牧野修のレビュー一覧

  • スイート・リトル・ベイビー

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    第6回日本ホラー小説大賞の長編賞受賞作。堪能しました。やっぱり大賞作品は全部読まないとダメだな。

    主人公の秋生は児童虐待の電話相談のボランティアを受け持つ保健婦。児童虐待の暗い現実に心を悩ませながら、蛍光灯がカチカチとまたたく小さいアパートに帰るこの空気感、まずジメッと辛気臭い生活があって、そこをジワジワと怪異が侵食していく不気味さは、90年代作品特有の強みだと思う。邦画ホラーしかり。

    怪異のモチーフも非常に好み。直接の対面シーンよりは間接的な情報入手が多いから、そのあたりでホラーとしてのインパクト不足を指摘する向きもあるけど、個人的には中途半端なキモ描写でB級に堕するより、ある種都市伝説

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    2025年09月26日
  • MOUSE マウス

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    言うなればドラッグアクション小説。言葉と幻覚の魔法アクションです。
    「子供たちは、腰に接続したカクテル・ボードから24時間ドラッグを大量摂取し、主観と客観、夢と現実が交錯する魔法の世界に住んでいた。」という意味のわからないあらすじ。なのにするっと世界に入れる不思議さ。よくわからないものをそれとして楽しむのではなく、なぜか理解できるのがこの本の非常に面白いところでした。

    ものの名前に神話や聖書に関連したものが使われている厨二病感、あの時メインだったキャラがあっさり死んでいる退廃的感ある描写など、世界観が大変魅力です。他の作品も読みたい。

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    2025年01月19日
  • 万博聖戦

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    ネタバレ

    時は1969年、大阪万博を翌年に控えて国全体が浮き足立っているような雰囲気の中、中学生のシト、サドル、未明は、あるテレビ番組をきっかけに「子供こそが真の人間である」こと、「オトナ人間」が大人に憑依して子供に攻撃を仕掛けていることに気づいてしまう。子供ゆえの社会的な無力さに悩みつつ、子供らしい無鉄砲さと子供しか使えない特殊能力「Q波」を武器に、「オトナ人間」の侵略を阻止すべく全力で闘う3人。決戦の場は、1970年大阪万博「太陽の塔」だった・・・!
    時は流れ、2037年。都市全体を仮想空間のレイヤーで覆い、個々人の存在も社会法規も”ヴァーチャル”と化した大阪において、2度目の万博が計画される。年老

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    2021年04月11日
  • 月世界小説

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    言語SF。このジャンルは初心者だが、とても楽しめた。現実と虚構とが入り混じり、感想としては何を書いたら良いのやら。全然わけがわからないのに、感動すら与えてくれる不思議な本。とにかく素晴らしいので読むべし。

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    2021年04月11日
  • そこに、顔が

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    自殺した父親の遺品の日記には不気味な人体実験の経緯と、黒い影のような顔につきまとわれる妄想が書かれていた。その時、背後に何か気配を感じ始めた。果てしなく連鎖する恐怖にヒヤヒヤする。

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    2020年01月16日
  • 死んだ女は歩かない

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    ネタバレ

    「コオロギのにおいって知ってます」ーーーー


    強い女が好きなので、良かったです。バトルもスピード顔がある。箱庭なので地域変化は少なくて分かりやすい。会話が口調に特徴がないので一斉に喋るところの理解がしずらかった。でも変に独特な語尾を付けないところが強い女ぽくてキャラクターとして好みだった。一話ごと完結というか、登場人物がやられていくので、4話までの理解がしやすかった。輝十字の活躍に期待

