荒俣宏のレビュー一覧

  • 帝都物語 第伍番

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    ネタバレ

    この巻は「百鬼夜行篇」と「未来宮篇」でした。
    けっこうリアルに歴史をなぞってきたお話から、執筆された当時は近未来だった昭和70年あたりを描いています。

    百鬼夜行篇では、70年安保闘争から全共闘運動という日本人同士が殺し合う鬼が喜びそうな時代が描かれていました。
    三島由紀夫さんがけっこう重要なポジションになっていました。

    今まで実在の人物をこれだけ勝手に描ける荒俣さんの突き抜けっぷりが合わなかったんだけど、未来宮篇になると時代もパラレルだし、それが逆にリアルっぽくて面白かったです。

    殺伐とした時代を背景に人が人を平気で意味もなく殺していくとか(モーター付自転車の暴走族とかね…)、夢も未来もない近未来の東京がまさに「魔都」で、こんな「帝都」はさっさと廃墟になってしまえばいいのに…って感じがじわじわきました。

    なんだか三島由紀夫さんが自死して大活躍って感じだったよ。

    このあたりの感覚は、荒俣さん世代にはわかるのかなぁ?
    我が家の面々は、さすがに三島さんの自死は知識としてしか知らないからねぇ…。

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    2018年04月14日
  • ゑびす殺し(電子復刻版)

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    諸作家へのオマージュ、夢野久作とか、小林多喜二とか、にささげたものださうである。
     諸作品がなんか、いい感じで怖い。
     小林多喜二が「タンポポの根のような」うんこをひってどうのとか、森鴎外が死体安置所で水泳大会する死体に辟易したりとか、クーロン城の、水が落ちる通路とか、さう言ふのが怖い。

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    2018年03月28日
  • 妖怪大戦争

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     次に何の本を読もうかと考えていると、深夜テレビでこの小説を原作とした映画がたまたま放映され、買ったもののまだ読んでいなかったこの小説を読み始めました。
     映画自体は映画館ですでに鑑賞済みだったのですが、小説で読むと映画の裏にある状況を知ることができてとても面白かったです。
     個人的に、妖怪目線から見た安倍清明のイメージの悪さに驚きました。同じ作者が書いたかっこいい清明の作品も読んでいたからです。やっぱり人(妖怪)によって、他人の見え方、イメージは違うものなんだよな~と物語の本質と関係ないところで妙に感心してしまいました。

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    2017年07月04日
  • 帝都物語 第四番

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    複数巻の長編を平行に読破しよう月間。たまには短編が読みたい。

    終戦から戦後間もなくの動乱期。加藤は一度死に、若い体で復活を遂げ、主人公の座に返り咲く。

    化物系ファンタジーの色がこれまで以上に濃くなり、満州国新京の地下に巣食う鬼、帝都東京を守る妖怪・物の怪が頻繁に出現する。それと並行して、特定の人物を描くような部分は減るため、筋を追うのは比較的容易であろう。

    その中で、西洋東洋の魔術から科学から、様々な薀蓄を惜しみなく詰め込んでいるあたりは非常に好感を持てる。江戸川アパートメントや松沢病院など、今後何か起こるような予感しかしない、場所などの選び方も見事である。

    ただ、辰宮家の描き方が、かさ増しに感じるような雑さであったり、物の怪の形状表現なども今ひとつだったりと、今後に期待の部分も有り。長いからしょうがないけど、辰宮家を捨てたら、どこに足場をおくのか。

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    2017年05月11日
  • 陰陽師鬼談 安倍晴明物語

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    聖徳太子や吉備真備と安倍仲麻呂の話から、さらに安倍清明が仲麻呂の子孫だったという話もあり楽しかった。安倍清明の遺跡をめぐるツアーに参加したこともあり、場所もイメージできたのでさらに楽しかった。

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    2017年01月30日
  • 帝都物語 第弐番

