牧野修のレビュー一覧
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牧野である。今は電波系ホラー作家として、かなり電波な作品を生み出されている方なのですが、私の出発点であり最高峰がこのハヤカワから出ている作品。一応SFなんですがね。未来、夢の島は打ち捨てられ立ち入り禁止区域となり、そこは、いろんな種類の幻覚系のDrugをカクテルボックスという機械でブレンドして直接体内に取り込んで日々を送る、ストリートチルドレンの楽園となっている。そんな中でおこる、子供同士の縄張り争い。その戦い方が凄い!相手を意味不明の言葉や文章で攻め立て、認識を狂わせて「落とす」のだ。相手の言葉の力に負けると、その言葉に取り込まれありはしないことを現実として体が反応してしまう。そう、「思い込み」が「現実」を歪めてしまうのだ。最近の電波系は、もう私には痛すぎてついていけないんですが、この頃の牧野作品は結構スキです。
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Posted by ブクログ
[マウス・トラップ] MOUSE TRAP:★★★☆
一番の印象は「コインロッカー・ベイビーズ」アゲイン。ネバーランドが埋立地にあるっていうのも雰囲気として近い気がするけど、なにより決定的なのは<ダチュラ>。共感覚というアイディアはそのものは、古くは「虎よ!虎よ!」の頃から使われているから、別に目新しくはないけど、この話の素性は伺える。ドラッグでトリップするのを、<電脳空間>に<ジャック・イン>することのメタファーだととらえれば、一種のサイバーパンクものだとも考えられるし。キーボードを叩く替わりに、カクテル・ボードを叩くわけね。もっとも<電脳空間>がトリップのメタファーだというのが歴史的には正しそうだけど。いずれにしても、P.K.DickがW.Gibsonに与えた影響や、柾悟郎の「邪眼」がドラッグの話だったことを考えると、そういう文脈で読むのが正解かな。
この作者の持ってるフリークス趣味や、グロテスクな感性は期待できるかも。ティンカーベルが纏足されていることとかね。特にヘロインのやり過ぎで便秘になり、肛門に手首まで突っ込んで、口から糞を吐き出しながら死んでいた少女というイメージは強烈。このあたりも「コインロッカー~」に通じるところだな。
ストーリー的には一種のサイコものだけど、それほど目新しくはない。ずっとトリップしてるんだから、多重人格にもなるってもの。
[ドッグ・デイ] DOG DAY:★★★★
メインのプロットは崩壊した家庭の父親が息子を探しにネバーランドへやってきて、息子を連れだそうとすること。まあ普通の小説でもこういう話で無事に息子を連れ出せてハッピーエンドっていうのはないから、必然的に子殺し、親殺しの話にならざるを得ないだろうけど、この話で特筆するべき点は、<印刷屋>と呼ばれる奴らが、他人に自分の全人格を刷り込んで乗り移ることができるってところ。ますますサイバーパンクになってきて、これはもう「冬のマーケット」でしょう。
今回の話は臭いが重要なポイントで、臭いに関する蘊蓄がなかなか興味深い。色が3つの要素からできているように、臭いは20~30の要素からできているのに、それを表す言葉は非常に少ないとか。
[ラジオ・スタア] RADIO STAR:★★★★
シリーズ中の個人的ベストはこれかな。全員がドラッグを使用しているという特性を利用して、他人に自分の作り出したイメージを見せるラジオ・ゲームの設定もいいけど、ハエが住んでる家の不気味なイメージがなんといってもこの話の目玉。ラジオ・ゲームで人魚を見せて捕まえた人間を燻製にするのもきてるけど、内臓を抜いて手足を特定のポーズに縫いつけ、腐り落ちた眼の替わりにボールを入れているという死体はきてるわ。あとママと呼ばれている太った女が溶かしバターの入った挽肉しか喰わないというのもなんか神経症的で気持ち悪い。いや俺はもうあっさりしたものが好きですよ。
それから、サクミがスワンのラジオ・ゲームだったっていうのには意表を突かれた。前の話のペヨトルの正体もそうだったけど、この作者ってこういうミステリ的な仕掛けもうまい。子供の時の悪意のない悪戯っていうのとはちょっと違うかもしれないけど、「MEMORIES」の子供が屋根から落ちて死ぬところを思い出してしまった。