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    2019年12月30日
  • 月世界小説

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    ネタバレ

    主人公の菱屋は、想いを寄せる相手の石塚と2人でゲイパレードを見にきたところ突如として空から天使が現れ街中に災害をもたらし、世界は終末に向かう。その最中石塚を亡くした菱屋は目を閉じ妄想の世界に逃避する。次に目を開けたとき、彼が立っていたのは自身の妄想世界のなかだった。菱屋は妄想世界を渡り歩きながら、世界を滅ぼそうとする存在との戦いに巻き込まれていく。
    物語が終わっても、登場人物たちの人生は終わらない。彼らが意思を持って動き出し、自分たちで物語を紡いでいってくれたらいいのに……そんな妄想をしたことのある人におすすめの一冊。
    日本語で記された小説の世界という舞台で、日本語が魔術的な力を持っているのは

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    2018年01月04日
  • 月世界小説

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    ネタバレ

    全然知らない作家の作品で、なんの前知識もなく読みましたが、面白かった。

    2014年、突然世界に終末がおとずれる。
    絶体絶命に追い込まれた菱屋修介は、いつも現実逃避をするように月世界へ逃避した。

    そこから始まる妄想を軸としたパラレルワールド。

    1975年のニホン。
    学生運動盛んなその世界で、学生たちはアメリカの属州からの独立を叫ぶ。
    しかし一番の危険思想は、この世にあったこともないはずのニホン語を見つけ出そうとすること。
    記録のどこを探してもニホン語は見つからず、ニホン語を話せる人もいない。

    …はずだったが、数年前に現れた自称超能力者ユーリ・ゲナーの影響のもと、ニホン語を解せる子どもたち

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    2017年05月16日
  • 月世界小説

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    ネタバレ

    ゲイの青年・菱屋修介は、片思いしている石塚啓太からLGBTパレードを見に誘われ、期待と共に出かけたその場で、アポカリプティック・サウンドと共に舞い降りた天使たちによる黙示録の光景に巻き込まれ、啓太が惨殺されるのを目撃する。子供の頃から妄想癖のある菱屋は、堪え難い光景を前に妄想の月世界へと逃げ込む。
    アメリカの属州として支配されている日本で言語学を専攻する学生・ヒッシャー・シュスケットは、かつてこの国に存在していたと言われる禁断の言語「ニホン語」を調査しようとするが、関係者たちが謎の組織によって次々と消されて行く。同じアパートに住む過激派と思しき男・ワクート・ソッジズに窮地を救われながら、黒服の

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    2017年03月05日
  • MOUSE マウス

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    これは面白い!SFって科学技術の先端を想像力で伸ばしていくものって今のところ定義しているんだけど、これは化学の先端を伸ばしている感じ。伸ばすための補助線として使われてる自己とか主観/客観なんかの蘊蓄も良い感じ。伸ばした先が魔術的な世界ってのはSFとしては好き嫌い分かれちゃうかも?
    外界から隔離された子どもだけの国、ネバーランド。そこではドラッグ漬けになってる子どもたちが客観を主観でねぶりながら暮らしている。交わる主観の表現がなかなか中2心をくすぐるなぁ。好き。
    最後はちょっと物足りなかったりして、もっともっと続編を!と思うんだけど、たぶんなさそう。この人の他の作品も読んでみようかなぁ。

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    2016年04月26日
  • 月世界小説

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     月というのは夜空を見上げるとそこにある黄色い円盤、そしてアポロが画像を送ってきたあの荒涼とした衛星。しかし、それとは別に実は月世界というものはあって、うさぎが住んでいたり、かぐや姫がそこに帰ったり、大砲クラブがズドンと行ったり、ブロウチェク氏が気づいたら到達していた世界なのである。月はその周期性によって正気を示しつつ、他方、その怪しい光で同時に狂気を体現する。

     菱屋修介はゲイだが、密かに心を寄せる啓太に誘われ、LGBTのパレードを見にいったとき、世界が終わる。世界の終わりを拒否して菱屋は妄想世界に逃げ込む。つまり「月世界」に。

     さて、世界n+1は、第二次世界大戦で敗戦したときに日本語

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    2016年02月28日
  • 傀儡后

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     皮膚とは?相手と気持ちを通じあい触れ合うとき、絶対的な膜となり結合を阻止する皮膚とは?
     SFあんまり知らない頃に読んだけど、閉鎖空間好きだったんでめちゃくちゃ面白かった。