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    関東大震災からの加藤暗躍が楽しい2巻前半の震災編。満州から将門の首塚まで続く龍脈を探る寺田寅彦等の視点と、由香里を取り巻く幸田露伴等の病院の視点など、幾つかの絞られたまとまりになっていることも有り、これまでとうって変わって読みやすくなる。

    ただ、冗談のつもりなのかなんなのか知らないが「考現学」などという、1980年台の言葉を取り混ぜてくるので、なんともくすぐったい気になる。

    前半の震災編は、エンタテインメント小説として非常に良く出来ている。

    後半の「龍動編」がちょっと難物で、話自体は前半とつながっているものの、龍が存在するものなのか、抽象的なものなのか、なんだかよくわからないまま話が進行するのがいただけない。これは年をとったせいかもしれないが。

    また、後半で辰宮家内での騒動、目方恵子と加藤の邂逅部分など、描写が追いついておらず、よくわからない表現が続く。

    また、星(北斗七星)の配置までを変えてしまう魔術について、どうもこう、動機(東京の破壊)が小さすぎるため、もう少しメカニズムの説明は欲しいものである。

    でもまあ、第壱番に比べると、キャラクターの動かし方がこなれてきて、読みやすく引き込まれやすいので、出来としては良い。

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    2016年11月09日
  • 戦争と読書 水木しげる出征前手記

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    その飄々としたお人柄に加えて"両親が心配して一年遅らせて小学校に入れた"などのエピソードから想像しがちなのんびりした少年時代、でもそれは水木サン一流の照れ隠しであり実の姿は凄まじい天才少年であったことを裏付ける貴重な書簡集。
    その出征を前に懊悩たる思いを書き綴った手記や戦地からの手紙は哲学そのものであり死を前にして生とは何かを自らに問いかける手法は時代を超えて心に強く響く。
    愛弟子荒俣氏の解説も良く出来ており戦争と言う狂気の現場に立たされた若者の心の拠り所としての「読書」の意義がつぶさに書き表されている。読書の幸せ…この言葉を今考えなければ

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    2016年10月06日
  • 帝都物語 第壱番

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    「1・神霊篇」と「2・魔都(バビロン)篇」の新装合本版。今では漫画やらゲームやらでお馴染みになっている魔術用語(陰陽道、蟲術など)も、発表当時は斬新で衝撃的だったんだろうなと思います。史実や実在の人物(幸田露伴、寺田寅彦など)が登場する群像劇的面白さとオカルティズムが相まって独特の雰囲気を醸造してます。加藤最高。

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    2016年06月04日
  • 帝都物語 第壱番

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    数年ぶりに読み返してみましたが好きなものの詰め合わせで、やっぱり面白いなあ。歴史上の偉人をうまく盛り込ませているのでリアリティもあって、なにより荒俣先生の膨大な知識量に脱帽です。

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    2016年04月07日
  • 戦争と読書 水木しげる出征前手記

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    ――――――――――――――――――――――――――――――
    仏教もやる。博物もやる……いじけるな、自分を小さくするな、俺は哲学者になる。21
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    自分と言ふものにびつくりした。俺なる実在は、俺の思考がとうてい及びもつかない程、複雑怪奇だ。ひとつ一生涯をこのものを観察しつゝ暮さうか。24
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    芸術品を造るものは何よりも人にならねばならぬ。25
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    仏教のような唯心論には反対だ。人間は心と肉とよりなる。27
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    一たらんと欲すれど本性が多なる以上、死する決意あらざる限り、一とは成り得ない。30
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    宗教には情熱があるけれども道徳にはない。だから道徳はいやだ。32
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「習慣でない限り自分のものではない」とは真理だ。43
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    一分でも一秒でも自分になつて行く事だ。自分の中にある自分を進ませまいとするものに一分でも一秒でも心をゆるしてはならぬ。

