の震災編。満州から将門の首塚まで続く龍脈を探る寺田寅彦等の視点と、由香里を取り巻く幸田露伴等の病院の視点など、幾つかの絞られたまとまりになっていることも有り、これまでとうって変わって読みやすくなる。
ただ、冗談のつもりなのかなんなのか知らないが「考現学」などという、1980年台の言葉を取り混ぜてくるので、なんともくすぐったい気になる。
前半の震災編は、エンタテインメント小説として非常に良く出来ている。
後半の「龍動編」がちょっと難物で、話自体は前半とつながっているものの、龍が存在するものなのか、抽象的なものなのか、なんだかよくわからないまま話が進行 -
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その飄々としたお人柄に加えて"両親が心配して一年遅らせて小学校に入れた"などのエピソードから想像しがちなのんびりした少年時代、でもそれは水木サン一流の照れ隠しであり実の姿は凄まじい天才少年であったことを裏付ける貴重な書簡集。
その出征を前に懊悩たる思いを書き綴った手記や戦地からの手紙は哲学そのものであり死を前にして生とは何かを自らに問いかける手法は時代を超えて心に強く響く。
愛弟子荒俣氏の解説も良く出来ており戦争と言う狂気の現場に立たされた若者の心の拠り所としての「読書」の意義がつぶさに書き表されている。読書の幸せ…この言葉を今考えなければ -
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仏教もやる。博物もやる……いじけるな、自分を小さくするな、俺は哲学者になる。21
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自分と言ふものにびつくりした。俺なる実在は、俺の思考がとうてい及びもつかない程、複雑怪奇だ。ひとつ一生涯をこのものを観察しつゝ暮さうか。24
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芸術品を造るものは何よりも人にならねばならぬ。25
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仏教のような唯心論には反対だ。人間は心と肉とよりなる。27
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