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    2015年03月01日
  • MOUSE マウス

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    読みたかった。復刊ありがとうございます。18歳未満の外の世界で「死んだ」子どもたちの国、ネバーランド。そこの子どもたちはみな血管に直接カクテルされたドラッグを流し込み、主観と客観が入り混じった中で死んだように生きている。底が抜けた物語だった。輪郭を触れない怖さ、声も音も映像も見ているのが自分ではないという確かさの中で彼らは生きている。最後は安心。

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    2014年12月02日
  • 傀儡后

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    なかなかに感想を語りづらい作品。

    ただし、とても面白かった。

    過程でしかないような場面はひとつもなく、あらゆる場面が強烈なヴィジョンと灰汁の濃すぎるキャラで描かれてるせいで、常に刺激的。

    最終的に、なんでこんなことに……と考えそうになるほど異世界に連れてこられるが、支離滅裂なわけでもなく、それまでの情報や謎は終点で交わる。

    ギトギトでありながらも独特の美学が濃密に漂うこの感覚を、自分は味わえてよかった。

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    2012年11月17日
  • だからドロシー帰っておいで

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    妄想と現実を交互に読ませるお話。
    オズの魔法使いを変態にした感じ笑
    タイトル、内容、表紙に惹かれて読み始めましたが、どの要素もしっくりきます。
    初牧野作品でしたが、他にも読んでみたくなりました。

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    2012年09月07日
  • 楽園の知恵

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    クトゥルフ×演歌や、成長し続ける生きた家などイマジネーション溢れている極彩色の短編集。読めば誰もがひとつはお気に入りの短編が見つかると思う。

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    2012年03月18日
  • 大正二十九年の乙女たち

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    こういうのが好きなので読んでて楽しかったです。
    でもなんで架空の年にしたのだろうかって思いました。
    実際にあった出来事ではないから、ファンタジー感を際立たせるためでしょうか。

    あと、いろんな事が盛りだくさんになりすぎててちょっと疑問が残る事が結構あったような。

    でも、女の子達が皆可愛いです。可愛いというか良いキャラです。

    なんだかんだ言って楽しく読みましたし、好きですね。

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    2011年12月12日
  • 楽園の知恵

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    すんごいなこの本。

    スゴ本と読んでもいいのかもしれない。なんだろうこれ。
    あたしの印象はインキュバス言語が筒井康隆を、家具の話が家畜人ヤプーへのオマージュ?
    というもの。

    ひとつひとつの内容は面白いし凝っていて、ぐいぐい引き込まれた。
    パターンもかなり違うので飽きることもなく。
    ただ、残念だったのはそれが収束していないこと。
    最後にそれらが全部まとまっていたら、もう感激してたんだろうに。

    まぁ、そういう楽しみ方だけじゃないよって言われたらそれまでなんだけどね。
    全体の完成度だけで完璧、と、すべきなのか。

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    2011年07月24日
  • MOUSE マウス

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    どのキャラも確率していて、見事に息づいている。だからこそ面白かったです。子供の国ネバーランドが舞台で少年ばかり出てくるところもすき。個人的にはラジオ・スタアとマウス・トラップがすきです。ティンカーベルがひたすら可愛い。食事も忘れて読み耽りました。

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    2011年07月17日
  • 大正二十九年の乙女たち

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    なんか懐かしい感じがすると思ったら、全盛期の川原泉の「アークエンジェルの乙女たち」に通ずるものがあるのかな。

    いうまでもなく、凄い筆力の持ち主が普通の小説書いたらこうなるのか。仮想の歴史物ですけど、フィクションとは、かくあるべしという作品。

    本屋大賞あたりにノミネートされてもいいと思うけど、もしそうなったら、これから別の作品に行く人がいて、呆然とする姿を見たい気がしないでもない。

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    2011年06月15日