    キリストを見よ。彼は全身を以て、そして一生を以てつ彼自身と戦つたのではないか。油断は禁物だ。48

    人生と言ふ広い所での隣人は、努力し、努力し、自分の思ふものを造る人達だ。48

    そう言ふ人がキリストの友だ。熱心に人間になろうとする人が友だ。

    釈迦でもキリストでも、その教団の凡人共より、漱石やニイチエやそんな人を愛する事を欲したのだ。49
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「学問は分かれて科学と哲学となる。科学の対象は現象であり、哲学の対象は価値である」119

    河合は本題の「読書の意義」を次のようにまとめるのです。読書とは自己教育であり、自己とは何であり、何であるべきかの内容を与えるのが読書である。ここに読書の第一の意義がある。121
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「漱石の語を否定する程俺は自惚がない。それは損んだ。こんな時代で一番ものを言ふものは自惚だからな――」

    自分を自分にする最大の力は「自惚だ」と語っています。184
    ――――――――――――――――――――――――――――――

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    2015年12月27日
  • 0点主義 新しい知的生産の技術57

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    副題に「新しい知的生産の技術57」とありますが、同じ主張の繰り返しのような部分があります。それと、技術というとhow toの具体例を上げているように思いますが、主に自分の好きなこと、ニッチなところを究めるという生き方について書かれています。なのですぐに役立つというたぐいの本ではありませんが、人生には楽しく生きるという選択肢もあるんだなと教えてくれる本です。

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    2015年11月09日
  • サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」

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    ドイツ博物館とアメリカのスミソニアン協会の属する博物館等に収められた数々の成果を、その発明者と関連する人々の話をまとめたものだが、面白い話しが満載だ.話の進め方が良い.例えば、有名なライト兄弟と熱気球を発明したモンゴルフィエ兄弟を対比して、かれらが持っていた基礎技術とそれに加えてアマチュアリズムを取り入れたところに成功の秘訣がある由.最後に出てくるプリンストン高等研究所とMITの比較も面白い.

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    2015年10月21日
  • サイエンス異人伝 科学が残した「夢の痕跡」

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    多くの史実の中で、ひとつだけ民俗学的考察に触れた章があり、非常に考えさせられた。和時計に対するクダリである。日本人は人間の好みを機械に押し付けるが、外国では機械のやり方に人間が合わせる。その背景には、日本人はモノに対する認識として「自然感覚」を持っているのに対し、西洋人はモノに神を宿らせて尊重する、という決定的な違いがある。確かに日本ではハイテク製品を秋葉の露店で売っていたり、高級デザートをコンビニで売っていたり、西洋人からしたら異常な光景に見えるだろう。某TV番組で、外国人が「日本のパンはパンではない」と指摘するコーナーがあった。西洋にとってパンはキリスト(神)から与えられた食事。したがって彼らにしてみれば、日本のパンはどちらかというとデザート。つまり根底にあるものが異なるから価値観も変わる。おそらくこれからもそうであろう。今後の文化、文明の展開を対比考察していくうえでも、なかなか面白い視点であると感じた。

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    2015年07月26日
  • 帝都物語 第伍番

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    これだけ読み続けていると、さすがにこの世界観にも馴染んできた。加藤保憲は、敵対する者ともコミュニケーションを密にとる、面白いキャラだなあ。

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    2015年05月10日
  • 江戸の幽明 東京境界めぐり