[モダーン・ラヴァーズ] MODERN LOVERS:★★★
ネバーランドの外の話という意味でも、現実の世界とのリンクという意味でもシリーズの中ではちょっと異色の話。でもカッターでいきなり首の頸動脈を切ったり、指で眼を突いて潰すとかいう描写が必ず入っているというところは、はずしてないけど。
でも、家出少女と、病気持ちの不良少年と、それを追いかける謎の組織の男たちいう設定は古いよね。好きだけど。
[ボーイズ・ライフ] BOY'S LIFE:★★★★
これまでの話を収束させるっていうのを目的に書いたんだろうってことだけど、始まりはともかく最後には見事にシリーズの締めくくりになってる。
<ヴァイル>のヨカナンがツクヨミであることも、サロメがヨカナンのラジオ・ゲームであることも気がつかなかった。またしても作者にやられた。ヨカナンが密教の<印>を結んだときやティンカーベルが首を絞められて死ぬときにヨカナンの慈愛を感じたというところで気がつくべきだったんだろうけど。
ピクルスが科学的霊媒になって呼び出したかった恋人というのは、ウエンディなんだろうか?俺の予想としては、18歳になったウエンディがネバーランドの外に出たくなくて自殺したんじゃないかってことなんだけど。そのピクルスがティンカーベルのためにチハルを呼び出しているというのもなんか意味ありげではある。
ビーの、人の免疫系に語りかけて自己免疫疾患を起こさせる能力というのも興味深い。本編の中でも心と免疫系の関係について触れているけど、現実を認識する能力を免疫系が自己を認識するシステムにまで解釈を広げてて、こういうの好きやなあ。
ネバーランドを外部から操っているはずの<ヴァイル>までもが、マウスたちの不安が作り出したものが現実となったにすぎないというのも、ここまでくると受け入れよう。第1話でツクヨミに殺されたチハルが今度はツクヨミを殺す、というよりチハルに殺されるためにツクヨミが帰ってくるのも。
ピクルスに呼び出されて黄泉からやってきたチハルがツクヨミの名前を知っていたということが、主観と客観との間に違いがないネバーランドという世界を、何よりも如実に表していると言えるんだろうな。
最後の白銀の巨人は”ゲゲゲの鬼太郎”のダイダラボッチだな。
今までドラッグの小説なんてなにが面白いんだと思っていたけど、ドラッグを介して現実と幻想(仮想)との区別がなくなるというラジカルなアイディアは確かに魅力的。新しい世界を見せてもらったっていうことで、これは重要な作品。
ただ、これが作者の才能が全開した作品かというと、まだ余力がありそうに思えるから、点数はちょっと辛め。 -
Posted by ブクログ
発売日に購入していたのだが始まりの
シトは友達が少ない。なんならいないと言っても間違いではない。でもそんなものでしょ、と彼は思っていた。友達が百人出来るような人間は友達が欲しいんじゃない。ただ仲間の数を増やしたいだけなんだ、と。彼はそうやって自分を百倍の人間に見せたいだけの人間とは、友達になりたくなかった。
という初めのページの序文に「あ、わかります」
とクソへんちくりんの僕は「今度の万博までとっておこう。オモロイ体験が出来るかもしれん。最終日に読んで理解のされない感慨に浸ろう」と思い、なんと5年間読まず、今日という日の為に100均で購入した本を入れる用のプラBOXにほこりのつかぬよう封印した
大変なアホである、気持ち悪すぎる
まあ、どうぞなんとでも思ってください
さて大阪万博の話だ
1969年、主人公のシトは中学校の友人サドルに
子供が賢くなるのはオトナ人間というインベーダーの精神侵略のせいだと聞かされ共感する
なんにでもなれる子供こそ本来の人類
1年後、コドモ反乱軍として大阪万博会場へと向かう
2037年、日本を襲った大地震の爪痕が残る中、VR技術を使い復興をしつつある大阪にて2回目の万博開催(この辺は東京オリンピック紹介から着想を得ていると思う。何一つ実現しなかったが)
当然、シトもサドルも同調する仲間たちも歳を重ねており、オトナ対コドモ
大阪万博にてまさに聖戦が行われる
(牧野作品なのでホラーも入り乱れる)
僕はまったく(前)大阪万博世代ではない
