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Posted by ブクログ
これは面白い!SFって科学技術の先端を想像力で伸ばしていくものって今のところ定義しているんだけど、これは化学の先端を伸ばしている感じ。伸ばすための補助線として使われてる自己とか主観/客観なんかの蘊蓄も良い感じ。伸ばした先が魔術的な世界ってのはSFとしては好き嫌い分かれちゃうかも?
外界から隔離された子どもだけの国、ネバーランド。そこではドラッグ漬けになってる子どもたちが客観を主観でねぶりながら暮らしている。交わる主観の表現がなかなか中2心をくすぐるなぁ。好き。
最後はちょっと物足りなかったりして、もっともっと続編を!と思うんだけど、たぶんなさそう。この人の他の作品も読んでみようかなぁ。
Posted by ブクログ
牧野である。今は電波系ホラー作家として、かなり電波な作品を生み出されている方なのですが、私の出発点であり最高峰がこのハヤカワから出ている作品。一応SFなんですがね。未来、夢の島は打ち捨てられ立ち入り禁止区域となり、そこは、いろんな種類の幻覚系のDrugをカクテルボックスという機械でブレンドして直接体内に取り込んで日々を送る、ストリートチルドレンの楽園となっている。そんな中でおこる、子供同士の縄張り争い。その戦い方が凄い!相手を意味不明の言葉や文章で攻め立て、認識を狂わせて「落とす」のだ。相手の言葉の力に負けると、その言葉に取り込まれありはしないことを現実として体が反応してしまう。そう、「思い込み」が「現実」を歪めてしまうのだ。最近の電波系は、もう私には痛すぎてついていけないんですが、この頃の牧野作品は結構スキです。
Posted by ブクログ
[マウス・トラップ] MOUSE TRAP:★★★☆
一番の印象は「コインロッカー・ベイビーズ」アゲイン。ネバーランドが埋立地にあるっていうのも雰囲気として近い気がするけど、なにより決定的なのは<ダチュラ>。共感覚というアイディアはそのものは、古くは「虎よ!虎よ!」の頃から使われているから、別に目新しくはないけど、この話の素性は伺える。ドラッグでトリップするのを、<電脳空間>に<ジャック・イン>することのメタファーだととらえれば、一種のサイバーパンクものだとも考えられるし。キーボードを叩く替わりに、カクテル・ボードを叩くわけね。もっとも<電脳空間>がトリップのメタファーだというのが歴史的には正しそうだけど。いずれにしても、P.K.DickがW.Gibsonに与えた影響や、柾悟郎の「邪眼」がドラッグの話だったことを考えると、そういう文脈で読むのが正解かな。
この作者の持ってるフリークス趣味や、グロテスクな感性は期待できるかも。ティンカーベルが纏足されていることとかね。特にヘロインのやり過ぎで便秘になり、肛門に手首まで突っ込んで、口から糞を吐き出しながら死んでいた少女というイメージは強烈。このあたりも「コインロッカー~」に通じるところだな。
ストーリー的には一種のサイコものだけど、それほど目新しくはない。ずっとトリップしてるんだから、多重人格にもなるってもの。
[ドッグ・デイ] DOG DAY:★★★★
メインのプロットは崩壊した家庭の父親が息子を探しにネバーランドへやってきて、息子を連れだそうとすること。まあ普通の小説でもこういう話で無事に息子を連れ出せてハッピーエンドっていうのはないから、必然的に子殺し、親殺しの話にならざるを得ないだろうけど、この話で特筆するべき点は、<印刷屋>と呼ばれる奴らが、他人に自分の全人格を刷り込んで乗り移ることができるってところ。ますますサイバーパンクになってきて、これはもう「冬のマーケット」でしょう。
今回の話は臭いが重要なポイントで、臭いに関する蘊蓄がなかなか興味深い。色が3つの要素からできているように、臭いは20~30の要素からできているのに、それを表す言葉は非常に少ないとか。
[ラジオ・スタア] RADIO STAR:★★★★
シリーズ中の個人的ベストはこれかな。全員がドラッグを使用しているという特性を利用して、他人に自分の作り出したイメージを見せるラジオ・ゲームの設定もいいけど、ハエが住んでる家の不気味なイメージがなんといってもこの話の目玉。ラジオ・ゲームで人魚を見せて捕まえた人間を燻製にするのもきてるけど、内臓を抜いて手足を特定のポーズに縫いつけ、腐り落ちた眼の替わりにボールを入れているという死体はきてるわ。あとママと呼ばれている太った女が溶かしバターの入った挽肉しか喰わないというのもなんか神経症的で気持ち悪い。いや俺はもうあっさりしたものが好きですよ。
それから、サクミがスワンのラジオ・ゲームだったっていうのには意表を突かれた。前の話のペヨトルの正体もそうだったけど、この作者ってこういうミステリ的な仕掛けもうまい。子供の時の悪意のない悪戯っていうのとはちょっと違うかもしれないけど、「MEMORIES」の子供が屋根から落ちて死ぬところを思い出してしまった。
[モダーン・ラヴァーズ] MODERN LOVERS:★★★
ネバーランドの外の話という意味でも、現実の世界とのリンクという意味でもシリーズの中ではちょっと異色の話。でもカッターでいきなり首の頸動脈を切ったり、指で眼を突いて潰すとかいう描写が必ず入っているというところは、はずしてないけど。
でも、家出少女と、病気持ちの不良少年と、それを追いかける謎の組織の男たちいう設定は古いよね。好きだけど。
[ボーイズ・ライフ] BOY'S LIFE:★★★★
これまでの話を収束させるっていうのを目的に書いたんだろうってことだけど、始まりはともかく最後には見事にシリーズの締めくくりになってる。
<ヴァイル>のヨカナンがツクヨミであることも、サロメがヨカナンのラジオ・ゲームであることも気がつかなかった。またしても作者にやられた。ヨカナンが密教の<印>を結んだときやティンカーベルが首を絞められて死ぬときにヨカナンの慈愛を感じたというところで気がつくべきだったんだろうけど。
ピクルスが科学的霊媒になって呼び出したかった恋人というのは、ウエンディなんだろうか?俺の予想としては、18歳になったウエンディがネバーランドの外に出たくなくて自殺したんじゃないかってことなんだけど。そのピクルスがティンカーベルのためにチハルを呼び出しているというのもなんか意味ありげではある。
ビーの、人の免疫系に語りかけて自己免疫疾患を起こさせる能力というのも興味深い。本編の中でも心と免疫系の関係について触れているけど、現実を認識する能力を免疫系が自己を認識するシステムにまで解釈を広げてて、こういうの好きやなあ。
ネバーランドを外部から操っているはずの<ヴァイル>までもが、マウスたちの不安が作り出したものが現実となったにすぎないというのも、ここまでくると受け入れよう。第1話でツクヨミに殺されたチハルが今度はツクヨミを殺す、というよりチハルに殺されるためにツクヨミが帰ってくるのも。
ピクルスに呼び出されて黄泉からやってきたチハルがツクヨミの名前を知っていたということが、主観と客観との間に違いがないネバーランドという世界を、何よりも如実に表していると言えるんだろうな。
最後の白銀の巨人は”ゲゲゲの鬼太郎”のダイダラボッチだな。
今までドラッグの小説なんてなにが面白いんだと思っていたけど、ドラッグを介して現実と幻想(仮想)との区別がなくなるというラジカルなアイディアは確かに魅力的。新しい世界を見せてもらったっていうことで、これは重要な作品。
ただ、これが作者の才能が全開した作品かというと、まだ余力がありそうに思えるから、点数はちょっと辛め。
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小説・文芸
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