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    ・荒俣宏「江戸の幽冥ー東京境界めぐり」(朝日新書)は 荒俣流東京案内である。第一部は概説、第二部から東京めぐりである。その最初のあたりにかうある。江戸の境界を示す「朱引のうちとそとに不可思議で曖昧な江戸が成立してしまつたのである。ひよっとすると、江戸は中心部より郊外がおもしろいのかもしれない。」(105~106頁)所謂マージナルであらうか。 幽冥といひ、境界といひ、かういふことなのである。大体、荒俣は『江戸名所図会』を「お伴に持って行くのがよろしい。」(106~107頁)といふ。江戸 時代のガイドブックである。並みの人間の発想ではない。そんなわけで、名所図会に従つての東京めぐりが始まる。
    ・と書きはしたものの、私が最もおもしろいと思つたのは、実は、それではない。平井呈一のことである。荒俣が平井の弟子であるとは何度か読んだことがあつた。しかし詳細に触れたものはなく、師弟とはいふものの、正確にはいかなる関係にあつたのかと、ずつと気になつてゐた。それが本書にかなり詳しく書かれてゐたのである。もちろん本筋ではない。「長々とした身の上話」(407頁)と荒俣自身が書く、脱線と言へば脱線した内容である。ただし本文と全く無関係ではない。これは永井荷風から始まる。荷風のよく歩いた日本橋周辺を扱ふ第十五章「新川あたり 因縁の稲荷めぐり」は荷風の「来訪者」といふ中編を中心とする。この主人公、実は平井呈一がモデルなのである。平井と猪場毅が荷風の「偽作偽筆の無断販売という裏切り行為を行ったことを知り、荷風が怒りのあまりその事実を暴露するために書いた」(399頁)といふのであるから、平井には不名誉で「相当なダメージがあったに違いない。」(400頁)作品 である。荒俣はこの主人公と平井を比較しつつ、平井との関係を書いていく。平井と知り合つたのは、中学生の時に出したファンレターであつた。それに思ひがけなく返事が来たのだといふ。その後、何度か手紙のやりとりをし、大学生になつて、平井上京の折に会つたのだといふ。「若者だらけの喫茶店に突如、白髪を長く垂らした着流しのご老人が入店したため、店の中が一瞬静まり返ったのを覚えている。」(407頁)さすが、怪奇文学の大家といふべきか。これ以後、何 度も会つていろいろと教へを受けてきた。荒俣が泉鏡花と稲垣足穂を好きだと言つた時に、「『鏡花とか足穂じゃ、話にならねえよ。大したモンにゃなれねえな』」(409頁)と切って捨てられ」たといふ。それほど「平井は「自身の鑑賞眼には自信を持ち、また蔵書を愛した。」(408頁)人であつた。これ以後、更に伝記的な事項と、俳人としての平井の記述が続く。この中でのポイントは「二重性」であらうか。その一は「二重の家族」「二重暮らし」(414 頁)、二つの家族と生母と養母である。その二は俳句における二重性、若き平井は同語反復を好んだらしい。ただし、これが平井の人生の大きな意味を持つとしても、怪奇文学との関連に於いていかなる意味を持つのかについては、荒俣は触れてゐない。それでもこの部分は平井の評伝としておもしろく読める。平井呈一といふのはかういふ人であり、荒俣と平井はかういは関係であつたのかと思ふ。師弟といつても様々である。教室等で講義、教へを受けるばかりが師弟ではないのだと改めて思ふ。これだけでも本書を読む価値があるといふのは、あまりに個人的な嗜好かもしれないが、たまにはかういふのも良いものである。もちろん、 東京めぐりの書としても、荒俣の子供時代からの思ひ出等が随所に出てゐて、それが時代を表してゐたりするのでおもしろい。そんな書であつた。

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    2015年02月22日
  • 0点主義 新しい知的生産の技術57

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    テレビなどでお馴染みなので、著者をご存知の方も多いと思います。
    しかし、何者かと問われて、答えられる方がどれだけいるでしょう
    か。肩書きとしては、翻訳家、小説家、収集家、神秘学者、タレン
    トなどと名乗っているようですが、その信じられないほどの博覧強
    記ぶりと面妖な風貌から、しばしば妖怪に喩えられるほど、人間離
    れ・常識離れした人物です。

    本書は、そんな「妖怪人間」を形作ってきた「アラマタ式0点主義
    の勉強法」を紹介するものなのですが、一体、「0点主義の勉強法」
    とは何でしょう?

