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知の怪力作家である著者が、江戸「朱引」の内外を歩いて、江戸とはどんなところだったかを体験していく熱情込めた大作。都心をはじめ周縁部でのさまざまな出合いに、著者の好奇心はとどまるところ知らない。本書は新しい東京の姿を味わえる。
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Posted by ブクログ
新書なのにこの分厚さ!荒俣先生の博覧強記を表しているかのよう。中盤まで読んでいくとこの量感と質感がここちよく、どんどん読み進めてしまう不思議。そもそも朱引なんて知らなかったし、区分けも何度か行われていたこと、特定エリアのトリビアなどなどがてんこ盛りで、そんなに東京に詳しくない私でも充分に楽しめた。特...続きを読むに気に入ったのは、平井程一と武家の新旧交代の転換期のあたり。今はグローバルな時代と言われつつも、やってることや構造はそんなにまだ変わってないのかな、これから変わるのかな、と感慨深かった。
江戸とその外との境界を、荒俣宏が「ブラタモリ」した本。江戸の境界は、朱引というらしいが、自分の住んでいる東京西部でいうと、落合あたりが境界であり、境界のあるところには火葬場があるらしい。たしかに納得。落合近辺では、哲学堂公園を散歩しているのだけど、やたらとこの公園を大絶賛していた。今度行ったときは、...続きを読むもう少し哲学的な視点で公園を眺めてみようと思う。
荒俣宏先生による江戸の街歩き。ただ単に現代でも江戸の街を感じる場所を歩くのではなく、御府内と郊外との境界線である「朱引」の内外を歩いて、江戸を浮き彫りにするというさすがと思わせる面白い企画。途中は荒俣先生の思い出話に脱線したりして、平井呈一との交流や太宰治、芥川龍之介など文化人の話もあったり、新書の...続きを読む割に分厚いですが、荒俣先生の文章なのでスラスラ読めます。あらためて荒俣先生の知識量に脱帽。この本を片手に街歩きも楽しいかもしれない。
・荒俣宏「江戸の幽冥ー東京境界めぐり」(朝日新書)は 荒俣流東京案内である。第一部は概説、第二部から東京めぐりである。その最初のあたりにかうある。江戸の境界を示す「朱引のうちとそとに不可思議で曖昧な江戸が成立してしまつたのである。ひよっとすると、江戸は中心部より郊外がおもしろいのかもしれない。」(1...続きを読む05~106頁)所謂マージナルであらうか。 幽冥といひ、境界といひ、かういふことなのである。大体、荒俣は『江戸名所図会』を「お伴に持って行くのがよろしい。」(106~107頁)といふ。江戸 時代のガイドブックである。並みの人間の発想ではない。そんなわけで、名所図会に従つての東京めぐりが始まる。 ・と書きはしたものの、私が最もおもしろいと思つたのは、実は、それではない。平井呈一のことである。荒俣が平井の弟子であるとは何度か読んだことがあつた。しかし詳細に触れたものはなく、師弟とはいふものの、正確にはいかなる関係にあつたのかと、ずつと気になつてゐた。それが本書にかなり詳しく書かれてゐたのである。もちろん本筋ではない。「長々とした身の上話」(407頁)と荒俣自身が書く、脱線と言へば脱線した内容である。ただし本文と全く無関係ではない。これは永井荷風から始まる。荷風のよく歩いた日本橋周辺を扱ふ第十五章「新川あたり 因縁の稲荷めぐり」は荷風の「来訪者」といふ中編を中心とする。この主人公、実は平井呈一がモデルなのである。平井と猪場毅が荷風の「偽作偽筆の無断販売という裏切り行為を行ったことを知り、荷風が怒りのあまりその事実を暴露するために書いた」(399頁)といふのであるから、平井には不名誉で「相当なダメージがあったに違いない。」(400頁)作品 である。荒俣はこの主人公と平井を比較しつつ、平井との関係を書いていく。平井と知り合つたのは、中学生の時に出したファンレターであつた。それに思ひがけなく返事が来たのだといふ。その後、何度か手紙のやりとりをし、大学生になつて、平井上京の折に会つたのだといふ。「若者だらけの喫茶店に突如、白髪を長く垂らした着流しのご老人が入店したため、店の中が一瞬静まり返ったのを覚えている。」(407頁)さすが、怪奇文学の大家といふべきか。これ以後、何 度も会つていろいろと教へを受けてきた。荒俣が泉鏡花と稲垣足穂を好きだと言つた時に、「『鏡花とか足穂じゃ、話にならねえよ。大したモンにゃなれねえな』」(409頁)と切って捨てられ」たといふ。それほど「平井は「自身の鑑賞眼には自信を持ち、また蔵書を愛した。」(408頁)人であつた。これ以後、更に伝記的な事項と、俳人としての平井の記述が続く。この中でのポイントは「二重性」であらうか。その一は「二重の家族」「二重暮らし」(414 頁)、二つの家族と生母と養母である。その二は俳句における二重性、若き平井は同語反復を好んだらしい。ただし、これが平井の人生の大きな意味を持つとしても、怪奇文学との関連に於いていかなる意味を持つのかについては、荒俣は触れてゐない。それでもこの部分は平井の評伝としておもしろく読める。平井呈一といふのはかういふ人であり、荒俣と平井はかういは関係であつたのかと思ふ。師弟といつても様々である。教室等で講義、教へを受けるばかりが師弟ではないのだと改めて思ふ。これだけでも本書を読む価値があるといふのは、あまりに個人的な嗜好かもしれないが、たまにはかういふのも良いものである。もちろん、 東京めぐりの書としても、荒俣の子供時代からの思ひ出等が随所に出てゐて、それが時代を表してゐたりするのでおもしろい。そんな書であつた。
博物学者の荒俣宏が江戸時代の江戸の境界あたりを自分の子供時代の思い出を辿りながら探索する一冊。 探索地域は幕末近くに設定された江戸の境界朱引線・墨引線の周辺である目黒(朱引線の外で墨引線の内側)、田園調布、玉川上水、明治神宮、中野、練馬、板橋、田端、王子、千住、深川、向島、大森などなど
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江戸の幽明 東京境界めぐり
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