だからこの本の恐らくテーマ
子供は遊び続けろ
をこの本の時間経過として完全に理解できない
それでも、弱者へのアプローチや体制への疑問
そういう普遍的なメッセージと未来への渇望には僕達の世代にだって響く物語だった
567ページ、大作
5年温めなくても…よかったかな…
でも最初の動機はまさにこの本の内容、で、し、た
ハズカシッ! -
Posted by ブクログ
ファンタジー、コメディ、ホラーと
中々てんこ盛りな作品
ある日突然、専業主婦の信江さん(36)が
ビールを買いに行ったら異世界に行っちゃった♪♪
そこはなんとオズの魔法使いに出てくるような
奇妙な国、信江は現実世界に帰る為に
ミロク、コト、クビツリ、地蔵の愉快な仲間たちを従え旅に出るのであった。
一癖も二癖もある仲間たちに笑いが止まらない
そして時折り出てくる儀式、歌などにも
めちゃ笑ったwww
そして異世界と並行する様に現実世界では
ある連続殺人事件が発生、
被害者遺族の大和田が被害者の会(小さな柱)の
柳瀬と結託し、連続殺人鬼に復讐を企てる事になったのだった。
話の流れは異世界と現実世界を交互に読んでいく感じでした
異世界ではダークファンタジーの様なストーリー
時折り見せてくれる。愉快な仲間たちとのやり取り、奇妙な儀式、楽隊の歌がまさかのアレであったりと要所要所で面白おかしく描かれていて
笑わせてくれた
一方で現実世界では一転してサイコホラー
一直線、得体の知れない殺人鬼と殺人鬼を追う
被害者たち、怖くはなかったけど
中々のホラー強めなストーリーでした
ラストはあやふやみたいな感じだったが
小さい事は気にするな!!
頭を空っぽにし、身を委ねよ!
さすればドロシーの世界観にどっぷりハマり(✽︎´ཫ`✽︎)
面白い作品と思わせてくれるだろ( •̀∀•́ )✧
面白かった〜(*´﹃`*) -
Posted by ブクログ
ホラー?SF?ファンタジー?
リアルな日常から突如トリップ。
とにかく先が気になりまくった作品!(*´艸`)
夜、急に同僚を連れ帰った主人。
平凡な主婦、伸江は、ビールが足りないことに気づく。
義母に促され、お洒落して夜の街へ買い物に行く事に。
すると伸江は、急に空へ吹き飛ばされた—。
『オズの魔法使い』をモチーフにした作品。
タイトルに『ドロシー』とあるのに、途中まですっかり忘れて読んでいました(^▽^;)
オズの国と現実が交差する描写は、小林泰三のあの作品を彷彿とさせます。
ですが、こちらの方がホラー味が強め。
オズの世界観、奇妙でかなり好み♡
出会う部族や、急に歌い出したり、儀式したりするシーンなど「千夜一夜物語」のひとつの話を聞いているかのよう。
次は何が出てくるのか、先が気になりすぎて読む手が止まらなかった。
こういう物語、好きです!
伸江が自分と同じように平凡な主婦なだけに、気持ちが入ってしまった…(-∀-`; )
冒険で様々な経験をし、成長していく伸江。
変化した彼女を待っていたものは何か。
何だか色々考えちゃう。
ある意味、深いお話でした。
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Posted by ブクログ
友人とゲイパレードを見に来ていた菱屋修介に突如その轟音は響いた。空から無数の天使が舞い降り終末の喇叭を吹いている。地面は大きく揺れ、高層ビルは軒並み倒れた。どこからともなく炎に包まれた巨石が降ってきて、裂けた大地から人の顔を持った飛蝗が這い出てきた。人々の悲鳴が聞こえる。眼の前で友人は体を分断された。
「月へ行こう」
菱屋修介はそっと目を閉じる。現実から逃れたいときはいつもこうしてきた。幼少の時から積み上げてきた妄想の世界は自由自在だった。月世界の男が話す世界の理、神々との対抗。それは「言葉」の争奪戦だった。
SFといわれると困ってしまう作品だ。なにせ人と神のガチンコ対決なのだ。創世記のバベルの塔に着想を得ていて、神々が人類から言葉を奪ったのは神々でもコントロールの出来ない人類の発明故と語られる。言葉の普及を神は恐れている。そして打倒神における最重要武器が「ニホンゴ」だというのだ。
破茶滅茶な粗筋からは想像できない冒険譚。菱屋修介が再び目を開けたとき、目の前に広がるのは神々の残虐なのか否か。