    「0点主義」を説明するため、著者は、『荘子』の「櫟社の散木」
    のエピソードをひきます。「櫟社の散木」とは、神木と崇められる
    櫟(くぬぎ)の巨木のお話。櫟は、もともと用材としての価値が低
    い上、その木は曲がっていた(=散木)ため、誰も使おうとしなか
    った。つまり、何の役にも立たない木だったからこそ生き残って巨
    木となり、神木として崇められるようになったというお話です。

    世間的には役に立たないことが、世俗を超えた価値を持ち得る。こ
    こに「0点主義」の本質があります。点数をあげる(=成功する)
    ための努力は、材としての有用性を高めるためのものに過ぎず、そ
    うやって世俗の価値を追い求めている限り、結局は、切り倒され、
    いいように使われるだけ。ならば、世間的には0点でも、無意味で
    無駄に見えることでも、自分が楽しいと思うことを追い求めていた
    ほうが、いつかは世俗を超えた価値を持つ神木=オンリーワンにな
    れる可能性が高い。少なくとも、一生楽しく勉強できて、幸福や豊
    かさを実感できる人生を手に入れることはできる。

    実際、著者は、そのような「0点主義」を貫いてきたのです。いや
    貫かざるを得なかった。何故なら、独特の風貌ゆえ、子どもの頃か
    ら周囲から除け者にされてきたからです(本書では明かしてません
    が、極度に貧しかったために、服も買えず、お風呂にも入れないと
    いう家庭背景もあったようです)。

    普通はいじけた人生を送ってしまいそうな状態ですが、そこからの
    開き直りが凄い。どうせ世間の基準からずれているのであれば、人
    によく思われようと努力してもしょうがない、と世間的な価値に対
    する執着を捨ててしまうのです。多くの人が人生で叶えたいと思っ
    ている、成功したい(名声を得たい)、お金持ちになりたい、異性
    にモテたいという、世俗の欲望を叶えることを、早くも幼児期に諦
    めてしまったのだそうです。

    それを「7歳で心が朽ちた」と表現するのですが、以来、他人の目
    を気にすることなく、好きなことだけやって生きてきた。そしたら、
    いつしか「荒俣宏というユニークな人間がいる」という評判が立っ
    て、自由に仕事ができるようになった。そこに至るまでに、30年
    くらいかかったけれど、今は、「何をやっても、どんな人に会って
    も、何かしら学ぶことができ、何よりもとても楽しい」と思える
    「人生丸儲け」の感覚を味わっているというのです。

    好きなことだけやって生きてきたというとお気楽な人生に思えます
    が、そうではありません。「一つの『好きなこと』を守るには、一
    つの『欲望』をあきらめる」と言うように、ちゃんと自分の中でギ
    ブ・アンド・テイクのバランスをとって生きてきた人です。そして、
    どんな仕事であっても自分の関心のある知的作業につなげることで、
    楽しみを見出そうとしてきた。そうやって自分の世界を広げてきた
    人でもあります。常に世界に開かれている(=オンラインになって
    いる)点が、単なるオタクや「好きなことしかしない」という自意
    識過剰な人と荒俣宏とを分けるものでしょう。

    仕事すること、勉強することの意味について、改めて考えさせてく
    れると共に、人の評価なんて当てにしないで、自分自身の価値に従
    って生きていこうという勇気をくれる一冊です。

    一年の計を立てるこの時期にふさわしい一冊ですので、是非、読ん
    でみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    毎日不安に押しつぶされそうになっている「勝ち組」はいくらでも
    いる。それって、ほんとうに幸せなのだろうか。むしろ、成功した
    かどうか、勝ち組か非勝ち組かに関係なく、知的作業や日々の暮ら
    しのおもしろさに打ちこめた人こそが、一生を満喫した人といえる
    のではないか。

    遊ぶように勉強をし、さらにそれが「何をしてもおもしろい」とい
    う幅広さにつながれば、生きていくうえでこれほど幸せで喜ばしい
    ことはないだろう。

    今の時代、人が勉強という言葉でイメージするのは、「勉強という
    努力を重ねる」→「成功へと導かれる」というものだ。(…)そし
    て、その具体的なゴールは、①社会的な成功を収めること、②お金
    持ちになること、③仕事や業績により社会的な評価を得ること、の
    三つにほぼ収斂される。
    すなわち、現代社会において、勉強とは何よりも世俗的な成功とい
    う目的を達成するための一手段として位置づけられているのだ。
    だが、本来、勉強とは人生を豊かで楽しいものにする血の通った営
    みのはずだ。

    周囲に理解されていないなと感じたときは、逆に「しめた!」と思
    っていい。「何で理解してくれないんだろう…」などと嘆く必要は
    まったくない。あのスティーブ・ジョブズも、「新しいアイデアと
    は、最初はみんなから馬鹿にされるものだ」と言っていたように。

    ガマガエルのごとく、飛んでくるものすべてを飲み込むほど強靭か
    つ大きな胃袋をもつことだ。口に合わなければ、吐き出せばいい。
    そうやって悪食になることで、興味の間口はぐんと広がり、宝を探
    り当てる確率も高くなる。

    要するに、アウトプットは恥をかくほどよいということだ。私たち
    は、何かを表現したり発表したりする場合、完璧な内容であること
    を期する。それは自然な願望なのだけれど、完璧というのは非常に
    難しい。

    私は勉強に取り組む際、「これがすぐに役立つからやる」と考えた
    ことがない。いつも念頭にあるのは、「勉強しておもしろいかどう
    か」だけだ。

    オンリーをみつけるには、まず背伸びをしてみることだ。背伸びを
    すると、現実の自分をそれに近づけようとしていろいろなものを勉
    強していく。

    好きなことを長くつづかせるには、一つの条件がある。これは勉強
    にも当てはまるが、つねに相手方と「ギブ・アンド・テイク」の関
    係がつくれないと実現しない、ということだ。たとえば、自分の趣
    味がどこかで会社にメリットを与えること、好きなことをする代わ
    りに何か一つを犠牲にすること、などなど。

    おもしろくない勉強であっても、自分の関心につながることをどこ
    かにみつければそうでなくなる。遊びのようにすることは可能なの
    である。
    つまり、勉強や仕事と遊びは最終的に区別する必要がない。勉強や
    仕事をやりつつ、遊べばいいのだとわかってからは、「つらい仕事
    に耐えて、定年を迎えてから自分の好きなことをやろう」という発
    想はいっさいなくなった。

    人によくみられたいという気持ちを捨てて、好きなことにのめりこ
    んだわかりやすい例は、『釣りバカ日誌』のハマちゃんだろう。一
    見、ダメ社員のようだが、大好きなことに集中しているおかげで人
    間的に強く、生き生きとしてじつにチャーミング。だから社長をは
    じめ周囲の人を惹きつける。

    まずは人によく思われることを忘れてみたらどうだろう。他人の評
    判が気にならなくなると、自分のやりたいことに純粋に向かってい
    くことができる。その結果、自分の個性や生き方がみつかる可能性
    は、けっして少なくない。

    成功したい。お金持ちになりたい。異性にモテたい。多くの人が人
    生で叶えたいもっとも人気の高いベスト3をあげるとすると、ざっ
    とこんなところだろうか。
    だが、よく考えると、みんなが同じようなことを望んでいるなんて
    ちょっとヘンなのだ。同じ目標に向かい、こぞってエネルギーが投
    入されているわけで、このエネルギーをそれぞれがもっとほかの方
    面へ向ければ、今とは違う楽な社会が出現しているはずである。す
    なわち、もっと別の可能性に溢れた社会ができるのではないだろう
    か。

    私は子どものころからこの外見と体格のおかげで、たびたび友達か
    ら化け物じみたあだ名をつけられた。傷ついたし、いやで仕方なか
    った。
    でも、いやだと思いつづけていては気持ちが暗く、辛くなるだけで
    ある。そのうちに、そうだ、僕は怪人なのだ、と開き直ることに決
    めた。何でも自分で認めてしまったほうが、人間、楽に生きられる。

    誰にも見栄というものがあり、ほとんどの人は他人によく思われた
    いと考えているはずだ。そうやって他人からいつもいい評価を得て
    いれば、精神は安定するのだろう。
    しかし、人生はそううまく運ばない。自尊心と他人の評価とのバラ
    ンスがしょっちゅうズレるからだ。そして、そのズレを修正しよう
    と躍起になることに、人はけっこう馬鹿にならないエネルギーを浪
    費してしまうものだ。

    不本意な状況を与えられてしまったとき、人は自分が世界の底にい
    るような気分を味わう。端からみれば地獄でも何でもなくても、当
    人にとっては地獄なのだ。
    そんな地獄に落ちたと感じたら、投げやりになるのではなく、地獄
    に自ら飛びこんでいくぐらいの気持になったほうがいい。地獄に落
    ちたとしても、自分の興味にひっかかる「何か」は発見できるもの
    だ。そうなればしめたもの。
    「何をやっても勉強になるんだ」という発見と自信から、その後は
    どんな苦手なものでも自分の関心につなげることができるようにな
    る。そうしているうちに、人生丸儲けの状態になってくるのを感じ
    るはずだ。

    私自身、自分はまだまだ未完成だと思っている。60歳を超えると
    なかなか身体がついてこなくなるが、地獄に落ちてなお学ぶ、その
    勇気と気力はいつまでももっていたい。

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    ●[2]編集後記

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    暦の関係でいつもより少し長めだった年末年始のお休み。久しぶり
    にのんびりと家族と過ごすことができました。まだ子どもが小さい
    ので、一緒に過ごすことを素直に喜んでくれますが、あと十年もす
    れば、親よりも友達、家よりも外、ということになるのでしょう。
    上の子は7歳ですから、もうあと5年くらいでしょうか。

    平日は仕事に追われ、休日は家族との時間に費やし、という暮しも
    束の間のこと。子ども達が巣立っていった時に、年末年始のような
    長い休みをどのように過ごしているのだろうかと、ふと思いました。

    現役を引退された方から頂いた年賀状を見ていると、自分の人生の
    テーマに向かってますます充実した日々を送っている方と、静かに
    老いていっている方と、二通りに分かれているようです。

    家族からも働いている組織からも必要とされなくなった時、人は何
    に拠り所を見つけていこうとするのでしょうか。


    今年一年が皆様にとって素晴らしい年であられますように。

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    2014年01月06日
  • 0点主義 新しい知的生産の技術57

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    書の構成が簡単でスラスラと読めてしまう一冊。
    学生にはオススメだろう。
    しかし、読んでいる際には「なるほどな!」と思うものの、
    読み終えてみると、そこまで記憶に残っていないレベルだった。

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    2013年07月14日
  • 地球暗黒記 I ナナ・ヌウ

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    ハワイに行きたくなる
    ハワイのことなんて何も知らなかったけど、日本人とはきっても切れないいろんな繋がりがあって、勉強になる
    そして予想外におもしろい

    0
    2012年11月01日
  • 帝都物語 第弐番

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    序盤は読む手が重かったが中盤からは加速。
    二匹の龍を押さえ込む作戦が練り上がっていくところが見所だった。
    恵子さんはデキる女すぎたのだろうか…

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    2012年10月03日
  • 0点主義 新しい知的生産の技術57

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    中学高校と、勉強は主に受験勉強が中心でした。とにかく、合格するためには暗記一本。先生も、テストの成績の優秀の子がエリートと決めつけていた。思考力や発想力又洞察力も見につくはずがない。0点主義の考え方は、ストライクゾーンから外れたその場所に興味深いものが隠されていることを指摘している。勉強が出来なくとも、卑下せず、興味あることを楽しんで学ぶことでチャンスはいっぱいある。年齢を重ねると、意欲や探究心が薄れて来ますが、この本の影響で頑張りたいと思います。

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    2012年08月21日